生成AI時代を切り拓く革新的なテクノロジーが集結
SoftBank World 2024 展示ブースレポート
AIの未来を見据えた展示エリア~新しいテクノロジー編~

2024年10月31日掲載

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ソフトバンク最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2024」が今年も10月3〜4日の2日間にわたって開催されました(3日は限定招待制の臨場開催、4日はオンライン開催)。臨場開催ではさまざまなサービスの展示も行われ、多くの来場者が説明を熱心に聞いていました。ソフトバンクや協賛企業が数多く出展した会場の中から、AIの未来が垣間見える”新しいテクノロジー”が集結したエリアに焦点をあてて当日の様子をお伝えします。

目次

対話できるAIエージェント「バーチャルヒューマン」

 ひときわ目を引くディスプレイでデモを行っていたこちらの展示ブースでは、国産LLMの研究・開発を行うSB Intuitions(エスビーインテュイッションズ)と、AiHUB社、LINEヤフー社が共同開発をする「バーチャルヒューマン技術」の紹介をしており、多くの人がその体験をしようと列をなしていました。

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現場レポート

 ブースの担当者は見どころについてこのように話します。

「こちらのブースでは、音声で対話のできるAIエージェントをご紹介しています。3社共同での研究開発によるもので、しゃべる言語の内容はSB Intuitionsの国産LLMの技術、音声はLINEヤフー社の合成音声の技術、そしてキャラクターのビジュアルや、2つのモジュールを組み合わせる技術をAiHUB社が提供しています。本日のデモは『Sali(サリー)』というキャラクターを使い、お客さまがサリーと雑談ができるデモ体験を行なったり、国産LLMの特長をご説明しています」

 将来的にはどのようなシーンで活用が期待できるでしょうか。

「イベントの集客やエンターテインメントの現場でも活用が期待されています。24時間365日で稼働できるため、人の代わりに接客やサービス対応を行うことができ、人手不足の課題を解決しビジネスの効率化にも貢献します。さまざまなビジュアルでキャラクターを作成できるので、教育現場での学習サポートや、病院の接客・受付サポートなど、幅広い分野での活躍が期待できます。

 日本語に特化したLLM技術を利用することで、日本固有の文化や歴史に適した正確な情報提供が可能になることが大きな特長です。また、リアルな人間に近いキャラクターを使用することで、人間に近い感覚での対話が可能となり、感情を込めた声の表現も実現できる技術が使われています」

国産LLMを搭載したバーチャルヒューマンの今後の展開に期待が高まります。

>SoftBank World 2024 でSB Intuitions CEO 丹波が語った「国産生成AIが切り拓く未来:SB Intuitionsの挑戦」の基調講演内容はこちらのブログからご覧いただけます。

バーチャル空間でリアルな試着体験を「仮想試着」

 続いては、AIの技術により今までにないリアルな試着体験ができる展示ブースのご紹介です。Beyond AI 研究推進機構という、東京大学とソフトバンクの産学協創による連携事業で、AI 研究の発展と社会実装の実現に向けた取り組みを行っています。

現場レポート

 ブースでは、東京大学の五十嵐教授に詳しい説明を伺うことができました。

「画像や動画を撮影し、試着アイテムを選択することで、AI技術によるリアルな試着体験が可能となります。合成された結果は、まるで実際に洋服を着ているかのようにリアルで、購買前に自分に似合うデザインや色を確認できる点が大きな魅力です。

 特長は体の動きに応じて洋服のシワまでリアルに再現される技術です。洋服のデータをAIに多角的に学習させることで、より精緻な表現が可能となっており、360度全方位からの視点で着用感を確認できるため、横や後ろからの見え方も仮想空間で体験ができます。主な活用シーンとしては、アパレル事業領域で実店舗でのリアルタイム試着や、ECサイトでの利用を想定しています。仮想試着の応用は多岐にわたりますので、エンターテインメントの分野でも活用の可能性は広がっており、例えば鉄道博物館で車掌さんの制服を仮装試着し、楽しんでもらうことも可能です。さまざまな分野への展開を視野に入れ、研究開発を重ねながら商用化を目指しています。

