バイブコーディングとは? ~人×AIで加速する新しい開発スタイル~
2025年11月10日掲載
プログラム開発において「開発スピードの加速」と「プロダクト品質の維持」は避けて通れない課題です。この2つを両立し、開発チーム全体の生産性を高める新しいスタイルとして注目されているのがバイブコーディング(Vibe Coding)です。
バイブコーディングは、開発プロセスにAIを積極的に取り入れ、人とAIが対話を通じて「生成→実行→修正」のサイクルを短時間で繰り返すことで、開発スピードと品質を両立するアプローチです。
本記事では、その基本概念、注目の背景、導入メリット、そして成功のためのリスク管理までを解説します。
バイブコーディングとは
AIと人間がリアルタイムで並走する開発手法
バイブコーディング(Vibe Coding)は、AIと人がリアルタイムで並走しながら開発を進める手法です。名称は「vibe=雰囲気・ノリ」と「coding=開発」を組み合わせたもので、細かなコードの記述に追われるのではなく、雰囲気・直感でAIと対話しながらソフトウェアをつくるという考えから、「バイブコーディング」と呼ばれるようになりました。背景には、近年の大規模言語モデル(LLM)が自然言語を理解し、コードを生成できる段階まで発達したことがあります。
人が自然言語で「こう動いてほしい」「こんな感じを実現したい」といった意図(目的・成功条件・制約/前提・期待する動作・検証方法)をAIに伝えると、AIがコードやテストの草案を生成し、その実行結果を見ながら改善を重ねていく開発スタイルです。従来のように人間がキーボードを叩いてコードを書くのではなく、人が指示とチェックを行い、AIがコードを書くことになります。
役割分担の明確化
・AI:コード生成・補完、テスト雛形作成、潜在バグの兆候検知など、反復的・機械的な実装作業
・人:要件分解、全体設計、技術選定、リスク判断、創造的な意思決定
従来の協調開発手法との違い
バイブコーディングの特長は、開発サイクルの速さにあります。
人同士が協働するペアプログラミング(二人一組で行うプログラミング)やモブプログラミング(三人以上で行うプログラミング)と比べると、合意形成や待ち時間といった人間特有のボトルネックが少なく、AIが即座に提案・修正を行うことで試行回数を増やすことができます。
なぜ今、バイブコーディングが注目を集めるのか
バイブコーディングが注目される背景には、AIの高度化と文脈理解の向上や小さく作って早く届け、フィードバックで連続的に改善を行うアジャイルに合致した高速な検証サイクル、そしてコストと品質を両立できる可能性があります。
・AI技術の進化とコンテキスト理解の向上
近年、生成AIの文脈理解力は飛躍的に向上しています。プロジェクト全体の構造や依存関係を踏まえた実用的な提案が可能になり、人とAIの対話を前提とする開発が現実的になりました。
・事業スピードへの貢献と高速なPDCA
AIが初期実装やテスト生成を担うことで着手から動作確認までが短くなり、短い開発期間の中で「作る→試す→直す」を何度も回せるようになります。結果として、意思決定が速まり、事業スピードのボトルネックを解消しやすくなります。
・経営インパクト(リソース多様化とコスト効率)
自然言語での指示により、非エンジニアでもコード不要で小規模な開発や自動化を行えます。その分、熟練エンジニアは高度な設計・最適化に専念でき、組織の生産性とコスト効率が高まります。
バイブコーディングがもたらす4つのメリット
【開発スピード向上】:設計から実装までを加速
設計意図を自然言語でAIに伝えるだけで、土台となるコードやテストの雛形が瞬時に生成されるので、人が手で書く工程が減り、「まず動く状態」までの到達時間が短縮されます。結果として開発全体のリードタイムが縮み、新機能の市場投入も早まります。
【品質の二重チェック】:AI×人のレビューで堅実に
AIがコーディング中に潜在的なバグや設計上の懸念点をリアルタイム検知し、人が最終レビューで是正します。自動検知+人の判断という二重の体制により、早期発見・修正が進み、手戻りを抑制できます。
【若手・新人の即戦力化】:AIに初期実装を任せ、学びを前進させる
AIがコードを生成することで、新人や若手の学習が加速します。手探りの時間が減り、作例を読んで動かし、修正して再確認するサイクルが増えるため、学習速度と理解の質が上がります。
