AIによるコーディングとコードレビューで開発効率化~ソフトバンクの開発現場事例
2025年12月23日掲載
情報システム部門をはじめ、多くの開発現場では事業のスピードに追いつくための課題が常に存在します。ソフトバンクの開発チームも例外ではありません。次々と生まれる新機能の要望に対し、リソースが不足する「開発工数の限界」、さらにエンジニアごとのスキル差によって生じる「品質のばらつき」に悩まされていました。この壁を乗り越えるため、Axross事業部は開発にAI(Google のGemini Code Assist など)を活用しました。本記事では、AI活用を推進する担当者の声を通じて、どのようにAIを活用し、開発プロセスの変革を進めているのかをご紹介します。
お話をうかがった方
人手も時間も足りない現場に、AIという選択肢
近年、企業の開発現場では内製化やクラウドネイティブ化が急速に進み、開発チームに求められる役割はますます広がっています。
スピード感のある開発体制を整える一方で、現場ではコーディングやレビューといった定型作業に多くの時間を費やしているのが実情です。また、チーム内のスキル格差やリソース不足も、開発スピードを阻む大きな要因となっています。
限られた人員で多くの成果を求められ、従来の自動化や標準化だけでは対応しきれない壁に直面している現場では、AIがコードを書く・レビューを支援するというスタイルが現実的な選択肢になりつつあります。
今回、開発プロセスにAI活用を進めたのが、企業の人材育成やスキル向上を支援する学習サービス「Axross Recipe(アクロスレシピ)」の開発チームです。
中村:「売上を増やしていく必要がある中で、人を増やすことはできないという課題がありました。現在の人数でも売り上げを継続していくことは可能だと思いますが、ここからさらに大きな成長が求められています。そのため、リソースが不足している状況で目標を達成するには『AIをフル活用して、どうにかしないといけない』という動きがありました」
事業成長を阻むボトルネック:レビュー対応とコード記述の負担
Axross事業部は、サービスの成長に合わせて開発チームが日々多くのタスクに対応していました。CI/CD環境などの基盤は整っていたものの、開発のスピードと品質を両立することが難しく、ボトルネックが残っていたのです。
茨城: 「課題は二つありました。一つは『開発スピード』です。リソースが限られている中で多くの機能を開発したい点です。もう一つは『品質』で、開発スピードを上げようとすると品質の維持が難しくなってしまう点です」
中村: 「その二つに、エンジニアの能力や属人化が大きく影響していて、個人の能力によって開発スピードも品質も左右されてしまうことが課題だと感じていました」
CI/CD環境では超えられなかった「壁」
茨城:「従来の開発体制においても、CI/CD環境パイプラインはありましたが、一番のボトルネックとなっていたのはプルリクエスト(PR)のレビューでした。PRの数が増加すると、人が行うチェック回数が増え、それに伴い時間もかかっていました。さらに、レビューは人が行う作業であるため、コードを書いた開発者への伝え方を配慮する必要もあり、心理的な負担やストレスが発生していました」
中村:「レビューの課題に加え、実際にコードを書く作業工数がどうしても削減できなかったことも大きな課題でした。コードの成形はできても『結局、書くのは人』という状況でした」
自然言語主導の開発へ:Gemini Code Assist がもたらした開発工数の削減と効率化
チームでは、開発効率を抜本的に改善するためにAIの導入を検討しました。背景には「限られたリソースで、より大きな価値を生み出す」という方針がありました。AIを活用することで、人が時間を費やしていた定型作業を効率化し、より創造的な業務へシフトする狙いです。
採用したのは、「Gemini Code Assist 」でした。
茨城:「『Axross Recipe』の開発環境はGCPを利用しています。もともとの開発基盤がGCP上だったため、既存環境との親和性を重視しました。コーディングもGoogle の環境ですし、サポートなども利用したいという理由から、Gemini Code Assist の利用を始めました」
活用の壁と試行錯誤のプロセス
中村:「活用を始めた当初は、AIに任せるより自分でコードを書いた方が早い、仕様書を作る時間がもったいないと感じる方も多く、そうした方々に『AIを使った方が良い』と理解してもらうことが課題でした。また、具体的な運用情報が少なく、手探りで検証を重ねる必要もありました」
導入の課題に直面する中でも、そこには長期的な視点に基づく考え方がありました。
中村:「今はまだ人がやる方が早くても、 おそらくこれからAIが進化していって絶対どこかで人間は追い抜かれます。ですから、今のうちからAIを使って慣れておけば、後々その作業スピードに対応でき、生産性を上げることができるだろうと信じて活用を進めていきました」
また、セキュリティ面でも、AIには Vertex AI経由で接続し開発を進めることで、学習データとして利用されない環境を整えているとも語りました。