アパレル業界の課題として、ECの返品率は約30%とも言われており、他のEC商品よりも高い傾向にあります。あらかじめ似合っているかの確認をしてから購入するプロセスを作ることで、返品率が下がり企業のコスト削減や環境負荷軽減に繋がると考えています」

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 AIの進化がもたらす新たな試着体験は、私たちの消費行動を大きく変える可能性を秘めており、今後の展開に期待が高まると取材を通して感じました。

カスハラ対策にAIの技術を「SoftVoice」

 顧客が従業員やスタッフに対し威圧的な言動や不当な要求を行う「カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)」は、精神的・肉体的な負担を引き起こす社会問題としても認識されはじめています。ソフトバンクでは、コールセンター向けのカスハラ対策ソリューションの展開を目指し、取り組みを進めています。

現場レポート

 ブースの担当者にサービスの特徴を伺いました。

「顧客の理不尽な怒りをオペレーターの耳に届けないサービスを、東京大学との共同研究で進めています(関連記事はこちら)。顧客のクレームに直面した際、どのように対処すればよいか分からないことが多いのが現実です。顧客の怒りをコントロールすることは難しいですし、企業としては不満を抑え、納得してもらう必要があります。同時に大切な社員を守るためには、事前に社員を守る対策が必要です。『SoftVoice』は、怒りの声を”怖くない声”に変換する技術により、心理的なストレスを軽減することが期待されています」

 AIの技術はどのような仕組みで使われているのでしょうか。

「事前に”怖くない声”の特徴を学習したAIが、入力音声の話している内容はそのままに、声色や声の響きなどの特徴を変換することで、”怖くない声”を合成します。この技術はコールセンターをはじめ、あらゆるサービス・接客業の『感情労働』において、顧客との適切なコミュニケーションを実現するための強力なツールになります」

 人手不足が深刻な社会課題と言えますが、どのように貢献していけるでしょうか。

「特に心理的な不安を抱える社員が辞めてしまうケースが多い中で、企業は社員を守る義務があり、育成にかけたコストを無駄にしないためにも、ストレスの少ない応対業務を実現することが求められています。SoftVoiceはこうしたニーズに応えることができます。また『カスハラ対策をしている』というメッセージは、採用活動にもプラスに働きますし、トラブルを未然に防ぐことにもつながります」

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 今後の展望として、2025年度中の実用化を目指しており、カスハラ対策のソリューションとして、従業員の負担軽減とより良い職場環境の実現に寄与していきたいと、担当者は語りました。

ソフトバンクが開発する「AI-RAN」の技術

 ソフトバンクの先端技術研究所が開発を進めるAI-RAN(Artificial Intelligence Radio Access Network)は、AIアプリケーションと無線アクセスネットワーク(RAN)を、同じコンピューター基盤の上に統合する新しいアーキテクチャです。担当者に技術の詳しい内容を伺いました。

現場レポート

「ソフトバンクが開発を進めるAI-RANは、AIアプリケーションと無線アクセスネットワーク(RAN)を同じコンピューター基盤の上に統合する新しいアーキテクチャです。AIを駆使してRANを高機能・高品質化すると同時に、AIアプリケーション用のコンピューティング基盤を様々な産業へ提供することでAI時代の新しいビジネスプラットフォームを提供します。例えば、工場、店舗、病院では、遠隔監視画像のリアルタイム解析により機器やラインの異常検知、環境データ分析、従業員の安全管理などが可能になります。また、スマートシティでは街中の様々なIoTセンサーデータをリアルタイムで統合することで公共の安全システムや交通システムを最適化します。また、自動運転の判断ロジックをAI-RANのエッジサーバーに集約することにより、個々の車両の視点のみではなく、交差点全体を俯瞰して最適な行動を決定でき、これにより交通の安全性と効率性の向上が期待されます。このようにAI-RANは、私たちの生活やビジネスにおいて、AIの新たな可能性を切り開く技術です。より多くの分野での応用ができるよう、開発を進めています」

