GNSSとGPSはどう違うのか。高精度衛星測位システムの可能性について

2023年5月11日更新

GNSSとGPSの違い 高精度衛星測位システム(GNSS)の利点、可能性について紹介

スマートフォンの地図アプリやカーナビなどで利用されている衛星測位システムのGPS。一般的によく知られており、私たちの日常生活に溶け込んでいるものですが、設定した目的地から少し外れた場所に案内された経験や、利用場所によっては目的地が特定できなかった経験を持つ人も少なくないようです。その理由は、GPSの精度に限界があるからです。

今後、実用化を目指しているドローンによる配送業務や災害時の状況確認、また自動車や農機の自動運転などにも衛星測位システムが活用されますが、一般的に利用されているGPSの精度だけでは、安全が確保できない可能性もあります。そこで必要なのが、GPSを含めた複数衛星群による衛星測位システム(GNSS)から、より高精度な位置情報を入手することです。

本稿では、今後、利用が進む高精度な衛星測位システムの可能性や、現状で一般的に使われているGPSシステムとの違いについて探っていきます。

誤差数センチメートルの高精度測位が実現。ソフトバンクが提供する衛星測位システムを活用したサービスとは?

目次

GPSとは何か

カーナビやスマートフォンで自分の位置情報を入手したり、目的地までの最適ルートを検索したりするのが日常となった現在、これらの機能にGPSが活用されていることは周知の事実となりました。ですが、GPSという表記は位置情報を得るための仕組みの代名詞ではなく、アメリカが管理運用している衛星測位システムの名称であることを意識する人は少ないでしょう。

ここでは、今後、利用が進む高精度な衛星測位システムと区別するために、あらためてGPSについて確認しておきましょう。

GPSとはアメリカが管理運用している衛星測位システム

GPS(Global Positioning System)は、アメリカが航空機や船舶の位置情報をリアルタイムで正確に把握するために、空軍と海軍が協力して開発を進めてきた衛星測位システムです。1973年に開発が始まり、何度かの測位衛星実験機が打ち上げられたあと、1989年に初の実用機の打ち上げに成功しました。1995年には24機の測位衛星が6本の衛星軌道上に配備され、民生利用への無償開放が開始されました。そのため多くの国で一般的に利用されています。2022年現在、GPS測位衛星は31機が衛星軌道上を周回しています。

GPSシステムによる位置の計算方法

GPSシステムで測位をするために必要なものは、複数の測位衛星(最低3機が必要ですが、実際には4機の衛星を利用しています)と地上で衛星を運用管理する管制局、そして位置を知りたい場所に配置する受信機です。GPSの測位衛星は高度約2万キロメートルの衛星軌道上を周回しています。それぞれの測位衛星から発信される信号の周波数は決まっており、GPS測位衛星は、L1(1575.42MHz)、L2(1227.60MHz)など、5種類の周波数を使っています。

位置の特定は、複数の測位衛星から同時に発信された信号を、地上の受信機で受信することで行います。衛星から発信された信号が受信機に届くまでの時間と、信号の速度から衛星と受信機間の距離を測定し、複数の距離情報を用いて、交点となる受信機の位置を導き出しているのです。

GPSの限界

上記のように、GPSの衛星測位システムが採用している位置の計算方法で正確な位置を把握するためには、複数の衛星がそれぞれ離れた位置で、広い範囲に分布していることが理想的だといえます。しかし現実には、測位衛星からの信号が地上のビル群や高い山などによって遮られ、受信機に届きにくい状況が生まれます。そのため、測位精度が不安定になるのです。

※「RTKとGPSの違いとは?これからの高精度測位サービスについて」も合わせてご覧ください。

GNSSとは何か

GPSに代表される衛星測位システムには、いくつかの国や地域が共同で管理運用しているものがあります。

GPSはアメリカが管理運用している衛星測位システムです。同様の衛星測位システムはロシア、欧州、中国、インド、そして日本などでも開発され、運用されています。中でもアメリカのGPSと、ロシアのGLONASS、欧州委員会のGalileo、中国のBeiDouの4つのシステムはグローバル軌道衛星群(GNSS:Global Navigation Satellite System)と呼ばれ、地球のほぼ全ての場所で位置を測定することができます。

また、GPSで行う測位精度の向上のために収集データの補強・補正することを目的に利用されているSBAS(補強衛星群)として、WAAS(アメリカ)、EGNOS(欧州連合)、MSAS(日本)、GAGAN(インド)の4つがあるほか、特定地域衛星群を使って特定の地域における測位に利用されているQZSS(日本)、IRNSS(インド)のようにRNSS(地域広報衛星システム)と呼ばれるものも存在します。

このように、現在、測位衛星を利用した衛星測位システムはいくつも存在しており、それぞれの測位衛星はGPS衛星と同様に、それぞれが決まった周波数の信号を使っています。

私たちは位置を把握するためのシステムを一般的にGPSと呼んでいますが、実はGPS衛星だけではなく、さまざまな測位衛星が発信する信号を利用した衛星測位が行われているのです。

