中国ユニコーン「iFlytek」がAIで解決する生活習慣病対策

2021年12月16日掲載

iFLYTEK(アイフライテック)の医療AIソリューション

中国では日本と同様に高齢化が進む一方で、医療向け労働力は足りていません。この社会的問題を、医療事業にITを積極的に導入することで解決しようとしています。これは健康に関する「(第13次・第14次)五ヵ年計画」や「健康中国2030」などの各計画にも記載されており、国の後押しで2025年、2030年までに成果を出していくことになります。またこれらの計画では、生活習慣病の包括的な予防・管理の実施と段階的な治療の推進が強調されています。

生活習慣病対策は一定の年齢以上の人々が対象になると考えると、日本の10倍以上の人口を対象に、各人に合わせたソリューションで、長期間見ていかなくてはなりません。さらに、中国では病院や医療スタッフ不足が深刻になっています。

さて、ここでこれら中国の医療問題を解決してくれる医療サービス向けAIを提供する企業の1つ、安徽省合肥に本社を置く「iFlytek(アイフライテック、科大訊飛)」を紹介しましょう。iFLYTEKではもともと、他社製のスマートスピーカーの音声認識エンジンに搭載されるような音声認識のAI(人工知能)に特に強みがありました。そこから、音声だけでなく企業向けサービスや教育サービス、それに医療サービス向けのAIも開発するようになったのです。医療向け事業では、AIなどを活用した生活習慣病対策ソリューション「智医助理」を運用しています。

iFLYTEKは、2018年より安徽省阜陽市内の自治体「界首市」の公立病院「界首市人民病院」と提携中です。同病院では、生活習慣病の予防対象者が50万人います。そして同病院では既に7万3000人の高血圧病患者を管理し、また年間29万人の高血圧患者のフォローアップを行っているのです。

界首市人民医院

各地のかかりつけ医の担当患者はかなり多く、高血圧患者がパーソナライズされた管理を受けることができず、したがって高血圧患者の高頻度の対話ニーズを満たすこともできていない、という問題がありました。この問題を、AIを活用したITソリューションでなんとかしたい、と考えたというわけです。

iFLYTEKでは、AIを活用した各種音声技術と健康管理のAIを活用しています。自動音声応答サービスは、自動で電話をかけ投薬や食事や運動についての情報を訊ね、応答した音声を記録するのです。また、家で測った血圧計のデータとビッグデータを照合し、AIが自動で生活指導を行います。「アドバイスをあまり聞かない」、あるいは「改善されていない」などと判断された人々をデータとしてまとめ、かかりつけ医に対してリスクのある人々の分析情報を提供します。そしてかかりつけ医はリスクの高い人々に集中してカウンセリングできるので、本当に専門医を必要としている患者に治療が行き届くというわけです。

このサービスを市内各地の病院と医療関連スタッフに提供することにより、サービスの品質向上と、人が手をかけるべき労働力が減り、主治医の正確な診断能力の向上が実現したとのことです。

界首市ではソリューション稼働後、保険の予算から7,000台を超すスマート血圧計を導入し患者に配布しました。生活習慣病対策の結果、病院と家庭にかかる総医療費が減るなら、あらかじめ導入したほうがいいという考え方です。このソリューション導入で2021年8月現在、生活習慣病の血圧に関する患者の達成率は72%、AIアシスタントは173万回活用され、この3年間での高血圧による入院患者を減らすことに成功しました。

界首市人民医院の入院患者数が減少(出典:百度記事)

これと同様のソリューションは、中国での新型コロナウイルス感染拡大の対策としても活用されました。隔離対象となった人々に自動で電話をかけて、AIが音声を認識し、対象の人々のデータをとってまとめるというものです。また体調が心配な人々に対しては、音声応答やチャット対応を行うことで来院人数を減らし、医者の労力を本当に必要な患者に集中させることができました。

医療ソリューションで医療スタッフの負担を減少へ(出典:百度記事)

日本のECサイトをはじめとしたWebサービスでも、自動応答サービスは導入されています。医療業界にも自動応答を活用することで医療スタッフの負担を減らし、将来迫る高齢者社会で活躍してくれることを期待したいですね。

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