Gemini を使って15分でWebアプリ開発! 非エンジニアの業務効率化 ~ソフトバンクの営業サポート活用例~
2025年11月4日掲載
多くの企業が、日々の業務の中に潜む、細かくも膨大な数の確認作業に多くの時間を費やしています。ソフトバンクの法人事業を支えるカスタマーサクセス本部も、その例外ではありませんでした。
この課題を解決すべく、プログラミング経験のない現場担当者が Google の生成AI「Gemini (ジェミニ) 」を活用※し、わずか15分で業務ツールを開発。今では本部全体で活用されるプロジェクトに発展しています。
今回は、その取り組みの中心人物である担当者と同本部のAI活用推進者に話をうかがいました。
※Google Workspace の Geminiアプリを利用しました。
お話をうかがった方
膨大なサービス、複雑な業務プロセス… 現場が抱えていた課題
―まず、部署の役割と業務内容について教えてください。
中村: カスタマーサクセス本部は、お取引のあるお客さまの契約維持や売上向上を担う部門です。私が所属するサービスコーディネーター(SC)では、営業担当に代わって申込書を作成したり、お客さまからのお問い合わせに対応したりと、法人営業のバックオフィス業務を幅広く担当しています。いわば「縁の下の力持ち」として、お客さまへの円滑なサービス導入と運用を支援し、満足度を向上させることが重要なミッションです。
山本: 私の所属するデジタルワーカー推進部は、本部内の業務効率化を支援する部門です。従来はRPAやExcelマクロ、VBA、GASなどを使って生産性向上に取り組んでいましたが、ここ1〜2年は生成AIの活用推進をメインで担当し、どうすれば皆がAIを業務で有効活用できるかを考え、本部全体のAIリテラシー向上を支援しています。
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―AI活用に取り組む前、どのような課題があったのでしょうか?
中村: 日々の業務の中で、細かな課題がいくつも積み重なっていました。例えば、取り扱うサービスの種類が膨大なため、新サービスの仕様や手続きを覚えるだけでも一苦労です。社内ポータルを探せば情報は見つかるのですが、どこに何があるかを熟知したベテランの知識に頼りがちでした。
また、サービスごとに見積もりや申請のプロセスが異なるため、担当者それぞれのやり方で業務が進んでしまうこともありました。過去に作られた便利なExcelツールなども、担当者の異動でメンテナンスできなくなるというツールの維持管理の問題もありました。さらに、サービスごとに異なる違約金や納期計算などは担当者が電卓で手計算する場面も多く、ヒューマンエラーのリスクも常にありました。一つ一つの作業は小さくても、積み重なると大きな時間的コストになっていたのです。
解決策は「AIにWebアプリを作らせる」。15分の成功体験から生まれた業務改善の輪
―それらの課題に対し、どのように生成AIを活用されたのでしょうか?
中村: 社内で Gemini の利用が展開されたのを機に、「SCが Gemini で作ってみた」というプロジェクトを課で立ち上げました。行ったことは非常にシンプルで、Gemini との対話を通じて、業務で使えるWebアプリケーションのコードを書いてもらいました。
最初に作ったのは、営業日から納期を計算する「納期カウンター」です。従来はカレンダーを見て確認していたのですが、40営業日先などいう場合は手間がかかり、数え間違いのリスクもありました。このアプリでは必要情報を入力するだけで納期計算ができるようになり、ちょっとした計算の手間を削減することにつながりました。
一番初めに作成した納期カウンター。日付を選び、リードタイムを入れるだけで予定日が分かる仕組み。
―プログラミングの経験はあったのですか?
中村: 全くありませんでした。だからこそ衝撃的だったのですが、Gemini に「カレンダーがあって、指定した営業日数に応じた納期を計算できるツールを作りたい」と、普段使っている言葉でお願いするだけで、ベースとなるコードを15分ほどで作成してくれたんです。「なんだこれは!?」と、良い意味でびっくりしましたね。専門家でなくても、アイデアさえあればツールが作れる時代になったのだと実感しました。
この成功体験をきっかけに、現場の「ちょっとした困りごと」を解決するアプリを次々と開発していきました。例えば、販売価格を決める際に利益率を瞬時に計算する「利益率算出ツール」や、複雑で大変だった確認業務を効率化する「UniTalk手配ガイドアプリ」などです。
―具体的にはどのようなアプリなのでしょうか?
