
キャリアNOW
公共交通のスマート化で、社会をアップデートしたい
「自動運転」のテクノロジーを活用し、社会課題の解決を目指す――。
そんな壮大な挑戦に臨んでいるのが、ソフトバンクのグループ会社のBOLDLY株式会社(以降BOLDLY)です。
同社でCTOを務める須山温人が、事業ビジョンや醍醐味について語ります。
<プロフィール>
2008年4月、ヤフー株式会社に新卒入社。Webエンジニアとして広告システム開発や、コミュニティーアプリ開発に従事する。その後、ソフトバンクのグループ内で自動運転技術を使ったビジネスモデルを構想し、2016年4月、SBドライブ株式会社(現BOLDLY株式会社)の設立に参画し、同社CTOに就任。2021年4月にはヤフー株式会社からソフトバンク株式会社に転籍し、2022年8月からはMONET Technologies株式会社 自動運転戦略室の業務も兼任している。
「自動運転」の市場そのものを創り出す

BOLDLYは、“UPDATE MOBILITY”という理念を掲げ、「自動運転バス」を中心としたスマートモビリティーサービスの事業に取り組んでいます。
始まりは2013年頃、自動運転に求められる技術要素が確立され始めたのがきっかけでした。クルマとインターネットがつながり、夢の技術が実現すれば、移動にまつわるあらゆる課題を解消できるはず。これは絶対にやるべきだ――。そんなビジョンと可能性に魅せられた仲間が集まって夢中で事業プランを練り、ソフトバンク内のビジネスアイデアコンテストを経て、2016年にわずか3人で立ち上げたのがこの会社です。
現在では30人規模の組織に成長していますが、ご存知の通り、まだまだ自動運転車の市場はできあがっていません。そこで事業の柱として「Dispatcher(ディスパッチャー)」という自動運転車両運行管理プラットフォームの企画・開発・運用に注力しながら、同時並行で「マーケットそのものを創出する」こともビジネスにしています。
具体的には、まず「自動運転を実用化したい」とお考えの自治体や交通事業者などからのご相談を基に、実用化への第一歩となる実証実験を提案します。そして、導入支援として自動運転車両から、運行管理システム、運行ルートやダイヤの設計、各種申請手続き、現地でのセットアップまで、ワンストップで提供していくのです。
現在は、茨城県境町や羽田空港に隣接する商業施設「HANEDA INNOVATION CITY」など4カ所の地域・施設で自動運転バスを定常運行しており、「実用化フェーズ」に入っていると言えます。少しずつ、けれど着実に、社会実装を進めている段階です。
自動運転車両は、あくまでパーツの一つ

クルマやバスなどのモビリティは人々の暮らしに欠かせない移動手段であり、物流インフラを支える重要な存在でもあります。その一方でドライバー不足は進み、地方では生活の足に困る高齢者が増え続けています。
こうした深刻化する社会課題に対して、多くの自治体や交通事業者が強い危機感を感じています。しかし、「何とかしようにも解決の糸口すら見えない」といった声が少なくありません。だからこそBOLDLYは、この課題を解決する手段の一つとして、“UPDATE MOBILITY”の実現に全力を注いでいるのです。
ただし、モビリティと言っても「車両」はあくまでパーツのひとつ。私たちが目指すのは、これからの時代と社会に求められる総合的なモビリティサービスの開発と提供です。車両が自動運転できるだけでなく、乗客の方々が安全・安心・便利に利用できる環境づくりも欠かせません。
そこで「Dispatcher」にはAI・画像認証・センシングなど幅広い技術を活用して、遠隔地からの操作による走行指示や状態監視、車内の安全管理や異常検知、緊急対応、毎日の車両点検など、あらゆる機能を搭載しています。また乗車人数を自動カウントする顔認証システムや、LINEアプリを活用したオンデマンド予約システムなど、乗客向けのサービス開発も進んでいます。
クラウド上でシステムを作るだけでなく、それがリアルの世界と連動して多くの方に役立つ。この醍醐味は、他には代えがたいものがありますね。
強みは、先駆者として磨いてきた実績と技術