また、初期実装をAIに任せることで教育担当は設計レビューや意思決定に集中でき、育成のばらつきが減ってチーム全体のレベルを効率的に底上げできます。
【エンジニアの負担軽減】:反復作業はAI、創造は人
繰り返しや定型的な実装はAIに任せ、エンジニアはドメイン理解の深化や非機能設計、合意形成といった高付加価値業務に集中できるので、仕事の質とモチベーションの向上につながります。
強みが出る場面と慎重にすべき場面
バイブコーディングは万能ではありません。どの領域にどの程度適用するかを見極めることが重要です。
【向いているケース】
・プロトタイプ・小規模開発:仮説検証を素早く回したい開発
・UI改善・スクリプト作成:変更頻度が高く、試行を重ねたい領域
・テストコード・ドキュメント整備:AIの初期生成を人が確認・修正する流れが効率的
【慎重に扱うべきケース】
・大規模な既存システムや長期保守開発:依存関係の誤認リスクが高い
・安全性・信頼性が最優先の領域(医療・金融など):AI出力の根拠が不明確になりやすい
・リアルタイム処理や低レイヤ開発:人手によるチューニングと検証が不可欠
導入を成功させるためのリスク管理
バイブコーディングは高速な反復を強みにしますが、リスク対策が整っていないと品質・安全・再現性が崩れやすくなります。そのため、社内で以下のルールを整え、継続的に更新していく姿勢が成功につながります。
セキュリティの確保
機密情報を外部に出さない設計にすることが重要です。顧客データや認証情報はプロンプトに含めない運用を徹底し、通信先は社内の閉域ネットワーク、または社内構築の安全なAIモデルに限定すると安全性を向上します。さらに、AI特有のリスクを踏まえ、入力・出力内容の検証を行い、不正データの混入や誤出力を防止することが重要です。また、ツールは最小権限で運用し、設定変更や削除は人の手で承認するなどの設計が効果的です。加えて、レート制限・同時実行数・費用上限などのレート/コスト制御を設け、システムの暴走や想定外のコスト発生を防ぐことも、安定した運用のために重要です。
ブラックボックス化の防止
AIが生成したものが必ずしも正しいとは限りません。AIだけに任せると、過程を追えず「なぜその結論になったのか」「情報をどこから持ってきたのか」が誰も分からないリスクがあります。これを避けるには、生成物ごとに目的・採用理由・出所(参照した仕様やURL、社内資料など)が、どこに何があるのか追える仕組みが重要です。併せて、使用したプロンプトの要約、前提条件、モデル/ツールのバージョンなどを残しておくことで、アクシデントがあっても説明可能性と再現性を確保できます。
プロセスの標準化
人によってプロンプトの書き方に差があると出来上がるプログラムの品質もばらつきます。だからこそ、共通のテンプレートやゴールラインを決めておくことが重要です。テンプレートを作ることにより、人の技量に左右されず一定の水準の指示ができる状態になります。ゴールラインは自動テスト合格・静的解析/依存脆弱性チェックの通過・ライセンス確認・根拠と出所の記録を明確にし、人は「テンプレートに沿っているか」「ゴールラインを満たしているか」を必ず確認することが重要です。これにより、個人のAIの知識に依存せず、安定した品質を出すことができます。
人とAIの共創が、開発の未来をつくる
バイブコーディングは、人間の仕事を奪う技術ではなく、人の創造性を拡張するための仕組みです。AIが実装を支え、人が意図と品質をコントロールする。この分業によって、開発チームはリソース不足やスピードの課題を乗り越え、より大きな価値創出へと向かうことでしょう。ソフトバンクは、DX推進や生成AIの導入・内製化を支援しています。ぜひご相談ください。
本記事の監修者である、ソフトバンク株式会社 IT統括 AIテクノロジー本部の中村亮太(なかむー)さんは YouTubeで最新AIの動向や活用法などについても解説しているので、これらの動画もぜひご参考ください。
AIによる記事まとめ
この記事は、人とAIが対話しながら開発を進める新しい手法「バイブコーディング」について解説しています。AIがコード生成を担い、人が設計や判断を担当することで開発スピードと品質を両立します。導入メリットやリスク対策も紹介しています。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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