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テクノロジーで社会課題を解決したい。インターンシップ「TURE-TECH」への参加からその思いが現実になり始めた。

ソフトバンクが実施している地方創生インターンシップ「TURE-TECH(ツレテク)」。課題を抱える自治体に滞在し、ICTによる課題解決を提案。提案が採択された場合、課題解決に向けて自治体の予算でその提案を実現できることが特徴です。

2016年にTURE-TECHに参加し、現在はソフトバンクでクラウドエンジニアとして活躍している永澤 慶章に、参加までの経緯とその後の就職活動、そして入社後のキャリアについて語ってもらいました。

一命を取り留めた交通事故と、ザンビアから始まったアフリカへの思い

永澤は、北海道大学の法学部に通いながら、2016年に長野県塩尻市で開催されたTURE-TECHに参加しました。その経緯はどのようなものだったのでしょうか。

永澤「少し話はさかのぼりますが、私は高校3年生の秋に交通事故に遭いました。致命傷には至りませんでしたが、当時の事故現場を見ると、一歩間違っていたら大事になっていたのかなと思います。すぐに救急車で運ばれ、治療を受けられたので助かりましたが、落ち着いたころにふと、『なんて自分は恵まれているんだろう。日本のような環境に生まれたから一命を取り留めることができたのではないか』と心の底から自分が生まれ育った環境に感謝しました。その時、この環境が当たり前ではない他の国の状況をこの目で見てみたい、と外の世界に対して興味が芽生えました。

大学1年生のとき、アフリカのザンビアへ訪れるプログラムのチラシを見て、「途上国のリアルに触れてみたい」とすぐに応募を決断しました。現地では、事前のイメージとのギャップをさまざまな面で感じました。一般的には“途上国”の括りで語られるアフリカにはいろいろな課題がありますが、人々が笑い、協力しながら暮らす、ごく普通の姿を見ることができました。滞在期間は1週間程度と短く、もう一度アフリカを訪れたいという思いを抱きました。一方、実際に目にした社会の課題に対しては『自分が大学で学ぶ法律や政治で、これらの課題は解決できるのか』と漠然とした疑問が生じていました」

社会課題を解決するために、法律の道からICTの道へ

法律ではない、社会の課題を解決するための手段。そこで思い浮かんだのがICTだったと永澤は言います。

永澤「ザンビアから帰ってきた後は、国際ボランティアの活動や学生会議への参加を通じて、開発学への理解を深めました。その中で、社会への影響を与える手段としてICTの活用の可能性に気づき、専門家と直接話すためにeLearning Africaという国際会議にも出席しました。スマートフォンを通じて教育格差を無くそうとしている方や、ITインフラを根付かせて貧困問題を解決しようとしている国内外の方々に会い、非常に感銘を受けて、自分もICTの道に進もうと決めました。

そうして自分の中の可能性を模索している最中に、TURE-TECHの『ICTを活用して社会課題を解決する』というキーワードが目に留まりました。私は北海道の釧路で生まれて札幌で育ち、北海道が大好きなのですが、過疎化をはじめとした地域の抱える課題を身近に感じていたので、『地方創生』というキーワードが常に自分の中にありました」

TURE-TECHで提案した取り組みは、社会へ実装されて、4年半が経った今でも継続中。

2016年に第1回のTURE-TECHに参加した永澤。フィールドは長野県塩尻市。「観光業におけるインバウンド需要を増やす」というテーマに全力で取り組みました。具体的にどのような活動を通じて、どのような気付きを得られたのでしょうか。

永澤「北海道の観光政策にも高い関心を持っていたので、自分に合ったテーマだ!と当時は思ったのですが、非常に苦戦しました。奈良井宿という宿場に注目し、現地でヒアリングを進めたのですが、納得できる解決策はなかなか浮かびませんでした。

自治体に対する最終プレゼンテーションの前日になっても、チームの意見はまとまらない状況。粘り強くチームメンバーやメンターのソフトバンク社員と協力して議論を重ねる中で、ようやく根本的な課題が見えてきました。それは、観光客の実態が把握できていないこと。つまり、どこの国からどのくらいの観光客が来ていて、どのような目的で滞在をしているのか、そもそものデータが正確に取れていないことに気付きました。実態が曖昧な中でいくら考えても、自信の持てる解決策は導き出せなかったのです」

