リテールテックJAPAN 2025 開催レポート
小売DXを加速させるデータ・AI利活用の最前線

2025年3月13日掲載

リテールテックJAPAN 2025 開催レポート 小売DXを加速させるデータ・AI利活用の最前線

小売業の課題を解決するソリューションが一堂に集う展示会「リテールテック JAPAN 2025」が、3月4日(火)から4日間にわたって東京ビッグサイトで開催されました。本ブログでは、データ・生成AI利活用をテーマに出展したソフトバンクのブースで展示していたソリューションのデモの内容やミニセミナーの様子を、小売業の課題に合わせてご紹介します。

目次

不採算店舗を予め予見したり、出店を加速したい・・・「出店ポテンシャルマップ(仮称)」

「不採算店舗にならない出店をしたい」、「調査に時間がかかりスピーディーな出店ができない」「新規店舗の出店は社内ノウハウだけでは限界がある」 など、出店戦略に課題をお持ちではありませんか?
そんなお悩みを解決するために、お客さま別にカスタマイズした売り上げ予測モデルを搭載した「出店ポテンシャルマップ(仮称)」の展示をしていました。

出店ポテンシャルマップ(仮称)展示ブース

「出店ポテンシャルマップ(仮称)」は、専門のコンサルティングとUI、各種統計データが含まれたソリューションで、難しい知識がなくても出店候補地の売上予測や、指定のエリア内でどこに出店すれば売り上げがたつのかを可視化できます。お客さまの売上要因になりうる要素を数100種類まで分解して、お客さまとディスカッションしながら予測モデルをオーダーメイドで作成し、納得感のある提示を行います。

道路単位の通行量データ可視化のデモ画面

道路単位の通行量データも地図上で見ることができました。上の画像では赤い部分が人通りが多く、青い部分が人流が少ないエリアになります。

出店候補地の売上予測
出店候補地の売上予測のレーダーチャート

出店候補地の売上予測は上の画像のように可視化されていました。売り上げに影響する要因のうち、「店舗面積」や「駐車場有無」などの変数のみを入力することで、実際にその場所に出店した場合に、どれくらいの売り上げになるかのシミュレーションができます。
ダミーデータを使用したデモでは、日商50万円分の売り上げになるという結果が出ていました。また、レーダーチャートでこの候補地が既存店の平均と比べて良いのか悪いのかを確認することもできました。これにより、このエリアでの売り上げを客観的に評価することができると言います。

出店余力を可視化したヒートマップ

こちらは出店余力を可視化したデモ画面です。濃い色が出店余力があり、白くなっている箇所は住宅街で出店不可エリアを示しています。人流やメッシュ50mの範囲内に存在する競合店や自社店舗の数を加味し、これまで商圏として考えていなかった場所を新たな出店候補地として捉えます。このロジックに加え、実際に導入した際にはオーダーメイドの予測モデルを踏まえ、より精緻に可視化を行います。こうした情報をヒートマップで可視化することで、どこに出店をすれば高い売り上げが見込める店舗になりそうかを把握できるようになっています。

時間帯別・性別・年代別・ペルソナデータなどの細かい人流データを可視化したグラフ

また国政調査ベースのデータや、Agoopの保有する時間帯別・性別・年代別・ペルソナデータなどの細かい人流データも可視化されていました。

実際にサービスをご利用いただいている飲食業界のお客さまは、「新規出店を加速させたいが、不採算店舗を作ると撤退費用がかかるので、それを何とかしたい」という課題を抱えていました。そこで、新規出店候補地の売上予測のためにサービスをご利用いただいており、満足いただいているそうです。

「出店ポテンシャルマップ(仮称)」では今後、出店戦略から店舗のデジタルマーケティングまで、一気通貫したパッケージ展開を予定しています。さらに、AIを活用したモデルのチューニングも取り入れることを検討していると言います。

