Copilot 定着化への挑戦──ソフトバンクが取り組んだAI活用定着のアプローチ
2025年11月11日掲載
生成AIの活用が広がる中、多くの企業が直面するのが「導入したのに使われない」という課題です。ツールを配布しただけでは行動が変わらず、業務改善の効果が十分に発揮されないケースも少なくありません。
ソフトバンクの法人部門では、Microsoft 365 Copilot を導入するだけでなく、社員が日常の中で自然に使いこなせるようにすることを目指しました。“使ってもらう”のではなく、“自ら使いたくなる”環境をどう作るか。
本記事では、ソフトバンク法人部門がどのように Copilot 活用を推進し、社員の行動変化を促していったのか。その実践から見えてきた“使われるAI”の定着プロセスを紹介します。
お話をうかがった方
Copilot 導入の背景──2カ月で“使われる状態”を目指して
ソフトバンク法人部門では、2024年12月にMicrosoft 365 Copilot のライセンスを約7,000名の社員に付与しました。目的は、生成AIを業務現場で活用して生産性を高めること。その際、単なる導入で終わらせず、どうすれば社員が実際に使いこなし、日常に根づかせられるかという定着化への挑戦が始まりました。
菅沼:「ライセンスを付与して終わりでは、使われないだろうと思っていました。新しいツールは最初こそ話題になりますが、日常の中に浸透させるのは簡単ではありません。だからこそ導入段階から“どうすれば社員が自分ごととして使い始められるか”を考えていました。
Copilot は、触れて初めて価値が分かるツールです。マニュアルや説明だけでは伝わりません。まずは体験の場をつくり、『思ったより便利だ』と感じてもらうことが定着の第一歩だと考えました。
年末にライセンスを付与し、営業が繁忙期を迎える3月までの限られた期間の中で、いかに使う習慣を作るかが重要でした。最初の2カ月で社員が動く流れを生み出し、それをきっかけに社内全体にムーブメントを広げていく——それがこのプロジェクトの起点でした」
発想の転換──“伝え方”を変えて、90秒で体験できる説明に
社員に「使ってみよう」と思ってもらうには、どんな仕掛けが必要なのか。定着化を進める上での軸になったのは、“説明の形を変える”という発想でした。単に情報を伝えるのではなく、短時間で直感的に理解できる「体験型の説明」を目指したのです。そこで選んだのが、ショート動画とキャラクターの活用でした。
菅沼:「いきなり説明会を実施したり資料を出しても、忙しい中ではじっくり見てもらえません。それだけでは“使ってみよう”という気持ちにはならないんです。読むより“見て分かる”方がハードルが低い。だからこそ、90秒で伝わるショート動画にしました。
実際の画面の動きを見せながら『自分にもできそうだ』『思ったより便利だ』と感じてもらえるように工夫しました。動画の構成にもこだわりました。集中して見てもらえるように絵コンテを描き、起承転結を意識して編集しています。短い時間でも“分かった”という実感を持てるように、情報の密度とテンポを調整しました。
もう一つ重視したのがキャラクターです。人が説明すると、どうしても一方通行になりがちです。そこでキャラクターを登場させ、『社員と一緒に学んでいく存在』として描きました。キャラクターが迷いながら成長していく姿を通じて、“自分もやってみようかな”と感じてもらえるようにしたんです。そうすることで、自然と親しみを持って受け取ってもらえたと思います」
社員を動かした8つの施策──“知る・試す・つながる・広がる”を生む仕組みづくり
Copilot 定着化のプロジェクトでは、8つの施策を同時に展開しました。それぞれを個別に行うのではなく、社員が自然に知り、疑問を解決し、仲間とつながりながら活用を広げていける流れを意識して設計したのが特徴です。
「知る」きっかけをつくる:ショート動画とTips配信
菅沼:「最初の段階で重視したのは、とにかくCopilot を“知ってもらう”ことでした。説明会や長い資料ではなかなか届かない。だからこそ、先ほどお話した短時間で理解できるショート動画を配信しました。
動画は全6本構成で、Teams やチャット、Excel 、PowerPoint など、実際の業務シーンに沿って活用方法を紹介しています。1本あたり約90秒で、操作の流れや便利な使い方をテンポよく解説することで、“自分もやってみよう”と思えるきっかけづくりを意識しました。『見た瞬間に試してみようと思えるか』を基準に構成を考え、再生数は4,500回を超えました。
さらに、動画をきっかけに興味を持った社員が次のステップに進めるように、Tips(活用のコツ)を定期配信しました。“知る”と“やってみる”をつなぐ導線を設けたことで、社員が自分のペースで触り始める流れができたと思います」
「試す」を支える:相談会とFAQエージェント
菅沼:「実際の利用が進むと、操作や活用方法に関する細かな質問が生まれます。その場で解決できないと、せっかく興味を持ってくれた人も離れてしまう。そこで、“すぐ聞けて、すぐ解決できる”環境づくりを重視し、週2回のペースでTeams 上で相談会を開催しました。誰でも気軽に参加でき、実際の使い方やちょっとした疑問をその場で解消できる場です。“質問を解決する場”でありながら、“困っている人を支える場”でもあったと思います。
併せて、社員が自分で答えを探せるようにFAQエージェントも整備しました。Microsoft Copilot Studio (目的に特化したCopilotを作るツール)を活用し、日々寄せられる質問を学習させて自動で回答する仕組みを整えました。この仕組みを導入したことで、同じ質問が繰り返し来ることが減り、社員自身で答えを見つけられるケースが増えました。