では、「実態が曖昧」「データが正確に取れていない」という課題に対して、永澤はどのような解決策を塩尻市に対して提案したのでしょうか。

永澤「これまで、観光客のデータは基本的にホテルや民宿の方々が記録した台帳に蓄積されていました。観光客の中には、宿泊しない短期滞在の方もいらっしゃると思い、塩尻観光の目玉である奈良井宿の駅で何らかのデータが取れないかと思案しました。

そして、その手段としてPepperを設置することを提案しました。観光客が珍しがって話しかけた際に、『どこから来たのですか?』『どこに行きたいですか?』と質問。最後にはPepperが記念撮影をし、記念写真の入った奈良井宿のオリジナルパンフレットを印刷する仕組みです。質問の答えとして得られたデータを精緻に分析することで、インバウンド需要を高めるための次の策につなげることができると考えました。

塩尻市長および自治体の担当者には、データの重要性に着目したことを評価いただき、プロジェクトとして採択されました。そこから1年以上をかけてシステムの実装を行い、無事に奈良井宿にPepperが設置されました。提案から4年半が経った今では、取得したデータを分析・活用するフェーズに入っています。あのインターンで生まれたプロジェクトが今でも続いているのは感慨深いです」


江戸の情緒漂う宿場町にPepper登場! 大学生発案の地方創生アイデアがかたちになりました
RESULT vol.01 「活用できるデータがない」という本質を提起した事が、価値。
RESULT vol.02 「データ」という揺るぎない事実が、奈良井宿の未来を変える。

メンターであるソフトバンク社員の本気度と、 テクノロジーの影響力を実感したことが入社の決め手になった

TURE-TECHを通して、永澤はソフトバンクに対してどのような印象を持ったのでしょうか。

提案と実装フェーズの双方において、ソフトバンク社員のパッションに直接触れることができたことが印象に残っています。『机上の空論で終わらせない。この地域に住む人をより幸せにしたい』という思いが全面に伝わってきました。一つひとつのフィードバックが鬼気迫るものだったので、私たち学生も、単なるインターン参加者ではなく、塩尻の方々と同じ目線に立って課題解決に取り組む姿勢が自然とできあがっていきました。強い情熱を持っているのに加えて、テクニカルなスキルも高い。ここで働けば社会の課題を解決できる、と確信して入社を決断しました」

永澤はTURE-TECHへ参加後に、南アフリカのNGO・NPOに約1年にわたって参画しました。そこで改めてテクノロジーによる社会課題の解決を目の当たりにしました。

永澤「アフリカ滞在中にいくつかの国を周遊したのですが、現地の起業家と交流をする中で、ICTの活用が社会課題の解決の前提となっていることを実感しました。中にはソフトバンクを知っている方もいて、そこでソフトバンクがアフリカの企業にも投資をしていることを知りました。現地でお会いした方々は、ビジョンと熱意の塊のような人たちで、『事業を加速させるための投資』という関わり方もあることを学びました。『情報革命で人々を幸せに』という経営理念は世界基準で普遍的だと感じましたし、ソフトバンクがそのためのテクノロジーや資本を持つ会社であることを、アフリカの地で再確認しました」

経験だけでなく熱意や伸びしろを信じてくれる。 サンフランシスコのGoogleのカンファレンスにも参加

2018年4月、永澤はエンジニア職としてソフトバンクに入社しました。法学部卒業で、大学でICTを専門として学んできたわけではない永澤は、なぜエンジニア職を希望したのでしょうか。そして、技術のキャッチアップはどのように行ったのでしょうか。

永澤「社会課題の解決手段としてICT活用の可能性に気づく前、そもそも純粋な趣味として電子工作やプログラミングをかじっていました。物心がつく前から手を動かして何かを作ることが好きで、自分の頭で描いたものが形になるプロセスが楽しかった。