レビューやテスト工数の改善
試行錯誤を重ねながら、Gemini Code AssistによるAIを利用した開発に取り組んでいったAxrossチーム。実際の狙いであった、レビュー工数やテストの効率化が進んでいると言います。
茨城: 「テストコードの作成やプルレビューといった作業にAIを活用しており、仕様書作成などの効率も向上しています。また、自分の考えた仕様についてAIを壁打ち相手として活用したり、リファクタリングの提案を求めたりしています」
中村:「我々はRuby on Railsという言語を使っていて、APIのテストの際も自分でコードやテスト条件を書く必要がありました。しかし、AIを活用することで、日本語で『こういうテストをしたい』と言うだけで意図を解釈してくれてテスト項目までAI側で考えてくれるようになったのはかなりの衝撃でした」
バイブコーディングで、開発リードタイムの大幅短縮
最近では、Claude Code も利用して自然言語による指示だけで機能を実装する、より自律的な開発スタイルにも取り組み始めていると中村は続けます。
▶関連記事:バイブコーディングとは? ~人×AIで加速する新しい開発スタイル~
中村:「AIにコーディングを任せた結果、効率は上がった印象です。例えばAxross Recipeに追加する『ウィッシュリスト機能』の要件定義書の作成では、もともと1カ月かかってversion1(初版)を完成させる想定だったものが、わずか3日で9割方完成させることができました。画面レイアウトやAPIの仕様書をもとにやりたいことをAIに自然入力し要件定義書にまとめてもらい、それをもとにAIでコーディングを行いました。もちろん最後は微調整も行うものの、リリース体感としては活用前と比較して数倍の業務効率化を感じています」
※AIに要件整理(ここではウィッシュリスト機能の要件定義書)を出してもらいAxross Recipe 上で参考として公開している
現場が見出したAI活用のコツ
中村:「AIコーディングで最も大事なことは諦めないことだと思います。人に指示を出すのと同じで、AIは曖昧な説明ではうまく動きません。指示の仕方を変えたり情報を補足したりすることで、AIの出力精度は着実に上がっていきます。必要な知識を整理し、的確に伝えることが大切です。AIを利用したことでコードにバグが出てしまい、自分でコードを書こうとエンジニアは思ってしまいがちですが、AIに伝えることを諦めずに指示の出し方を変えたり工夫を重ねていくことが重要なのかと思います」
AI時代に輝くエンジニアへ
AIの進化は、エンジニアの仕事のあり方を大きく変えつつあります。今回の取り組みを通じて見えてきたのは、「AIに置き換えられる時代」ではなく、「AIを使いこなす人がより創造的な仕事へシフトする時代」が来ているということです。
中村:「AIは『やりたいことを最大化し、やりたくないことを最小化する道具』だと考えています。エンジニアが本来やりたいのは、新しい価値を生み出す開発やアイデアを形にすることです。一方で、議事録の作成や単純な修正といった、やりたくないけれど必要な作業も多く存在します。そうした部分をAIに任せることで、人はより創造的な業務やアイデア創出に集中できるようになります」
AIを活用しても、アイデアを生み出せる人や、それを実現に導ける人の価値は変わりません。エンジニアリングを理解し、的確な指示を出せる人こそが、これからの時代に強く求められるのだと言います。
茨城:「AIの推論はどんどん進化していると感じています。応答速度や精度も今後さらに上がっていくと思います。これからのエンジニアは 広い範囲に関わっていくこと が大事だと考えています。深い知識はAIに聞けば返ってきますが、その一つが全体を見たときに最適かどうかは、AIで判断しづらい部分です。そのため、広い領域を見られるように、色々な仕事にチャレンジしていきたいです」
AIが進化し続ける中で問われるのは、「AIに代わる人材」ではなく、「AIを生かして価値を拡張できる人材」にいかにしてなっていくか、そしてそれを支える環境をいかに作っていくか、という点です。チームが進めるこの挑戦は、AI時代に輝くエンジニアの姿を体現しています。
ソフトバンクでは、YouTubeでも最新のAI動向や具体的な活用法、エンジニアリングに関する内容を幅広く解説しています。本記事でAI活用事例を語った中村も、YouTubeで情報発信を行っています。ぜひ動画もご参考ください。
AIによる記事まとめ
この記事は、ソフトバンクのAxross事業部がAIを活用し、開発効率と品質向上を実現した事例を紹介しています。Gemini Code Assistなどを活用し、コードレビューやテストの工数を削減。AIとの協働で開発リードタイム短縮と生産性向上を図った実践が語られています。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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