ニューノーマル時代におけるコールセンターの役割とは

2021年2月1日掲載

コールセンターを積極的に活用できているかどうか、自社の状況を客観的に把握できているでしょうか。ニューノーマル時代となり、顧客との直接的なコミュニケーションは取りづらくなりました。言い換えれば、顧客に必要とされなければ接点が持てない可能性もあるということです。コールセンターには顧客から多くの声が届きます。顧客からの質問、要求、苦情などには、顧客のニーズを把握するためのヒントが多く含まれています。また、コールセンターから積極的な情報発信をすることで、顧客満足度を高めたり、企業のブランディングに活用したりすることもできるでしょう。本稿では、BtoC・BtoBのそれぞれにおいて、コールセンターの役割や価値、抱える課題や解決策を確認し、今後のコールセンターが担うべき役割を探っていきます。

目次

コールセンターの業務とは

まず、コールセンターの業務には、大きく分けてアウトバウンド業務とインバウンド業務の2種類あります。それぞれの業務内容を確認してみましょう。

アウトバウンド業務とは

自発的、積極的に顧客へアプローチをするコールセンター業務をアウトバウンド業務といいます。

アウトバウンド業務では、製品やサービスを紹介するために、見込み顧客や既存顧客に対して電話をかけます。製品を購入または契約した顧客へのお礼、購入した製品の使い勝手や満足度を確認するための電話の他、新製品・新サービスのご案内、アンケートなどもアウトバウンド業務に含まれます。

アウトバウンド業務は企業側から情報発信する業務のため、積極的な活動であると考えられます。1回の電話発信で成果につながるケースはほとんどありません。顧客と直接電話で話せる回数が、ごくわずかだからです。

電話先の相手が、伝えようとしている製品やサービスに対して興味を持っていない場合のみならず、突然の電話に抵抗感を抱く人も少なくないでしょう。また、最近では固定電話、携帯電話にかかわらず、番号登録した電話にしか出ない、という人もいるので、電話自体がつながらないケースもあります。

アウトバウンド業務で求められるスキルは構成力と対応力

アウトバウンド業務では、マニュアルを事前に用意して、製品やサービスに関する知識を持っておくことやシミュレーションをしておくことが可能なので、次項で確認するインバウンド業務に比べると臨機応変な対応を求められることは少ないでしょう。

1回の電話で製品やサービスについて関心を示してもらい、売り上げに結び付けられる可能性はゼロに近いと考えておく必要があります。段階を踏んで顧客に製品やサービスに対して興味を持ってもらうこと、ニーズを喚起する必要があります。そのため、プロセスを計画的に組み立てられる力が求められます。相手の話の中から問題を探り、解決に対応した商品やサービスを紹介し、必要性を感じてもらえるようにアプローチをしていく対応力や営業力が必要になると考えられます。

インバウンド業務とは

問い合わせや質問といった内容で、見込み顧客あるいはサービス利用中の顧客からかかってくる電話を受けるのがインバウンド業務です。例えば、製品の仕様についてWebサイトやカタログの情報では理解できない、求めている機能が自分の環境で使用可能か、など購入前の質問や類似の他社製品との比較や、製品やサービス内容についての問い合わせがあります。

それに対して回答をし、理解を促すのが基本的な役割です。提供した回答で製品のファンになってもらえたり、顧客対応の良さで企業のファンになってもらえたりする可能性もあります。

また、申し込み手続きの案内や補助、さらに製品やサービスなどに対するクレーム対応もインバウンド業務に含まれます。 受動的な業務であるという印象のインバウンド業務ですが、顧客を定着させる、新たな顧客をつくる、企業の印象を向上させるなど、売り上げに貢献する重要な業務であるとも言えます。

インバウンド業務で求められるスキルは的確な把握力と対応力

インバウンド業務に最も必要なスキルは製品・サービスについての十分な知識です。また、質問やクレーム内容を理解するスキルや対応力も重要です。

特にクレーム対応に関しては、どういった点が顧客にとって問題であり、何を求めているのかを的確に、短時間で理解しなければなりません。例えば、ある製品を購入したが、自分が用意していた環境とはバージョンが合わず、バージョンアップの手続きをしないと使用できない場合、購入した製品を返品したいのか、バージョンの確認を促すための説明が事前に無かったことへのクレームなのかを把握して、それぞれに応じた対応をしなくてはなりません。さらにそのときの対応によって、企業あるいは該当製品に対して好印象を残せるかどうかも、インバウンド業務が担っていると言えるでしょう。

