Topicsトピック
- 2026.03.13
- Topics
- -
ACTIVATORS TALK【若手エンジニア編】VR研究からスマートグラス実証へ踏み出す若手エンジニア
#その他 #社員紹介 #ActivatorsTalk #AI #XR #VR
<プロフィール>
嗅覚VRへの挑戦──未踏領域を選んだ理由と原点
―大学や大学院では、どのような研究に取り組んでいましたか。
大学院では、バーチャルリアリティの空間の中で匂いがどう広がるかを流体計算で求めて、その濃度分布に合わせて実際に匂いを出す、いわゆる「嗅覚VR」の研究をしていました。
VRというと、ゴーグルをかけて映像が変わる“視覚の技術”というイメージが強いと思うのですが、本来は人間の感覚そのものを再現するものです。触覚や聴覚などもありますが、私の研究室ではその中でも嗅覚、つまり匂いの再現に取り組んでいました。
具体的には、香水の原液のような匂いのもとを用意して、濃度を細かく調整しながら鼻元に出します。映像や体験の内容に合わせて匂いを変えることで、映画館の4Dのように、視覚以外も含めた体験を作ろうとしていました。
また、匂いをセンサーで取得してデータ化し、離れた場所にあるデバイスから再現する、いわば“匂いのデジタル化”の研究も同じ研究室で行っていました。
―嗅覚というテーマを選んだ理由は何でしょうか。
視覚や聴覚は研究も進んでいて、触覚も注目され始めていますよね。一方で嗅覚は、正直かなり遅れている分野です。研究者も少ないですし、社会実装の事例も多くありません。
よく「なくても成り立つ」と言われる感覚なんですが、逆に言えば、まだ誰も本気で取り組みきれていない分野でもあります。人間に嗅覚がある以上、そこにしか出せない情報があるはずです。そこが進めば、体験はもっと変わるんじゃないかと思って、この分野を選びました。
―VRに興味を持ったきっかけは。
中学2年生のときに、ソードアート・オンラインというVRを題材にしたアニメを見たのがきっかけです。「こんな技術があるんだ」と思って、ネットで調べたり、研究室の情報を見たりするうちに、どんどん惹かれていきました。
人工的に作った世界を、そのまま体験として届けられるというのがすごく魅力的で。想像力さえあれば、いろいろなことができるんじゃないかと思いました。
ただ、実際に現代のVRゴーグルをかけてみると、視野がかなり狭いんですよね。双眼鏡をのぞいているような感覚で、現実とは情報量が全然違う。「まだまだだな」と思ったのを覚えています。その“物足りなさ”が、自分でやってみたいという気持ちにつながりました。
―大学での研究経験が、現在の業務に生きているなと思う点はありますか。
大学院での研究は、誰もやっていないことに対して、自分で問いを立てて、検証して、結果を出すという流れでした。
今の仕事でも、「これを実装するには何が必要か」「どういう順番で進めるべきか」を自分で考えます。ツールのスキルももちろん役に立っていますが、それ以上に、ロジックの立て方や考え方の部分がそのまま生きていると感じています。
企業で研究するということ──技術を価値に変える視点
―ソフトバンクに入社を決めた理由を教えてください。
就活では、研究のスタイルを続けられること、それがXRに近い領域であればなお良い、という軸で企業を探していました。
ソフトバンクにはインターンで来ていましたが、学生でもチームの一人として扱ってもらえたのが印象的でした。「こういう実装はどうですか」と提案すると、立場に関係なく真剣に議論してもらえる。いわゆる“社会人の壁”のようなものを感じませんでした。
―企業での研究開発と大学での研究の違いはどこにあると思いますか。
一番大きいのは、ビジネスとどう結びつけるかという点です。企業では「これ面白い」で終わりません。「どうやってお金を生むのか」「どのプロジェクトに活かせるのか」まで考える必要があります。
アイデアを出すときも、「どう言えば伝わるか」「どのタイミングで出すか」を意識します。
また、大学では自分の研究テーマに100%集中していましたが、今はそれ以外の技術検証もしながら、スマートグラスにも取り組むなど、複数のテーマが同時に進んでいます。
