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スマートフォンやカーナビに最適なルートを表示する。こうした機能にはGPSで知られる衛星測位システムが利用されています。
衛星測位システムは、ドローンを飛行させて社会インフラの安全点検を行ったり、荷物を自宅まで配送するなどのサービスにも利用されることから、利用目的や測位精度に応じて複数の衛星測位システムが活用されています。
本稿では安心・安全で、利便性に富んだ社会環境を支える衛星測位システムについて理解を深めていきましょう。
▶関連資料:業界別ユースケースで見る高精度測位サービスで実現する産業自動化
一般的に衛星測位システムのことをGPSと呼び、それが代名詞として使われていますが、実は衛星測位システムにはアメリカが管理運用しているGPS以外にも、ロシア、欧州委員会、中国、インド、日本など各国・地域が管理運用しているシステムが複数存在しています。
GNSSとは全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System)の英語表記の略であり、アメリカのGPS、ロシアのGLONASS、欧州委員会のGalileo、中国のBeiDouの4つの衛星システムを指します。
しかし、衛星測位システムを紹介・解説した文章の中で一般的にGNSSと使われている場合は、日本のQZSS、インドのGAGANといった、特定の地域に特化した測位衛星と、さらに衛星測位を補強するための静止衛星を利用した、アメリカのWAAS、欧州委員会のEGNOS、日本のMSAS、インドのGAGANも含めた衛星測位システムを表しています。つまり、一般的にGNSSと表す場合には、これら全ての測位衛星を活用して、地球上のほぼ全ての場所において、より正確な位置情報を得るためのシステムの総称として使われています。
※衛星測位システムの1つであるGPSと各国や地域が管理運用している衛星測位システムの総称であるGNSSとの違いについての詳しい内容については「GNSSとGPSはどう違うのか。高精度衛星測位システムの可能性について」をご参照ください。
衛星測位システムとは、人工衛星を利用して地上の現在位置を計測するためのシステムで、Navigation Satellite Systemを略してNSSとも表示されます。
衛星測位は人工衛星を打ち上げただけでは実現できません。では、どのような仕組みで行われているのでしょうか。
衛星を利用した測位をするためには、「衛星」「地上局」「受信機」の3つが必要です。
衛星を使って位置を計測するには、三角測量という方法を用います。各衛星が信号を発信した時間と、衛星からの信号を受信した時間の差から受信機のある位置が1点に絞られ、現在地が特定できるという仕組みです。
3機の衛星による三角測量は測位における基本的な方法ですが、実際には精度を上げるために4機以上の衛星から信号を受信して測位をしています。
カーナビやスマートフォンの地図アプリケーションを活用して目的地までのルートを検索したり、自分の位置を特定したりするシステムといえば、GPSと答える人がほとんどでしょう。もちろんGPSもそうした位置情報を得るためのシステムですが、GPS以外にも衛星測位システムにはいくつかの種類があります。ここでは種類とそれぞれの概要を見ておきましょう。
全地球航法衛星システムには、アメリカのGPS、ロシアのGLONASS、欧州委員会のGalileo、中国のBeiDou が該当します。グローバル軌道衛星群と呼ばれ、これらの衛星を利用することで、地球上のほぼ全ての場所で現在位置を計測することができます。
特定地域衛星群を利用した測位システムです。日本の衛星測位システムである「みちびき(準天頂衛星システム):QZSS」やインドが開発した衛星測位システムであるIRNSSなどがあります。QZSSはアジア・オセアニア地域を測位対象とし、IRNSSはインド亜大陸を中心とする一定範囲を測位対象としています。
非自立システムであり、補強衛星群を利用して衛星測位の精度を高めるためのシステムです。主に航空機向けの補正信号として利用されるもので、アメリカのWAAS、欧州委員会のEGNOS、日本のMSAS、インドのGAGANなどがあります。
これまで見てきたように、さまざまな軌道上に地球を取り囲むように複数の測位衛星が配置されています。地球を周回している衛星、静止衛星を含め、現在では130機以上が測位のために利用されています。これらの測位衛星を利用してより精度の高い測位を実現することで、正確さを求められる自家用車・バスや農機具の自動運転化の実用化が進みます。
