Future Stride

handy Japanとソフトバンクでつくる
観光客を動かすタビナカメディア

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世界各国で展開されているホテル設置型の無料スマートフォンレンタルサービス「handy」。日本展開を手がけるhandy Japanとソフトバンクは2018年7月より資本・業務提携を開始。両社の狙いとは? そして、今後どのような展開を検討しているのだろうか?

handy Japan代表の勝瀬博則氏、元HIS代表でhandyのトラベル事業を統括する平林朗氏、LinkedIn 日本 代表でhandyの IoT領域のアドバイザーを務める村上臣氏、handyJapan取締役兼ソフトバンク デジタルトランスフォーメーション本部の河本亮氏の4名に話を聞いた。

handy Japan株式会社 CEO
勝瀬博則
1992年より米国大手事業会社にて通信、サーチエンジン、ヘルスケア事業を手掛け、2015年、Booking.comの日本統括マネジャーに就任。訪日客増加を強力に後押しし、Booking.comの日本事業を大きく成長させた。現在は現職の他、神奈川県観光政策統括アドバイザー、パソナ株式会社地方創生特命アドバイザー、フォートレスキャピタルマネジメント顧問などを兼任。
handy Japan株式会社 CEO-handy Travel
平林朗
2008年、株式会社エイチ・アイ・エス代表取締役社長に就任。2016年より同社取締役副会長兼M&A本部長、H.I.S.ホテルホールディングス株式会社の代表取締役社長を歴任。2018年7月よりhandy Japanのトラベル事業のCEOを務める。
handy Japan株式会社 Head of handy IoT
LinkedIn 日本代表
村上臣
大学在学中に有限会社電脳隊を設立。モバイルインターネット黎明期において「WAP」の普及に尽力し、2000年、ヤフー株式会社へ入社。2012年から同社執行役員、CMOに就任。現在はLinkedInの日本代表を務める。2018年7月よりhandy JAPANのIoT領域のエグゼクティブアドバイザーを兼任。
ソフトバンク株式会社
デジタルトランスフォーメーション本部
第一ビジネスエンジニアリング統括部 統括部長
handy Japan株式会社 取締役
河本亮
2003年に現ソフトバンク入社。2017年よりデジタルトランスフォーメーション本部の統括部長として、新規事業立案・パートナーアライアンスに従事。2018年7月にhandy Japan株式会社取締役就任。

個人化する旅行と、タビナカのプラットフォームを担うhandy

ホテルの客室に設置される無料スマートフォンhandy。宿泊客はhandyで国内外通話やインターネット、アプリを自由に使えるほか、ホテルの案内やトラベル情報などを受け取ることができる。端末自体も15言語に対応しているので、宿泊者は馴染みのある言語でサービスの利用が可能だ。

handyは2012年に香港で誕生し、現在では世界82カ国、約60万室に設置されている。日本には2017年7月に上陸し、僅か1年ほどで全国のホテル約3割と契約を締結した。

こうしたhandyの急成長の背景には外国人旅行者の増加や旅のスタイルの多様化があるのはもちろんだが、それだけではない。従来の旅行者向けサービスとは大きく異なるhandyならではの特長が急成長を後押ししている。平林氏と勝瀬氏は次のように語る。

平林:

近年、旅行は個人化しています。ツアーパッケージではなく、個人で航空券とホテルを別に予約する人が増えました。旅行業界はこれまで宿や航空券の予約といった「タビマエ市場」のサービスで競争してきましたが、handyが狙っているのはその先にある「タビナカ市場」です。この領域への参入はいろいろなプレイヤーが目指していますが、旅行者との接点をつくるのが難しいという課題がありました。それに対してホテルの客室に設置するhandyは旅行者とのタッチポイントになれる。今後は「タビナカ市場」をリードするプラットフォームになっていくと感じています。

勝瀬:

