金融業界のAI活用最前線
— FIT2025で体感したソフトバンクの金融DX戦略と実践事例
2025年11月21日掲載
金融業界最大級のイベント「FIT2025(Financial Information Technology 2025)」が、今年も10月9日~10日の2日間にわたって東京国際フォーラムで開催されました。
ソフトバンクは「AIの最前線を体感」をテーマに、生成AIとAIエージェントによる金融業務変革の最新事例を展示・講演で紹介しました。
当日は問い合わせ対応、資料作成、AI人材育成など、金融業務に直結する7つのソリューションを紹介し、多くの方が足を止めていました。本ブログでは、ソフトバンクのブースで展示していたソリューションのデモの内容や講演の様子をご紹介します。
展示ブースで感じた、AI活用のリアル ~7つのソリューションをご紹介~
FIT2025のソフトバンクブースでは、実際の画面操作やデモを通じて、AIが金融現場の課題をどう解決できるかを体感できる構成が好評でした。
生成AIを活用した資料作成支援、音声解析による営業サポート、データ整備を効率化するツールなど、金融業務での活用を具体的にイメージできるように展示された各ブースの様子をレポートします。
① 金融業界特化AIエージェント「生成AIパッケージ」
「生成AIパッケージ」は、Microsoft社の Azure OpenAI Service を活用したクラウド型ソリューションです。企業がセキュアな環境で生成AIを導入・活用できるように、ユーザー認証やアクセス制限、個別環境での提供などのセキュリティ対策を備え、さまざまな業界での業務効率化に活用できる設計となっています。
今回の展示では、このパッケージを基盤に開発した金融業界向けのAIエージェントを紹介しました。生成AIによる商談準備からリアルタイムでの商談のサポート、社内報告やデータ管理までを一貫して支援し、営業の方の業務をトータルでサポートすることで、生産性向上とデータ活用の高度化に貢献します。
現場担当者コメント
「展示では、生成AIを活用した営業支援機能を紹介しました。商談準備では、生成AIが資料作成を支援し、提案業務の効率化を図ります。
一方、商談中は音声解析を活用したリアルタイム支援機能が特に注目を集めました。
AIが会話内容を解析して関連資料を自動で提示し、あらかじめ設定したヒアリング項目をもとに音声から自動入力を行うなど、営業現場をリアルタイムで支援する機能を備えています。
また、商談データを蓄積してSFA(営業支援システム)と連携できるため、“便利に使う”だけでなく、データを資産として活用できる点も大きな特長です。忙しくて入力作業に時間を割けない営業担当者の課題解決にもつながります。
生成AIの業務活用に特化したユーザーインターフェースを備え、営業担当者の業務をトータルで支援できるよう設計しています」
「生成AIパッケージ」で商談音声を即時解析して入力をサポートしている様子のデモ
「X-Boost」は、問い合わせ対応を支援・効率化する生成AIソリューションです。
過去のFAQや照会履歴を学習し、質問内容に応じた回答案を提示することで、金融機関で課題となっている“問い合わせ対応の属人化”を防ぎ、応答品質の均一化を実現します。
ブースでは、金融機関のお客さま向けデモが行われ、実際の問い合わせ対応を想定したプロセスをご紹介しました。来場者の方々は、質問文の入力からFAQ検索、回答案生成までの一連の流れを体験し、AIがどのように業務を効率化できるかを体感していました。
現場担当者のコメント
「テキストベースで問い合わせをもらったときに使っていただきたいプロダクトです。質問内容をコピー&ペーストして検索すると、過去にお客さまや社内でやりとりをしたデータから、質問文に類似した「照会履歴」「FAQ」が上位に表示され、その中から『この内容は使えそうだ』という情報を選ぶと回答案が生成されます。
今回のデモは、海外でキャッシュカードを紛失した場合の再発行に関するお問い合わせを例にご紹介させていただいています。一般的な生成AIでは“なぜその回答になったのか”が曖昧になりがちですが、『X-Boost』は社内に蓄積された照会履歴やFAQといったナレッジを根拠に回答を生成するため、企業としての信頼性を担保した回答文を提供できるのが特長です」
質問文をコピー&ペーストした後、過去の照会履歴やFAQより類似したものが表示され、回答に使えそうなものをチェックし、回答生成をするところ
「Axross Recipe for Biz」は、AI利活用人材の育成と組織への定着化を支援するオンラインプラットフォームです。
実践的な学習コンテンツを通じて、AIを使いこなせる人材を育て、社内コンテストの開催支援機能やナレッジ投稿を通じて組織全体での定着化と文化醸成をサポートします。
