岐阜県恵那市では、2027年以降の開業を予定しているリニア新幹線を契機とした精力的なまちづくりが行われています。そんな恵那市の課題は、職員の職場環境の改善でした。固定電話を利用していたことから、自席を離れると業務ができない環境であるほか、人事異動のたびに発生するレイアウト変更時にも、面倒な配線整理が必要でした。そんな状況を打破するため、「ConnecTalk」の導入を決定。固定電話を廃止し、スマートフォンで発着信が可能な環境を整えたことで、場所を問わない業務環境が実現しました。それにより庁舎内のフリーアドレス化も飛躍的に進み、市民に寄り添ったサービスの提供ができるようになりました。
「『ConnecTalk』を導入したことで、場所や時間に縛られずに市民対応が可能となり、これまで以上に市民に寄り添ったサービスが提供できるようになりました」
恵那市役所 まちづくり企画部 情報政策課 原 和彦 氏
2019年にICT活用推進計画を策定し、さまざまなDXの取り組みを進めている岐阜県恵那市。同市では、職員の職場環境においていくつかの課題を抱えていたと言います。
「まず、働く場所の制約です。職員はデスクトップPCと固定電話を使用していたため、自席を離れると業務ができない状況でした。外出している際に電話があった場合、すぐに折り返しの連絡ができず、外出先から帰ってくると大量のふせん(電話メモ)が貼ってあるということが日常茶飯事でした。どうしても外出先から電話をかけなければならない場合は、私用のスマートフォンを使う職員もおり、プライバシー上の懸念もありました」(原氏)
また、毎年4月の組織変更のたびに、デスクトップPCのLAN配線や固定電話の移動といったレイアウト変更が発生し、その対応にかなりの時間が割かれていました。さらに、新型コロナウイルス感染症流行に伴い、多くの企業が場所に縛られないテレワークやオフィス分散などの働き方を進める中、柔軟に働き方を変えられるオフィス環境が構築できておらず、恵那市では働き方の見直しが急務となっていました。
そこに、PBXの保守切れも重なりました。これまで使用してきたPBXは、次に故障すると復旧できないと言われており、市役所としては電話業務を止めるわけにはいかないため、早急な対応が必要でした。
従来通りのPBXと固定電話での運用を続けても職員の働き方を改善することはできないため、これまでの電話システムから脱却する方向で検討を進めました。そこで、固定電話ではなくスマートフォンを中心とした環境にするとともに、併せて、いつか取り組みたいと考えていたフリーアドレスを進めるために、PCをデスクトップからノート型に切り替えることを決めたと原氏は語ります。
「これからはテレワークやフリーアドレスなど、自治体職員の働き方も改革を進めていく必要があります。そんな時代に従来の通りの環境を単純に更新してしまうと、10年、20年とこれまでの状況が続いていってしまいます。そんな状態は避けなければいけないという思いがありました」(原氏)
恵那市とソフトバンクは2020年から連携協定を結んでおり、今回の事案もソフトバンクに相談。課題解決のためにまずは電話環境の刷新を行うため、「クラウドPBX」を選択しました。2022年4月に検討を始め、秋の予算組みまで半年足らずで準備をし、かなりスピード感を持って対応したと言います。
「検討にあたっては、ほかの自治体での実績事例も重要視しました。その中で、フリーアドレスやクラウドPBXを先進的に進めていた香川県三豊市にも訪問させていただきました。視察を行って、庁舎内の環境や電話の使い勝手など具体的なヒアリングをさせていただき、かなり参考にさせていただきました」(原氏)
構築完了までには8カ月ほどかかり、2024年2月から本格利用を開始。かなりタイトスケジュールでの構築でした。
「切り替えのタイミングは3連休などを利用し、可能な限り影響の少ないところで実施しました。切替時はハウリングなどの不具合が出たものの、すぐに復旧対応でき、いまは問題なく使えています。
職員向けの対応としては『説明会』『マニュアル配布』『試行期間でのヘルプデスク対応』など、アジャイル形式でシステム移行に関する疑問や不安点は解消していきました。端末のキッティングもソフトバンク様に依頼するなど、職員のマンパワーが足りない部分を全てお願いできた点も大きかったです」(原氏)
