ISDNサービス終了の背景 代替サービスは?

2025年5月9日掲載

ISDNサービス終了の背景 代替サービスは?

近年、通信技術の急速な進化に伴い、従来から利用されてきたISDN(Integrated Services Digital Network)サービスの一部が終了します。そんな中、固定電話が使えなくなるなど誤解を招くような情報が広まっており、混乱を招いていることもあるようです。本記事では、法人向けの情報システム担当者や総務担当者の皆様を対象に、ISDNサービスの現状と終了の背景、さらに代替となるサービスについて詳しく解説します。社内の通信環境を見直す参考にしてみてはいかがでしょうか。

目次

ISDN回線とは?

ISDN(Integrated Services Digital Network)は、通常の電話線(銅線)を利用してデジタル信号で電話やデータ通信を行う通信方式 です。
ISDN回線とアナログ回線は、回線そのものは全く同じもの(銅線)を使用しています。両者の大きく異なる点は「データの変換方式」です。

アナログ回線は、電話線に音声をそのままのせて送るため、音声データそのものが電気に乗って銅線の中を伝わっていきます。いわゆる糸電話と同じ仕組みです。そのため銅線の距離が長くなればなるほど信号が弱くなってしまったり、外部からの強い電波が混ざってしまって音声にノイズが入ってしまうこともあります。
それに対してISDN回線は、音声データを0と1のデータに変換(デジタル化)し、それを電気に乗せて銅線で送信します。

ISDN回線の主な特長

ISDN回線は、デジタル化されていることで、アナログ回線と比べて音声が良くなり、盗聴もされにくくなります。また、ノイズがなくなることでデータを送る速度も速くなり、1つの電話線で複数の通信サービスを提供できる利便性が特長といえます。そのため、1つの電話番号で音声通話とデータ通信の2つの回線を利用できる点で注目され、特に法人向けのPBX(Private Branch Exchange)システムやビジネス用途で広く利用されてきました。

・高音質な音声通話
デジタル信号を使用するため、アナログ回線と比較してクリアな音質での通話が可能で、会話が聞き取りやすいです。

・同時通信
音声通話とデータ通信を同時に行うことができます。これにより、PBXシステムとインターネット接続を同じ回線で利用できるメリットがあります。

・複数チャネルの利用
Bチャネル(音声通話やデータ通信用)とDチャネル(制御信号用)の2種類のチャネルを持ち、効率的な通信が可能です。

・安定性と信頼性
公衆回線を使用せず、専用回線として提供されるため、ビジネス用途において高い信頼性があります。

ISDN回線は以下のような用途で多くの企業で使用されています。
・小売店のPOSレジ・POSシステム
・銀行ATM
・警備端末・監視カメラの映像伝送
・ラジオ放送
・CAT端末(店舗でクレジットカードの有効性を確認するための端末)

ちなみに、ISDN回線ではなく アナログ線の広帯域周波数を利用して電話やデータ通信を行う通信方式ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)と言います。こちらは1つの電話番号で1つの回線しか利用できませんが、安定した通信が行えます。

ISDNサービス終了の背景

多くの企業で利用されてきたISDNサービスですが、近年のインターネット技術の進化やクラウドサービス、高速インターネット回線の普及などからISDN回線の必要性が低下しています。固定電話の利用者数も年々減少傾向にあり、需要の低下とともにISDNサービスの一部が2024年1月に終了となりました。

ISDNは、「音声通話モード(電話)」「ディジタル通信モード(インターネット)」 の2つに大別されます。音声通話モードとはいわゆる電話機能のことで、ディジタル通信モードとはPCやデータ通信端末で利用される機能のことです。2024年1月に終了したのはディジタル通信モードのみで、通話モードは引き続き今までと変わりなく利用可能です。ISDN回線そのものがなくなるわけではありません。

