新卒採用で、AIによる「共通一次面接」がスタンダードになる日

2020年4月20日掲載

  • 働き方改革の一環としてオンラインでの新卒採用面接の需要が高まっている
  • 「SHaiN」は採用一次面接の役割を代替する対話型のAI面接サービス
  • 企業は面接にかかる時間と手間を削減し、応募者増加を見込むことができる
  • 「SHaiN」が浸透することで、学生の資質データが集まり、新しい採用のスタンダードが生まれる可能性がある

目次

AIがヒトを面接する。そんなSFのような取り組みが現実にサービスリリースされ、話題になっている。世界初※となる対話型AI面接サービス「SHaiN(シャイン)」は、面接官であるAIの質問に答えていくことで、応募者の資質を見極めることができるという。

AIに本当に面接が可能なのか。同サービスを提供する株式会社タレントアンドアセスメントの代表取締役 山﨑俊明氏に話を聞いた。

※タレントアンドアセスメント調べ

「戦略に基づいた対話型AI面接で実現できる採用活動」ウェビナーアーカイブ

ビデオ会議システムでの面接の難しさ

――現在、採用活動において企業はどのような課題を抱えているのでしょうか。

山﨑氏:経団連の採用指針の撤廃、通年採用などの導入検討により、新卒採用活動の状況は大きく変わりつつあります。さらに現在では、働き方改革の推進や感染症拡大といったことを背景に採用活動の手法の検討や変化が起こっています。

新卒採用活動は3月1日から本格的に始動し、会社説明会から始まり書類選考や適性検査、面接などの選考フローに入るのが通常です。しかし今年は、不要不急の外出自粛やイベントの開催自粛など、人を集めることや、その集まる場所に行くことそのものがリスクになり得る状況であり、従来通りの採用活動を実施するのは、企業にとっても学生にとってもいろいろな意味で難しくなっています。

そこで増えてくるのが、オンラインで採用活動をするという手段です。ただ、ほぼ一方通行で情報提供する「会社説明会」ならばともかく、双方向のコミュニケーションが不可欠な「面接」までをオンラインで実施しようとしたとき、多くの企業が新たな課題にぶつかることになります。

――企業がWeb面接をするにあたっての課題とは?

山﨑氏:オンラインのビデオ会議システムは、すでに十分に世の中に浸透しています。システム自体に対する違和感はなく、話す相手が同僚や取引先などの知り合いであれば、それほど問題はないでしょう。しかし採用面接で相手にするのは初対面の学生です。

面接で採用側に求められるのは、限られた時間内で応募者との会話を通して、その仕草や表情、言動などを観察し、資質を正しく見極めること。ですがWebではそもそも人との間合いを詰めるのが難しいうえに、例えばシステムの不具合や操作ミスなどがあれば、10分や20分の面接時間があっという間に過ぎてしまいます。

つまりWeb面接において、採用側がこれまで対面で培ってきた経験や勘を生かすことは、非常に困難だと言わざるを得ません。逆に考えると、こうした問題さえクリアできれば、Web面接のパフォーマンスは格段に上がります。

そのほか、Web面接が必要とされる理由は、非対面で選考が行えるという点です。現在のような都会集中型の就職活動の仕組みが根本から変わり、特に遠方にいる学生の時間的・金銭的な負担はなくなり、企業もそういった学生にアプローチもしやすくなるなど、企業と学生双方の負担も軽減します。

世界初の対話型AI面接システム「SHaiN」

――「SHaiN」のサービスの詳細についてお聞かせください。

山﨑氏:「SHaiN」は、AIによる対話型の面接サービス。応募者はスマートフォンのアプリから、24時間365日、いつでもどこからでも面接を受けることが可能です。面接の所要時間は40分から60分程度で、アルバイト面接であれば5〜10分程度。これまでの新卒採用フローにおける一次面接の役割を果たします。

 

【AI面接サービス SHaiN】面接の受検手順

AIの質問に応募者が回答すると、それに対してAIが「その困難を乗り越えるために、工夫したことや改善したことを具体的に教えてください」などと、質問を投げかけ、具体的なエピソードを引き出していきます。十分な情報を得たとAIが判断するまで、質問は止まりません。

AIが担当するのはヒアリングの部分で、その後は専門のスタッフが、面接の内容をもとに評価レポートを作成。最終的な合否の判断は、評価レポートと動画、音声データ、回答のテキストデータをもとに企業が行います。

――このサービスを活用することで、企業にどのようなメリットがあるでしょうか。

山﨑氏:企業側のメリットとしては時間と工数の削減です。
採用担当者にとってかなりの業務負担となるのは、面接官と学生との日程調整や会場手配です。「SHaiN」は時間も場所も選びませんので、そこで生まれた時間やコストを、学生とのコミュニケーションや細やかなフォローなど、人にしかできない高度な業務にあてることができます。

さらに、学生にとっても時間や地理的な制限がなく面接を受けられる上に、ある会社で受けた「SHaiN」の面接データを他の企業にも活用する(オープン面接機能)ことができるため、応募ハードルを下げることができます。

