SDGs(エスディージーズ)は、持続可能な世界を目指すために掲げられた国際目標で、貧困や環境問題、経済成長格差の解決など多数の項目が盛り込まれています。国連加盟193ヵ国がそれぞれの国の実情や法律に合わせた指針を策定し、2016年から2030年の15年間でSDGsの達成を目指しています。
日本では2016年に「SDGs実施指針」を策定。2017年にはSDGs推進のための施策を取りまとめた「SDGsアクションプラン」を発表し、毎年改定をしながら、政府と地方自治体が連携してさまざまな取り組みを進めています。今回は、SDGsの概要をはじめ、日本におけるSDGsへの取り組み方、最新テクノロジーとの関係を見ていきましょう。
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の省略形で、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標です。2000年に国連ミレニアム・サミットに参加した189ヵ国によって採択された「国連ミレニアム宣言」を基に2001年に策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」。その後継として、SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されました。17の大きなゴール(目標)と、それらを達成するための169のターゲット(具体目標)で構成されていて、「地球上の誰一人取り残さないこと」をコンセプトとして掲げています。
次に、SDGsの17のゴール(目標)を紹介します。
「持続可能な開発」とは、現代の世代と将来の世代、両方のニーズを満たす開発を指します。この概念が生まれる発端となったのが、1972年にローマクラブ(国際研究機関)が発表した「成長の限界」という報告書でした。同報告書は、「このまま人口増加と環境汚染が続けば、100年以内に地球上の成長が限界に達する」と警告。報告書を取りまとめたデニス・メドウズらは、その後も著書を通して、人口と経済の拡大を抑制して持続可能な社会へと舵を切ることを提言しています。
その後、世界中で持続可能な社会の形成や持続可能な開発をテーマにした議論が活発に行われるようになりました。2001年には、それまでに国際会議で採択された開発に関する国際的な目標を、国連が「ミレニアム開発目標(MDGs)」として取りまとめます。
2015年までを期限に採択されたMDGsの取り組みは、成果をあげてきましたが、なかには達成できなかった目標もありました。また、2001年のMDGs採択から2015年のSDGs採択までの間に世界ではグローバル化が進み、貧富の二極化、特定の民族やジェンダー、難民への差別といった問題が深刻化し、地球温暖化はますます加速しました。MDGsで達成できなかった課題に加えて、新たに顕在化してきたさまざまな課題を解決するため、SDGsには、前例のないほど多数の目標が盛り込まれたのです。
世界のSDGsの達成状況をまとめた国連の「SDGs報告2019」によると、極度の貧困の大幅な減少、乳幼児の死亡率の低下、予防接種の普及など、複数の重要な分野で進展が見られるといいます。一方で、気候変動、海面上昇、海洋酸性化といった自然環境の悪化には歯止めがかかっておらず、緊急の対策を要すると指摘しています。
SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が発表した「2020年度SDGs達成ランキング」でトップ5を占めたのは、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ。下位はアフリカ諸国が多くなっています。といってもトップ5の国々のなかにも、全目標を達成した国はありません。引き続きすべての国に、目標達成への努力が求められています。
なお、日本は166カ国中17位です。一見すると高順位ではあるものの、ほとんどの目標が未達成で、多くの課題を抱えています。2016年に政府が策定した「SDGs実施指針」(2019年に改定)は、次の8項目を日本の優先課題としています。
上記の「SDGs実施指針」で掲げた8つの優先課題を解決するために策定されたのが、「SDGsアクションプラン」です。その最新版である「SDGsアクションプラン2020」では、次の3つが日本のSDGs施策における3本柱として掲げられています。
ビジネスと科学技術イノベーションに関する方針です。ビジネス分野では、SDGs経営の推進やESG投資(環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視した投資)をあと押しすること、中小企業のSDGsへの取り組み強化のための関係団体・地域・金融機関との連携を強化することなどのプランが示されています。
科学技術イノベーションに関する施策としては、バイオエコノミーの推進、スマート農林水産業の推進、「Society5.0」を支えるICT分野の研究開発、AI、ビッグデータの活用といった内容が盛り込まれています。なお、「Society5.0」とは、日本政府が提唱した、わが国が目指すべき未来の社会像です(詳しくは後述)。
人口減少と高齢化が進むなかで課題になっている、地域の活性化や持続可能なまちづくりに関する方針です。
地方創生の分野では、SDGs未来都市(SDGs達成に積極的に取り組んでいる都市を選定する制度)を通じた民間参画の促進や、地方創生SDGs国際フォーラムを通じた普及展開などが掲げられています。
まちづくりに関しては、防災・減災、国土強靭化の推進、エネルギーインフラ強化やグリーンインフラの推進が掲げられています。グリーンインフラとは、自然の仕組みを活用して、持続可能なまちづくりを推進する取り組みを指します。
さらに、循環共生型社会を構築するためのプランとして、東京五輪に向けた持続可能性の配慮、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向けたプラスチックごみ対策の推進なども加えられています。「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」とは、G20大阪サミットで各国に共有された、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにするという目標のことです。
