- 01.AI-RAN / AITRASの技術開発の歩み
- 02.実証を通じた商用化に向けた進展
- 03.AI-RANエコシステムの拡大
- 04.AI-RANのユースケースの広がり
- 05.今後の方向性:商用化と社会実装に向けて
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AI-RANを実証から商用展開へ ~ソフトバンクが進めるAI時代の分散型インフラ構築~
#AI-RAN #AI #AITRAS #フィジカルAI
2026.07.16
ソフトバンク株式会社
ソフトバンクは、AI-RANの商用展開に向けて、技術開発、実証、エコシステム形成に取り組んでいます。本記事では、ソフトバンクが開発を進めるAI-RAN統合ソリューション「AITRAS(アイトラス)」について、NVIDIAとの協業による取り組みも交えながら、屋外実証や商用化に向けたこれまでの取り組みを振り返ります。
AITRASは、AIとRAN(Radio Access Network/無線アクセスネットワーク)を同一のアクセラレーテッドコンピューティングプラットフォーム上で動作可能にする、ソフトバンクのAI-RAN統合ソリューションです。大容量、高性能なキャリアグレードのRANを提供するとともに、生成AI、エージェントAI、フィジカルAIを含むさまざまなAIアプリケーションを同時かつ効率的に運用することを目指しています。
関連プレスリリース:AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」を開発
AI-RANは、単なる次世代モバイルネットワークの技術ではありません。ロボット、カメラ、センサー、産業機器などが動作する現場に近い場所までAIインフラを拡張し、リアルタイム性が求められるフィジカルAIなどのAIサービスを支える重要な基盤となる技術です。ソフトバンクは、AIと通信の融合により、低遅延、大容量かつセキュアなAI時代の社会インフラの実現を目指しています。
1. AI-RAN / AITRASの技術開発の歩み
ソフトバンクのAI-RANに関する取り組みは、段階的に発展してきました。2023年3月には、NVIDIAと共同で構築した「AI-on-5G Lab.」において、GPUを利用したvRANからMECアプリケーションまでのE2E通信の実機検証に成功しました。この検証では、RANのDUとMECのAIアプリケーションが同一構成のハードウエア基盤上で動作し、AIを活用したリアルタイムでの人物検出にも成功しました。これにより、GPUをRANとAIの双方に利用できる可能性が確認されました。
関連プレスリリース:GPUを利用したvRANの実機検証に成功
同年5月には、ソフトバンクとNVIDIAが、生成AIと5G/6Gに向けた次世代プラットフォームの構築に向けて協業することを発表しました。このプラットフォームはNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipをベースとしており、ソフトバンクが構築する日本各地の新しい分散型AIデータセンターへの導入が予定されています。生成AIとワイヤレス通信向けアプリケーションを、マルチテナントな共通サーバープラットフォーム上で提供する構想は、現在のAI-RANや分散型AIインフラの取り組みにつながる重要な一歩です。
関連プレスリリース:NVIDIA、ソフトバンクの生成AIと5G/6G向け次世代データセンターでのGrace Hopper Superchip 活用に向けソフトバンクと協業
2024年11月には、ソフトバンクはAI-RAN統合ソリューション「AITRAS」の開発を発表しました。AITRASは、AI-RANを製品化したソリューションです。
関連プレスリリース:AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」を開発
AITRASでは、ソフトバンクが開発するRANソフトウエアやオーケストレーション技術により、AIとRANの処理を同一基盤上で効率的に実行することを目指しています。L1ソフトウエアの開発ではNVIDIA AI Aerialプラットフォームも活用し、キャリアグレードに不可欠な高い安定性と性能の実現に取り組んでいます。また、AIとRANそれぞれのアプリケーション特性に応じてコンピューティングリソースを動的に配分するオーケストレーターも開発しており、ネットワーク性能の向上とAIアプリケーションの効率的な実行の両立を目指しています。
関連プレスリリース:5G L1ソフトウエアを開発し、NVIDIA Grace Hopperプラットフォーム上にキャリアグレードの高性能・高品質なvRANを実現