2020年11月に茨城県境町で、当時自治体として初めて自動運転バスの定常運行を実現した他、BOLDLYはこれまでに全国各地で129回の自動運転バスの実証実験を行い、総乗車人数は8万1,000人を超えています(※2022年11月時点)。
市場もまだない中で、先陣を切って積み上げてきた実績と経験値、そこから得たノウハウは、私たちの一番の強みだと思っています。そして大半のシステムを初期段階から内製し、実証実験のたびに実地で課題を洗い出し、ブラッシュアップを重ねて磨き込んできた「Dispatcher」という資産も、私たちだけの財産です。
加えてソフトバンクというバックボーンの存在も大きいです。車両の位置情報をリアルタイムに把握できるソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」と連携したり、通信環境などの電波調査をスムーズに行えたり、AI開発部門と情報交換をしたりと、システムの開発とサービス運用の両面で役立っています。
最近ではソフトバンクとトヨタなどの共同出資会社「MONET Technologies株式会社(モネテクノロジーズ)」など、モビリティ関連のグループ企業とも密に連携し、先進的な技術やノウハウを共有し合うこともしばしば。Win-Winの関係を築き、協力し合って新しい領域の開拓を進めています。
自分たちで内製し、“想い”を込めたい
私自身もそうですが、BOLDLYの開発チームには「企画や要件整理など上流工程だけでは物足りない」というメンバーが集まっています。
例えば実装を外注してしまうと、システムに作り手の“想い”を込められない感覚があります。ですから、私たちは企画・設計から、実装や現場での検証、運用まで自ら手を動かしてモノづくりを楽しんでいます。
それに、ちょうど今日も社員が一人、実証実験中の地域に足を運んでシステムの検証を行っていますが、フットワークの軽さや自由度の高さも特長の一つです。社員全員がシステム開発の当事者として意見を出し合い、得意分野で「これは!」という新技術を見つければ、積極的に試してみる。そんな自走型の風土が育まれています。
また、一人一人が「つくる」に注力できるよう、ルーティンの作業はなるべく自動化できるよう心がけています。実際、テストやサービスのリリース、セキュリティーチェック、運用の監視などさまざまな工程を自動化・省コスト化してきました。今後も一人一人がこだわりを持ってモノづくりに集中できる体制を築いていきたいと思っています。
エンジニアが熱くなれる仕事を

私たちが目指しているのは、「移動に困る人がいない世界をつくる」ことです。ゴールはまだまだずっと先にあり、今後も新しいチャレンジが続々と続いていきます。
2023年度には法改正に合わせて、無人運転が可能となる「自動運転レベル4」の実用化や、通信による信号機と自動運転バスの連携に取り組む計画ですし、自治体と連携してドローン配送サービスの開発・運用も推し進めていきます。
こうした私たちの取り組みは全て、お客さまや地域の方々と密接に関わるものばかりです。そのため、システムやサービスを実際に使う人たちを身近に感じながら技術を追求していきたい方や、現場が好きな方はBOLDLYにマッチすると思います。
それにIoTやAIなど最新技術を使って、自分の考えをスピーディーに形にしたい方も向いていますね。「自動運転レベル4」の実用化に関しても、実現の仕方はいろいろあるはず。ですから、ぜひもっとも最適な方法を考え抜いてほしい。そして、その一番いい形が「Dispatcher」に結実すれば最高です。
また、技術的に難しい領域にも積極的に挑戦して、「BOLDLYと言えばこの技術」と言われるような他を寄せ付けない独創的な技術を確立していきたいですね。こうした取り組みも必ず“UPDATE MOBILITY”の実現につながりますし、エンジニアが熱くなれるような仕事となるはずです。これから入社してくる仲間には、ぜひそうしたチャレンジを楽しんでもらえたらと思っています。