持続可能で強靭なまちづくりが重視されている背景には、2019年に日本列島で台風被害が相次いだことがあります。こうした災害を招く気候変動の原因には地球温暖化が関係していると考えられていて、SDGsでも具体的な気候変動対策が求められています。
若い世代や女性の支援に関する方針です。日本は、ジェンダーギャップ指数(世界経済フォーラムが発表している男女格差を測る指数)が世界各国と比べても低く、ジェンダー平等と女性の地位向上が大きな課題となっています。
具体的なプランとしては、働き方改革の着実な実施、あらゆる分野における女性の活躍、ダイバーシティ・バリアフリーの推進などが挙げられています。さらに、東京五輪を通じたスポーツSDGsの推進、新学習指導要領を踏まえた持続可能な開発のための教育(ESD)の推進、東京栄養サミット2020の開催、食育の推進といった教育分野の取り組みも盛り込まれています。
前述の科学技術イノベーションに関する施策として盛り込まれている、デジタルテクノロジーをはじめ、バイオテクノロジー、再生可能エネルギーの活用といった最先端の科学技術は、SDGsに大いに貢献すると期待されています。
2016年に政府が発表した「第5期科学技術基本計画」では、日本が目指すべき社会の姿として「Society5.0」が提唱されました。Society5.0は、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く新たな社会を指します。
情報社会(Society4.0)には、「知識・情報が共有されず、分野を超えた連携がしにくい」「人の能力に限界があるために、あふれる情報から必要な情報を見つける作業が難しい」、「年齢や障害によっては労働や行動範囲に制約がある」「少子高齢化や地域の過疎化に伴って生じる問題に十分に対応できない」といった課題がありました。
Society5.0では、IoT、AI、ビッグデータ、ロボット、5Gなどの技術によって、これらの課題が解決されると考えられています。例えば、AIの導入が進むと、多くの人が、必要な情報を必要なときに得て、より活用できるようになると予想されます。ロボットや自動走行車などが普及すれば、高齢者や障害のある人ができることや行動範囲が広がり、誰もが活躍できる社会に近づくでしょう。また、IoTや5Gを活用してスマートシティを実現し、エネルギー消費を効率化すれば、環境問題の課題解決にもつながります。
Society5.0は、経済発展と社会的課題の解決を両立する社会であり、Society5.0の実現を目指すことがSDGsの達成につながると言えるのです。
現在、日本国内では、企業や地方自治体がSDGsの達成を目指して多様な取り組みを進めています。ここでは、3つの具体的な企業の取り組み事例を見ていきましょう。
1.茶製品・飲料メーカとして知られる株式会社伊藤園は、茶産地育成事業(新産地事業)、茶殻リサイクルシステム、健康配慮商品、厚生労働省認定の社内検定である伊藤園ティーテイスター社内検定といった取り組みを実施。「茶畑から茶殻まで」の一貫した生産体制を構築し、幅広いSDGsの目標に貢献しています。
参考:https://www.itoen.co.jp/csr/csrpolicy/sdgs/
2.情報関連機器、精密機器のメーカのセイコーエプソン株式会社は、使用済みの紙から新たな紙を生産する乾式オフィス製紙機「PaperLab」を開発。これはSDGsに取り組む多数の企業や自治体に導入されました。同社がテクノロジーによってかなえた“紙の循環”は、環境保全や情報漏えいリスクの低減、多様な人材の活躍につながっています。
参考:https://www.epson.jp/products/paperlab/
3.ソフトバンクグループも、地域社会や企業へのDXソリューション提供を通して、社会課題の解決や産業発展、スマートシティの実現に貢献するほか、再生可能エネルギー活用やICTによる省エネ促進、携帯電話のリサイクル、スマートデバイスの活用によるペーパーレス化の推進など、多岐にわたる環境保全の取り組みを進めています。
参考:https://www.softbank.jp/corp/csr/responsibility/mission/sdgs/
また、日本政府は、企業や自治体などのSDGs推進の動きを促すため、2017年に「ジャパンSDGsアワード」を創設。毎年、優れた取り組みを行っている企業や団体を表彰しています。
事例からは、SDGsを推進している企業が、事業を展開することで自然にSDGsに貢献できるような仕組みを作っていることが分かります。企業がSDGsに取り組む場合には、SDGsの目標を自社の得意分野や事業に落とし込むことが大切だといえるでしょう。
SDGsは、あらゆる分野の企業にとって、常に意識し、達成を目指すべき目標です。いまやSDGsにどう取り組んでいるかが、企業の姿勢を評価する基準となっています。
今、日本経済は大きな打撃を受け、国や企業は今まで以上の大きな変革を迫られています。これから始まろうとしているニューノーマル(新たな日常)を模索する上で、SDGsの目標や「誰一人取り残さない」というコンセプトは重要な指針となるでしょう。自然災害や感染症の流行が、社会全体のSDGs達成への動きを加速するきっかけになるという見方もあります。
持続可能な社会を目指しながらニューノーマルに対応していくためには、デジタル技術が不可欠です。SDGsの達成と自社の発展にどうデジタル技術を活かしていくかが、今後の行く末を左右すると言っても過言ではありません。自社に合ったSDGsへの取り組み方やデジタル技術の活用方法がわからない場合は、SDGsにも積極的に取り組むソフトバンクに相談してみるのもひとつの方法です。
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