コールセンター業務の中でアウトバウンド、インバウンドの内容の違いを見てきました。また、こうした業務においては、個人を対象とするBtoCと企業を対象とするBtoBとでも業務に差があります。次は、BtoCとBtoBとにおけるコールセンター業務の違いを見ていきましょう。

BtoBのコールセンター業務

企業が個人を対象としてコールセンター業務を行う場合も、上記で紹介したようにインバウンド業務やアウトバウンド業務を実施しています。特に個人への対応であることから、不特定多数への対応をすることになります。また、個人からテクニカルサポートの依頼やクレームなどが寄せられることも考えられます。こうした内容への対応には、電話応対の的確さだけではなく、他部署との連携によって個人が抱えている問題を解決することが求められます。電話による会話だけでは、問題解決の方法や理解を促すための説明が十分ではないケースも多く、資料の送付やメールでの再説明など幅広い業務内容をこなすことになります。

BtoBのコールセンター業務

BtoBのコールセンターでは、インバウンド業務、アウトバウンド業務ともに、相手企業の業務や設備状況などに応じた回答を求められるケースがほとんどです。そのためBtoCでのテクニカルサポートやクレーム対応以上に、専門的な知識や細かな対応が必要になります。

そうした対応を実現するためには、社内他部署の専門スタッフとの連携がより重要になります。また、アウトバウンド業務において、受注を促進するために相手企業に電話をする場合では、相手企業が抱えている課題やそれを解決するための製品やサービスの提案など、購買意欲を高めるアプローチが求められます。こうした業務はそれぞれ個別に相手企業の情報を知ること、適切な解決策を検討することなど、事前準備も詳細なものとなります。

コールセンターの役割と価値

BtoC、BtoBいずれにおいてもコールセンターは企業にとって顧客との重要なタッチポイントです。コールセンターの対応によって、顧客が抱く企業のイメージは大きく左右されることも事実でしょう。つまり、コールセンターは企業の顔でもあると言えます。人が何らかの製品やサービスを利用しようとした場合、それらについて情報を集め、口コミで評判を探り、その製品やサービスが自分の求めているものであるかどうかを確認します。従来は対面・接触が主流であったこうしたプロセスには、非接触が重要視されるニューノーマル時代において、インターネットの検索サイトやSNSなど、さまざまなデジタルチャネルが利用されるようになりました。

一方で、検索サイトやSNSだけでは製品やサービスの内容が理解できない、自分はその製品を利用できるのか、あるいは自分に最適な製品であるのかなど、巷にあふれている一般的な情報では探れないというような、個別の事情に合わせた対応を求める場合は、多くの人がコールセンターを活用します。

つまり、取引先が個人であれ、企業であれ、個別対応を求められるケースはニューノーマルな時代になっても変わりはなく、より複雑な問題を解決するため、また要望を伝えるためにコールセンターを選ぶと言えます。

言い換えれば、顧客は製品やサービスを購入しているだけではなく、「買う」というプロセスにおいての経験や体験も購入していることになります。コールセンターには、より「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験、顧客体験価値)」を重視する必要性が求められているということです。

では、BtoC、BtoBにおけるコールセンターがどのような役割を担っているのか、それぞれについて確認しておきましょう。

BtoCにおけるコールセンターの役割と価値

BtoCにおけるコールセンターの役割と価値を探るに当たり、まず個人の消費行動の変化を見ておきましょう。

インターネットが広く一般的に活用されるまでの個人の消費行動のプロセスは、「AIDA(アイダ)」と「AIDMA(アイドマ)」といったものでした。AIDA(Attention, Interest, Desire, Action)は、個人が製品・サービスをカタログや広告あるいは店頭で認知し、興味を持ったことで欲求が高まり、消費をするというもので、そこに製品・サービスをほしいと欲求を持ってからしばらく記憶にとどめておく(Memory)を加えたものがAIDMAという消費者行動モデルです。

その後、インターネットが普及するにつれ、個人の消費行動には製品・サービスについての情報を「検索すること(Search)」や検索したあとにほかの製品・サービスと「比較する(Comparison)」や「検討する(Examination)」が加わり、購入して使ったあとに「情報を拡散・シェアすること(Share)」が加わりました。

こうした個人の消費行動の変化から考えると、コールセンターの役割にも変化が求められていると言えます。例えば、インターネットが普及していない段階では、個人に製品やサービスの情報を提供したり、使い方や利用方法に関するテクニカルサポートを行ったり、クレームに対して解決を図るべく対応することが役割であったと考えられます。しかし、インターネットを活用して多くの人が情報を検索・比較をし、さらには使用感や自分がどのように活用したかといった体験談を共有するようになると、製品やサービスの購入という行動には、機能性や便利さを購入するということ以外に、利用者が感じること、満足感といった体感が含まれることになりました。