※高精度の衛星測位システムについては「GNSSとは?高機能で安心・安全な社会環境を支える衛星測位システムを知ろう」を参考ください。

GNSSとGPSの違いは測位精度の差

GPSでの測位精度には限界があることはすでに述べました。GPS衛星から発信される信号だけを受信する受信機を使って位置を特定しようとしても、理想的な位置にGPS衛星がない場合の測位精度は低くなります。

しかし、GNSSのそれぞれの測位衛星から信号を受信できるとしたら、GPS衛星が理想的な位置になくても、ほかの測位衛星を利用できるので、高精度の測位が可能になります。つまり、多くの測位衛星が利用できる環境になれば、高精度な測位が可能になるということです。

そのためには、それぞれの衛星測位システムに採用されている信号の周波数が受信できることや、位置計測に使われている基準を変換して利用できる受信機が必要になります。現在、高精度の測位を必要とする現場では、GNSSに対応した受信機が多く活用されています。

※高精度の衛星測位システムを活用するために必要なものについては、「GNSS受信機の特徴とは?より精度の高い衛星測位システムを活用するために」を参考ください。

GNSSによる高精度な衛星測位の方法とその可能性

高精度の測位を実現するためには、ひとつの衛星測位システムのみを使うよりもGNSSを利用することが効果的であることを確認してきました。さらに、ここでは衛星測位の方法に注目して、高精度な測位方法について見ておきましょう。

複数の国や地域が管理運用しているGNSSにおいて、従来使われてきた測位方法は大きく「単独測位」と「相対測位」の2つに分けられます。

単独測位

1台の受信機を測位したい場所(未知点)に置いて、測位衛星からの位置情報を取得する方法です。この測位方式は一般的に登山やレジャー用に利用されている受信機が利用しているもので、10~20メートルほど(資料によっては10〜50メートルの測位誤差とされる場合もある)の測位誤差があるとされています。

相対測位

相対測位は、2台の受信機を使用します。1台は位置座標が分かっている場所(既知点)に、もう1台は未知点に置いて、同時に同じ衛星から発信される信号を受信します。受信機間で取得データの誤差を調整することで、未知点の位置をより正確に把握するために利用される方法です。測位誤差は1センチメートル~5メートルとされています。

RTK測位(干渉測位)

RTKはReal Time Kinematicの略称で、相対測位のひとつです。既知点と未知点に置いた2つの受信機によって、4つ以上のGNSS衛星からの信号を受信して未知点の位置を特定しています。2ヵ所の受信機間で位置情報のズレをリアルタイムで補正するため、常に高精度の測位を実現します。その測位精度は±2センチメートルといわれています。

RTK測位を活用した高精度衛星測位サービス「ichimill」がビジネスチャンスを広げる

衛星測位の方法によってその精度が異なるため、それぞれ適した分野で使い分けがされています。例えばキッズ向け携帯電話の見守り機能や、高齢者の徘徊(はいかい)見守り機能、スマートフォンの地図アプリのナビゲーションなどには単独測位が利用されています。

しかし、この方法だと測位誤差が大きいため、自動車やバスの自動運転、ドローンの飛行、農機の自走などに活用することはできません。これらを安全に実現するためには、より精度の高い測位情報が必要とされるからです。

RTK測位は、こうした高精度の測位情報が必要な分野で活用されると予想されています。また、現在、複数の企業からRTK測位を用いた高精度衛星測位サービスが提供されています。そのひとつが、ソフトバンクが2019年から提供を開始しているichimill(イチミル)です。

ichimillは「みちびき」をはじめとするGNSS衛星から信号を受信してRTK測位を行っています。また、ソフトバンクが管理運営している全国3,300カ所以上の独自の基準点と、ソフトバンクのモバイルネットワークを通信に活用するため、より高精度な測位が実現できます。

ichimillの活用は、建設現場での測量、建設機械の自動運転のほか、交通インフラにおける監視業務や運送業におけるドローン配達業務など、多様な分野で始まっています。

ichimillの詳しいサービス内容や特徴、活用事例については以下より資料ダウンロードをご利用ください。

高精度な位置情報が産業自動化成功の鍵

産業の自動化において注目されているのが高精度な位置情報です。GNSSとRTK測位を活用し誤差数センチメートルの測位を可能にするサービスichimill(イチミル)について、業界別ユースケースもあわせて詳しくご紹介します。

高精度な衛星測位システムが支えるこれからの社会

多発する災害への備えや高齢化社会への対応を進めるにあたり、安全に安心して暮らせる環境を整えることが重視されています。例えば、すでに実現されつつある自動運転や災害時の無人現地調査などは、これからの社会インフラの維持に欠かすことができない要素でしょう。こうした技術を実現するためには、衛星測位システムの活用が不可欠です。しかも測位誤差を現状よりもさらに小さくできるような、高精度な測位が求められます。

誤差が限りなくゼロに近いような高精度の測位を利用できれば、より安心・安全で利便性に富んだ社会が実現されると想像できます。

こうした社会を可能とするための新しいサービスのひとつが、ソフトバンクが提供する「ichimill」です。

測位やIoTといった最先端のテクノロジーを業務にどう活用するのか、今考えておくことが重要です。

高精度位置測位サービス「ichimill」

ichimill(イチミル)は、準天頂衛星「みちびき」などのGNSSから受信した信号を利用して、RTK測位を行うことで誤差数センチメートルの測位を可能にする位置情報サービスです。

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