GNSS受信機の特徴とは? 高精度の衛星測位システムを活用するために

2023年5月11日更新

GNSS受信機の特徴とは? 高精度の衛星測位システムを活用するために

カーナビをはじめ、現在地を把握するためのシステムにGPSが利用されていることは、多くの人が知るところです。そして今後、さらに精度の高い衛星測位システムを活用しドローンによる運搬業務や自動車の自動走行を実現することによって、社会インフラの拡充が期待されています。そのためには、現在使用されている衛星測位システム以上に精度の高い測位が必要です。言い換えれば、現状のままの衛星測位方法では限界があるといえるでしょう。

そうした中、注目されているのがGNSS(各国が管理運用するそれぞれの衛星測位システムの総称)です。アメリカが管理運用しているGPSのみならず、ロシア、欧州、中国、インド、そして日本といった国や地域が管理運用する衛星測位システムを状況に合わせて活用し、高精度な衛星測位を実現する仕組みが求められています。そしてその鍵を握るのがGNSSの受信機です。

本稿では受信機を切り口に高精度な衛星測位システムについて考え、その技術の可能性を見ていきます。

誤差数センチメートルの高精度測位が実現。ソフトバンクが提供する衛星測位システムを活用したサービスとは?

目次

複数の衛星測位システム(GNSS)の概要

現在地を特定するための機能に利用されているGPSは、衛星測位システムの代名詞のようになっています。しかし衛星測位システムには、各国、各地域で管理運用されているものが複数あります。

アメリカが管理運用しているGPS以外にも、地球上のほぼ全ての場所で利用できるシステムとして、ロシアのGLONASS、欧州委員会のGalileo、中国のBeiDou、そして特定地域における測位システムとして、日本の衛星測位システムである「みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)」やインドが開発した衛星測位システムであるIRNSS、さらに衛星測位の精度を高めるためのシステムとして、アメリカのWAAS、欧州のEGNOS、日本のMSAS、インドのGAGANなどが現在稼働しています。これら全てのシステムを総称してGNSSと呼びます。

基本的な測位計算に必要な3つの要素

各国、各地域が管理運用している衛星測位システムを利用して現在地を測位するためには、次の3つが必要です。

  • 衛星

それぞれのシステムが独自に打ち上げている測位衛星。地球の周りの測位衛星は、それぞれの周回軌道上を決まった速度で移動し、それぞれの周波数で信号を発信しています。

なお、測位計算をするには、そうした測位衛星が最低4機必要です。

  •  基地局(地上局)

基地局の役割は衛星の軌道や時刻、状態を監視して、衛星の軌道情報を予測することです。

  • 受信機

測位を行うために、衛星から発信される信号を受信するための端末です。カーナビやスマートフォンの中にも衛星測位システムを利用するための受信機能が搭載されています。

精度を高めるための要素

ビル群の間や山間部などにいるときに位置情報を取得しようとしてスマートフォンの地図アプリを起動させても、うまく位置が特定できなかったという経験はありませんか。これは測位衛星からの信号を、スマートフォンに搭載された受信機能でうまく受信できていないことが原因で起こります。

では、どうすれば測位の精度を高めることができるのでしょうか。

  • 多くの測位衛星から信号を受信できるようにする

正確な測位計算をするためには、常に必要な数以上の測位衛星からの信号を受信する必要があります。測位計算に使える衛星の数を増やすためには、いくつもの衛星測位システムを利用することが考えられます。しかし測位衛星はそれぞれ違った周波数の信号を使っているので、それぞれの周波数に対応した受信機が必要であるということになります。

  • 相対測位を利用する

GNSSにおいて使われている測位方法には、単独測位(1台の受信機を利用)と相対測位(位置が分かっている点(既知点)と測位したい場所である未知点に置いた2台の受信機を使う)があります。

単独測位では測位誤差が10メートル単位で生じますが、相対測位では5メートル以内まで測位誤差が小さくなり、さらに相対測位のなかでもRTK(Real Time Kinematic)を利用すれば、2台の受信機間で位置情報のズレをリアルタイムで補正するため、より精度の高い測位が実現されます。その誤差は5センチ以内だとされています。