ブースでは、アセットマネジメントOne様の導入事例を紹介しながら、実際のプラットフォーム画面を公開。ソフトバンクの生成AIエバンジェリストが最新情報を配信する仕組みや、学んだ内容を動画・テキスト・スライド・プロンプトとして投稿し、社内ナレッジとして蓄積できる機能などが紹介されました。また、現場のユースケースやアイデアを吸い上げる社内コンテスト開催の事例も注目を浴びました。
現場担当者のコメント
「金融業界のお客さまから特に評価いただいているのは、AIトレンドの変化が非常に速い中で、最新情報を常にキャッチアップできる学習環境と定着化に向けた仕組み確立の総合的なご支援が可能な点です。
実際に導入した企業では、生成AIの利用率が約20%向上しました。生成AIを導入したけどあまり使い方が分からない、使える従業員がまだ少ないというお客さまにはかなり有効な教育ツールになっています。
また、学んで終わりではなく、会社独自の使い方がノウハウとして蓄積していく仕組みが特長です。社内でノウハウを共有できることで、“個人の学びやユースケースを組織の力に変える”文化づくりが進んでいます」
「satto workspace」は、資料作成業務を効率化する生成AIチャットサービスです。
資料業務の「つくる・探す・更新する」をまとめて行える環境を提供し、あらかじめフォーマットを設定しておくことで、社内で稟議資料を作成する際などに必要な構成をすぐに呼び出せる仕組みを備えています。
また、Amazon Web Services の日本リージョン上でデータを管理しており、セキュリティ要件の厳しい金融業界のお客さまにも安心してご利用いただける設計です。
現場担当者コメント
「satto workspaceは、AIと対話しながら資料を作成できるプロダクトです。情報収集の段階からAIが自動で欲しい情報を集め、骨子をアウトラインとして提示。内容を確認してOKを押すと、スライド形式の資料に自動で変換してくれます。
情報収集はインターネット検索に加え、自分でアップロードしたクラウドデータ(satto cloud)からも参照できます。外部に公開していない社内データを安全に扱いながら、AIによる資料作成を行える点が特長です。
また、AI初心者にもやさしい設計になっており、曖昧な指示をした場合でも、AIが「それはこういう意味ですか?」と質問しながらやりとりを進めてくれるため、プロンプト作成に慣れていない方でも、自然な対話で高品質な資料を生成できます。
銀行をはじめ、セキュリティを重視されるお客さまからの関心も高く、安全性と利便性を両立した生成AIチャットサービスとして注目を集めています」
「Sarashina」は、日本語の理解・生成に優れた国産AIモデルです。
日本語特有の文脈や専門用語のニュアンスを正確に捉えられる点が特長で、金融・法律など高精度な言語理解が求められる分野での活用が期待されています。
ブースでは、金融業界に特化したモデルの構想を紹介。
マニュアルや過去事例をもとに、業務上の判断や対応を支援するAIエージェントとして、窓口対応や与信審査の効率化に貢献できる可能性が示されました。
現場担当者のコメント
「Sarashinaの強みは、日本語の文脈を深く理解できる点です。
現在は汎用モデルをベースに、金融や法律などのドメインに特化したモデルの開発を進めています。
例えば、銀行窓口でお客さまが仕組債を購入したいというケースでは、これまではマニュアルの確認や上司への相談など、1件の対応に数時間かかることもありました。Sarashinaの金融モデルでは、こうした質問に対して適切な判断や対応指針を即時に提示できるようにすることを目指しています。
今後も多くのお客さまと連携しながら、現場で本当に役立つAIへと育てていきます」
⑥ 生成AIの精度を高めるデータ整備「TASUKI Annotation(タスキ・アノテーション)」
「TASUKI Annotation」は、生成AIの精度向上を目的としたデータ整備支援サービスです。RAG(外部データを参照して回答を生成する仕組み)を活用した生成AIを導入する際に必要となるデータの構造化を、ツール提供と伴走支援の2つのサービス形態でサポートします。
特に、図や表など文字情報以外を含むデータはAIが正しく認識しづらく、回答精度の低下につながることがあります。「TASUKI Annotation」では、こうした課題に対してデータ整備を効率化し、AIの回答精度を高める仕組みを提供します。
現場担当者コメント
「社内マニュアルや業務資料をもとに、AIが正確に回答できる仕組みを整えたいというご相談を多くいただいています。
例えば保険会社のお客さまでは、サポートデスクで使う業務資料を活用し、お客さまからの問い合わせにAIが即座に回答できるようにしたいというニーズがあります。
しかし、元となるデータの整備に多くの工数がかかる点が課題でした。
『TASUKI Annotation』では、こうしたデータ整備の作業を手作業比で約1/6に短縮でき、同時に回答精度の向上にもつなげることができました。ツール単体での導入はもちろん、『生成AIパッケージ』との連携にも対応しており、AIを活用した業務効率化を段階的に進めたいお客さまにも柔軟にご利用いただけます」