“困ったときにすぐ助けてもらえる”環境を続けて提供することが、定着化を支える一番の鍵だと思います」
「つながる」しくみを整える:コミュニティーとアンバサダー
菅沼:「Copilot を社内に定着させるには、社員同士がつながり、情報を共有できる仕組みも欠かせません。そこで、Teams 上にCopilot 専用のコミュニティーを立ち上げ、情報を一元化しました。社員同士が使い方の質問やTipsを共有できるようにしたことで、自然と“学び合う文化”が広がっていったと思います。
加えて、各本部にはアンバサダーを配置しました。アンバサダーは本部での推進役として、朝礼での情報共有やTipsの紹介などを通じて、利用促進をリードしてくれました。積極的に動いてくれた本部ほど利用率が高く、社員同士の会話や相談も増えていきました」
「広がる」空気をつくる:セミナーとムーブメント
菅沼:「Copilot の導入初期は“知ってもらう”ことを中心に進めてきましたが、その次の段階として“使いこなす実感を持ってもらう”ことが必要でした。
そこで開催したのが、ステップアップセミナーです。全3回に分けて開催し、延べ1,000名以上が参加しました。Microsoft の担当者にも登壇してもらい、基本機能の解説に加えて、社内で実際に使われているユースケースを14例紹介しました。どう使えば業務が変わるのかを、デモと事例で具体的に見てもらうことを意識しました。
また、セミナーではリアルタイムで質問を受け付け、その場で回答しました。一方的に話すのではなく、参加者が“自分もやってみたい”と思えるような双方向の場を意識しました。参加後に『できた』『便利だった』という声が多く届き、利用の広がりを実感しました。
“できた”という体験を社員同士で積み重ねていくことで、“Copilot を使うのが当たり前”という空気が社内に生まれていったと思います」
Copilot 定着の成果──文化として根づいた変化
菅沼:「一般的にこうした生成AIの活用を社内に根づかせるには時間がかかりますが、今回のプロジェクトでは、実質2カ月という短期間で利用率58%を達成しました。多くの社員が早い段階で使い始めてくれたのは、動画やコミュニティー、相談会などを組み合わせて“触れてみよう”と思える流れを作れたからだと思います。特に、アンバサダーが活発に動いてくれた本部では利用率が8割を超えました。“知る・試す・つながる・広がる”という流れが、結果としてうまく機能したのだと思います。
Copilot を使うことで、会議の要約や議事録作成がスムーズになったり、FAQエージェントで自分の疑問をすぐに解消できたりと、社員一人一人の働き方に小さな変化が生まれ、そうした積み重ねが結果的に業務全体の効率化につながっていった感覚があります。
オフィスのあちこちで『Teams の要約いいよね』『Copilot でまとめると楽だね』という声を耳にするようになって、ああ、広がってきたなと感じた瞬間がありました。数字ももちろん大事ですが、そうした何気ない会話が生まれることこそ、定着が進んだ証拠だと思います」
学びと今後の展望── “AIを文化にする”ために
菅沼:「今回の取り組みを振り返ると、Copilot の定着化は“導入して終わり”ではなく、継続的なサポートが欠かせないと改めて感じました。一度きりの説明会や動画で終わるのではなく、相談会やコミュニティーなど、社員がいつでも頼れる仕組みを続けていくことが大切なんです。特に各部門で一緒に動いてくれるアンバサダーの存在は大きかったです。トップダウンだけではなく、現場で支えてくれる人たちがいることで、初めて文化として根づいていく。これは今回のプロジェクトで改めて実感したことでした。
定着化の次のステップとしては、Copilot Studio を活用した業務特化型エージェントの検討を進めています。それぞれのエージェントが連携し合う“Agent to Agent”の世界を見据えながら、Teams を入口に、業務やデータがよりシームレスにつながる環境を目指しています。
AIが日常の中で自然に業務を支え、社員がより創造的に仕事に取り組めるようにしていくのが次のテーマです。生成AIの活用は、仕組みを整えて終わりではなく、人の工夫や発想を生かして使い続けることが何より大切です。これからも、そんな文化を社内から広げていきたいと思います」
まとめ──Copilot 定着から見えたこと
Copilot の定着化の取り組みは、“AIをどう導入するか”ではなく、“人がどう動き、使い続ける環境をつくるか”を考えるプロジェクトでした。社員が自然に触れてみようと思えるきっかけをつくり、それを支え合いながら続けていく。その連鎖が生まれたことで、Copilot は社内の日常に溶け込んでいきました。
AIの定着に近道はありません。特別な仕組みではなく、一人一人の「使ってみよう」という体験をどう積み重ねるか。その積み重ねがやがて文化となり、働き方そのものを変えていきます。
ソフトバンクは、これからも人とAIが協働し、新しい働き方を生み出していく未来を見据えながら、さまざまな取り組みを続けていきます。
AIによる記事まとめ
この記事は、ソフトバンク法人部門がMicrosoft 365 Copilotを社内に定着させた実践事例です。ショート動画配信や相談会、FAQエージェント、活用Tipsの定期配信など8つの施策を体系化し、社員の自発的な利用を促進。加えて、各本部のアンバサダーが現場支援を担いました。こうした仕組みの結果、導入後2カ月で利用率58%を達成し、Copilotの活用が業務に定着する文化が形成されました。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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