- 01.光無線通信の価値
- 02.課題解決に向けた研究開発
- 03.社会実装に向けた取り組み
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- 2023.06.15
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光無線通信の可能性:高速大容量と低遅延の実現
#光無線/テラヘルツ
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1. 光無線通信の価値
ソフトバンクの先端技術研究所では、6Gの新たな通信媒体の可能性の一つとして光無線通信の研究・開発を行っています。
光無線通信は、従来の電気通信用の電波と比べ、より高速大容量かつ低遅延な通信の実現に向けて期待されている媒体です。また、非常にビームが細いことにより、干渉が発生しにくく通信の際には傍受もされにくいという特長があります。
さらに、レーザー安全基準を満たせば利用ライセンスが不要であり、電気通信用の電波と比べ、通信機器の設置・運用の自由度が増すことは事業者にとっても利点になります。

光無線通信の導入により、光ファイバーが敷設されてない地域のみならず、衛星やHAPS(High Altitude Platform Station)そしてドローンなど移動体向けにも、高速大容量なバックホール通信が提供されることにより、新たな通信サービスの創造や既存サービスでの大幅な能力向上が期待されます。


2. 課題解決に向けた研究開発
光無線通信では、十分な受信電力を得るため指向性の高いレーザー光を使用します。これを移動体通信で適用する際には、ジンバルやミラーで通信機の受信方向の角度を高精度に制御して調整する追尾機能が必要となります。
また、地上拠点間に適用する固定バックホール通信においても、大気擾乱(大気の乱れ)や大気中の水分による散乱・吸収の影響により通信光に乱れが発生するため、異なる追尾機能で解決することが求められます。
ソフトバンクでは、大学や企業と協力し、精密なモーターや測位システムなどの追尾システムや大気擾乱に強い光モジュールを採用して、これらの課題の解決だけではなく実用化も視野に入れた研究・開発に取り組んでいます。また、軽量化・安価な通信機器の実現のため、素材や構造などの研究・開発も行っています。

3. 社会実装に向けた取り組み
光無線通信の実用化に際し、もっとも支障となる課題は通信品質の安定性つまり通信稼働率です。目視で雨や水蒸気で遠方が見えにくくなるように、光無線にとっても大気中の水分により、ビームが散乱・吸収され、受信電力は非常に弱くなってしまいます。このような特徴がある光無線通信を活用するためには、機器・機能だけでなく無線設計の手法の確立も必要なため、まず通信媒体としての光無線の能力を指標化しました。
2棟のビル屋上のそれぞれに光無線通信機器と気象観測装置を設置し、各種データの取得と解析を行いました。


大気中の水分などの影響を計測するため、取得データをもとに推論モデルを独自に開発しています。このモデルを実装した無線設計ツールでは、気象データから利用可能な地域と距離の選定や、ルーティングの最適化などを行うことが可能です。また、実際にユースケースでの適用を通じたツールの実用性検証も開始しています。

2023年4月には、山梨県の清春芸術村で行われたアートイベントで光無線通信の特徴である大容量・低遅延を生かしたアートの展示が行われました。
また、2023年3月からは、光ファイバーが枯渇している地域において、基地局のバックホールとしての実証実験を開始しています。


ソフトバンクの先端技術研究所は、災害時やイベントも含むさまざまなユースケースでの活用が可能な光無線通信技術の確立を目指し、研究・開発を今後も持続的に行っていきます。