情報プラットフォームを整備するには? AIインフラ基盤の構築ポイント

2025年11月10日掲載

情報プラットフォームを整備するには? AIインフラ基盤の構築ポイント

生成AIの急速な普及により、企業のIT戦略において「AIをどう活用するか」が喫緊のテーマとなっています。社内文書の要約や、業務システムの入力補助など、AIがさまざまな業務プロセスに入り込みつつある一方で、「AIを活用したいが、何から始めればよいか分からない」という声も多く、その背景には AI活用を支える「データの土台」すなわち情報プラットフォームの未整備という課題が存在 しています。

本記事では、「AI-Ready(AI活用に向けて準備された)」な情報プラットフォームの考え方と、その構築ステップを解説します。

目次

記事執筆者のご紹介

ソフトバンク 陳 欣盈
陳 欣盈
ソフトバンク株式会社
法人統括 AIプラットフォーム開発本部 クラウド開発第2統括部 クラウド技術企画推進部 クラウドサービス領域でGTM戦略、営業推進、マーケティング施策を幅広く担当。AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、 Alibaba Cloud、 ASPIRE、OnePort、dailyAIなどのクラウドサービスに携わり、現在はOracle Cloud Infrastructure(OCI)を担当。

第1章:なぜ情報プラットフォームの整備が必要なのか

データ活用の壁=サイロ化と品質のバラつき

多くの企業では業務データが部門ごとに分断され、複数システムに散在しています。この「データのサイロ化」は、AIによる横断的な分析や学習を阻害します。さらに、データの定義が統一されていない、正規化されていない、欠損や重複があるといった「データ品質」の問題も存在します。

AI導入の前に「データ整備」が不可欠

AIそのものは、クラウドサービスを通じて比較的容易に利用できますが、データが整備されていなければ成果は得られません。言い換えれば、AI活用の成否はデータ基盤=情報プラットフォームの整備にかかっています。

第2章:AI活用のための情報プラットフォームの条件

では、AI活用を進めるために必要な情報プラットフォームとはどのようなものか。ポイントは大きく3つに整理できます。

1. データの収集・統合ができる

複数の業務システム、クラウドストレージ、IoTセンサー、文書ファイルなど、企業内外のデータは形式や場所もさまざまです。これらを統合し、横断的に利用できる状態にすることが有効なAI活用の前提条件です。ここで重要になるのが、データの取り込みや加工を担うETL/ELT※処理です。クラウド環境では「まず格納してから加工する」ELTが主流となっており、大規模データを効率的に扱う基盤の根幹を担っています。

さらに、構造化データと非構造化データを一元的に管理できるデータレイクや、業務分析に最適化されたデータウェアハウスの活用も欠かせません。データの流通経路を確保するためのAPIゲートウェイやイベントストリーム(Kafkaなど)といった仕組みも、情報プラットフォームを支える要素となります。

※ ETL/ELT :異なるシステムからデータを取り出して整理し、格納する処理のこと。
 ETL(Extract, Transform, Load):取り出して→加工して→格納する
 ELT(Extract, Load, Transform):取り出して→まず格納して→あとで加工する
 補足:クラウド環境ではELTの方が主流です。データ整備の根幹を担う処理です。

2. データガバナンスとセキュリティが確保されている

AIが利用するデータには、社外秘情報や個人情報など、極めてセンシティブな情報も含まれます。そのため、厳格なアクセス制御やデータマスキング、さらに、誰がいつどのデータを利用したかを追跡できる「データリネージ」の確立も求められます。これは、誤用や不正利用を防ぐとともに、監査やコンプライアンス対応を容易にします。

3. AIモデルとの連携が容易である

整備されたデータは、AIモデルに接続できて初めて活用価値を生みます。情報プラットフォームは、AIへの入力とAIからの出力を業務システムへ返すまでをスムーズに結びつける必要があります。具体的には以下のような取り組みが挙げられます。

こうした仕組みが整うことで、情報プラットフォームはAI活用の”実行基盤”へと進化します。

第3章:AIインフラ基盤構築のステップ

では、実際に「AI-Ready」な情報プラットフォームをどのように構築すれば良いのでしょうか。段階的に取り組むためのステップを整理します。

ステップ1:データ資産の棚卸しと可視化

最初のステップは、「どこに、どんなデータが存在するのか」を明らかにすることです。これは、データカタログを整備する作業に近く、企業全体のデータ資産を見える化する取り組みとなります。ファイルサーバー、業務システム、Excel、SaaS、それぞれに散らばるデータを一元的にリストアップしましょう。

こうした情報をリスト化することで、全社的なデータ活用の”地図”が描けるようになります。

ステップ2:目的別のデータ統合と格納環境

全てのデータを一度に整備することは現実的ではありません。まずは「営業部門の問い合わせ対応を効率化する」など、ユースケースごとに絞り込んで統合を進めます。その際、データを格納する環境を目的に合わせ選定することが重要です。