構築が完了し、固定電話は非常時用としてキャビネットに保管をしているものだけになり、数としては以前の1割以下に大きく減らすことができました。
「一番の目的だった自席以外での業務ができるようになりました。席から離れた場所で業務の電話ができることは斬新です。外出していても通話を転送できるため、外出先からも折り返しができるようになりました。
また、附帯効果として、固定電話と回線を削減できたことで、オフィスに柔軟性をもたせることができました。電話機も小型化してデスクが広く使えるようになったと好評です。想定していなかったところでは、固定電話と違って鳴動音がかなり抑えられる環境になったので、オフィスがものすごく静かになったのもよかったです」(原氏)
管理の面では、グループ着信の所属先変更や端末の内線番号の割り振りなど、職員がWebコンソール上で簡単に対応できるため、保守業者に都度依頼しなくてもよくなったと言います。
「Webコンソール自体も見やすく、レスポンスも悪くないため使いやすいです。思った設定が迷わずでき、使い勝手で困ったことはありません」(原氏)
直感的な操作が可能なWebコンソールで、職員自ら設定変更
建設や水道関係など現場に出る部署や、イベント対応で外出の多い部署などからは、私用スマートフォンを使うことがなくなり、出先でそのまま業務用スマートフォンで電話に出ることができるようになって非常に便利になったという声があったと言います。
「『もう固定電話機には戻れないよね』という話や『PCとスマートフォンだけ持っていけばいいよね』という声があちこちで聞こえるようになって、やってよかったなって正直に思いました」(原氏)
「ConnecTalk」の導入により、電話や配線での縛りはなくなったものの、いまだ多くの紙業務が残っているため完全なフリーアドレスは実現できていません。
現在は情報政策課と総務課がある本庁舎3階の一部分でフリーアドレスを先行導入しています。
これを2024年度中には本庁舎3階全体に広げる予定です。試算では、フリーアドレス化することで、本庁舎3階の範囲で3割程度の余剰スペースが生まれると分かりました。この新しいスペースで、会議室や打ち合わせができるオープンスペース、ミニセミナーなどができるようなフレキシブルな場所にしていきたいと構想していると言います。そしてさらなるペーパーレスを進めて2年以内には全庁的にフリーアドレスを実現していきたいと原氏は話します。
職員ロッカーも必要最低限にすることで確保スペースを確保
この職場環境改善の先に見据えているものは、市民対応における質の向上です。今回の取り組みを主導した恵那市長・小坂氏は、次のように語ります。
「スマ—トフォンの導入や電話環境の刷新は一つのきっかけに過ぎません。今後はこれまで人手がかかっていたルーチン業務を圧縮し、デジタルに置き換えたり、アウトソーシングしていくことで、時間を創出する必要があります。リニア新幹線の開通によって新しいサービスや新たなコミュニケーション、多様性など、これまで以上にケアすべき場面がこれから増えてくるので、市民一人一人に向き合う時間を作っていきたいと思っています」(小坂氏)
その上で、自治体とデジタルの在り方について小坂氏は以下のように続けます。
「デジタルの力で人々の暮らしを劇的に変える必要はなく、ある日気づいたら暮らしが豊かになっているようなインフラとしての基盤ができていれば、田舎や地方であっても、さまざまなハンデを埋めることができると考えています」(小坂氏)
今回のデジタルツール導入は、地域の未来を切り開く重要な第一歩であることは間違いありません。市民サービスの向上に向かって突き進むその歩みは、とどまることなく続いていきます。
「地方こそ、デジタルに取り組むべきだと思考を変えることができればいいと思いますし、若い職員の力を信じ、任せるということも大事だと思います」
恵那市長 小坂 喬峰氏
\ 名古屋テレビ【メ~テレ】特別番組「SamuraiDX」にて、本取り組みが紹介されました! /
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