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キャッシュレス決済の普及と
金融サービスの拡大で
さらなる成長を目指す

PayPay(株) 代表取締役 社長執行役員 CEO

中山 一郎

1994年4月、国際デジタル通信(株)(現(株)IDCフロンティア)入社。
2013年4月、同社代表取締役。2016年3月、(株)一休の取締役副社長に就任。
2018年6月より現職。

サービス概要

「PayPay」は5,000万人以上(2022年8月時点)の登録者を有する国内最大級のキャッシュレス決済サービスです。また、決済を起点に、金融サービスをはじめとする各種ユーザー向けサービスやさまざまな加盟店向けサービスを提供しています。

設立の経緯

PayPayは、ソフトバンクの営業力とヤフーの開発力を結集するとともに、ソフトバンクグループ(株)が出資するファンドの投資先である世界的なキャッシュレス決済事業者「Paytm」からの技術支援を受けて、2018年に設立されました。

現在の姿

2022年3月期の各図表
[注]
  1. コード決済市場の店舗利用総額に占めるPayPay決済取扱高の割合(2021年)。一般社団法人キャッシュレス推進協議会「コード決済利用動向調査 2022年6月5日公表」をもとに当社が算出しました。

国内最大級のキャッシュレス決済サービスとなった「PayPay」の可能性

「PayPay」は日本のスマートフォンユーザーの2人に1人以上が利用する国内最大級のキャッシュレス決済サービスとなりました。私は2018年のPayPay創業時から社長を務めていますので、後発のコード決済サービスとしてスタートした「PayPay」がこのようなポジションになれたことを嬉しく思っています。しかし、このポジションで満足かと問われればポジティブな意味で「まだまだ」だと思っています。日本の年間の個人消費の総額は約300兆円ですから、PayPayの2022年3月期の決済取扱高(GMV)である5.4兆円というのは、シェアにすれば2%にも満たない程度です。この支出のうち、われわれが塗り替えようとしている現金による支出は約200兆円と言われています。これをわれわれのTAMだと捉えるならば、目の前にはまだまだ膨大な市場が広がっているということです。TAMがこれほど大きい事業は国内にないのではないかと思っています。

  • Total Addressable Market:獲得できる可能性のある最大の市場規模

三つの強みを磨き続け、ユーザーと加盟店の両方から支持されるサービスへ

この膨大な市場で勝ち抜くためには、ユーザーと加盟店両方の支持を得ることが不可欠です。そのために、「PayPay」が磨き続けている強みが「開発力」「営業力」「マーケティング力」です。
「開発力」という面では、創業からアプリ開発を内製で行うことにこだわり、ユーザーのニーズの変化に瞬時に対応しつつ、セキュリティを継続的に強化しています。当社では、約40の国と地域から技術レベルの高いエンジニアが集い、時差を利用した24時間開発を行っています。スピード感を持った開発を行うということに加えて、最近では月間数千億円の決済を処理するようになってきましたので、決済基盤を安定的に運営できるようにこだわっています。スピードと安定的な運用の両立ができるようになりましたので、「開発力」はさらに高まっていると自負しています。
「営業力」という面では、立ち上げ期からソフトバンクの精鋭の営業部隊を受け入れ、数千人規模の営業社員が直接店舗へ足を運んで、加盟店の新規開拓からアフターケアまで行う丁寧な営業活動を実施しています。結果として、コンビニエンスストアや大型チェーン店はもちろん、個人営業の中小店舗まで加盟いただき、374万カ所以上の店舗が加入する加盟店網となりました。加盟店には「PayPay」の導入効果を実感いただけるよう、来店客数が増えていることや、支払単価や来店頻度が上がっていることを営業社員が数字で示せるようにし、「営業力」を強化しています。
「マーケティング力」という面では、事業フェーズに合った効果的なマーケティングを展開しています。「PayPay」は後発のコード決済サービスとしてスタートしましたので、創業間もない頃は「100億円あげちゃうキャンペーン」などに代表される知名度を一気に向上させるような大規模なマーケティングを行いました。現在では、マスマーケティングと並行して、ユーザー一人一人の趣味趣向、行動パターンを踏まえ最適なメッセージを伝えるone to oneマーケティングを実施しています。派手さはないので世間の話題にはなりにくいのですが、休眠ユーザーの掘り起こしや決済単価の向上など、目的に応じて効率的なマーケティングができるよう「マーケティング力」をさらに進化させています。

