#AI-RAN #AITRAS #AI #RAN #AI-RANアライアンス

| 【解説】AI時代を支える社会インフラ AI-RANとは

AI-RANは、AI(人工知能)とRAN(Radio Access Network, 無線)の技術を相互活用することで新たな価値を創出する技術コンセプトです。 AI-RANについての概要、ソフトバンクが考えるAI-RANの役割と、AI-RANが社会に提供する価値について知りたい方は、まずは本記事をご覧ください。

AI-RAN Concept Movie

1. ソフトバンクの次世代社会インフラ構想とAI-RAN

次世代社会インフラ構想

ソフトバンクは、AIの時代を見据え、日本全国に計算リソースを行き渡らせる次世代社会インフラ構想を推し進めています。 従来は大都市部に巨大なデータセンターを設け、そこにサーバー資源を集中させるのが一般的でしたが、我々の構想では、「Brain DataCenter」と名付けた生成AI基盤や量子コンピュータ、大規模な計算基盤を備えたデータセンターを国内中核拠点に構築し、「Regional Brain」と名付けた計算基盤を全国に分散配置することで、レジリエンスの強化や電力負荷の分散を行いながら、利用用途に応じて最適な場所で処理が行われる構造を作り上げていきます。

次世代社会インフラの構造(分散型AIデータセンター) | 【解説】AI時代を支える社会インフラ AI-RANとは

全国の基地局にエッジAIサーバーを配置

ソフトバンクは、全国に展開する基地局にAI-RANの設備を配置し、革新的なコンピューター基盤を実現します。このコンピューター基盤は、分散型AIデータセンターにおけるRegional Brainを構成する要素の一つです。 これにより、高セキュリティかつ低遅延のAIサービスを提供することが可能となり、ユーザーが日常生活に近い場所でAIを活用できる、スマートな社会の実現に貢献します。

次全国の基地局にエッジAIサーバーを配置 | 【解説】AI時代を支える社会インフラ AI-RANとは

大規模AIデータセンターとの役割分担

また、ソフトバンクは次世代社会インフラ構想の一環として、国内最大規模のAIデータセンター(Brain DataCenter)を配備します。 例えばパラメーター数が膨大な大規模言語モデルの学習などの、AI-RANでは処理しきれないようなタスクに関しては、Brain DataCenterと連携することで、あらゆるAIタスクの処理に対応することができると考えます。

分散型AIデータセンターの構造 | 【解説】AI時代を支える社会インフラ AI-RANとは

日本のITインフラを支える使命を果たすため、AIを活用してモバイルネットワークをさらに進化させるのと同時に、日本国内にAI基盤を広範に構築することで、次世代社会インフラの実現を目指しています。

AI-RANが起こすモバイル革命、AI時代を切り拓く新しいビジネスプラットフォームへの挑戦 | 【AI-RAN特集】

2024.02.26

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AI-RANが起こすモバイル革命、AI時代を切り拓く新しいビジネスプラットフォームへの挑戦

#AI-RAN

2. AI-RANが社会に提供する価値

社会のデジタル化が進むにつれ、テキスト、音声、画像、動画、センサーデータなど、さまざまな形式の情報をAIで統合的に処理する「マルチモーダルAI」の重要性が高まっています。 AI-RANは、このような次世代のAI社会を支えるための革新的なインフラです。 AI-RANが持つ「超低遅延」「高い閉域性」「大容量」という3つの特長について紹介します。

AI-RANが社会に提供する価値 | 【解説】AI時代を支える社会インフラ AI-RANとは

超低遅延:リアルタイムAI処理の実現

従来のクラウドではインターネット経由の処理に数百ミリ秒の往復が生じていましたが、AI-RANは基地局付近でAIを実行することで応答を数十ミリ秒に短縮できます。 例えば自動運転の遠隔サポートでは、ソフトバンクの「交通理解マルチモーダルAI」が日本の交通法規やリスク対処方法を学習しており、自動運転車のカメラ映像を基に道路状況をリアルタイムで分析し、瞬時に判断を下します。 これはAI-RANの超低遅延処理によってこそ実現できる技術です。

高い閉域性:クローズドネットワークによる安全性の確保

AI-RANは通信事業者の閉域ネットワーク内でデータを扱うため、機密性の高いデータの保管場所や処理過程が明確化できるというプライベートクラウド同様のメリットが得られます。 たとえばRAG(※)型チャットボットに企業の内部情報を学習させる際も、データ漏洩リスクを最小化しつつ運用できます。

※RAG:Retrieval Augmented Generation、検索拡張生成。AIがデータベースなどから関連する情報を読み込み、その内容を反映した回答を出力する仕組み

大容量:サイズの大きいデータに対する高速処理も可能

例えば、カメラで取得した8K映像を全てインターネット経由で送信して処理すると、莫大なトラフィックが発生してしまいます。 AI-RANなら基地局近くで大容量データを処理できるため、こうした負荷を抑えながら8K映像や複数カメラの同時解析など高度なリアルタイム処理が実現可能になります。 これにより、都市監視や生産ラインの高度化など、多様なシーンでマルチモーダルAIの実用化が進むと考えられます。 マルチモーダルAIは今後、生活のさまざまな場面で人々を支援することが期待されており、AI-RANによる大容量データの効率的な処理は、その実現を支える不可欠な基盤となります。

3. AI-RANのユースケース例

AI-RANがもたらす超低遅延かつ分散型のAI環境により、従来のクラウド型のAI環境だけでは実現が難しかったサービスの登場が期待されます。 特に、LLM(大規模言語モデル)のロボットへの活用によりロボットが人間のように考え、様々な仕事をこなす未来が見据えられる中、ソフトバンクはこうした世界観を実現する基盤としてAI-RANを活用していきたいと考えています。