これまで携帯端末は「個人」に属するものでしたが、それがホテルという「場所」に属するのがhandyのビジネスの新しい点です。企業にhandyの話を持っていくと、「一度は同じようなビジネスを考えたことがある」とよく言われます。しかし、コストや管理の課題、スケールさせる道筋が見えないなどの理由から多くの企業が諦めていた中で、私たちがスタートして一気にスケールさせた。じゃあ利用してみようという企業が増えて、導入が進んでいるのだと思います。

旅のスター軍団が担うhandyの日本展開

多くの企業が難しいと判断して足を踏み入れなかった領域で事業を拡大していくためには、業界をリードする力と最新のテクノロジーが必要だ。handy Japan CEOを務める勝瀬氏は元Booking.comの日本統括マネジャー。そして、handyの事業に可能性を感じて元HIS代表の平林朗氏と元ヤフーでCMO(チーフ・モバイル・オフィサー)を務めた村上臣氏の両名が参画。旅行、ホテル、IoTの各分野を牽引するメンバーが集まることでどのような効果が生まれているのか。村上氏、勝瀬氏は次のように答えた。

村上:

僕自身、以前香港でhandyを体験したことがあり、当時すごく便利だと思ったんです。旅まわりの体験は今もアナログな部分が多い。これまでの宿泊体験を一新するような体験をhandyを通して生み出せたらすごく価値があると感じて、IoT部門の担当として参加しました。このメンバーでやっていて面白いのは、それぞれ専門領域がはっきりしていること。その中でチームとして動くのはシナジーを感じますし、経営会議でもいろいろなアイデアが出てきて、どんどん新しいことが動き出しています。

勝瀬:

日本展開を開始してわずか1年の会社ですが、元HIS代表の平林さんや元ヤフーCMOの村上さんが参加してくれて、ソフトバンクが事業に可能性を感じて出資をしてくれている。旅行業界の変革を目指していくための最高の環境が整っていると感じています。

なぜhandyとソフトバンクは手を組んだのか?

2018年7月にはhandyとソフトバンクが提携を発表した。両者にとって、どのような狙いがあるのだろうか?

勝瀬:

handyにかかるコストの多くは端末コストと通信コストです。handyは鴻海やシャープをはじめとした端末メーカーと事業提携しており、端末コストを抑えることができていますが、通信事業者であるソフトバンクと提携して協力体制を築くことで、通信やネットワークの面でより良いサービスの開発につながると考えています。

河本:

ソフトバンクでは、世界のIT企業との提携を通して今後さまざまな産業をAIによって再定義、デジタルトランスフォーメーションを進めていきます。
その中で、handyは単なるスマートフォンではなくホテル業界における新たなプラットフォームになり得ると思っています。携帯キャリアとして単純に通信の提供だけでなくhandy上で展開される各種サービス・コンテンツや、そこから得られる観光客のデータに基づいた分析など、ソフトバンクとして事業シナジーを生みだせる点が多岐にわたるため今回の資本・業務提携に至りました。

ソフトバンクでは自社の顧客基盤を活用してホテルへのhandyの導入も行っており、今後はhandyの全国展開が一層加速することが期待される。さらに、こうした通信面、営業面での直近のメリットだけではなく、将来的な共創による新しい価値創造においても両社はメリットを感じているという。

勝瀬:

私たちはhandyを使って観光事業のデータ化を推進することで、新たなマーケットを創造したいと考えています。また、ホテル客室のIoT化によって旅行者の体験向上、ホテル側の事業効率化を図ることも目指しています。通信事業だけではなくIoT、AIに取り組んでいるソフトバンクと提携することで、さまざまなシナジー効果が生まれると考え、ラブコールを送りました。

