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まだ記憶に新しい能登半島地震。大きな被害を受けた被災地では、未だに継続的な支援が必要な状況が続いています。そんな中、つい先日も日向灘を震源とした大きな地震がありました。
近年、このような地震や台風、豪雨などの自然災害が激甚化しています。自然災害はいつどこで起こるか分かりません。その中で人々を守り、事業を継続するために、企業はどんなことができるのでしょうか。
ソフトバンクでは能登半島地震での経験を踏まえ、2024年6月に千葉県印西市で大規模な総合防災訓練を行ないました。訓練には、ソフトバンクの通信ネットワークを保守・運用・管理する部門と協力会社のメンバー総勢174名が参加し、能登半島地震の災害現場を経験して得たノウハウの共有や、災害発生時に使うソリューションを安全かつスピーディーに最大限活用できるように、スキルの継承が行われました。
本ブログでは、訓練の様子とともに、能登半島地震のリアルな災害現場の状況とそこで活躍していたソリューション、ソフトバンクの防災の取り組みについてご紹介しますので、ぜひ自社の防災について考えるきっかけとして役立てていただければと思います。
能登半島地震は今までの震災と大きく異なる点があり、基地局の復旧作業が非常に困難だったと、復旧作業にあたった作業員は語ります。
能登半島のアクセス道路がもともと少なく、さらにその道路が基地局の直前で崩落していたり、亀裂が走っていたため、復旧車両が基地局の近くまでいけないという状況が散見されました。
また、災害後に積雪したため、道路の亀裂が雪で見えなくなるなど危険が伴い、移動がさらに困難な状況でした。場合によっては除雪しないと基地局にたどり着けないこともあったほか、一度応急復旧させても発電機などの機材に雪が積もるたびにケアが必要となり、その点でも復旧にロスが発生しました。
目的地までの道路が渋滞しているため現地に到着するまでに時間がかかり、復旧作業がすぐにできないことも多くありました。
車両が使用できない場所では、作業員が徒歩で基地局まで行って状態を確認しなければならないことも多く、復旧活動では人力で運べる可搬型の機材の使用が優先されました。
このような状況から、能登半島地震ではエリア全体の復旧に時間がかかってしまいました。
災害復旧の長期化には、復旧部隊を支える後方支援が非常に重要だったといいます。能登半島地震では、水道インフラが大きな被害を受け断水が続いていたため、簡易トイレやベースキャンプを設営し、作業員が復旧機材を補充したり休息できる環境の充実化を図りました。
また、停電時の基地局復旧のために使用する発電機の稼働時間が短く、給油にリソースが割かれたことも大きな教訓になったといいます。
今回の能登半島地震での教訓を生かすために、ソフトバンクは千葉県印西市で、基地局の復旧を主題とした大規模訓練を行いました。訓練は大きく2つに分けて、既存基地局を復旧させる訓練と、基地局が倒壊している場所などで臨時のスポットエリアを構築する訓練が行われ、長時間の稼働を可能にする発電機を使用した訓練や臨時基地局として広範囲のエリアをカバーできるドローンを活用した訓練など、防災力をさらに強化するためのノウハウを復旧作業にあたる全員が身に付ける機会となりました。
災害があると、設備の倒壊や物の飛来による設備破損、土砂災害、河川氾濫による水没などで、基地局が大きな被害を受けることがあります。基地局がこのような被害を受けると通信サービスが停止してしまうため、基地局の復旧に取り組むための防災訓練は定期的に実施されています。
災害発生後、はじめに避難所や役場などを臨時基地局でカバーする必要があるため、移動基地局車や可搬型基地局を活用した訓練が実施されました。
また能登半島地震の際、2カ所で稼働し、広範囲エリアをカバーするために活躍した有線給電ドローン無線中継システムの訓練も実施されました。
半径3~5kmのエリアをカバーができ、作業員が出向くことのできない場所でも利用が可能なドローンは、今後もさらなる活躍が期待されています。そこで災害現場で誰もが使えるようにドローンの組み立てから実飛行までが訓練の中で確認されていました。
また、サービス開始に向けた準備を進めているNTN(非地上系ネットワーク)のソリューションのひとつであるOneWeb(低軌道衛星通信)のアンテナも訓練の中で展示されていました。防じん・防水機能を備え、電源があればすぐに閉域ネットワークの構築が可能なため、今後の災害現場での活躍が期待されています。
臨時基地局によるエリアカバーと並行して、既存基地局の復旧も必要になります。基地局に直接被害がない場合のサービス停止理由の多くは、電源を確保できないことやアクセス伝送路(通信ケーブル)が切れていることによるものです。
ケーブルが切れている場合、通信確保のために可搬型衛星アンテナを基地局直下に設置する必要があるため、訓練では設置手順の確認をしていました。また、山の上など車で行けない場所にある基地局には、約25kgのアンテナを運搬用のケースに入れて作業員が背負って持っていきます。