AI-RANのユースケース例 | 【解説】AI時代を支える社会インフラ AI-RANとは

産業用ロボットでの活用

工場ラインの効率化だけでなく、ロボットがシームレスなインタラクションを行うためには、膨大なデータを低遅延で処理し、かつやり取りする情報を安全に扱う環境が必要です。 AI-RANならセキュアな閉域ネットワーク上で大規模GPUやLLMを分散的に運用できるため、繊細な企業情報などをロボットとやり取りする際もリスクを抑えられます。 さらに、リアルタイム推論によって人との自然な対話や高度な作業指示にも即応できるため、生産性向上とコスト削減に大きく貢献します。

AI-RANが有効なユースケースの例 | 【解説】AI時代を支える社会インフラ AI-RANとは

AI-RANが有効なユースケースの例

4. モバイルネットワークがAIで進化

もちろん、モバイルネットワークの高度化も、通信キャリアの重要な責務の一つです。 ソフトバンクの最新研究では、AIによりネットワークのスループットやキャパシティーを数十%向上させることができることが明らかになっています。 AIをRANの制御に活用するテーマである「RANのためのAI」については、下記の動画と記事をご覧ください。

AIによるRANの進化 ~ AI for RAN ~ | 【AI-RAN特集】

2024.02.26

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AIによるRANの進化 ~ AI for RAN ~

#AI-RAN

5. AI-RAN アライアンスの形成

AI-RANの社会実装には業界全体の連携が欠かせないため、ソフトバンクは2024年にAI-RANアライアンスを発足させました。 通信事業者、AI企業、産業界、アカデミア・学術/研究機関などが協力し、技術標準化や運用モデルを協議しながら、エコシステムを形成していきます。 このアライアンスの発足は、MWC(Mobile World Congress)バルセロナ2024で大きな話題となりました。 現在、AI-RANアライアンスは、モバイル通信業界はもちろん、各産業界やアカデミアからの参加を広く募集しています。

AI-RAN アライアンスの形成 | 【解説】AI時代を支える社会インフラ AI-RANとは
AI-RANアライアンス:AIと通信のリーディングカンパニーが集結 | 【AI-RAN特集】

2024.02.26

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AI-RANアライアンス:AIと通信のリーディングカンパニーが集結

#AI-RAN

6. ソフトバンクのAI-RAN開発と「AITRAS」の発表

ソフトバンクは、2024年11月に、AI-RANのコンセプトを実現したオリジナルプロダクト「AITRAS(アイトラス)」の開発を発表しました。 「AITRAS」は、大容量、高性能かつ高品質な通信ネットワークをキャリアグレードで提供するだけでなく、AIアプリケーションの提供も可能とするAI-RANの統合ソリューションです。 また、「AITRAS」上で提供されるServerless APIを通じて、ソフトバンク以外のユーザー企業にもクラウドサービスとしてGPUリソースをご利用いただけます。

下記のページでは、2024年11月に発表したソフトバンクのAI-RAN開発に関する最新のプレスリリースの解説と、その説明会の様子について紹介しています。

AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」 | 【解説】AI時代を支える社会インフラ AI-RANとは
AI-RAN開発に関するプレスリリース

2024.11.13

Press Release

AI-RAN開発に関するプレスリリース

#AI-RAN

【12/17 更新・メディア説明会アーカイブ公開】AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」を発表

2024.11.29

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【12/17 更新・メディア説明会アーカイブ公開】AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」を発表

#AI-RAN, #イベント

また、2025年3月には、AI-RANの統合ソリューション「AITRAS」の商用化に向けて新たに得られた重要な成果に関する6件のプレスリリースを行いました。 この発表は、「AITRAS」の大幅な機能強化およびAI-RANインフラの普及実現に向けた技術開発を含みます。 この戦略的イニシアティブには、幅広い戦略の一環として、NVIDIA 、Nokia、Red Hat、Ericsson、富士通などの業界をリードする企業との協業を含む、多数の革新的なアプローチが含まれています。

【3月3日更新】AI-RAN開発に関するプレスリリース

2025.03.03

Press Release

【3月3日更新】AI-RAN開発に関するプレスリリース

#AI-RAN

7. おわりに

AI-RANは、ソフトバンクが次世代社会インフラ構想の要素の一つとして提案する革新的なコンセプトです。 通信とAIの融合による新たな価値を創出し、未来のスマート社会を支える基盤を構築していきます。 ソフトバンクは、これからもパートナー企業や研究機関と協力して、AI-RANの技術開発を続けていきます。

8. 関連資料

◾️ ホワイトペーパー

【ホワイトペーパー公開】AI-RAN:Telecom Infrastructure for the Age of AI

2024.12.27

Media News

【ホワイトペーパー公開】AI-RAN:Telecom Infrastructure for the Age of AI

#AI-RAN

【ホワイトペーパー公開】Telco Al : Landscape, Challenges and Path Forward

2025.02.06 ET

Media News

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#AI-RAN

【ホワイトペーパー公開】Edge Al Workload Routing in Mobile Networks

2025.03.03

Media News

【ホワイトペーパー公開】Edge Al Workload Routing in Mobile Networks

#AI-RAN

◾️ インプレス Smart Grid Newsletter

- Special Interview
Driving the 6G Revolution and Transforming Businesses with the “AI-RAN Alliance”

- Special Interview
“AI-RAN Integrated Solution ‘AITRAS’,Development of the Technology and its Roadmap”

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