中村: 「UniTalk」というサービスは関連資料が合計で数百ページ以上あり、手配に必要な情報を探し出すのが大変でした。開発したアプリは、画面上のいくつかの質問に答えるだけで、「今回必要な書類はこれで、納期は〇日。関連資料はこちらです」といった情報を瞬時に提示してくれます。資料を読み解くプロセスをAIがナビゲートしてくれるイメージですね。これにより、確認作業の時間が大幅に短縮され、より付加価値の高い業務に集中できるようになりました。
UniTalk手配ガイドアプリ
申請内容を選択するだけで、手配に必要な書類や納期、関連資料の確認ページ、事前確認事項や補足・注意点などが表示される。また、右上にあるヘルプには使い方ガイドなどが掲載され、こちらの内容も生成AIで作成。
Gemini の強みは、デザイン性と初心者に優しい対話力
―さまざまな生成AIがある中で、今回 Gemini がフィットした理由は何でしょうか? また、こだわった部分についても教えてください。
中村: まず、誰にでも直感的に使ってもらえるよう、UI(ユーザーインターフェース)やデザインにはこだわりました。基本的な機能は15分でできたからこそ、残りの時間で「使いやすさ」を追求できました。ただ動くだけでなく「使いやすい」と思ってもらえなければ定着しませんから。色味やボタンの配置などを「このボタンをもう少し大きくして、青色に変えて」というように、Gemini に相談しながら微調整を重ね、マニュアルがなくても使えるツールを目指しました。
山本: その「見た目の調整」に関して、Gemini は特に強いですね。Webアプリを作るという観点では、Gemini が生成するコードはデザイン性が高いと感じます。ほかの生成AIだと、機能は満たしていても見た目が無骨なコードが出てくることがありますが、Gemini は色合いやレイアウトのセンスが良く、最初から見栄えの良いUIを提案してくれます。
中村: それに加えて、初心者に優しい点も大きいですね。プログラミングの専門用語を使わなくても、平易な言葉で丁寧に説明してくれるので、私のような非エンジニアでも安心して対話しながら開発を進めることができました。また、私たちは普段から業務で Google Workspace を使っているので、Google らしいデザインや操作性に馴染みがあったのも、スムーズに活用できた一因だと思います。
ポイントは「小さく、早く」。全社に広がる生成AI活用の輪
―「SCが Gemini で作ってみた」プロジェクトの反響はいかがでしたか?
中村: 本部内でアンケートを取ったところ、「こういうツールが欲しかった」「業務に役立ちそう」といったポジティブな声が多く寄せられました。これまで担当者ごとに時間をかけて確認していた作業が、ブラウザのブックマークから誰でも迅速かつ正確に行えるようになり、チーム全体の生産性向上に大きく貢献できたと感じています。
本部内アンケートから。一部抜粋
―本部全体で、ほかにも生成AI活用の動きはありますか?
山本: 中村の取り組みは、本部全体に本当に良い影響を与えています。「自分も作ってみたい」と、自発的に業務改善ツールを作り始めるメンバーも増えています。 私たちデジタルワーカー推進部では、そうした成功事例や各メンバーが作成したカスタムGPTを集約したナレッジサイトを構築し、横展開を後押ししています。このナレッジサイト自体も、もちろん生成AIを活用して構築しました。
ナレッジサイト(社内のGoogle サイト)に掲載し、情報を横展開。検索しやすいようにもなっている。このサイトの作成も生成AIで行われた。
最近では、生成AIの動画生成機能を活用する動きも活発です。社外のイベントの講演で使うオープニング動画を生成AIで作成した事例も出てきています。以前なら専門部署に依頼していたようなクリエイティブ制作を現場の担当者が担えるようになってきており、活用の幅はどんどん広がっていると感じています。
Excel 職人が生成AIを使うとノウハウが組織の資産に変わる
―最後に、これから生成AI活用を目指す企業の方へのアドバイスをお願いします。
中村: とにかく「小さく、早く」始めてみることです。いきなり全社の業務を自動化するような、壮大なものを目指す必要はありません。まずは簡単で初歩的なものを作って、すぐに展開してみる。その小さな成功体験のサイクルを繰り返すことが、AI活用の定着には不可欠だと思います。特に、これまで「Excel職人」と呼ばれていたような、現場の業務ノウハウを持っている方がAIを使えば、その知識が一気に組織の資産に変わるはずです。
山本: 2年近く継続的に研修などを通じて支援してきた結果、本部全体のリテラシーが向上し、「こんなことはできないか?」といった前向きな相談や、「こんなものを作った」という自発的な報告が確実に増えてきました。一過性で終わらせず、継続的に取り組むことで、組織全体の文化としてAI活用が根付いていくのだと実感しています。推進役としては、そうした現場の自発的な動きをすくい上げ、全社に共有していくことが重要だと思っています。
特別なスキルがなくても、現場の課題意識と生成AIさえあれば、誰もが業務改善の担い手になれる。ソフトバンクのカスタマーサクセス本部の挑戦は、AI時代の新しい働き方を指し示しているのかもしれません。
AIによる記事まとめ
この記事は、ソフトバンクのカスタマーサクセス本部が、Googleの生成AI「Gemini」を活用し、非エンジニアが業務効率化ツールを開発した事例を紹介しています。営業サポート業務における納期計算や書類確認の効率化に向け、Geminiと対話しながらWebアプリを作成。現場の課題を迅速に解決する取り組みが部門に波及し、AIリテラシーの向上やナレッジ共有が進化しています。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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