電源が確保できない場合には、発電機を回したり移動電源車を配備することが必要です。なお、給油も必要なため、パートナー企業のタンクローリーを活用します。
発電機は基地局復旧の際に重要な役割を果たすものです。使用頻度が高く使い方を熟知しておく必要があるため、従来型に加え、長時間稼働が可能なLPガスのハイブリットタイプとインテリジェントタンクについても今回の訓練で確認が行われ、参加者からは「実際にやってみると難しい」という声も聞かれました。
災害復旧現場では、現地で起きていることをリアルタイムに本部に伝えるとともに、現地の作業員が動きやすいように休息が可能なベースキャンプを設置します。
このベースキャンプは設営後に同じ場所にあり続けるのではなく、活動が盛んな場所に随時移動させて、復旧班の移動による時間のロスがなくなるように災害復旧の効率化を支援しています。
能登半島地震では、ベースキャンプでの通信確保にStarlink Businessも活用されました。軽量で、地上の電波がない場所でも通信可能なため、被災地の多くの場所で活用されました。中でも、現地の避難所や教育施設、医療機関でWi-Fi環境を確保する上で、「Starlink Business」を無料で貸し出したことは、かなり好評だったといい、今回の訓練でもテントやMONETの車両との接続や設置方法などについて説明が行われました。
なお、災害時の作業員や法人のお客さまから寄せられた運搬面の課題に対応するため、ソフトバンクではStarlink Businessの機材の運搬時に利用するキャリーバッグを独自で開発しています。
バックパックタイプなので、悪路でもStarlink Businessの機材を1人で運ぶことが可能で、紐が切れたり肩が痛くならないように検討したといいます。
キャリーバックに入れたStarlink Businessの機材は総重量約19Kg。実際に背負った感想を伺うと「しっかり固定されるので歩きやすく、軽く感じます!」という声が聞かれました。Starlink Businessは災害対策だけでなく、自治体をはじめ、山間部などにおける通信環境の整備などのニーズも多くなっているといいます。
訓練当日は報道関係者向けに、ソフトバンクの災害対策や防災の未来について説明する機会も設けられました。その際、エリア建設本部 執行役員本部長の小笠原篤司は、基地局の復旧活動を妨げる苦難に関して「災害地にも復旧部隊はいますが、復旧部隊も被災者なのですぐに動けません。災害時には被災していない全エリアからの支援が重要となり、初動対応が大事だと思っています。また、基地局へ向かう進入路崩落や水没などのほかに、一番心配なのは予測のできない余震です。作業員の命に関わるだけでなく、万が一二次災害が起こるとその時点で復旧作業がストップしてしまうため、強い揺れが発生するたびに現地作業員の安否確認を徹底しています」と語りました。
また、小笠原は、困難な状況の中でもDXシステムを利用するなどの工夫をして、作業を効率化し復旧スピードを向上させているといいます。
その一例として、基地局のトラブル推移と復旧部材の在庫状況をリアルに把握するシステムや、多いときには200もの班が復旧作業にあたるため、各班が通ったルートや基地局到着までに要した時間を管理して作業のバッティングを防止するシステム、どの基地局を優先的に復旧させるべきかを全員で把握できるシステムなどをあげ「いろいろな災害の経験を積むたびに、各種システムをリニューアルし、よりよいものを作りあげていく」と語りました。
能登半島地震では各通信事業者や行政とも密に連携することで、現地の状況が速やかに分かり、他社との連携がしやすくなったことが非常に重要だったといいます。
ソフトバンクでは、災害対策のさらなる効率化、強化のために新たなソリューションの導入を今後も予定していると小笠原は続けます
「電源断対策として稼働時間の長い発電機の追加導入に加え、通常車両での進入が困難な場合の対策として、軽自動車で運搬可能な軽量・小型化された新型の可搬型基地局も順次導入予定です。また、船からのエリアカバーも有効だったとの情報を得て、ソリューションとして導入する準備も進めています。そして、将来的には空から通信ができることが一番有効な手段と認識しているので、OneWebやHAPSにも力をいれ、災害時でも途切れない通信の実現を目指しています。また、どんなに技術が進化し、さまざまな機材やソリューションがあっても、最後は人の手を介さないといけない。これまでの経験や気づきを継承し続けていくことが非常に大切だと思います」と、いつ起きるか分からない自然災害には、事前の訓練や災害に対する備えが重要であることを語りました。
ソフトバンクでは大規模災害に備え、このような総合防災訓練や地域ごとの防災訓練を毎年実施しています。指定公共機関として、国・地方自治体・自衛隊などとの合同防災演習にも参加し、2023年度に全国各地で行った訓練は合計142回になりました。
防災対策では、災害が起きたときに後悔しないように、日ごろから防災力を高めておくことが重要です。本ブログが、自社での防災についての見直しや、新たな取り組みのきっかけになれば幸いです。
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