ISDNサービスの一部終了となったのは、ディジタル通信モードの利用者数が減少していること以外にも、維持コストの増加といったさまざまな要因が背景にあります。

1. 利用者数の減少
インターネットの普及やクラウドサービスの発展により、企業がISDN回線を利用する必要性が薄れてきています。特に、中小企業やスタートアップ企業では、初期投資を抑えつつ柔軟な通信環境を構築できるクラウドPBXやVoIP(Voice over IP)サービスが選ばれる傾向にあります。これにより、ISDN回線の利用者が減少し、通信事業者側もサービスの継続が経済的に難しくなっています。

2. 設備の老朽化
ISDN回線を維持するための設備は、長年の使用により老朽化が進んでいます。設備の更新や保守には多額のコストがかかるため、通信事業者は新しい技術への投資を優先せざるを得ません。

3. 技術の進化と競争
通信技術の進化に伴い、より高機能でコストパフォーマンスに優れた通信サービスが登場しています。クラウドPBXやVoIPサービスは、柔軟性や拡張性に優れ、企業の多様なニーズに対応できるため、ISDN回線に代わる有力な選択肢として注目されています。競争が激化する中、通信事業者は新しいサービスの提供にシフトしており、これがISDNサービスの縮小につながっています。

なお、このISDNサービスの縮小により、NTT東日本とNTT西日本が提供しているISDNサービスの「INSネット」は新規受付停止しており(2024年8月31日)、ソフトバンクの「おとくラインISDN64」、「おとくラインISDN1500」も2026年4月1日に新規受付停止を予定しています。

ISDNサービス終了後の影響

ISDNサービスの一部終了は、将来的にISDN回線を自由に利用できなくなる可能性を示唆しており、企業にとって早期の対応が求められています。特に、以下の点に注意が必要です。

1. PBX設備の更新
ISDN回線を利用したPBXシステムは、交換部品の終売や修理費用の高騰といったリスクがあります。これにより、システムの安定稼働が難しくなり、突然の故障による業務停止が懸念されます。PBXの更新時期を見極め、早期に新しい通信方式への移行を検討することが重要です。

2. 修理費用の増加
老朽化した設備の交換部品が入手困難になると、高額な修理費用が発生する可能性があります。これにより、維持費用が増加し、企業のコスト負担が増大します。長期的な視点で通信環境の見直しを行い、コスト削減を図る必要があります。

3. 長期的な通信戦略の見直し
ISDN回線に依存した通信戦略ではなく、クラウドベースやインターネットを活用した柔軟な通信戦略に転換することが求められます。これにより、将来的な技術変化にも柔軟に対応できる通信環境を構築することが可能です。

ISDN回線に替わる法人向けの通信サービス

ISDN回線の代替として、以下のサービスがあります。これらのサービスは、コスト削減と効率的な通信環境の構築に役立つ有力な選択肢です。

(1)光回線サービス

光回線とは、光ファイバーケーブルを使って高速で安定したインターネット接続を提供する通信回線です。ISDN回線は通話品質に優れていますが、光回線はインターネット通信の速度と安定性が秀でていると言われています。光回線サービスは光回線事業者と契約し、外から建物内に光ファイバーを引き込んで利用します。

光回線サービスは以下のようなメリットがあります。

・回線基本料の削減
固定電話とインターネット回線を一本化することで、個別に契約するよりもコストを抑えることができます。これにより、通信費全体の削減が期待できます。

・通話料金の節約
通話が無料となるオプションを利用することで、社内コミュニケーションにおけるコストを削減できます。また、長距離通話や国際電話も定額サービスを利用すれば、追加費用を気にせずに利用できます。

・定額サービスの活用
特定の携帯電話への通話が定額になるオプションを利用することで、携帯電話の利用料金を一元管理できます。経費管理が簡便になり、コストの見える化も図れます。

・簡単な導入と管理
専用のアダプターを使用することで既存の電話設備との互換性を高めることができ、導入が容易です。管理画面からの簡単な設定で社内通話の管理や設定変更が可能となり、IT部門の負担を軽減し、運用効率を向上させます。