ここでは測位方法の種類とそれぞれの精度について見ていきましょう。
地上の1地点の位置を特定するために、一般的に用いられてきた測位方法です。
単独測位は1台の受信機で4機以上の測位衛星から発信された信号を受信して位置を特定するもので、測定精度は10~20メートル(資料によっては10~50メートルの誤差とされているものもあり)の誤差が生じるとされています。
複数の受信機[位置が分かっている既知点の受信機と測定したい位置(未知点)にある受信機]と4機以上の測位衛星を利用します。それぞれの受信機が観測した情報を用いて、相対的な位置関係を計測することによって、知りたい位置をより正確に計測する方法です。
相対測位にはD-GPS(ディファレンシャル測位)とRTK(干渉測位)があります。
現在、地球を取り囲むように軌道上を周回している測位衛星や複数の静止衛星を利用して、地球上のほぼ全ての位置を測定できるようになっています。このような衛星測位が必要とされる背景には、例えばドローンによる災害時や緊急時の現地状況確認のほか、車両の自動運転のような、かなり高精度な位置情報を必要とする技術の活用ニーズが急増していることがあります。
これまで見てきたように、衛星測位システムは基本的に4機以上の測位衛星から発信される信号を、単独あるいは複数の受信機で受け取り、位置を計測しています。この計測方法では、受信機が受信する衛星の信号が多いほど精度が高められることになります。例えば、受信機が受信できる信号がビル群や山によって遮断されれば、その分だけ計測の精度は落ちますし、位置が確定できない可能性が高まります。
つまり、複数の衛星測位システムを利用できるような環境を整えることで、高精度な測位が実現するということです。世界がGNSSに注目するのは、より安全に、より安心して暮らせる社会を目指すための技術として、より高精度な測位システムが必要とされているからだといえるでしょう。
現在、さまざまな分野ですでにGNSSが利用されています。その事例を見てみましょう。
斜面の各位置にGNSSセンサーを配置して、リアルタイムで観測データを収集。土砂移動や崩壊などを常に監視することで、土砂災害を未然に防ぐことを目指しています。
高齢化が進む農業分野において、農機の自動走行システムの導入は、持続可能な農業を目指すための有用な手段です。そうしたなか、クボタやヤンマーをはじめとする農機具製造企業では、GNSSセンサーを搭載した農機とその農機を管理するタブレットを利用して、農機の自動走行システムを開発しています。
自家用車や決まったルートを運行するバスなど、車両の自動運転の実現にもGNSSが利用されています。車両の位置情報を高精度に取得して、通行ルートを間違いなく走行するようにリアルタイムで管理しています。
カメラや加速度センサー、ジャイロセンサーなどを使って路面状況を把握するための路面検知システムと、GNSSを利用した高精度な位置情報を連動させることで、路面の状態と場所を正確に把握できるようになりました。従来なら技術のある作業員が、定期的に路面状況確認のために巡回する必要がありましたが、このシステムによって人的・時間的コストが大幅に軽減されています。
「ichimill(イチミル)」は、ソフトバンクが提供している高精度測位を実現するサービスです。
日本が管理運用しているみちびき(準天頂衛星)をはじめとするGNSSから受信した信号を利用して、RTK測位を行い、それによって測位誤差数センチメートルの精度で位置を特定します。
「ichimill」の特長は、ソフトバンクが高密度に設置している独自の基準点(既知点)を活用することで、高精度な測位を担保しているため、利用者が基準点を準備しなくてもよいという点です。全国3,300ヵ所以上に基準点が配置されていることで、短時間での安定的な測位が可能となっており、基準点をまたぐような長距離間を移動する場合でも、継続的な高精度測位が可能です。
「ichimill」を活用した事例を3つご紹介します。
従来の衛星測位システムでは十分な精度が見込めなかった分野にも、衛星測位システムの精度が高まることで普及の可能性が広がります。なかでも、災害時のドローン活用、自動運転などは近い将来、身近な技術として活用されることが想像できるでしょう。
こうした安心・安全で、利便性に富んだ社会を目指す動きのなか、さまざまな分野でビジネス拡大のチャンスが生まれています。そのチャンスを確実なものとするためには、専門技術と知識を持った企業との連携が不可欠です。自社の事業内容を高度化、効率化するためにも今、検討してはいかがでしょうか。
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