学生が応募しやすくなったことで、「SHaiN」を導入した地方企業では、エントリー率が168パーセントにアップした事例もありました。もちろん内定者数も増加しています。

「面接は人でなければできない」は勘違い

――AI面接に対して、「人の目で見ないとわからない」という反対意見もあるかと思いますが、どうお考えですか。

山﨑氏:もともと私たちタレントアンドアセスメントは、採用面接に特化したコンサルティング会社です。どんな質問を投げかければ、その人のどのような資質が見えてくるのか。そしてその資質が、企業が求める人材像とマッチするのか。私たちはそのノウハウを、採用担当者の方々に向けてお伝えしてきました。

研修を受けることで、誰もがある一定の水準の面接官になれます。しかしそれでも、「個人のバイアス」を完全になくすことは不可能に近い。だから採用の現場では、十分に資質を見極めないまま、「あの人はやる気があるから」「勉強内容が自社事業と近いから」など、面接官の感覚や印象、先入観によって合否を決めてしまうケースも起きています。

面接を受けたことのある人なら、「今の面接で、自分の何を見てもらったのかよく分からない」と、納得できなかった経験が一度はあると思います。そのせいでミスマッチが生まれ、結果として離職率が上がってしまうのです。果たしてそれは企業にとって、ベストな採用と言えるでしょうか。

私たちが実現しようとしているのは、少なくとも一次面接の段階においては全ての属人的な要素を排除して、世界中の面接官を「1人」にすること。それがAI面接「SHaiN」のミッションなのです。

――AI面接が普及していくにつれて、例えば「こう答えておけば10点がとれる」といった必勝法が生まれたりはしませんか。

山﨑氏:それは、AIがどんな質問をしているのかがキーになってきます。AIの質問は全て、応募者の「過去の行動」を確認するもの。なぜならば、人は基本的に、過去にしたことを繰り返すという行動原理があるからです。

例えば学生時代に受験勉強などで徹夜をした経験がある人は、社会人になってからの徹夜も拒まない傾向にあります。その資質が企業にとって向いているかは別として、その人には目標達成のために何が何でもやり抜こうとする力が、すでに備わっていると考えられます。

この観点で言うと、もしAI面接の対策をするとしたら、「学生時代の過ごし方を意識して変えていく」のが最も適切だと言えるでしょう。もし自分が経験していないことをAIに話そうとしても、決して上手くはいきません。人は嘘をつくと回答が曖昧になるからです。実際、過去にそういった学生がいましたが、話の内容が曖昧だったためにAIの質問が止まらず、最後は「嘘をつきました」と自ら告白する結果となりました。

もちろん、本人の話し方や表情、雰囲気などは対策が可能です。ただこの点においては、従来の人間による面接と大差ありません。AI面接とは、これまで人間がやっていたヒアリングの作業をAIに置き換えたものです。

面接のAI化の先に見据える採用改革

――AI面接によって、採用の現場はこれからどのように変わっていくと思われますか。将来への展望をお聞かせください。

山﨑氏:「SHaiN」のデータを基にした人材戦略は、データの蓄積と共に可能性が広がっていくでしょう。例えば、ある年における内定者には体育会系が何パーセントいたか、それらの社員が会社でどのようなパフォーマンスを出したか、といった統計データを分析して、自社にどのような属性の学生が適しているかを割り出すことなども、「SHaiN」のデータを使えば容易に行えます。

これはピープルアナリティクスと呼ばれる、人事関連のデータを収集・分析して意思決定に役立てる手法です。

また、現在「SHaiN」を導入している企業は、試験導入を含めて全国150社以上。もし、このまま普及が進めば、いずれは大学のセンター試験や就職適性検査のように「SHaiN」が”共通一次面接”としての役割を果たすことになるでしょう。

例えば、2019年の大学・大学院の卒業見込み者数は約69万人、就職率78%、平均エントリー社数13.9社というデータがあります※。約748万人の学生が面接を受けた、ということです。仮にこれらの学生が、一次面接として「SHaiN」を受けるとすれば、膨大な数の資質データが蓄積されます。

そうなれば、企業の側から「こうした資質を持った学生がほしい」とオファーを受けて、それにマッチする学生を紹介するといった採用プロセスが成立するでしょう。そのとき、「SHaiN」が人材プラットフォームとなり、ミスマッチのない「資質重視」の新しい採用の仕組みが生まれているかもしれません。

※参考:マイナビ2018年度新卒採用就活戦線総括

編集後記

タレントアンドアセスメント社・代表の山﨑氏は「SHaiN」の開発に着手するまではAIに関してまったくの素人だったと言う。「SHaiN」のユニークネスの1つは、テクノロジーから発想したプロジェクトではなく、面接現場の課題からスタートしていることだ。日本企業のDXは、タレントアンドアセスメント社のように専門の現場ノウハウを持つ企業にテクノロジーが浸透したとき、進んでいくのかもしれない。

関連サービス

対話型AI面接サービス「SHaiN」

「SHaiN」は24時間365日いつでも、世界中※1どの場所でも面接することを可能にした世界初※2の対話型AI面接サービスです。
※1一部ご利用いただけない国・地域があります
※2株式会社タレントアンドアセスメント調べ

AI・機械学習

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