情報プラットフォームを整備するには? AIインフラ基盤の構築ポイント
2025年11月10日掲載
生成AIの急速な普及により、企業のIT戦略において「AIをどう活用するか」が喫緊のテーマとなっています。社内文書の要約や、業務システムの入力補助など、AIがさまざまな業務プロセスに入り込みつつある一方で、「AIを活用したいが、何から始めればよいか分からない」という声も多く、その背景には AI活用を支える「データの土台」すなわち情報プラットフォームの未整備という課題が存在 しています。
本記事では、「AI-Ready(AI活用に向けて準備された)」な情報プラットフォームの考え方と、その構築ステップを解説します。
記事執筆者のご紹介
第1章:なぜ情報プラットフォームの整備が必要なのか
データ活用の壁=サイロ化と品質のバラつき
多くの企業では業務データが部門ごとに分断され、複数システムに散在しています。この「データのサイロ化」は、AIによる横断的な分析や学習を阻害します。さらに、データの定義が統一されていない、正規化されていない、欠損や重複があるといった「データ品質」の問題も存在します。
AI導入の前に「データ整備」が不可欠
AIそのものは、クラウドサービスを通じて比較的容易に利用できますが、データが整備されていなければ成果は得られません。言い換えれば、AI活用の成否はデータ基盤=情報プラットフォームの整備にかかっています。
第2章:AI活用のための情報プラットフォームの条件
では、AI活用を進めるために必要な情報プラットフォームとはどのようなものか。ポイントは大きく3つに整理できます。
1. データの収集・統合ができる
複数の業務システム、クラウドストレージ、IoTセンサー、文書ファイルなど、企業内外のデータは形式や場所もさまざまです。これらを統合し、横断的に利用できる状態にすることが有効なAI活用の前提条件です。ここで重要になるのが、データの取り込みや加工を担うETL/ELT※処理です。クラウド環境では「まず格納してから加工する」ELTが主流となっており、大規模データを効率的に扱う基盤の根幹を担っています。
さらに、構造化データと非構造化データを一元的に管理できるデータレイクや、業務分析に最適化されたデータウェアハウスの活用も欠かせません。データの流通経路を確保するためのAPIゲートウェイやイベントストリーム(Kafkaなど)といった仕組みも、情報プラットフォームを支える要素となります。
ETL(Extract, Transform, Load):取り出して→加工して→格納する
ELT(Extract, Load, Transform):取り出して→まず格納して→あとで加工する
補足:クラウド環境ではELTの方が主流です。データ整備の根幹を担う処理です。
2. データガバナンスとセキュリティが確保されている
AIが利用するデータには、社外秘情報や個人情報など、極めてセンシティブな情報も含まれます。そのため、厳格なアクセス制御やデータマスキング、さらに、誰がいつどのデータを利用したかを追跡できる「データリネージ」の確立も求められます。これは、誤用や不正利用を防ぐとともに、監査やコンプライアンス対応を容易にします。
- データ分類、タグ付けによる管理
- アクセス権限の設定と、監査ログの取得
- ゼロトラストを前提としたセキュアなデータ共有基盤
3. AIモデルとの連携が容易である
整備されたデータは、AIモデルに接続できて初めて活用価値を生みます。情報プラットフォームは、AIへの入力とAIからの出力を業務システムへ返すまでをスムーズに結びつける必要があります。具体的には以下のような取り組みが挙げられます。
- LLM(大規模言語モデル)との統合
- RAG(検索拡張生成)による社内ナレッジ活用
- データベースやBIツールとのシームレスな連携
こうした仕組みが整うことで、情報プラットフォームはAI活用の”実行基盤”へと進化します。
第3章:AIインフラ基盤構築のステップ
では、実際に「AI-Ready」な情報プラットフォームをどのように構築すれば良いのでしょうか。段階的に取り組むためのステップを整理します。
ステップ1:データ資産の棚卸しと可視化
最初のステップは、「どこに、どんなデータが存在するのか」を明らかにすることです。これは、データカタログを整備する作業に近く、企業全体のデータ資産を見える化する取り組みとなります。ファイルサーバー、業務システム、Excel、SaaS、それぞれに散らばるデータを一元的にリストアップしましょう。
- データ項目と型(例:顧客名=文字列、契約日=日付)
- データの所有部門と責任範囲
- 更新頻度や精度
- 関連する業務プロセス
こうした情報をリスト化することで、全社的なデータ活用の”地図”が描けるようになります。
ステップ2:目的別のデータ統合と格納環境
全てのデータを一度に整備することは現実的ではありません。まずは「営業部門の問い合わせ対応を効率化する」など、ユースケースごとに絞り込んで統合を進めます。その際、データを格納する環境を目的に合わせ選定することが重要です。
- データレイク:多様な形式を受け入れる柔軟性を重視
- データウェアハウス:整合性と分析性能を重視
- クラウド or オンプレミス:コストや規制要件に応じた選択
さらに、CSV、Parquet、JSONなどフォーマットの標準化を行うことで、後続の処理やAI連携を円滑にします。
ステップ3:生成AIとの接続とPoC実施
整備したデータを生成AIに接続し、業務で活用できるかを小規模に検証(PoC)します。代表的な検証例としては以下が考えられます。
- FAQの自動応答(ナレッジベースから回答を生成)
- 社内文書の自動要約
- 顧客問い合わせのカテゴリ分類と優先度付け