職種を選ぶ際は、テクノロジーで課題を解決するなら、自らが主体者になりたいという思いがありました。熱意を認めていただき、クラウドエンジニアとしてスタートを切ったのですが、当時は仮想マシンを一度立てたことがあるくらいで、技術についてはほとんどゼロから必死にキャッチアップしました。

資格の取得などにも挑戦し、努力を認めていただけたおかげか、Google主催のサンフランシスコでのカンファレンスに参加させていただく機会をもらえました。世界中から集まったエンジニアと話をしたり、南アフリカ時代の知り合いに会うためにスタンフォード大学も訪問し、大いに刺激を受けました。

この会社は本気で『やりたい』と言えばその心意気を信じて任せてくれますし、フォローも手厚いと感じます。『挑戦』を奨励する文化が根付いているので、多少スキルが足りないとしても、伸びしろを見てくれる。高い目標に向かって、全員で走りきるというTURE-TECHで感じた社風が、会社全体に根づいています」

AIとクラウド技術を活用して、 工場の生産性や経営管理を変革する

入社1年目では、他社のクラウドサービスと連携した企画・開発をする部門に配属されました。そして、2~3年目には、顧客の経営課題をクラウドとAI技術で解決するミッションを持つ部門で活動しています。

永澤「お客さまに育てていただいたという意味で、この2年間で印象に残っているプロジェクトが2つあります。1つ目は、食品メーカーに対して、AIで需要予測を行うシステムを提案したもの。機械学習で食品の日ごとの需要予測を行い、工場に対してフィードバックをする。そのデータを生かして、生産量を最適化するシステムの提案・検証をしました。

2つ目は、独立行政法人への財務情報可視化ツールの導入で、さまざまなデータをクラウド上で集約し、素早く可視化を可能にすることで、現場の負担を軽減しながら、迅速な経営判断に役立てるもの。データの重要性がますます叫ばれる昨今だからこそ、クラウドの強みを生かした重要なシステムです。

いずれのプロジェクトも、自分一人のスキルで形にしたものではなく、多くの方々に協力いただいています。クラウドとAIの活用には、必ず成功するセオリーは無く、成功と呼べるまでには何度も試行錯誤が必要です。壁に突き当たった時には、チームメンバーによく相談をしていました。また、リモートワーク環境になってからも丁寧なフォローだけでなく、今後のキャリアやスキルアップについてもこれまで以上に多くの方からアドバイスをいただき、この環境にはとても感謝しています」

東京大学とのAI研究事業へ。 日本の知で、世界の社会課題を解決するために

そして、永澤は2021年4月に入社4年目を迎えます。そこからはまた違ったキャリアを歩んでいくことを決めたと言います。

永澤「社内にはジョブポスティング制度という、異動を自己申告できる制度があります。その制度を活用し、ソフトバンクグループと東京大学が共同で設立した『Beyond AI 推進機構』に、4月から参画することになりました。日本のAI研究の成果を、ビジネスへつなぎ、世界に広げていく。その戦略に携わることができるポジションです。まさに、ICTで社会課題を解決する、その最先端を走ることができる仕事だと思っています。現場で培ったエンジニアリングのスキルに加えて、大学の法学部で学んだ契約や知財関連の知識も再度磨きながら、世界の未来に貢献したいなと、ワクワクしています」

最後に、TURE-TECH参加者へのメッセージを語ってくれました。

「ソフトバンクは、一人ひとりの個性を大切にし、投資をしてくれる会社です。世の中をこう変えたいという思いがあれば、その実現を最大限にサポートしてくれる。年次に関係なく、日々の業務の中で機会を掴みにいけますし、自分のように大きなキャリアチェンジにも挑戦させてくれます。加えて、テクノロジーや資本、人材、組織などのアセットも豊富に持っているので、これからますますグローバルでの社会変革に携わることのできる環境かと思います。自分の中に『芯』を持った人には、素晴らしいビジネスの舞台だと、自分は心から感じています。その『芯』を伝えることを躊躇せず、ぜひいろいろな社員と話してみてください」

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