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AI-RANが起こす6G革命、AI時代を切り拓く新しいビジネスプラットフォームへの挑戦

#AI-RAN

1. AI-RANとは

ソフトバンクが開発を進めるAI-RAN(Artificial Intelligence Radio Access Network)は、AIアプリケーションと無線アクセスネットワーク(RAN)を同じコンピューター基盤の上に統合する新しいアーキテクチャです。AIを駆使してRANを高機能・高品質化すると同時に、AIアプリケーション用のコンピューティング基盤を様々な産業へ提供することでAI時代の新しいビジネスプラットフォームを提供します。

ソフトバンクは、過去にもTD-LTEやHAPSと言った先進技術の導入で業界をリードしてきました。この背景には、急速に進化する技術環境において、”大胆に市場を創造し競争を先回りする”という戦略があります。AI技術の革新が続くなか、私たちは通信インフラとAIを組み合わせ、どのようにして新しい価値を生み出すかを模索してきました。
我々の考えるAI-RANは、通信業界だけでなく、社会全体に多大な影響を与える技術となる可能性を秘めています。本記事ではAI-RANの特徴や強み、活用場面、将来展望についてご紹介します。

2. 通信性能を限界まで引き出す

AI-RANの強みは、RANをソフトウェア化し、AIによる予測モデルとリアルタイムのデータ分析を組み合わせることで通信パフォーマンスの向上を実現することです。AIがネットワークトラフィックのパターンを学習・予測したり、無線技術の様々な処理で最適化を行うことで通信効率を大幅に引き上げ、混雑時や移動時におけるエンドユーザーの通信体験を向上させます。

過去、3G→LTE→5Gと無線の高速・大容量通信を実現するために、我々通信キャリアの主な手段は「利用する電波の周波数帯域を増やす」ことでした。しかしAI-RANの登場で、電波の周波数帯域を増やさずともユーザー体感を向上できるようになることは、有限な公共の資源である電波の有効活用の観点でも大きな意味を持ちます。さらには、今後5Gから6Gネットワークへと移行されるにあたり、AI-RANの役割はますます大きくなっていくはずです。

関連記事:AIによるRANの進化 ~AI for RAN~

3. 通信キャリアのビジネスを変える

AI-RANの特徴はRANの性能向上に留まりません。
ソフトバンクが開発を進めるAI-RANデータセンターでは、仮想化技術を活用することで同じサーバーへ「RAN」と「AIアプリケーション」の重畳を可能にします。これによりモバイルキャリアは、一つの設備投資でRANとAIの二つの収益源を獲得し、さらに二つの異なる用途をベストミックスすることで設備の稼働率を向上させることができるようになります。これは、AI-RANがモバイルキャリアの設備投資戦略を変え、投資収益率を劇的に向上させる可能性を秘めていると言えます。
スマートフォンがコモディティ化し、モバイルキャリアに新たな変革が求められている昨今、AI-RANは我々モバイルキャリアが新しいビジネスモデルへのシフトを促す重要な技術要素だと私たちは考えています。

4. AI-RANが産業のAI基盤に

さらに、従来のパブリッククラウドでは提供が難しかった「低遅延で高SLAかつ高セキュリティなエッジコンピューティング基盤」を産業界へ提供する役目を果たすのがAI-RANです。
これは、AIをホストするサーバーをユーザー最寄りのモバイルキャリアのデータセンターに設置することで実現されます。サーバーとの通信のためにインターネットに接続する必要がないため低遅延と高いセキュリティを実現可能となる、モバイルキャリアだけが提供可能なサービスです。
このコンピューティング基盤は、AI推論と組み合わせることで、リアルタイムでの応答が求められるカスタマーサービス、企業の機密情報を取り込んだ企業専用LLMなど多様な場面でその力を発揮します。

もちろん、産業のDXやAIを用いた高度化にも大きく貢献します。

例えば、工場、店舗、病院では、遠隔監視画像のリアルタイム解析により機器やラインの異常検知、環境データ分析、従業員の安全管理などが可能になります。また、スマートシティでは街中の様々なIoTセンサーデータをリアルタイムで統合することで公共の安全システムや交通システムを最適化します。また、自動運転の判断ロジックをAI-RANのエッジサーバーに集約することにより、個々の車両の視点のみではなく、交差点全体を俯瞰して最適な行動を決定でき、これにより交通の安全性と効率性の向上が期待されます。

5. SoftBankとNVIDIAとのパートナーシップ

ソフトバンクはNVIDIAとのパートナーシップを通じ、AI-RANの開発を加速しています。Grace Hopperなどの新型ハードウェア上でのAI-RANソリューションの開発にも着手しています。

関連プレス:NVIDIA、ソフトバンクの生成AIと5G/6G向け次世代データセンターでのGrace Hopper Superchip活用に向けソフトバンクと協業     

関連動画:SoftBank Redefines Regional Data Center for AI and 5G(英語のみ)

6. AI-RANアライアンスの設立

ソフトバンクは、AI-RANの技術の普及と発展を促進するために、モバイルとAIのリーディングカンパニー10社と1大学と共にAI-RANアライアンスを設立しました。このアライアンスには、ソフトバンクをはじめ、NVIDIAやArmなど業界を代表する企業が参加しており、オープンなエコシステムの構築を目指しています。

AI-RANアライアンスへの加盟申請はこちら

関連プレス:AI-RANアライアンスを設立 ~AIを駆使し、5Gおよび来るべき6G時代に備えたRANの変革に向けた研究開発を推進~
関連記事:AI-RANアライアンス:AIと通信のリーディングカンパニーが集結

7. まとめ:AI-RANが起こす変革、6Gへ

AI技術を活用したこの新しいアーキテクチャは、無線アクセスネットワークの機能性と品質を飛躍的に向上させるだけでなく、AIアプリケーション用の強力なコンピューティング基盤を提供することで、多様な産業における新たなビジネスチャンスを創出します。
5Gのみならず6G時代に向けて新たなパラダイムシフトを起こすべく、ソフトバンクは重要戦略の一つとして今後もAI-RANの発展に注力していきます。

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