こうした要素を満たす方法で衛星測位が実現できれば、高精度な測位は可能になるといえます。そのために重要なのが受信機です。

※GPS/GNSSの仕組みや衛星測位の可能性については次の記事もご参照ください。

GNSSとは何か?高機能で安心・安全な社会環境を支える衛星測位システムを知ろう

GNSSとGPSはどう違うのか。高精度衛星測位システムの可能性について

GNSS時代に求められる受信機とは

上記で見てきたように、測位精度を高めるためには受信機のスペック向上が必要です。受信機が複数の信号に対応するようになれば、複数の衛星システムをマルチに利用できるようになり、測位精度が高まります。また、より高精度な測位方法に対応している受信機であることが求められます。

受信機で衛星からの信号を受ける仕組み

GNSS時代に求められる受信機を考える前に、まず受信機がどのように衛星からの信号を受信しているのか見ておきましょう。

測位衛星から発信される情報には周波数と信号が含まれています。同じ周波数を使っていても複数の情報が混乱しないのは、それぞれ異なる信号を使っているからです。この技術はCDMA(符号分割多元接続)と呼ばれるものです。測位衛星からの情報は、このCDMAという変調方式でスペクトラム拡散(広い帯域に拡散して通信するための方法)されて送信されています。こうして複数の測位衛星からそれぞれの情報が発信されており、受信機は受信した情報を測位に利用しています。

しかし拡散された情報は、受信機に到達するまでにさまざまな地上の障害物に阻まれるため、必要な情報が受信できなくなることがあります。例えば、周りに高い山やビル群といった信号を遮断する障害物がある場合は、信号が届かず測位ができない可能性もあります。従来のGPSにだけ対応した受信機では、限られた測位衛星からの信号しか受信することができないため、こうした信号の遮断が起きると影響を強く受けることになります。

GNSS受信機はマルチ衛星測位システムに対応している

現在、地球を取り囲む衛星軌道上には130機以上の測位衛星が存在しています。それぞれの測位衛星は各国、各地域が管理運用しているもので、それぞれに特定の周波数とコードを含めた情報を発信しています。これらの多くの測位衛星を利用して高精度の測位を実現するには、GPS衛星だけでなく、日本のQZSSやロシアのGLONASSといった、ほかの測位衛星からの信号も受信できる受信機でなくてはなりません。具体的には次のような受信機能が必要といえるでしょう。

相対測位・RTKといった測位方法に対応している

受信機間で測位のズレをリアルタイムで修正し、測位の精度を高めるための要素として、受信機には、相対測位・RTKといった測位方法に対応していることが求められます。

ichimillはGNSS情報の活用によって精度の高いRTK測位を実現

現在、高精度な測位を実現するためのGNSS受信機および測位サービスがさまざまなメーカーから提供されています。ソフトバンクが提供しているichimill(イチミル)はGNSSの測位衛星から発信される信号を利用してRTK測位を行うことで、高精度測位を実現する測位サービスです。

ichimillの測位システムとは

ichimillが実現する測位の精度は誤差数センチメートルで、正確さを要求される自動運転やドローンの飛行などにも対応できるものです。

また、ichimillはソフトバンクが保有している全国3,300ヵ所以上の基地局を独自基準点とした測位を行っています。この独自基準点は民間企業では初めて、国土地理院が制定する民間など電子基準点のA級として登録されています。

このように多くの基準点があることで、ソフトバンクの携帯電話が使用できるエリアであればどの観測点でも周辺10キロメートル以内に数ヵ所の基準点が存在するため、移動に合わせて最適な基準点を自動的に切り替えることが可能です。こうした充実した測位環境が、安定した高精度測位を実現しているのです。

さらに、ソフトバンクの独自基準点が受信した信号をもとに「測位コアシステム」で補正情報を生成して、ソフトバンクのモバイルネットワークを通してGNSS受信機(移動局)へ補正情報を配信しています。この補正情報とGNSS受信機が受信した信号を活用してRTK測位を行うため、常に誤差数センチメートルという高精度な測位が可能となっています。高精度測位だからこそ、農機や建築機械、自動運転、ドローンなどに安心して活用でき、正確な業務運用が可能となるのです。

ichimillについての詳しい情報、活用した事例などを以下からダウンロードいただけます。ぜひご利用ください。

高精度な位置情報が産業自動化成功の鍵

産業の自動化において注目されているのが高精度な位置情報です。GNSSとRTK測位を活用し誤差数センチメートルの測位を可能にするサービスichimill(イチミル)について、業界別ユースケースもあわせて詳しくご紹介します

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