河本:

handyへの投資を検討している段階で、丸2日間合宿をしたんです。ソフトバンクグループ内の多岐にわたる部門と一緒になればどんなことができるのか、わくわくしながらディスカッションしましたね。出資後、早速シナジーもでてきており、今後もさまざまな展開や取り組みを行っていきます。

https://handy-japan.com/handy.fes/

すでに、2社共同での取り組みも実施されている。2018年8月には、ソフトバンクグループで位置情報を活用したビッグデータ事業を行う株式会社Agoopとhandyによる神田明神納涼祭りの実証実験が行われた。実験ではhandyを通して関東圏に宿泊している外国人旅行者に向けて神田明神納涼祭りの告知を行い、実際にどのくらいの旅行者が訪れたかを調査した。

勝瀬:

3日間広告を出して、閲覧した人の平均7%が実際に神田明神納涼祭りに出かけました。これは広告の効果としてはかなり高い数字です。神田明神の盆踊りを見るために日本に来た方はいないと思いますが、たまたま東京に宿泊していて、たまたまhandyを見て、近くでお祭りがあるなら行ってみようと思ってくれたわけです。従来だとポスターやチラシなどで告知をしても、実際にどれだけの人が行動したのか追跡できませんでした。handyの場合はターゲットにダイレクトに情報が届きますし、どのくらいの方が閲覧して、行動したのかを辿ることができます。handyのメディアとしての可能性を改めて感じました。

観光プラットフォームの構築に向けた旅行者の行動解析を開始
〜旅行者向けに広告を出したら本当に来る?「神田明神納涼祭り」で実証実験を実施〜(Agoop)
https://www.agoop.co.jp/news/detail/20180828_01.html
河本:

第一弾として神田明神納涼祭にて来場者の計測をしましたが、今後も場所やテーマを変えて検証していきます。例えばある目的地に対して、欧米人はここに立ち寄ってから行くけど中国人は別ルートから行っていた、等これまで見えていなかった動線がhandyで導き出せれば、全く新しい観光マーケティングや街づくりにも活用できると考えています。

場所と通信が融合することによるポテンシャル

ホテルの客室内だけで完結するのではなく、場所にひもづいた通信メディアでもあるhandy。「旅の総合プラットフォーム」としてだけでなく、さまざまな可能性を秘めている。実際、handyとソフトバンクの提携を発表してから、旅行業界以外からの企業の問い合わせも後を絶たないという。

村上:

ソフトバンクと一緒に行うことで、通信とロケーションの両方を抑えることができるというのはすごくポテンシャルがあると感じています。例えば屋外広告の世界では、兼ねてからアドテク化が検討されていましたが、うまくロケーションとテクノロジーが噛み合っていませんでした。結局、決まった映像を月イチの更新頻度で流すだけになってしまっていたんです。

そんな中で、場所に紐づいて通信もできるデジタルメディアであるhandyが登場した。handyは無料で使えるスマートフォンでもあるし、旅のツールでもあるし、デジタルメディアでもあります。そのため、いろいろな企業の方が可能性を感じて、コンタクトを取ってくださっているのだと思います。

河本:

病院やクルーズシップ、賃貸マンションなど、私たちが想定していなかった業界の企業からも「handyのプラットフォームが使えるんじゃないか」という問い合わせをいただいています。まずは旅行業界で展開していきますが、将来的には幅広い可能性を追求していきたいと考えています。

handyとソフトバンクが提携することで、場所と通信が融合したこれまでにないプラットフォームが誕生した。今後handyがもたらす旅行業界の変革は、近い将来、自宅や病院、学校といったさまざまな場所でも起きるかもしれない。

後編では、タビナカのプラットフォームとしてhandyが旅行業界をどう変えていくのかについて詳しく聞いていく。

■取材協力

京王プラザホテル

handyも導入している京王プラザホテルは、1971年の開業以来、西新宿の地で世界100カ国以上のお客さまに愛されてきた国際ホテルです。今回の取材が行われたインペリアルスイートルームはインテリアデザイナーの剣持勇氏が室内設計から家具や照明のデザインまで手がけたというジャパニーズモダンテイストの空間。開業時から日本の歴史と共に各国の要人やセレブリティに愛されてきた一室です。
https://www.keioplaza.co.jp/

■関連リンク

handy Japan

https://handy-japan.com/

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