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 AI-RANの進化は、まさに次世代の通信インフラを支える重要な要素となるかもしれません。AI-RANについての詳しい情報は、ソフトバンク 先端技術研究所のホームページをご覧ください。

>先端技術研究所 AI-RAN特設ページはこちらからご覧いただけます
>AI-RANについて詳しく説明している動画はこちらからご覧いただけます

Cubic Telecomによる「グローバルIoTプラットフォーム」

ソフトバンクが出資するCubic Telecom(プレスリリースはこちら)は、コネクテッドカー※1およびSDV※2向けに世界最大級のIoTプラットフォームを構築し、提供しています。このブースではCubic Telecomの担当者に詳しい取り組みを伺いました。

現場レポート

「Cubic Telecomは、主に車メーカーやモビリティ関連の顧客に対し、世界中の通信を一元管理できるプラットフォームソリューションを提供しています。従来、グローバルに展開する自動車メーカーは、各国ごとに回線調達をしており、現地キャリアと個別に契約を結んでいました。このため各国ごとや一定のエリアごとに回線プラットフォームが分散し、グローバル全体での一元管理が難しいという課題がありました。

 この煩雑さを解消するために、世界中で使える統一されたSIM及び回線管理プラットフォームを提供することで、車両に搭載する通信回線の管理を一元化し、効率的な運用が可能となります。

 具体的な通信のユースケースとしては、従来のコネクテッドカーではナビゲーション更新やリモートキーサービスが挙げられます。今後は音楽や動画のストリーミング、ゲームなど、車内でのエンターテインメント利用の需要増加が見込まれており、Cubicソリューションの活用で、それに対応可能な環境が整えられます。

 今後の展望として、オートモーティブ分野に加え、農機や建機などのあらゆるモビリティ分野に関連する幅広いニーズに対応することで、さらなる成長を図っていきます」

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 Cubic Telecomの革新的なソリューションは、グローバルに展開する自動車メーカーやモビリティ関連企業のさらなる成長と発展を促進するものと期待されます。

※1 ICT端末としての機能を有する自動車のこと
※2 車と外部との双方向通信でソフトウェアを更新し販売後も機能追加や性能向上ができる自動車のこと

ユビキタスネットワークの実現に向け「Starlink Business」

 Starlink Businessは、法人向け低軌道衛星ブロードバンドインターネットサービスです。12月に新たにリリースとなるサービスも含め、担当者にブースの見どころや詳細を伺いました。

現場レポート

「Starlink Businessは『ユビキタスネットワーク構想』の実現を目指しています。通信環境が整っていない地域や、BCP対策、海上・船舶などにおいても、高速かつ低遅延なデータ通信を利用することができます。例えば建設現場では、通信環境が整備されていない場合が多く、コミュニケーションが取りづらいことが課題となっています。Starlink Businessは、山間部などでも快適な通信環境を提供します。また、災害時にもBCP対策としてそなえることができ、災害対応や復旧に向けたコミュニケーションにおいて、高速かつ大容量の通信環境が確保できます。

12月にはよりセキュアな通信サービス、Eutelsat OneWebのリリースが予定されております。ソフトバンクの閉域網サービスとの接続で高いセキュリティを維持した通信が可能になります」

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 ソフトバンクはStarlinkの認定インテグレーターです。Starlink Businessの取り組みは、多様な業界における通信インフラの課題を解決し、柔軟で効率的なビジネス環境の構築に大きく貢献していくでしょう。今後の進展が期待されます。

AIの進化とともに高まるソリューションへの期待

 今年のSoftBank World 2024では、各展示エリアでAI技術を活用したさまざまな研究や開発、新たなサービスリリースに向けた取り組みをご紹介していました。空前のAIブームといえる昨今、日々AIの技術は進化し続けています。ソフトバンクや協賛企業による出展ブースからも見られたビジネスシーンにおけるAI技術活用・業務改善の先には、新たなサービスやビジネス誕生の展望への大きな期待が高まります。

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