増減するトラフィック、急な変更要請 クラウドのポテンシャルを最大限発揮するには
日経ビジネス2017年9月19日号掲載より抜粋したものです。
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クラウドによって、ITの柔軟性は飛躍的に向上した。だが、本当にクラウドのポテンシャルを十分に発揮できているのだろうか。クラウドのスピードに追従できていないという指摘があるのが、固定化されたWANサービスだ。そんな中、ソフトバンクの統合VPNサービス「SmartVPN」、および新アクセスサービス「Ondemand Ether」が、この状況を一変した。ポータルを通じて4タイプのアクセス回線を臨機応変に使い分けることができ、ネットワークのオンデマンド化が可能になる。
ITリソースは柔軟に使えるのにネットワークは固定化されたまま
必要なITリソースやサービスを、必要なときに、必要な分だけ利用する。柔軟かつ俊敏なIT活用を実現するクラウドは、企業のIT活用に対する考え方を大きく変えた。現在、企業経営の重要なテーマとなっている「デジタルトランスフォーメーション」も、クラウドなしに語ることは難しい。
しかし、クラウドを競争力の強化に結び付けるには、単に導入するだけでなく、どのように活用していくかというビジョンを描き、そのために必要な環境を俯瞰的に見る必要がある。
中でも欠かせないのがネットワークの最適化だ。「例えば、ITリソースを柔軟に調達できるクラウドを利用すると、クラウドと拠点間のトラフィックが一気に急増するケースは少なくありません。一方、それに合わせてWANの帯域を増やすには、通信事業者に連絡して、サービスを変更する必要があります。申し込み、工事を行って、広帯域な新しいWANサービスを利用できるようになるまでには2カ月近くかかることもある。クラウドによってITは柔軟性と俊敏性を得たのに、固定的なネットワークは、その特長に追随できていないのです」とソフトバンクの川原 正勝氏は指摘する。
4タイプのアクセス回線を使い分け大きな帯域増減にも対応可能
この問題を解決するために、ソフトバンクが新たに提供を開始したのが、統合VPNサービス「SmartVPN」の新アクセスサービス「Ondemand Ether」である。
そもそもSmartVPN自体が、「Cloud Ready」を基本コンセプトに、クラウドとの親和性を追求してきた。
アマゾンウェブサービス、Microsoft Azure、Microsoft Office 365、そして、ソフトバンクのIaaSである「ホワイトクラウドASPIRE」など、主要なクラウドサービスに直結しているうえ、SDN/NFVといったネットワーク仮想化技術を利用して、必要なセキュリティ対策を施したインターネットゲートウェイやリモートアクセス環境などを柔軟に構築できる。さらに「SmartVPN Web」というポータルを利用して、WANの状態確認や設定変更などをユーザ主導で行うことも可能だ(図1)。
このSmartVPNのCloud Readyをさらに加速させるのがOndemand Etherである。
「最大の特長は、4タイプのアクセス回線が用意されており、文字通りオンデマンドにタイプ間変更できることです」 とソフトバンクの宮脇 猛氏は述べる※。
具体的にOndemand Etherには、帯域を確保する「ギャランティタイプ」、一部帯域を確保しつつ、バースト機能を備えた「スピードタイプ」および「バリュータイプ」、「ベストエフォートタイプ」の4タイプがラインアップされている。ユーザは、前述したSmartVPN Webを通じて、この4タイプのアクセス回線から、その時点で最も適したものを柔軟に選択して利用できるのである。以前のように、申し込みや工事といった手順は必要ない(図2)。
しかも、「スピードタイプ」と「バリュータイプ」のバースト機能は、設定できる確保帯域とバースト上限帯域のメニューが多く、トラフィック変動の大きなケースにも対応可能。アップロードのトラフィックを重視する場合はスピードタイプ、ダウンロード重視の場合はバリュータイプが有効だが、どちらも確保帯域、バースト上限値の組み合わせをきめ細かく設定できる。
「例えば、バリュータイプから一時的にギャランティタイプに変更したり、バリュータイプのまま確保帯域やバースト上限帯域を増減させるなど、柔軟な運用が可能です」(川原氏)。
- ※SmartVPN Webによるオンデマンド帯域変更、タイプ変更は2018年3月予定。また、宅内装置が変更になる場合は、回線の新設が必要。
変化に追従するネットワーク クラウドでできることが拡大
提供開始から間もないが、すでに多くの企業がOndemand Etherに注目している。ある企業は、オンプレミスのデータをクラウドに移行する際のネットワークとしてOndemand Etherの利用を検討。オンプレミスや既存データセンターからクラウドへのデータ転送が活発な移行期間中は、アップロードを重視したバースト通信が可能なスピードタイプを利用しておき、データ移行を終えて、通常利用に移った後は、ダウンロードを重視したバースト通信を行えるバリュータイプに変更するのである。「クラウド移行に適切なネットワークを柔軟に選択しつつ、コストも最適化するという考えからです」と宮脇氏は話す。
また、あるECサイトは、季節繁閑のトラフィック変動に対応するためにOndemand Etherの導入を検討した。同社の年間トラフィックは、年始セール、夏季商戦、年末商戦に大きな山がある。商戦に備えるには、ピーク時のトラフィックを想定した帯域の確保が必要だが、商戦時以外は余剰帯域を抱え込むことになる。そこで、Ondemand Etherを利用して、季節ごとのトラフィック増減に柔軟に対応する計画だ。
Microsoft Office 365のようなサービスとOndemand Etherの親和性を評価している企業もある。新サービスを導入しても、運用の定着までには時間がかかり、利用するユーザ数やトラフィック量が読みにくい。それに対し、Ondemand Etherなら、利用状況とトラフィックの増減を見ながらフレキシブルに対応していくことができる。「コスト面でも、サービスを安定的に利用するという面でもOndemand Etherは有効になります」と川原氏は話す。
クラウドと同じように、ネットワークもオンデマンドに─。ソフトバンクのSmartVPN、およびOndemand Etherは、クラウドの利用拡大によるトラフィックの増減に追従し、そのメリットを最大化する。クラウドの利用範囲もますます拡大し、クラウドによる競争力強化をさらに加速させるはずだ。
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