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自動運転社会における遠隔監視の未来

#自動運転

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自動運転サービスの早期社会実装を目指して

ソフトバンクでは、自動運転技術の社会実装に向けた研究・開発の一環で、自動運転運用プラットフォームを構築しています。(参考:「自動運転運用プラットフォーム」を活用した自動運転社会の実現に向けた取り組み
自動運転の実用化には、ドライバー不足の解消や交通事故の削減などさまざまな期待が高まる一方で、運用コストの高さが課題として挙げられます。ソフトバンクは、自動運転運用プラットフォームにより、この課題解決を図り、持続性の高い自動運転サービスの早期社会実装を目指しています。

自動運転社会における遠隔監視業務とは

自動運転の運用コストで大きく占めるのが、遠隔での自動運転車両の監視です。自動運転レベル4を提供する際、道路交通法並びに道路運送法および貨物自動車運用事業法において、それぞれ「特定自動運行主任者」および「自動運行従事者(仮)*1」(以下「自動運行監視者」)の配置が求められています。

車両に搭載されたADS(自動運転システム)が、「走る」「曲がる」「止まる」といった車両の走行制御を担うのに対し、自動運行監視者の行う遠隔監視業務では、まず車内外で発生する問題を認識し、それに対する次のアクションを判断する必要があります。

そのため、自動運転社会においては自動運行監視者1人がいかに多くの車両を遠隔地から監視できるかが、自動運転事業成功のキーになってきます。

  • *1法令上の呼称および配置義務については国土交通省内で検討中

ソフトバンクが考える5年後の遠隔監視

ソフトバンクでは、車内外で発生する問題を遠隔から認識するケースとしては、大きく以下の3つのケースがあると考えています。

①最小リスク状態*2に陥った際に、車両側からの通知を受けるケース
②車内で何かしらのトラブルが発生した際に、乗員・乗客、または第三者からの連絡を受けるケース
③車両側だけではトラブルを判断できない際に、別のレイヤーで問題を検知するケース

①、②のケースは、ADSメーカーおよび車内外の周辺の人が問題を通知するのに対して、③のケースは、現在の自動運転システムでは正確に検知できないような複雑な交通環境下における問題を、AI(人工知能)やインフラ協調、デジタルツインなどの技術を活用して検知する方法を指します。車両側とは異なるレイヤーで問題を検知することによって、自動運転社会におけるフェールセーフの仕組みに貢献することができます。

そこで、ソフトバンクではAIを活用してこれらの問題を検知し、自動運行監視者に必要な情報を通知する手法の開発に取り組んでいます。

  • *2自律運転機能を備えた車両が交通状況を適切に判断し、乗員や他の交通参加者に対し可能な限り安全を確保できるよう、可能な限り安全な場所に停止するよう独自制御している状態のこと

遠隔監視AIの開発

遠隔監視AIは、車両から送られてくるテレメトリー情報(緯度経度、速度、加速度等)や映像データ、ADSの認知データなどをAIを活用し分析することによって、車内外で発生する問題をリアルタイムで認識し、自動運行監視者の判断に必要な情報を生成します。

近年、日本各地で行われている複雑な交通環境下の自動運転実証においては、自動運行監視者は映像などのさまざまなデータを目で見て問題を認知していましたが、遠隔監視AIの活用によって常時それらのデータを人が監視する必要はなくなり、自動運行監視者1名でより多くの車両を監視できるようになります。

遠隔監視AIによる車両の監視

自動運行監視者は、この遠隔監視AIによって認識した問題について対応を考える必要がありますが、監視台数が増えれば増えるほど多くの問題に対応しなくてはならないため、本来早急に対応すべき問題が埋もれてしまうなど、サービス上の大きなリスクに繋がりかねません。

ここで必要なのが、自動運行監視者のタスク管理です。

遠隔監視AIによるタスク管理

ソフトバンクでは、上記の課題を解決するために、自動運行監視者のタスク管理を自動化するシステムを開発しました。
タスク管理を効率的に行う上で重要なことは、人が真に対応すべきタスクにシステムで優先度を自動で付与して、自動運行監視者に提示することです。自動運行監視者は提示された優先度に応じて順番に対応していけば、早急に対応すべき問題を見落とすことが無くなります。

自動運転運用プラットフォームによるタスクの優先度提示

自動運転運用プラットフォームを活用した実証実験

この遠隔監視AIなどを搭載した自動運転運用プラットフォームを用いて、2023年6月に竹芝エリア(東京都港区)で自動運転の遠隔監視業務の省人化に向けた実証実験を行いました。
実証実験では、10台の車両のデータを自動運転運用プラットフォームに連携しており、10台の車両のうち2台は実車両、残り8台は竹芝エリアのデジタルツイン環境におけるADSシミュレーターにより走行している車両です。

実証実験における遠隔管理室の様子

車両から送られてくるさまざまなデータを、開発した遠隔監視AIによって分析し、真に人が対応すべき問題に絞ってタスク管理することによって、運行監視者1名で計10台の車両の遠隔監視業務が行えることが分かりました。

遠隔監視AIによる計10台の監視画面

東京海上日動火災保険様との自動運転運用プラットフォームの有効性とスケーラビリティーの評価

また、自動運転運用プラットフォームの有効性とスケーラビリティーを評価するため、東京海上日動火災保険株式会社と共同で検証を行いました。検証では、自動車事故などの緊急通報業務を行っているプロのオペレーターに当該プラットフォームを実運用を想定して利用してもらい、車内外で発生するさまざまな問題に遠隔から的確かつ効率的に対応できるかを評価しました。

検証の結果、自動運転運用プラットフォームを活用することにより、自動運行監視者2名で数百台規模の自動運転車から発生する問題に対応できるとともに、車両が停止している時間を最小限に抑えることによって、サービス上の課題解決に貢献できることが確認されました。



今後、自動運転車の数はさらに増えていき、多様な課題が生まれることが予想されます。ソフトバンクは、持続性の高い自動運転サービスの早期社会実装に向けて、自動運転運用プラットフォームの技術開発を継続していきます。

Research Areas
研究概要