成層圏向けモーターが切り拓く未知の技術領域

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未開の空間に立ち向かう先駆者

ソフトバンクは、成層圏通信プラットフォーム 「HAPS(High Altitude Platform Station)」の早期実現に向けて機体の研究・開発に取り組んでいます。
(参考:HAPSの早期実現に向けた取り組み

HAPSはソーラーパネルで発電した電力をモーターで推進エネルギーに変換して、長時間飛行し続けます。ところが成層圏環境に適合しHAPSが求める性能を有するモーターはどこにも存在していなかったため、ソフトバンクのモーター開発の挑戦が始まりました。

成層圏への挑戦

長期間にわたり成層圏を飛行し続けるHAPSにとって一番厳しい条件は、北半球では冬至です。昼間の弱く短い日照で発電し、その電力をバッテリーに蓄え、その蓄えた電力だけで1年で一番長い夜を明かします。その昼夜の間、モーターは絶えず回転し続けるため、モーターにとって一番重要な要件は、少しの電力も無駄なく推進力に変換できる高い効率性を持つことです。

HAPSが運行する高度20km付近の成層圏の環境は、一般的に温度はマイナス55℃以下、気圧はおよそ70hPaであることが知られています。

モーターは回転とともに発熱するため低温の成層圏は有利な環境にも思えますが、我々の研究ではマイナス85℃になるケースも判明しており、大きな熱変化に耐える信頼性が必要です。

一方、HAPSにおいては、機体を極限まで軽量化するために空気の流れでモーターを冷却する必要がありますが、成層圏の気圧では空気の流量が少なく効率的に冷却するための工夫も必要です。

マイナス85℃以下の極低温を記録した地点(Loon社による191万時間に及ぶ飛行ログより)

革新的なモーター技術がもたらす未来の可能性

成層圏という過酷な環境での実用が可能で、長時間の連続運転ができ、軽量で高効率な世界一の性能を目指したモーターが完成すると、HAPSにより通信ネットワークが整っていない地域や災害時にもインターネット接続環境を構築できます。また、世界の電力消費量の約半分はモーターの電力に使われているといわれ、今後このモーターにより開発される技術の波及により持続可能な社会への貢献も可能です。

研究開発の進捗

この度、ソフトバンクの先端技術研究所とニデックの製品技術研究所が共同で、成層圏通信プラットフォーム向け軽量・高効率・高信頼性のアキシャルフラックス型のモーターを開発いたしました。(プレスリリース)

このアキシャルフラックス型モーターでは小型軽量・高トルクを実現するとともに、磁石の最適な配置によって磁界強度を最大化させることで軽量、高効率を実現しております。また、モーターの信頼性を向上させるために磁石をローターに密閉する特殊な設計を施すとともに、成層圏の低気圧環境においても安定した性能を実現するためにモーターに高い放熱性をもたせました。

アキシャルフラックス型モーター(ニデック株式会社提供)

今回開発したモーター

今後も成層圏環境の調査・解明とともに、数ヶ月に渡る長期間の飛行を可能にする信頼性確保や航空機向けの認証への対応など、HAPSの早期実現に向けた技術開発を行っていきます。

Research Areas
研究概要