つまり、こうした消費行動に伴う体感を高めていくことも、BtoCにおけるコールセンターが担っている役割や価値であると言えるでしょう。

BtoBにおけるコールセンターの役割と価値

BtoBでのコールセンターの役割を考える前に、BtoBの特徴から確認しておきましょう。

まず、ひとつの製品やサービスを利用するまでの時間を考えてみます。BtoCなら、ある製品やサービスをほしいと思った個人が購入を決断すればよいのですが、BtoBの場合、製品やサービスの有用性に気づき購買・利用しようとするとき、まず利用部署で検討し、上の役職者に希望を提出し、必要関係部署で稟議(りんぎ)にかけ、決定権を有している担当者が承認する必要があります。製品やサービスを購入する際に関わる人が複数で、多層にわたっているので、製品やサービスの利用開始までに時間がかかってしまうのです。また、購入決定の理由は、論理的で合理的なものでなくてはいけません。

購入決定の理由がが論理的で合理的であるということは、製品やサービスの機能や仕様が価格と見合っていること(予算に合致している)、ほかの類似製品・サービスと比較しても適切であると確認できること(品質が求めるもの以上であり、課題解決が可能である)、納期が守られることなどが総合的に判断されるということです。

整理すると、BtoBでの消費行動は「課題解決」を目指す企業が「課題解決のための製品・サービス」を発見し、「価格・内容・納期」などを検証し、社内で「合意」が得られたのちに購買する、ということになるのです。

こうしたプロセスにおいて、コールセンターは多くの役割を果たすことになります。例えば、ある企業の状態を分析して、課題を抱えていると判断した場合、アウトバウンド業務として、顧客にその課題を認知させ、その課題を解決する情報を提供し、その中で自社の製品やサービスについても紹介します。そして、興味を持って検討してもらうために、具体的な課題解決の方法としてその製品やサービスの活用事例、活用結果などについて情報を提供します。

相手企業がその製品やサービスに関して検討・検証をはじめた段階でも、さらに他社製品・サービスとの違いや自社製品・サービスを利用するメリットを伝えることを繰り返し、購入の意思決定が得られるまで丁寧な対応をすることになります。相手企業がその製品やサービスを活用することで、今までの業務が効率化され、業績向上につながることを確信するための提案や情報提供が、コールセンターの大きな役割ともなります。

また、製品やサービスのアフターフォローとして状況の確認や活用方法などのテクニカルサポートをはじめ、新しい製品やバージョンアップについての情報提供を継続することも必要です。

つまり、コールセンターは顧客開発から顧客育成まで担っており、売上向上に大きく関わっていると言えるでしょう。

コールセンターの抱える課題と改善策

BtoBとBtoCのコールセンターに共通して言えることは、企業と顧客をつなぐ窓口となり、製品やサービス、あるいは企業のファンをつくることが期待されているということです。顧客との良好な関係をつくり、維持するためにコールセンターは重要な部署であると考えるべきでしょう。

前項で見てきたように、コールセンターの業務は多様で、きめ細やかな配慮と専門的な知識を要するものです。特にBtoCにおいては、問い合わせへの対応数もかなりの量になるでしょう。またBtoBの場合、相手企業の状況把握や専門的な知識による課題解決策の提案など、さまざまな状況での他部署との連携が、コールセンターの業務を複雑で難しいものにしていると考えられます。コールセンターが抱えている課題を確認し、その改善策を探ってみましょう。

コールセンターが抱える7つの課題

コールセンターが抱えている課題は、企業側の問題点と、顧客が感じる問題点に分けることができます。

企業側の体制的な問題点

1:優れたオペレータが確保しにくい:BtoC、BtoBどちらのビジネスにおいても、コールセンターでは対応力や専門知識、判断力といったスキルを求められます。事前に質問やクレーム内容が通知されているわけではない状態で、迅速に、的確に対応しなければなりません。そうした対応力や判断力の優れた人材の確保はかなり難しいと考えられます。

2:繁閑(はんかん)の差がある:例えば、新製品の発表後や販売開始直後は問い合わせが増えることが考えられます。特に販売開始直後は、購入客からのテクニカルサポート依頼、あるいは思っていたものと違ったといった連絡も多く寄せられるでしょう。一方、新製品やサービスの発表や販売から時間が経ち、多くの情報が開示されるようになると、問い合わせやサポート依頼も減少すると思われます。このように繁閑の差があってもオペレータを確保し続けておく必要がある点が、企業にとってはコスト的な課題になります。

