AI-OCRは進化した! OCRとの違いや最新機能、導入のポイントを解説
2024年10月1日掲載
スマートフォンやタブレットなど、デジタルデバイスの利用が企業でも急速に広まっていますが、依然として紙によるやりとりも多く残っています。皆さまの職場でも、紙で受け取った契約書や請求書情報などを手作業でデジタル化する場面が多々あるのではないでしょうか。このような手作業は時間と労力を消耗し、ミスの原因にもなります。
そこで注目されるのが紙データをデジタル化できるOCRです。近年、AI技術を搭載したAI-OCRの進化により、その性能は飛躍的に向上しています。
今回は従来型のOCRとの違いや進化を続けるAI-OCRの最新情報、導入時のポイントについてデスクワークの自動化・効率化の専門家が詳しく解説します。
本記事の執筆者
OCRとは? AI-OCRとの違い
まずは、OCRについてです。OCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)は、文字情報をテキストデータに変換する技術であり、その歴史は1930年代にまで遡ります。従来のOCRは印刷された文字を認識することに優れていましたが、手書き文字や曖昧な文字の認識には限界がありました。また、帳票の自動分類や表形式のデータ抽出も困難でした。
そこで登場したのがAI-OCRです。AI-OCRは、従来のOCR技術にAIを組み合わせることで、手書き文字や曖昧な文字の高精度な認識を実現しました。さらに、AI-OCRは帳票の自動分類や表罫線の認識を行い、表形式のデータを効率的に抽出できます。例えば、手書きの請求書や領収書、アンケート用紙など、従来のOCRでは対応が難しかった書類も、AI-OCRなら簡単にデジタル化できるようになりました。加えて、生成AIの進化に伴い、より多様な書類のテキスト化が可能となり、業務効率を飛躍的に向上させています。
AI-OCRは紙文化が根強く残る企業にとってデジタル化の強力なパートナーになり得ます。紙の書類をデジタルデータに変換することで、手作業で行っていた業務の効率化とコスト削減を実現し、競争力を強化することができます。例えば、紙の書類をデジタル化することで検索性が向上し、必要な情報を迅速に見つけることができるようになります。また、デジタルデータはバックアップが容易なので、災害時のリスクを低減することにもつながるでしょう。
以下にOCRと、AI-OCRの違いをまとめました。
OCR
AI-OCR
提供方法
(読取エンジン)
- ・機械式
(例:複合機、ハンディスキャナ) - ・ソフトウェア式
(PCインストール型が主流)
- ・ソフトウェア式
(PCインストール型からSaaS型が主流に)
読取文字
手書き文字
対応帳票
- 定型
- 特定帳票(レシート、請求書など)
- 非定型(全文読取)
帳票の特定
言語モデル
画像補正
- サイズ補正
- 傾き補正
AI-OCRはここまで進化した(こんな業務も改善できるように)
ここからは、直近のAI-OCRでどんなことができるようになったのか、最新情報も含めてご案内します。
手書き文字の読み取り精度向上、多言語化
OCRの読み取り精度は永遠の課題であり、識字率が100%になることは難しいと考えられています。しかし、近年のAI技術の進歩と各メーカーの努力により、手書き文字の認識精度は実用レベルに達しつつあります。各ツールによって精度は異なるものの、全体的な傾向として大幅な改善が見られます。
さらに、グローバル化が進む現代において、漢字、カタカナ、数字、ローマ字だけでなく、他国の文字も認識できるツールが登場しています。これにより、多言語対応が求められる企業でも、AI-OCRを活用することで効率化が図れます。
最近では、AI-OCRエンジンに生成AIを連携させる機能もリリースされはじめました。例えば、あるメーカーのツールでは、読み取ったデータに誤りがあった場合でも、正しい情報に修正し、それを次回以降の正解データとして反映させることで、読み取り精度を向上させることが可能になりました。
また、特定の項目のみを抽出したり、抽出条件を口語文で入力し指示することで抽出精度が向上するなど、生成AIの登場によりAI-OCRの機能や用途が数年前と比べて格段に向上しています。