一つの技術に多くのメンバーが関わり、チームで“群のように動く”感覚があります。スピードも速く、テーマの入れ替わりも早い。それが企業研究ならではの特徴だと感じています。
スマートグラス実証のリアル──常時装着デバイスの可能性と課題
―現在取り組んでいるスマートグラスの検証について教えてください。
スマートグラスは入社後に初めて触りました。VRゴーグルに慣れていた自分からすると、まず「すごく手軽だな」と思いました。
何か特別な体験をするときだけ装着するのではなく、常に眼鏡のようにかけていられる。スマートフォンが情報を取りたいときに取り出すデバイスだとすれば、スマートグラスは常に身につけたまま、見聞きしたことをそのまま扱えるデバイスになっていく可能性があると感じました。
現在行っている「検証」は、既存のデバイスを実際に触りながら、そもそも何が見えるのか、どんな情報がどのくらいの精度で取得できるのかを一つずつ確かめていく作業です。センサーで取得できるデータの種類や精度、表示できる情報の制約などを確認しながら、実際にアプリケーションを作ってみて、「このツールキットでここまで実現できる」という具体的なレベルまで落とし込んでいきます。
単に技術的に可能かどうかを見るのではなく、「どんなユースケースが現実的か」「本当に社会に出せる形になるか」を見極めるのが目的です。製品として成立させるためには何が足りないのか、どんな使い方であれば価値が出るのかを、実機を通して探っています。
常時装着型のデバイスである以上、通信データやプライバシーといった課題も避けて通れません。技術的な可能性だけでなく、そうした前提条件まで含めて考えることが、いま取り組んでいる検証の重要なポイントだと感じています。
―これまでのXRの知見はどう生きていますか。
Unityなど、VRで使っていたツールがそのまま活用できるのは大きいです。
それ以上に、「実際につけてみないと分からない部分」に気づけることが重要だと感じています。例えば、視野角が狭くて最初のメニューが見えないといった小さな違和感でも、体験全体を損ないます。そうした細部を見る視点は、これまでコンテンツを作ってきた経験があってこそだと思います。
若手としての成長──“質”で専門性を築く
―入社してみて、実際の環境はどうですか。
正直に言うと、思っていた以上に働きやすいと実感しています。インターンのときに感じていた自由さは、社員になっても変わりませんでした。
やるべきことをやった上で、「この技術面白そうだな」と思えば調べてみてもいいし、立ち話から会議につながることもあります。学校に行くのが好きだったのですが、今は会社に同じような楽しさを感じています。
―不安はありませんでしたか。
人間関係の不安はありましたし、テーマの入れ替わりが早い環境なので、「器用貧乏にならないか」という不安もありました。
さまざまな技術検証を経験する中で、10年後に何が専門だと言えるのか、と考えたこともあります。
ただ、自分が触った技術については、疑問が残らないレベルまで徹底的に調べて、「この分野なら自分が一番詳しい」と言える状態をつくることを意識するようになりました。時間ではなく“質”で補う。その積み重ねが専門性につながると考えています。
―今後、どのような研究者になりたいですか。
中学生の頃にVRに出会い、XR系の研究者になろうと決めました。最終的な目標は、XR技術を社会に広め、多くの人に使ってもらえる環境をつくることです。
技術が成熟することも大事ですが、使われなければ意味がない。技術力だけでなく、適切な形でアウトプットできる研究者になりたいと思っています。
【コラム】理想のActivatorsとは?
―最後に、理想のActivators像を教えてください。
「技術を広く深く理解する」です。
AIが発達し、一定以上の質の知識や回答が即座に得られる時代になりました。だからこそ、自分の担当した分野の理解度はもちろん、それ以外の周辺知識についても求められる水準が高くなっています。
周辺分野を広く理解した上で、自分が手を動かした領域については「自分が一番詳しい」と言える状態でいたい。短期間でも質で補い、自信を持って語れる技術者でありたいと思っています。