3:他部署との連携が難しい:コールセンターに寄せられるテクニカルサポートや専門的な質問は、コールセンターのオペレータだけでは対応が難しいケースが少なくありません。特にBtoBにおいては、相手企業の状況を踏まえての説明や提案を求められるでしょう。その場合は、対応できる他部署の担当者につなぐ、あるいは後日回答の了承を得るなどの対応をします。つないだ他部署の担当者には顧客の依頼内容を正確に伝え、的確な対応を促す必要があります。こうした業務は非効率であり、伝え間違いや把握不足といったミスも発生しがちです。

4:離職率が高い:株式会社リックテレコムが発行している『コールセンター白書2019』に掲載された統計には、コールセンターのオペレータは3割以上が採用後1年間で離職している状況であることが示されていました。コールセンターのオペレータ業務は集中力や対応力、判断力など、多くの能力を求められます。クレーム対応においては、的確に回答し、製品やサービス、企業のイメージを損なわないような配慮も必要です。業務内容が多様なこともあり、かなりストレスがたまる職種であると考えられます。

顧客視点から見えてくる問題点

1:なかなか電話がつながらない:とくに新製品やサービスが発表された直後や販売開始直後は問い合わせやテクニカルサポート依頼の連絡が多数寄せられると考えられます。常に電話が鳴り続けるような状態になり、顧客に「いつ電話をしてもつながらない」といった不満を抱かせることになります。

2:問題解決までに時間がかかる:専門的な内容に関する問い合わせやテクニカルサポート依頼の場合は、オペレータが直接対応せずに、専門部署の担当者につなぐ対応を行うことがあります。このような場合、電話がつながってから問題解決までに待ち時間が生じ、スムーズな対応を得られないといった印象を顧客に与えることになります。また、後日あらためて回答をするとオペレータが伝えた場合でも、問題解決までに時間がかかるという印象を顧客に与えることになります。

3:問い合わせやクレーム内容を把握してもらえない:顧客の問い合わせ内容をオペレータが理解できず、適切な対応ができなかった場合、顧客を感情的にしてしまい、オペレータの対応を受け入れてもらえなくなることもあります。

課題の改善策

コールセンターが抱えている基本的な7つの課題を前述で説明しました。それらの背景に共通してあるのはコールセンターの業務の複雑さ、オペレータの対応内容の煩雑さであると考えられます。例えば、クレームとしてかかってきた電話であっても、内容をじっくりと聞いて分析すると、テクニカルサポートで対応すれば顧客に納得してもらえるのではないかと判断できる内容もあります。また、テクニカルサポートを希望した顧客であっても、顧客の環境がそもそもサポート対象外というケースもあります。それらをいちからオペレータが対応していては、無駄に時間を要することになります。

これらのことから、コールセンターの抱える課題解決には、以下のような業務の分析と軽減を目的としたシステム導入が必要と考えられます。

問い合わせ内容の振り分け:

まずは、寄せられる内容を事前に分類して振り分けることがひとつの改善策になります。例えば、対話型AIチャットボットを利用して、対人で対応すべき問い合わせ内容なのか、詳細なQ&Aへ誘導した方がスムーズに解決するのかなどを振り分けることで、オペレータの業務負担を軽減できます。また、こうした振り分けを行えば、対人での対応、あるいは専門部署での対応が必要な問い合わせに十分な時間を割くことも可能になり、顧客を待たせることも少なくなると考えられます。

顧客情報との紐づけ:

CTI(Computer Telephony Integration)を活用して、電話とコンピュータネットワークをつなぎ、顧客からの通話内容をデジタル化することで、顧客情報として記録・管理していくことができます。さらに顧客管理システム(CRM)と連携させることによって、顧客からの問い合わせを受けながら、記録された顧客情報を確認できるようになります。そうすることで、詳細な顧客情報のほか、どのような問い合わせ履歴があり、以前の対応はどのように行われたかを把握した上で対応することができます。つまり、顧客に同じ質問を繰り返すことなく、スムーズに問い合わせ内容への対応ができるようになります。 また、顧客との対応がデジタルデータとして残るので、対応したコールセンター以外の部署とも共有することが可能であり、戦略的なマーケティングにも活用できるようになります。

在宅型コールセンターの実現:

コールセンター業務は出社して行うことが一般的でした。顧客情報を活用した対応にしても、定められた場所で業務にあたる方がセキュリティ対策も行いやすくなります。しかし、コールセンターのオペレータ不足や、ニューノーマル時代に対応した働き方を促進して離職率の軽減を図るためにも、在宅型コールセンターの実現は必要でしょう。