・高品質な音声通信
光回線を利用するため、音声品質が高く、クリアな通話が可能です。これにより、業務上のコミュニケーションがスムーズに行えます。

おとく光電話」は、光回線を使ったIP電話サービスです。電話サービスとアクセス回線サービスをまとめてご提供可能、そして現在ご利用中の電話番号をそのままご利用可能です。固定電話回線とインターネット回線を1本にまとめることで、回線基本料の削減が可能なサービスです。また、おとく光電話同士の通話は無料で利用できるため、社内コミュニケーションにおけるコストを大幅に削減することができます。さらに、ソフトバンクやワイモバイルの携帯電話への通話が定額になる付加サービスも提供されており、経費の管理が容易になります。

(2) クラウドPBXの導入

物理的なPBX設備を用いてISDN回線を利用している場合には、PBXをクラウド化することで電話やデータ通信を行えるようにすることができます。固定電話の台数を削減し、柔軟な通信環境を構築するためには、クラウドPBXの導入が効果的です。クラウドPBXは、インターネットを通じて電話システムを管理・運用するサービスであり、物理的なPBX設備を必要としません。スマートフォンを内線として利用することで、リモートワークやテレワークにも柔軟に対応できます。

クラウドPBXは以下のようなメリットがあります。

・初期投資、コスト削減
従来のPBXシステムは、高額な初期投資が必要ですが、クラウドPBXはサブスクリプションモデルで提供されるため、初期コストを抑えることができます。また、固定電話機器の購入や保守費用を削減できます。クラウド上で管理されるため、設備の維持コストも抑えられます。

・迅速な導入
クラウドPBXはインターネット接続があればすぐに利用を開始できるため、短期間での導入が可能です。急なビジネスニーズにも柔軟に対応できます。

・柔軟な運用
社員がリモートワークを行う際にも、スマートフォンを内線として利用できるため、場所にとらわれないコミュニケーションが可能です。これにより、働き方改革にも対応しやすくなります。

・スケーラビリティ
企業の成長に合わせて、簡単に拡張や縮小ができるため、変化するビジネスニーズに対応しやすくなります。新規事業や部署の増減にも柔軟に対応できます。

・最新技術の活用
クラウドPBXは最新の通信技術を活用しており、AIによる自動応答やデータ分析機能など、ビジネスを支える先進的な機能も活用できます。

(3)VoIP(Voice over IP)サービス

VoIPは、音声通話をインターネットプロトコルを通じて行う通信技術 です。これにより、従来の電話回線を使用せずに音声通話が可能となり、通信コストを大幅に削減できます。VoIPサービスは、基本的な通話機能に加え、ビデオ会議やチャット機能なども統合されており、統合コミュニケーションツールとして活用できます。

VoIPは以下のようなメリットがあります。

・低コスト
従来の電話回線よりも通信費用が安価であり、特に長距離通話や国際通話において大幅なコスト削減が可能です。

・多機能な通信
音声通話だけでなく、ビデオ会議やチャット機能も統合されているため、業務効率が向上します。

・柔軟な導入
インターネット環境があれば簡単に導入でき、機器の設置やメンテナンスも不要です。

・拡張性
必要に応じて機能を追加できるため、企業の成長や変化に柔軟に対応できます。

まとめ

ISDNサービスの一部終了に伴い、固定電話の運用方法を見直す必要が出てきています。ISDNサービスには、老朽化したPBX設備の更新や交換部品の終売リスク、高額な修理費用の発生など、多くのリスクが存在します。これらのリスクを回避し、効率的な通信環境を維持するためには、早期に代替サービスへの移行を検討することが重要です。代替サービスとしてご紹介した光電話サービスやクラウドPBXをぜひご検討してみてはいかがでしょうか。

ご不明点やご相談がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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松田 享子
ソフトバンクビジネスブログ編集チーム
松田 享子
2020年よりソフトバンクにてB2Bマーケティングのマーケティングオペレーション(MOps)に従事。
2023年より主に中小企業を対象としたコンテンツ制作を担当。

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