2. 実証を通じた商用化に向けた進展
実証環境の構築も進んでいます。慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)では、都市部での運用を想定したAI-RANの実証実験環境を構築し、NVIDIA GH200を搭載したサーバーを活用して、AIとRANの処理を検証しています。この環境では、100MHz 4T4Rのプロファイルを持つ20基の通信アンテナの処理をAITRASのサーバー1台で実行し、100台の端末による同時動画視聴、LLMを活用した四足歩行ロボット、自動運転向けAIアプリケーションなどのデモンストレーションを実施しています。
関連プレスリリース:AI-RAN屋外実証実験の概要部分をご覧ください。
AI-RANのもう一つの重要な領域が、AIを活用してRANそのものを高度化する「AI for RAN」です。2025年8月、ソフトバンクは無線信号処理に高性能AIモデル「Transformer」を活用した新たなAIアーキテクチャーを開発し、5Gの通信速度、つまりスループットを約30%向上させることに成功しました。この実証では、3GPPの5G標準仕様に準拠した実際の無線環境でリアルタイム動作を確認し、AI-RANがコンセプト段階から実用段階に向けて前進していることを示しました。
関連プレスリリース:「Transformer」を活用してAI-RANを高度化し、5Gの通信速度を約30%向上
さらに、米国カリフォルニア州サンタクララにあるNVIDIA本社で展開しているAITRASのMassive MIMOでは、NVIDIA GPUを活用して無線信号処理を完全にソフトウエアで実行するAI-RANを構築し、屋外環境でダウンリンク16レイヤーのMU-MIMO実証に成功しました。従来の4レイヤー構成と比較して、スペクトル効率とスループットがともに約3倍に向上し、AI-RANの商用化に向けた重要なステップとなりました。
関連プレスリリース:GPUの活用によるソフトウエアのみでのAI-RAN、Massive MIMOを実現
※なお、NVIDIAのTechnical Blogでも、AIネイティブなRANとNVIDIA AI Aerialによるスペクトル効率向上について紹介されており、ソフトバンクとNVIDIAによる16レイヤーMassive MU-MIMOの屋外実証にも触れられています。(NVIDIA Developer)
3. AI-RANエコシステムの拡大
AI-RANの社会実装を進める上では、技術開発や実証に加えて、業界全体でのエコシステム形成も重要です。2024年2月、ソフトバンク、NVIDIAを含む通信・AI分野のリーディングカンパニーや大学により、AI-RANアライアンスが設立されました。AI-RANアライアンスは、「AI for RAN」「AI and RAN」「AI on RAN」の3つのテーマを掲げ、AIとRANの融合によって、世界中に存在するRANインフラをAI基盤として再定義するイノベーションを推進しています。
関連プレスリリース:AI-RAN アライアンス設立
2026年7月現在、AI-RANアライアンスには参加企業・大学・研究機関など140を超える団体が参加しており、AIと通信の融合に向けた取り組みは、世界的な潮流として広がりを見せています。ソフトバンクは発足メンバーとして参画するとともに、同社のAlex Jinsung ChoiがChairを務めるなど、アライアンスの活動を主導しています。さらにソフトバンクは、Linux Foundationが発表したOCUDU Ecosystem Foundationにも創設メンバーとして参画し、分散型AI-RAN基盤の発展に向けたオープンかつグローバルなエコシステムの形成を推進しています。
関連ニュース:Linux FoundationがオープンソースAI-RANイノベーションを加速させるOCUDUエコシステム財団を発表
ソフトバンク自身も、AI-RANエコシステムの拡大に向けた取り組みを進めています。AITRASオーケストレーターの中核機能の一つであるDynamic Scoring Framework(DSF)をオープンソース化しました。DSFは、マルチクラスター環境において、リソースの状況に応じた最適化を可能にする機能です。これにより、パートナー企業やOSSコミュニティーとの連携を促進するとともに、AI-RANの導入障壁を下げ、商用展開を加速させることを目指しています。
関連プレスリリース:AI-RANのエコシステム拡大に向けて「AITRASオーケストレーター」をオープンソース化
