- 01.理論と実装の交差点で
- 02.モビリティの現場で社会とつながる
- 03.AI-RANを見据えた社会実装力
- 04.【コラム】理想のActivatorsとは?
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- 2025.09.26
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ACTIVATORS TALK【実装編】理論を形に、社会を動かす――“実装ドリブン”のエンジニアが拓くネットワークの次章
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先端技術研究所の研究員「Activators」が研究・開発や仕事観を語るシリーズ「Activators Talk」。第8弾は、モビリティ×ネットワーク領域で“実装ドリブン”を体現する竹内さんにフォーカスします。制御理論を源流としたエンジニアリング哲学、MONETプロジェクトで鍛えた現場力、そしてAI-RAN時代を見据えたオーケストレーター開発まで——コードが社会インフラを動かすダイナミズムをお届けします。
<プロフィール>
理論と実装の交差点で
―まず、入社前のことについて聞かせてください。高校・大学ではどのようなことを学んでいましたか?
高校は東京工業大学(現・東京科学大学)の附属高校で機械システム工学を専攻し、機械加工やロボット製作に打ち込みました。大学は東京工業大学に進学し、大学院まで制御工学を研究しました。
―制御工学に興味を持ったきっかけは?
小さい頃からものづくりが好きで、動く仕組みを見るワクワク感が原動力でした。周囲から「機械系に進めば楽しめる」と勧められたことも後押しになりました。
―研究を進める中で魅力を感じた点は?
どんな対象でも数式や理論に落とし込めば扱える点です。抽象化された理論を使えば適用範囲が広がるところに惹かれました。
―学生時代の学びが現在の仕事にどう活きていますか?
課題を定義し、解ける形に落とし込む思考プロセスが今の業務でも役立っています。数理最適化など専門知識も活かされていますが、それ以上に問題へのアプローチ方法が大きいです。
モビリティの現場で社会とつながる
―大学院まで学ばれたあと、どのような観点で就職先を探していましたか?
交通のように複雑なシステムへ制御理論を適用したいと考え、大手自動車メーカーを含めモビリティ領域を軸に複数社を検討していました。しかし製造寄りでは社会やサービスに直接タッチしにくいと感じていたところ、ソフトバンクとトヨタ自動車などが共同で出資するMONET Technologies(以下、MONET)の存在を知り、「ここなら理論を社会実装に繋げられる」と直感。数社受けた中で最初に内定したソフトバンクに入社を決めました。
―入社前後の印象や配属決定までの経緯はどうでしたか?
面接では「MONETに関わりたい」と繰り返し訴えたものの、配属は入社後に決定するため4〜5月までは内心ヒヤヒヤでした。最終的に先端技術研究所に配属され、MONETにも出向して業務を行えることになり安堵しました。入社前は「面白い挑戦ができそうだ」という期待と、「技術の深い部分まで関与できるのか」という懸念が半々でした。実際に働いてみるとワクワク感はそのままに、技術志向は想像より穏やかでしたが、だからこそ自分が技術レベルを押し上げられると前向きに捉えました。
―職場環境や働き方について教えてください。
周囲は和やかで働きやすい雰囲気です。私はほぼ出社スタイルで、コロナ禍当初はリモート中心でしたが、人とすぐに話して議論できる環境が重要だと感じ、出社の良さを再認識しています。
―研究職としての価値観、そして初期プロジェクトで得た学びを教えてください。
「この領域では自分が一番詳しくなる」という意識で取り組むことを意識しています。入社直後に担当したモビリティAPIプラットフォーム「MONET マーケットプレイス」では、API提供者がエンドポイントを登録し利用者が従量課金で呼び出す仕組みをゼロから設計しました。マルチテナント設計や課金基盤の構築、シミュレーション業務での問題定式化など、大学院で培った抽象化思考が活きました。一方、理想的なデータと実データのギャップを埋める難しさや、華やかなデータ活用の裏に膨大な下準備が必要だという現実も痛感し、「思ったより甘くない」ことも学びました。
AI-RANを見据えた社会実装力
―現在取り組んでいるプロジェクトとチーム体制・役割を教えてください。
AI-RANのコンセプトのもと、AIワークロードとRAN(無線アクセスネットワーク)ワークロードを同じリソース上で協調させるオーケストレーターを開発しています(AI and RAN)。AIアプリケーションとRANアプリケーションをどう割り当てればインフラリソースを効率良く使えるのか――その割当ロジックの構築と実装が私のミッションです。チームは4〜5名の少数精鋭で、私はオーケストレーター開発のリーダー兼エンジニアとして設計・開発・検証までを担当しています。
―開発手法や技術探索で重視していることは?
まず、オーケストレーターが目指す大目標をチーム全員で共有し、各タスクがどう貢献するかを明確にします。そのうえで“Running Code”(部長の口癖)を合言葉に、とにかく手を動かしながら考えるスタイルを徹底しています。新しい基盤機能や、基盤に乗せるAIアプリケーションについても、情報収集→即プロトタイプ→評価というサイクルで取捨選択し、「こう使えそう」という実感を持って技術を取り込むようにしています。オーケストレーターがリソースを効率良く使うためには、基盤そのものに加えて基盤に乗せるアプリケーションへの理解も重要になるため、幅広い分野をカバーするように努めています。
―社会実装を意識したとき、「社会に届く技術」とはどのようなものだと考えますか?
技術的にどれだけ新しくても、ユーザーが「コストが下がった」「UXが良くなった」と腹落ちしなければ採用されません。要は“納得感”が鍵です。技術者視点ではアルゴリズムの巧妙さや最適化ロジックに目が行きますが、社会実装の現場では成果が数値で示せるかが重要です。最新技術とユーザー価値をつなぐ意識を常に持つようにしています。
―プロジェクトを通じて感じるやりがいと課題、そして今後の展望は?
MWCでの発表や他社とのコラボ記事など、成果が社会に届いた瞬間に大きなやりがいを感じます。一方でLLM/AI分野の進化速度は想像を超えており、キャッチアップが追いつかない歯がゆさもあります。今後はAI需要の急増を踏まえ、計算リソースとエネルギーリソースを両立させる最適化――たとえば「どのサーバーで推論を動かせば消費電力が最小か」をリアルタイムで判断する仕組み――に挑戦したいと考えています。
【コラム】理想のActivatorsとは?
―求職者や若手エンジニアに向けたアドバイスはありますか?
業務で求められる技術を着実に身に付けることを前提にしながらも、少しでも興味を持った技術には積極的に触れてみることをお勧めします。興味の対象がすぐに仕事に結び付かなくても、知識や試行錯誤の蓄積が思わぬ場面で力になることがあります。好奇心に正直に行動し、小さなプロトタイプを重ねる姿勢が、将来の選択肢を広げてくれるはずです。
―最後に、理想のActivatorsに向けて欠かせない価値観は何でしょうか?
キーワードは「プライド」と「リスペクト」です。自分の専門に誇りを持ち、「この技術なら誰にも負けない」という気概で挑みます。一方で、数理最適化など先人が築いてきた枠組みを尊重し、新しい手法――たとえばLLMを取り入れた最適化――と組み合わせることで、伝統と革新のバランスを図ります。この姿勢こそが、社会に届く技術を磨き続ける原動力になると考えています。