「TASUKI Annotation」の展示の様子
「dailyAI」は、ユーザー数無制限・定額制で利用できるクラウド型生成AIサービスです。Microsoft Azure OpenAI Serviceを活用し、稟議書や議事録、社内メールなど、日常業務の文書作成を安全かつ効率的に支援します。ユーザー認証やIP制限、専用環境での提供など、セキュリティ対策も万全です。
現場担当者コメント
「来場された金融業界のお客さまからは、『いきなり特化型AIを構築する前に、まずは安全な環境で生成AIの効果を試したい』という声を多くいただきました。
『dailyAI』は、そうしたお客さまが最初のステップとして取り入れやすいサービスです。ユーザー数無制限で定額利用できるため、費用対効果を検証しやすく、安全性と手軽さを両立した環境が、社内のリテラシー向上や業務効率化の第一歩として、多くの金融機関から高く評価されています」
>「dailyAI」の詳細はこちら
講演:AI活用の最前線と金融DXの未来
10月9日には、ソフトバンク株式会社 AIプラットフォーム開発本部の西原万純と、デジタルエンジニアリング本部の福田 頼達が登壇し、AIエージェント活用による業務変革と金融DXの展望を語りました。
西原は、ソフトバンクのAX(AI Transformation)戦略と社内での実践について講演。国産LLMの開発や、OpenAI社と共同で進めている企業向けAI「クリスタル・インテリジェンス(仮名)」などの取り組みを紹介しました。
また、海外製AIへの依存リスクにも触れ、ソブリンAI/ソブリンクラウドによる国内完結型AI基盤の重要性を強調しました。
西原:「ソフトバンクでは、社内のさまざまなデータやシステムをつなぎ、エージェントが部署を横断・連携してタスクの最短ルートを見つけることを目指しています。AIを動かすには、まず前提となるデータ整備が欠かせません。整っていなければ、どんな優秀なAIも機能しません。これが“Agent to Agent(AtoA)”時代の大きな課題です。
また、AIエージェントだけに頼るのではなく、効率化や自動化を実現できるツールも上手く使うことが重要です。定型業務には“フロー型”の仕組みが合う場合もあります。今はまだAIも過渡期ですから、数年後を見据え、AIが業務に組み込まれた後のプロセスをどう再設計するかを考えることが大切です。いきなり本番導入ではなく、ダミーデータやテスト環境で試しながら業務整理を進めると失敗が少なくなります。
さらに、AI導入で生じる“人の役割変化”にも備える必要があります。人的リソースやスキルの可視化、リスキリングや再配置の仕組みづくりにソフトバンクも挑戦しています。まずは小さくてもいいので、AI活用にチャレンジすることが第一歩だと思います」
続いて福田は、金融機関で進む生成AI導入の現状と課題を実際の金融のお客さまの事例やユースケースをもとに解説しました。
「融資稟議書の自動作成」「営業支援」「コールセンター応対」など、実務に直結するユースケースが広がりつつあり、データ整備と人材育成を両輪に据えた段階的な導入がカギになると説明しました。
福田:「一つ一つのユースケースを確実に成功させることが、金融DXを定着させるカギになります。データ整備、ナレッジ強化、成功体験の共有、そして横展開——この循環をつくることが重要です」
2人は共通して、AI導入を“業務効率化の手段”にとどめず、「AIと人が協働し、業務そのものを再設計する変革」として捉える重要性を強調しました。
講演全編は、配信申し込みよりご登録いただくと視聴可能です。
まとめ~AIが動き出した金融の現場へ~
生成AIの進化とともに、金融業界でのAI活用への関心は一層高まっています。今回のFIT2025では、AIが金融の現場でどのように活用され始めているか、そして今後どのように広がっていくのかを感じられる展示や講演が行われました。
AIが業務の一部として活躍する未来は、着実に近づいています。ソフトバンクはこれからも、AIを活用した変革(AI Transformation:AX)の実現を通じて、金融業界をはじめとするお客さまの課題解決を支援していきます。
AIによる記事まとめ
この記事は、金融DXの最新動向とその実践例として、ソフトバンクが金融業界最大級のイベント「FIT2025」で紹介した生成AIの活用事例を取り上げています。7つのAIソリューション展示と講演内容を通じて、営業支援、問い合わせ対応、人材育成、データ整備、安全なAI導入などのアプローチを紹介しています。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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