定型以外の帳票の読み取りが可能に
従来、AI-OCRは記載場所や位置が固定されている定型帳票に対応していました。近年では特定の帳票、例えばレシートや領収書のように、項目は同じでも記載位置が異なる準定型帳票も事前設定なしで読み取れるようになりました。また、帳票全体をテキスト化する全文読取や、表明細をそのまま出力する機能も備えた製品が登場しています。
項目単位から枚数単位の課金体系へ
AI-OCRは機能面だけでなくコスト面でも進化しています。
従来の項目単位から枚数単位の課金体系に移行することで、1枚あたりの項目が多い帳票でも費用を抑えて利用することが可能になりました。これによりコストパフォーマンスが向上し、より多くの企業が導入しやすくなっています。
+αの機能が付加
生成AIを活用した新機能も続々と登場しています。
読み取った結果を別のファイルに書き写したり、AI-OCR機能を拡張してテキスト化されたデータを横断検索できるプラットフォームを構築したり、内容を要約したりと、ただアナログな紙の文章をテキスト化するだけでなく、データとしての利活用を促進する機能が充実しています。これにより、業務効率がさらに向上し、データ管理の利便性も大幅にアップします。
このように、AI-OCRは従来のOCR技術を大きく超える進化を遂げており、手書き文字の高精度な認識、多言語対応、定型外帳票の読み取り、コスト面での柔軟性、そして生成AIを活用した高度な機能を提供しています。これら機能を利用することで、紙文化が根強く残る企業でも、今までより容易に業務の効率化とコスト削減を実現できるようになります。
AI-OCR導入のポイント、進め方
AI-OCRは、1つの業務・1つの帳票だけでも、導入の費用対効果に見合えば導入いただくメリットがあります。すでにAI-OCRを導入されている企業の場合では、複数帳票でAI-OCRを活用されている場合が多いので、部署の垣根を超えて全社で利用されることをおすすめします。
その際の選定ポイントとして、弊社でも実施した「ペーパーレス化の進め方」をご紹介します。
1. 業務の棚卸とリスト化
印刷文書の調査とリスト化を行い、全ての印刷物を3 パターンに仕分けて削減できるものかどうかを判断します。
- レッドリスト:今すぐ削減可能なもの
- グレーリスト:工夫次第(ツール利用)で削減可能なもの
- ホワイトリスト:削減困難なもの
2. 情報保管方法の見直し
不要なものは破棄し、データ化できるものは全てデータ化します。
3. AI-OCRの適用
グレーリストの対象帳票のうち保管方針として電子化対象となったものを中心に、以下の項目で情報を整理してみてはいかがでしょうか。
- 帳票名
- 所管部署
- 対象枚数
- 対象項目数
4. ソリューション選定
全ての帳票の情報が網羅できましたら、AI-OCRのソリューションの選定にお進みください。AI-OCR選定では、事前にツールメーカー様より資料請求や打ち合わせなどから、以下の内容を確認し選定ください。
- 機能要件
- セキュリティ要件
- コスト
- 利用可能ユーザー数
5. トライアルの実施、導入
ツールが絞り込めたら、トライアル利用をご検討ください。トライアル利用で費用対効果を含め、AI-OCR導入で業務改善するか、現状の生産性を下げないかの点も含めて検証ください。問題ないようであれば導入です。
上記はあくまで一例となりますが、全てのファイルを一気に行おうとせず、まずは分類した上で検討・実施していくことをおすすめします。
まとめ
今回はAI-OCRとOCRの違いや、近年のAI-OCRの機能の進化、AI-OCRを導入する際のポイントや進め方を解説しました。紙のデータをデジタル化することは企業の業務効率化に大いに役立ちます。また、AI-OCRと業務を自動化するPRAソリューションを組み合わせて利用するとより大幅な業務効率化も見込めるようになります。
ソフトバンクでは上記のようなペーパーレスの取り組みやRPAソリューションのご紹介が可能です。ぜひソフトバンクへお気軽にご相談ください。
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