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3層構造の収益モデルで成長を目指す

まずは「キャッシュレス決済といえば『PayPay』」と言われる存在になりたいと思い、これまで事業を運営してきました。しかし、単なる「決済アプリ」がわれわれの目指しているところではありません。いつでもどこでも使えて、暮らしを豊かに、生活をより便利にするような「スーパーアプリ」となり、普段の生活の中で「『PayPay』があった方が絶対に便利だよね」と言われるようなアプリになっていきたいと考えています。
このようなビジョンの下、われわれは3層構造の収益モデルで成長していきたいと考えています。1層目は「決済手数料収入」、2層目は「加盟店向けサービス」、3層目は「金融サービス」で構成されています。
「決済手数料収入」は、決済取扱高(GMV)の伸びに伴って増加する収入です。よって、この1層目の拡大には、より多くの場面で「PayPay」を使っていただくことが重要です。現時点で「PayPay」を使っていただけていない場面があるとしたら、それは「PayPay」よりもその場面に適したほかの決済手段があるということです。当社ではそのような利用シーンを徹底的に分析し、生活のあらゆる場面で「PayPay」が支払いの第一選択肢となるよう、機能の改善を継続的に行っています。先ほどお話しした通り、日本には約200兆円の現金を用いた支出があるということですから、この決済手数料収入はまだまだ拡大する余地が大きいと捉えています。
「加盟店向けサービス」は、加盟店の売上増加につながるようなマーケティングソリューションを開発し提供することで、われわれが加盟店からサービス利用料を受け取るものです。具体的には、加盟店の経営をサポートする月額定額制サービス「PayPayマイストア」や、ユーザーを店舗に呼び込むクーポンサービス、店舗のリピーターを増やすためのスタンプサービスを提供しています。このようなサービスを利用いただき、加盟店が売上を伸ばすことができれば、PayPayにも決済手数料やサービス利用料が入る、まさにWin-Winな仕組みです。
「金融サービス」は、スマートフォン決済と非常に相性の良い領域です。支払いという点でいえば、2022年2月に「あと払い」機能をリリースしました。本機能では、支払い後にリボ払いへの変更も可能であり、決済に係る多様なユーザーニーズに対応しながら、手数料収入拡大に努めています。また「少額保険」もスマートフォンの手軽さと相性が良く、今後の成長が期待できるサービスです。例えば、急遽友人の自動車を運転することになったときや、取引先に誘われて久しぶりにゴルフに行くときなどに、「PayPay」のアプリ上から簡単に自動車保険やゴルフ保険に1日のみ加入することが可能です。決済手段として日常使いされている「PayPay」だからこそ、身近な金融サービスとしてのポジションを確立していけると確信しています。

[PayPay収益モデル]の図

黒字化は獲得費をセーブすればいつでも可能

最近では「PayPayの営業利益の黒字化はいつか?」という点について質問を受ける機会が増えました。実は現在のPayPayは、ユーザーや加盟店の獲得費さえセーブすれば、いつでも営業利益を黒字化できる状態です。一方で、先ほどお話しした通り、われわれが見据えているのは、現金での決済が占めている200兆円の巨大市場です。将来のPayPayの企業価値を最大化させるために、今はまだ、顧客獲得の手を緩めるべきではないと思っています。経済性には十分配慮しますが、目先の小さな成功を狙うのではなく、「LINE」のような国民的なサービスになることで、より大きな成功を成し遂げたいと考えています。

「Beyond Carrier」の急先鋒となり株主の皆さまの期待に応えたい

当社はソフトバンクのグループ企業ではありますが、実は「PayPay」のユーザーは携帯キャリアを問わず広く分布しています。これは「PayPay」がサービス開始当初からあらゆる人に利用される「ユニバーサルサービス」を志向してきたことによるものです。ソフトバンクがグループ戦略を考える上で、競合キャリアのユーザーにも幅広く利用される決済サービスをグループ内に持っていることは、非常に大きな強みになるのではないかと思います。当社は今後も自社の成長を追求すると同時に、グループの一員としてさまざまなシナジー戦略をともに推進し、「Beyond Carrier」の急先鋒となっていきたいと思っています。
PayPayは創業から4年が経過し、大きな成長を遂げました。立ち上げにあたっては特に多くの資金を必要としましたが、ソフトバンクを含む当社の株主の皆さまからの多額の出資によりこれを乗り越えることができました。ソフトバンクの株主の皆さまには、これまで多大なるご理解とご支援をいただいたことをあらためて感謝申し上げます。数ある選択肢の中から「PayPay」の将来性に賭けていただいたわけですから、大きなリターンが返ってきたぞ、と思っていただけるような成果を残し、皆さまからの期待に応えたいと意気込んでいます。

中山 一郎
1994年4月、国際デジタル通信(株)(現(株)IDCフロンティア)入社。
2013年4月、同社代表取締役。
2016年3月、(株)一休の取締役副社長に就任。
2018年6月より現職。