- 01.フィジカルAIとは何か
- 02.なぜAI-RAN/MECが必要なのか
- 03.安川電機との協業:フィジカルAIの社会実装へ
- 04.フィジカルAIが切り拓く未来
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フィジカルAI社会実装に向けたソフトバンクの取り組み
#AI-RAN #AITRAS #フィジカルAI
2026.03.23
ソフトバンク株式会社
生成AIの進化により、大規模言語モデル(LLM)は「考える」能力を飛躍的に高めました。では、その知能が現実世界で自律的に“動き出す”としたら、社会はどのように変わるのでしょうか。
本記事では、ソフトバンク先端技術研究所が取り組む「フィジカルAI」と、その基盤となるAI-RAN/AITRASの事例をご紹介します。
まずは、ソフトバンクが描くフィジカルAIの未来について、ぜひ動画でご覧ください。
1. フィジカルAIとは何か
フィジカルAIとは、センサーやカメラから得た情報をAIが理解・判断し、その結果をロボットなどの物理的な動作に反映する仕組みです。生成AIがデジタル空間で知的処理を担ってきたのに対し、フィジカルAIはその知能を現実空間での行動へと拡張します。
この中核となるのが、VLM(Vision-Language Model)とVLA(Vision-Language-Action)という2つのAIの基盤モデルです。VLMはカメラ映像やセンサー情報をもとに状況を把握し、「何をすべきか」を解釈し、抽象的な指示を複数のサブタスクへと分解します。一方でVLAは、そのサブタスクを受け取り、ロボットの具体的な動作へと変換します。視覚フィードバックを活用しながら、軌道や把持などをリアルタイムに最適化し、連続的な動作として実行します。
この連携により、例えば「机を片付けて」といった曖昧な指示にも対応し、変化する環境の中で柔軟に行動できるようになります。
2. なぜAI-RAN/MECが必要なのか
フィジカルAIでは高度な判断が不可欠であり、そのためにAIモデルはどうしても大規模化します。その結果、ロボット単体では処理しきれないという課題が生じます。従来はロボット内部で処理することで低遅延を実現する一方、計算資源や電力、コストの制約がありました。またクラウドで処理する場合は高性能な計算が可能である一方、遅延や通信のばらつきが課題となっていました。
この課題を解決するのが、ソフトバンクが開発を進めるAI-RANによるMEC環境です。センサーやカメラなどから得られる膨大な情報を統合し、高度な判断を下すVLMを基地局近傍のMECへ移行させることで、ロボットは映像や音声データを低遅延で送信し、その解析結果を即座に受け取ることができます。クラウドと比較して遅延が小さく、そのばらつきもほとんどありません。
さらに、ロボット単体では搭載できない大規模な計算リソースを活用できるため、通信時間を加味してもロボット内部で推論を行うより高速な処理が可能になります。これにより、大規模なモデルを極めて短い応答時間で実行でき、「賢さ」と「高速性」を両立したフィジカルAIが実現します。
また、MEC環境の活用によりシステムの柔軟性も大きく向上します。ロボットのハードウェアを入れ替えることなく、その“頭脳”であるAIのみを継続的にアップデートできるため、現場のロボットは常に最新のフィジカルAIへと進化し続けることが可能になります。
3. 安川電機との協業:フィジカルAIの社会実装へ
2025年12月、ソフトバンクは安川電機と、AI-RANを活用したフィジカルAIの社会実装に向けて協業することを発表しました。人手不足や業務の高度化を背景に、人が行き交う空間での高度な自動化ニーズに応える取り組みです。
第1弾として、次世代ビル管理システムと連携し、MEC(Multi-access Edge Computing)上で動作するAIを活用したオフィス向けフィジカルAIロボットのユースケースを共同開発しました。ロボットのセンサー情報とビル内の外部データを統合・解析し、リアルタイムに最適なタスクを生成。ロボット側のAIが具体的な動作へ変換することで、1台で複数の役割を担う「多能工化」を実現します。
安川電機の精緻な制御技術と、ソフトバンクのAI-RAN/MEC基盤を融合することで、ロボティクスにAIと通信を統合した新たな自動化ソリューションの創出と社会実装を目指します。
関連プレスリリース:ソフトバンクと安川電機、AI-RANを活用した「フィジカルAI」の社会実装に向けて協業を開始(2025年12月1日)
4. フィジカルAIが切り拓く未来
フィジカルAIは、AIの知能を現実空間での行動へと拡張し、ロボットや各種デバイスの高度な自律動作を可能にします。その実現には、AIモデルの高度化に加え、エッジやMECにおける最適化、多拠点での連携、そしてAI-RANによる通信と計算の統合といった複数の技術の融合が不可欠です。
ソフトバンクは、AIネイティブな社会インフラの構築を通じて、フィジカルAIの社会実装に向けた研究開発および実証を推進しています。
フィジカルAIが当たり前となる未来に向けて。その基盤づくりは、すでに始まっています。