そこでポイントになるのが、問い合わせ内容を前述の方法で振り分け、顧客情報を参照せずに対応できる内容を、在宅型コールセンターが扱うようにすることです。また、コールセンターへの連絡は電話が中心になっていますが、チャネルをデジタルシフトし、Webフォームやチャットツールを利用した問い合わせができる環境を構築して、在宅型コールセンターで対応できるようにします。

しかし、在宅型コールセンターを設け、オペレータが自宅で対応できる環境を整えた場合、対応しているオペレータが孤独感を強めたり、ひとりで臨機応変な対応をすることに強いストレスを感じたりといった別の課題を生み出す可能性もあるので、社内コミュニケーション環境や情報共有といった、テレワークに必要なシステムを構築することと同時進行であることが必要です。

コールセンター業務をアウトソーシングする:

優秀なコールセンターオペレータの確保が難しいことへの対応や、繁閑期の存在によるコールセンター維持のコストを見直す方法として、アウトソーシングがあります。ただし、アウトソーシングすると顧客対応をするのは外部のオペレータであるため、自社に顧客との対応ノウハウは蓄積できません。コールセンターに寄せられる顧客からの声は、戦略的なマーケティングの貴重なデータでもあるので、たとえデジタルデータとして保存されるとはいえ、直接対応する機会を失うことになります。 また、外部オペレータに製品やサービス、企業情報を提供することになるので、情報漏えいのリスクは高まります。さらに、情報を提供したとはいえ、専門的な問い合わせについては外部オペレータが対応できる範囲を超えると考えられるため、後日社内担当者が対応することになります。

コールセンター業務の今後

企業や一般社会のデジタル化が進むに伴い、コールセンターは従来の電話対応を中心とした形から、さまざまなチャネルを活用したコンタクトセンターへ転換していくと考えられます。働き方改革の視点からも、コールセンターのオペレータの業務効率化を図り、他部署との連携を強め、戦略的なマーケティング活動の一環としてコールセンターの在り方を検討していかなくてはなりません。前項で紹介したように問い合わせ内容を仕訳し分析していくためのAI活用や、PCとの連携を図るためのCTI、顧客情報の活用やデータ蓄積を進めるためのCRMなどの支援ツールは、これからのコンタクトセンターでは導入が当たり前となるでしょう。

さらに、BtoBにおけるアフターフォローとしてのコールセンターは、カスタマーサポートからカスタマーサクセスへの転換が重要になります。カスタマーサクセスとは、顧客の成功を理解しそれを実現するために、購入した製品やサービスを顧客がどのように活用しているのか、機能を生かし切れていない点やその原因は何なのか、といった状況を把握し、積極的に顧客へ働きかけていくことをいいます。結果的に顧客だけでなく、自社の製品やサービスを継続して利用してもらうことで両者に利益をもたらす活動といえます。

そのためには、部門を超えた連携体制をつくらなくてはならないでしょう。マーケティング部門、インサイドセールス部門、営業部門、そしてカスタマーサクセスを担当する部門が、顧客の情報−製品やサービスの認知から、検討、購入、活用まで−を共有し連携することで、顧客満足度を高めることができます。そして、そうした顧客応対によって、企業イメージや信頼を高め、顧客定着、拡大を実現できると考えられます。

今後のコールセンターは戦略的マーケティングを担う連携組織に再構築することが必要

コールセンターは顧客からの単なる質問やクレームを受け付ける役割のみならず、積極的に顧客のニーズを掘り起こし、マーケティングの一端を担うものでもあります。ニューノーマル時代においては顧客との直接的なやり取りが制限されるため、特にコールセンターの存在意義は大きくなると考えられます。顧客が必要としている情報をタイムリーに提供したり、顧客の疑問や不安に的確に応える窓口として、担うものは大きくなるでしょう。そのためには、業務の効率化を図ることが大きな課題です。自社のコールセンターの位置付けを見直し、顧客満足度を高めるため、さらには潜在顧客を獲得するためにも、デジタル化の充実とともにコールセンターの担うべき業務内容の見直しを進めましょう。そして、カスタマーサポートを業務の基本的な目的としてきた部署から、戦略的にマーケティングを進めるための部署への転換を図ることを目指しましょう。最終的には、売り上げや企業イメージの向上を狙うために、カスタマーサクセスを目的とした連携組織の構築が必要になります。そのための基盤づくりとして、DXへの取り組みは必須です。そして、自社内の状況を把握し、専門企業のアイデアを活用しながら進めることが成功への近道になると考えられます。

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