さらに、AITRASオーケストレーターは、パートナー企業との連携を通じて機能拡張を進めています。エリクソンとは、AITRASオーケストレーターとO-RAN準拠のSMO(Service Management and Orchestration)基盤であるEricsson Intelligent Automation Platformの連携を実現し、AIとRANを横断した動的な計算資源の配分を可能にしました。また、ノキアとは、Nokia AI-RAN External Compute EngineとAITRASオーケストレーターを連携させ、AI-RANにおいて外部のAIワークロードに対する計算資源の提供を可能にしました。これにより、現在のソフトバンクのモバイルネットワークを支えているエリクソンとノキアのRAN用の計算資源を、AIの計算資源と動的に配分することができるようになり、AI-RAN時代での通信インフラを活用した新たな価値創出に向けた取り組みが進んでいます。
関連プレスリリース:ソフトバンクとエリクソン、「AITRASオーケストレーター」と「Ericsson Intelligent Automation Platform」の連携を実現
4. AI-RANのユースケースの広がり
AI-RANは、通信ネットワークの高度化に加え、エンタープライズ向けのAI活用を支える基盤としても期待されています。ソフトバンクは、AI-RANやAIデータセンターを活用したフィジカルAI、エッジAI、産業向けAIアプリケーションの開発にも取り組んでいます。
安川電機とは、AI-RANとAIロボティクスを組み合わせ、MECで動作するAIを活用したオフィス向けフィジカルAIロボットのユースケースを共同開発しました。
関連プレスリリース:ソフトバンクと安川電機、AI-RANを活用した「フィジカルAI」の社会実装に向けて協業を開始
また、フィジカルAIの開発基盤として「AIデータセンター GPUクラウド」を活用し、NVIDIAの協力のもと、ロボットの動作データ収集からAIの学習・評価、実機への適用までを効率化する柔軟物体ハンドリングシステムの実証にも取り組んでいます。
関連プレスリリース:ソフトバンクと安川電機、フィジカルAIの開発基盤として「AIデータセンター GPUクラウド」を活用し、柔軟物体ハンドリングシステムを実証
これらは、AIインフラをロボットが実世界で柔軟に動作するための基盤として活用する取り組みです。
三菱重工業とは、AITRASを活用したエッジデータセンター領域での協業を開始しました。三菱重工のYokohama Hardtech Hubに設置されたエッジデータセンターに、AITRASを活用したAI-RAN環境を構築し、オンプレミス環境におけるエッジAIアプリケーションの実証実験を進めています。この実証では、外部ネットワークから隔離された環境でAI推論を実行することで、安定した通信、高速なAI処理、高度なセキュリティーの実現を検証しています。
関連プレスリリース:ソフトバンクと三菱重工、AITRASを活用したエッジデータセンター領域での協業を開始
エリクソンとは、AI-RANを活用した低遅延・高信頼ネットワークによるフィジカルAIの実証に成功しました。この実証では、AI処理の動的なオフロードと通信ネットワークの最適化により、ロボットなどのフィジカルAIアプリケーションを安定して動作させるためのネットワーク制御を検証しています。
関連プレスリリース:ソフトバンクとエリクソン、AI-RANを活用した低遅延・高信頼ネットワークによるフィジカルAIの実証に成功
これらの取り組みを通じて、ソフトバンクはAI-RANを、通信ネットワークの高度化にとどまらず、産業現場、ロボティクス、エッジAIなど、さまざまな領域でAIを活用するための分散型インフラとして発展させています。
5. 今後の方向性:商用化と社会実装に向けて
ソフトバンクは、AITRASについて、2026年度以降の商用ネットワークへの導入を目指して開発を進めています。また、AI-RANの商用展開に向けた取り組みの一環として、NVIDIA Aerial RAN computer platforms、NVIDIA RTX PRO 4500およびNVIDIA RTX PRO 6000の評価も進めています。
ソフトバンクは今後も、NVIDIAを含むさまざまなパートナー企業・団体との連携のもと、AITRASの商用化およびAI-RANの社会実装に向けた開発と実証を進めていきます。全国規模の通信基盤にAIコンピューティング、ソフトウエア、AIアプリケーションを組み合わせることで、通信ネットワークをAI時代の分散型インフラへと進化させ、多様なAI活用を支える社会基盤の実現を目指します。