さらに、CSV、Parquet、JSONなどフォーマットの標準化を行うことで、後続の処理やAI連携を円滑にします。

ステップ3:生成AIとの接続とPoC実施

整備したデータを生成AIに接続し、業務で活用できるかを小規模に検証(PoC)します。代表的な検証例としては以下が考えられます。

PoCを通じて、「業務上の効果が得られるか」を確認し、本格導入の判断材料としましょう。

第4章:クラウドとデータベースの役割を再定義する

クラウドやデータベースはすでに多くの企業で活用されていますが、本格的なAI時代の到来にともない役割が変化しています。AIインフラ基盤構築に向けて、現代におけるクラウドとデータベースに求められる役割も理解しておきましょう。

1. AI前提のデータベース設計

従来データベースは、業務アプリケーションの処理を安定的に支える「トランザクション処理中心の基盤」として設計されてきました。しかしAI時代には、売上や顧客データといった構造化データに加え、文書、画像、ログ、センサー情報といった非構造化データも効率的に扱う必要があります。さらに、データ更新頻度の増加に伴い、リアルタイム性も重要になります。
つまり、これからのデータベースは「スケーラビリティ」「多様なデータ形式への対応」「柔軟な拡張性」を前提に設計する必要があります。

2. 自然言語によるデータアクセス

SQLが書ける人だけがデータを扱う時代は終わりつつあります。生成AIを活用することで、「過去3年間の売上データを地域別に集計して」と自然言語で指示すれば、自動でクエリを生成することが可能です。これにより、現場担当者や経営層も直接データを参照でき、意思決定のスピードが飛躍的に高まります。
ただし、生成AI特有の誤回答(ハルシネーション)を防ぐ仕組みや、アクセス権限を定義するガバナンス設計は不可欠です。

3. 自律化・セキュリティ強化されたデータ基盤

膨大なデータ量や複雑なシステム構成に対応するには、運用の自律化が求められます。

こうした自己防衛機能の仕組みによって、IT部門の運用負荷を軽減し、セキュリティリスクを最小化できます。

4. クラウドとの親和性とハイブリッド戦略

全てのシステムやデータをクラウドに移行できるわけではありません。レガシーシステム、さまざまな規制やコストの制約から、オンプレミスを残すケースも少なくありません。
そのため現実的な選択肢として「ハイブリッドクラウド」や「マルチクラウド」が重要になります。

ここで重要になるのは、クラウドやオンプレの間をシームレスに接続する仕組みです。APIやデータ連携接続サービスを活用することが成功の鍵となります。

5. データ主権とガバナンスの確保

AIとクラウドを前提にした社会で、新たなリスクとして浮上しているのが「データ主権」の問題です。データを国外クラウドに保管するリスクは、経済安全保障やプライバシー保護の観点で無視できません。特に重要インフラや自治体などの公共機関では、高い機密性を求められるデータを扱うこともあり、国内のデータセンターや国産クラウド、ソブリンクラウドの利用が注目されています。

同時に「誰がどのデータを扱えるか」を定義するガバナンスフレームワークの整備も欠かせません。AI時代におけるデータ基盤は、利便性と主権・信頼性の両立が前提条件となります。

▶関連記事もチェック:データ主権とは? 経済安全保障の観点から分かりやすく解説

第5章:AIインフラを整備するためのクラウド基盤選択のポイント

これまで述べてきたように、AI時代のデータベース・クラウドにはさまざまな役割や条件が求められます。そのため、AIインフラを支えるクラウド基盤を選ぶ際には、単純なコストや知名度だけでなく、多面的な評価が必要です。

適切なクラウド基盤を選択することで、「小さく始め、大きくスケールする」アプローチが可能になります。

先行企業に共通する「段階的アプローチ」と落とし穴

AI-Readyな基盤構築に成功している企業は、一足飛びに全社統合を狙うのではなく、小規模なPoCから成果をだし、徐々にスケールしています。

一方で、「PoC止まりで進展しない」「データがブラックボックス化して使いづらい」といった失敗例もあります。技術選定だけに偏らず、目的とKPI(成果指標)を明確にし、業務との結びつきを意識することが成功の鍵です。

おわりに:情報プラットフォームは“戦略資産”へ

AI時代の情報プラットフォームは、もはや単なる「データを置く箱」ではありません。企業の競争力を支える“戦略資産”であり、継続的に育てるべき“知的財産”とさえ言えるものになっています。 AI-Readyな基盤整備は、単なる技術プロジェクトにとどまらず、企業変革そのものにつながります。自社のデータと業務を見つめ直し、小さな成功体験から始めて、持続可能なAI活用の道を歩み始めましょう。

AIによる記事まとめ

生成AI時代におけるAI活用を支える情報プラットフォームの整備について解説しています。データのサイロ化や品質課題を乗り越え、AIモデルと連携可能な基盤を構築するための条件やステップ、クラウド基盤選定の観点を体系的に紹介しています。

※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。

関連記事

関連資料

tag
pg17420
displayCount
1

関連サービス

関連セミナー・イベント

ビジネスブログ「Future Stride」編集チーム

ビジネスブログ「Future Stride」では、ビジネスの「今」と「未来」を発信します。

DXや業務改革をはじめとしたみなさまのビジネスに「今」すぐ役立つ最新トレンドを伝えるほか、最先端の技術を用いて「未来」を「今」に引き寄せるさまざまな取り組みにフォーカスを当てることで、すでに到来しつつある新しいビジネスの姿を映し出していきます。

/common/fragments/sidebar

同じカテゴリーの記事をみる

Tag
AI
Display
part