キャリアNOW

ITと建設の知見を掛け合わせ、スマートビルの社会実装へと挑む

プロフィール

SynapSpark株式会社代表取締役社長 兼 CEO 沼田 周

建築系の学部を卒業後、外資系PCメーカーに入社。その後システムインテグレーション関連の企業に転職し、ネットワークやサーバー構築のエンジニアとして活躍。同社で手がけたプロジェクトでの縁をきっかけにソフトバンク株式会社に入社し、プリセールスエンジニアとして100社以上を担当。その後デジタルトランスフォーメーション本部(以下、DX本部)発足時に初期メンバーとして参画し、スマートビルやスマートシティ領域を担当。2021年の日建設計との共同案件をきっかけに、SynapSpark株式会社の代表取締役社長 兼 CEOに就任。

ビル領域の課題解決をDXで実現するために

SynapSparkの設立は、ソフトバンクが2017年に立ち上げたDX本部の取り組みに端を発します。DX本部は、DXを軸としてソフトバンクの次の柱となる事業を創出することを目指しており、私は過去の経験と知見から、不動産・ビル領域の事業推進を担当していました。そこで追い風となったのが、日建設計とソフトバンクの協業に関するプレスリリースが発表されたことです。この影響もあり、DX事業部内から不動産やビル領域での事業アイディアが次々と集まってきました。そのなかでソフトバンクが着目したのがスマートビル事業でした。センシング技術を用いた顔認証など、ソフトバンクのIT技術と親和性が高く、強みを生かせる事業であるとともに、日本におけるビルの管理・運用には大きな課題があることを実感していたからです。

日本にある多くのビルが、数十年以上も前に定められたルールのまま建てられており、多くの非合理的な運用が今もなされている現状があります。このような状況をソフトバンクのIT技術を活用して改善したいと考え、さまざまな製品やサービスを企画しました。しかしビルのスマート化を実現していくための課題を掘り下げるにつれて、局所的なIT化ではなく、本当に実現したいスマートビルをつくるためには、ビル設計の最上流から入り込まなければならないことがわかりました。そして、それを実現できるチャンスが、日建設計との協業にこそあったのです。
 

業界トップの知見を持つ二社の思いが一つに

日建設計との協業によりスマートビル実現の構想を進めていくことで、お互いにとって非常に生産的な気づきを得ることができました。建設・設計業界とIT・通信業界の違いから生じるギャップについて率直に意見をぶつけ合うことで、気づくのに10年以上かかっていたかもしれない答えをすぐに得ることができたのです。

業界トップレベルの知見を持つ日建設計との議論を通じて、スマートビル事業を推進するためにはITの知見だけでは不十分であり、建設プロセスやビル設備への深い理解が不可欠であることが明らかになりました。日建設計としてもITの知見や技術力の重要性を感じていたため、両社の思いが一致するのは自然な流れだったのかもしれません。そして2023年に日建設計とソフトバンクの合弁会社としてSynapSparkを設立することとなります。

SynapSparkの強みは、建設、設備、ITにおける業界トップレベルの知見と、それらを融合させるスピード感にあります。自社内に建築士もITエンジニアも在籍しており、メンバーのバックグラウンドもゼネコンやディベロッパー、メーカーなどさまざまです。それぞれ異なるスキルや知見を持つ人材が意見を持ち合うことで、これまでは社外にヒアリングをしなければ分からなかったことが、自社内だけで完結できるようになります。それぞれが本当に実現したかったことの答え合わせができ、そこから生まれるアイディアがSynapSparkの事業を推進する上で大きな強みになります。
 

建物や都市の持続的な価値創造を目指して

SynapSparkは「Autonomous Building」と呼ばれる、AI技術を活用した自律型ビルの社会実装を通じて、建物や都市の持続的な価値を創造することをテーマに掲げています。多くのビルでは数十年前に定められたルールに基づいた運用が続いており、情報がデータ化されておらず、竣工後にデータが活用されていない現状があります。

例えばビルで火災などのトラブルが発生した場合、警備員が危険を冒して現場へ行き、目視で確認した後に通報するといった合理的でない運用がまだ多く残っています。また、ビルのメンテナンス状況が可視化されていないことで、毎朝清掃スタッフが50名出勤しなければならないビルもあります。こうした状況が続くなかで、労働力の減少は進む一方です。この課題を解決するための手を打たなければ、メンテナンスが行き届かないビルが増え、ビル環境の悪化が加速することが懸念されます。

これらの問題は、運用ルールの見直しとデータの活用によって解決が可能です。例えば清掃作業をデータに基づいて最適化する。火災が発生した場合には、センサーとカメラで即座に感知し、避難指示や誘導を行い、消防への連絡も自動化する。スマートビルならこのようにデータに基づいた自律的なビル運営が実現できます。スマートビルの社会実装は、持続可能なビル運営を実現し、社会課題の解決に大きく貢献できる事業であると考えています。
 

スマートビルをインフラにする意義ある事業

ビル運用の課題解決に関する取り組みは、デジタル庁をはじめ政府の耳にも届き、社会課題として認識されるようになりました。スマートビルが普及していくことにより、社会インフラとして機能することにも大きな期待が寄せられています。

電力問題を例に挙げると、オフィスビルの効果的な節電には非常に高い効果があることがわかっています。オフィス1棟の空調をつける時間が5分短縮されることで、ビルのサイズによっては年間数千万円規模の電力が削減されることが見込まれます。
それが数百棟単位のビルにまで広がると、消費電力の削減に非常に大きなインパクトを与えることができます。それを実現できるのがスマートビルです。AI技術などのテクノロジーを活用することで、センサーで人流を検知して、縮退運転がどれくらい可能かなどの調整を数分単位で自律的に行うことができるようになります。

個々のビルが自律的に運用できるようになれば、やがて自律運営するビル同士が相互に情報を交換し、最適な判断を下す日が来るでしょう。例えば電力不足時には複数のビル間で情報を共有し合い、電力使用量の調整を通じた効率的なビル運営を実現することが可能です。また今後発展する自動運転やMaaSと連携し、人の動きに応じてリアルタイムで配車を最適化することも期待されます。このようにスマートビルが解決していく課題は非常に大きなものであり、社会的に意義ある仕事に取り組めるチャンスがSynapSparkにはあります。
 

高い専門性を持つ仲間と大きな挑戦を楽しむ

SynapSparkで活躍している社員の多くは、ゼネコンやディベロッパー、メーカーなどで活躍してきた方が中心です。私たちが掲げるスマートビルの構想や、それによって実現できる世界に共感いただける方にご入社いただいていますね。ビル設備やビルオペレーションに精通している方、あるいはネットワークセキュリティに深い知見を持つ方など、建設、不動産やITに関連する分野において卓越した専門性を持つ方々を私たちは求めています。お互いの専門性をぶつけ合い、最適な答えを導き出し、スマートビルの社会実装に向けて前進することが重要であり、そうした突破力を持った方が必要だと考えています。

ビルは人が動いたり設備が動いたりと、さまざまなデータが発生していますが、それらのほとんどは活用されず、保存されているだけの状況にあります。
これらのデータはスマートビルの運用にあたっては宝の山と言えるものです。これらのデータを活用し、ビルの自律的な運用を実現していくことには大きなやりがいと社会的意義があります。特定の製品にとらわれることなく、さまざまな製品や技術を組み合わせ、スマートビルのあるべき姿をつくり上げられることはSynapSparkで働く大きな魅力です。これからご入社いただく方には、ぜひ一緒にこの大きな挑戦を楽しんでいただきたいと思っています。
 
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