PoCを通じて、「業務上の効果が得られるか」を確認し、本格導入の判断材料としましょう。
第4章:クラウドとデータベースの役割を再定義する
クラウドやデータベースはすでに多くの企業で活用されていますが、本格的なAI時代の到来にともない役割が変化しています。AIインフラ基盤構築に向けて、現代におけるクラウドとデータベースに求められる役割も理解しておきましょう。
1. AI前提のデータベース設計
従来データベースは、業務アプリケーションの処理を安定的に支える「トランザクション処理中心の基盤」として設計されてきました。しかしAI時代には、売上や顧客データといった構造化データに加え、文書、画像、ログ、センサー情報といった非構造化データも効率的に扱う必要があります。さらに、データ更新頻度の増加に伴い、リアルタイム性も重要になります。
つまり、これからのデータベースは「スケーラビリティ」「多様なデータ形式への対応」「柔軟な拡張性」を前提に設計する必要があります。
2. 自然言語によるデータアクセス
SQLが書ける人だけがデータを扱う時代は終わりつつあります。生成AIを活用することで、「過去3年間の売上データを地域別に集計して」と自然言語で指示すれば、自動でクエリを生成することが可能です。これにより、現場担当者や経営層も直接データを参照でき、意思決定のスピードが飛躍的に高まります。
ただし、生成AI特有の誤回答(ハルシネーション)を防ぐ仕組みや、アクセス権限を定義するガバナンス設計は不可欠です。
3. 自律化・セキュリティ強化されたデータ基盤
膨大なデータ量や複雑なシステム構成に対応するには、運用の自律化が求められます。
- データベースが自動的にチューニング、最適化
- バックアップや復旧の自動化
- 暗号化、アクセス制御の自動適用
- 脆弱性検知と即時対応
こうした自己防衛機能の仕組みによって、IT部門の運用負荷を軽減し、セキュリティリスクを最小化できます。
4. クラウドとの親和性とハイブリッド戦略
全てのシステムやデータをクラウドに移行できるわけではありません。レガシーシステム、さまざまな規制やコストの制約から、オンプレミスを残すケースも少なくありません。
そのため現実的な選択肢として「ハイブリッドクラウド」や「マルチクラウド」が重要になります。
- ハイブリッドクラウド:オンプレとクラウドを併用し、業務やデータ特性に応じて使い分ける
- マルチクラウド:複数のクラウドサービスを併用し冗長性やコスト最適化を図る
ここで重要になるのは、クラウドやオンプレの間をシームレスに接続する仕組みです。APIやデータ連携接続サービスを活用することが成功の鍵となります。
5. データ主権とガバナンスの確保
AIとクラウドを前提にした社会で、新たなリスクとして浮上しているのが「データ主権」の問題です。データを国外クラウドに保管するリスクは、経済安全保障やプライバシー保護の観点で無視できません。特に重要インフラや自治体などの公共機関では、高い機密性を求められるデータを扱うこともあり、国内のデータセンターや国産クラウド、ソブリンクラウドの利用が注目されています。
同時に「誰がどのデータを扱えるか」を定義するガバナンスフレームワークの整備も欠かせません。AI時代におけるデータ基盤は、利便性と主権・信頼性の両立が前提条件となります。
▶関連記事もチェック:データ主権とは? 経済安全保障の観点から分かりやすく解説
第5章:AIインフラを整備するためのクラウド基盤選択のポイント
これまで述べてきたように、AI時代のデータベース・クラウドにはさまざまな役割や条件が求められます。そのため、AIインフラを支えるクラウド基盤を選ぶ際には、単純なコストや知名度だけでなく、多面的な評価が必要です。
- 性能:AI処理に必要なGPU、分散処理能力、高速ストレージ
- コスト:スケーラブルな課金モデル、長期的なTCO(総保有コスト)最適化
- 規制対応:個人情報保護法や業界規制に準拠したデータ保管・利用の仕組み
適切なクラウド基盤を選択することで、「小さく始め、大きくスケールする」アプローチが可能になります。
先行企業に共通する「段階的アプローチ」と落とし穴
AI-Readyな基盤構築に成功している企業は、一足飛びに全社統合を狙うのではなく、小規模なPoCから成果をだし、徐々にスケールしています。
- 部門単位でPoCを実施
- 成果を横展開して社内理解を促進
- ユーザー部門とIT部門が密に連携
一方で、「PoC止まりで進展しない」「データがブラックボックス化して使いづらい」といった失敗例もあります。技術選定だけに偏らず、目的とKPI(成果指標)を明確にし、業務との結びつきを意識することが成功の鍵です。
おわりに:情報プラットフォームは“戦略資産”へ
AI時代の情報プラットフォームは、もはや単なる「データを置く箱」ではありません。企業の競争力を支える“戦略資産”であり、継続的に育てるべき“知的財産”とさえ言えるものになっています。 AI-Readyな基盤整備は、単なる技術プロジェクトにとどまらず、企業変革そのものにつながります。自社のデータと業務を見つめ直し、小さな成功体験から始めて、持続可能なAI活用の道を歩み始めましょう。
AIによる記事まとめ
生成AI時代におけるAI活用を支える情報プラットフォームの整備について解説しています。データのサイロ化や品質課題を乗り越え、AIモデルと連携可能な基盤を構築するための条件やステップ、クラウド基盤選定の観点を体系的に紹介しています。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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