>「出展ポテンシャルマップ(仮称)」に関するお問い合わせはこちら
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問い合わせ対応の品質向上と効率化を実現したい・・・「X-Boost(クロスブースト)」

「問い合わせ対応のバラつきをなくして品質向上をさせたい」、「取り扱い商品数が多く、一人一人が全てを把握することが難しい」「オペレーター不足や業務負荷増大に対応するため、問い合わせの効率化をしたい」 など、お客さま相談室やカスタマーサポートでの課題をお持ちではありませんか?
お問い合わせ担当者のそんなお悩みを解決するのが、ソフトバンク株式会社の100%子会社Gen-AX株式会社が開発する照会応答業務を⽀援する「X-Boost」です。

X-Boost展示ブース

「X-Boost」では、商品数が多くてもオペレーターのノウハウを横展開でき、問い合わせ品質の向上や業務効率化が可能になります。

企業で生成AIを導入しても、自社が保有する社内データを十分に活用できず、現場での利用が広がらないケースが多くあります。「X-Boost」は、導入企業が保有するデータの事前学習に加えて、オペレーターなどの現場担当者が実際の業務で利用したログをフィードバックデータとして活用して改善のサイクルを繰り返すワークフローにより、継続的にAIモデルの精度の向上を行います。業務で運用される方々が意識することなく、”AI"が業務の中に溶け込んでいくことを目指し、利用者の使いやすさに一番こだわっていると言います。業務負荷がかからず導入ができて、その後の運用自体も進めていきやすいような機能性になっています。

また、「X-Boost」の特徴については、3つのポイントに絞って紹介されていました。

①高い回答精度 データの構造化や検索拡張生成(RAG)※1、エンベディングモデル※2などの技術により、高い回答精度を実現します。

②LLMOpsによるAIモデルの最適化 導入企業が保有する社内データを活用し、専用のAIモデルを構築します。また、実際の業務現場において、フィードバックと改善を繰り返すワークフローにより、精度を継続的に向上させます。

③データの蓄積による拡張性 現場での利用を通して、自社の業務に合ったデータを蓄積することができます。蓄積されたデータを活用し、今後提供を目指す自律思考型AI SaaS※3など、より高度で複雑なAI SaaSにもスムーズに移行できます。


※1 外部のソースから取得した情報を組み合わせることで、LLMの回答精度を向上させる技術。
※2 単語やテキストなどのデータを、AIが扱いやすいように、数値ベクトルデータに変換する技術。
※3 Software as a Serviceの略。ソフトウエアのインストール不要でインターネットからアクセスするだけで利用できるサービス。

X-Boostの特徴

ブースでは、Web問い合わせ効率化のために導入された小売業界のお客さまの事例も紹介されていました。このお客さまは7,000以上の商品数を取り扱っており、多岐にわたる質問が寄せられていましたが、導入前は1件あたり約15分かかっていた問い合わせが、導入後は約5分に短縮される見込みだそうです。

小売会社様の先行導入事例

「X-Boost」では、まずは問い合わせ業務の効率化からスタートし、将来的にはお客さまがすでにお持ちのデータだけではなく、まだ貯められていなかったデータも用いてデータマネジメントのサイクルをまわしていく機能を拡張していく予定だと言い、これから本格化する「AIエージェント※4時代を見据えて、準備段階としての活用をいただけるお客さまが増えていくのではないかと考えているそうです。


※4 ユーザーの目的の実行のため、自律的にタスクの洗い出しや外部ツールの活用などを行い、動作するAI。

>「X-Boost」の詳細はこちら

客数予測を基に、人員配置の最適化を図りたい・・・「サキミル」×「らくしふ」

「シフト作成にかかる負荷を軽減したい」、「人員配置の最適化をして人件費を抑えたい」 などの課題をお持ちではありませんか?
そんなお悩みを解決するために、客数予測を行う「サキミル」と店舗のシフト管理を行う「らくしふ」を連携させ、来店客数の予測に基づくシフトの自動作成を可能にするソリューションも展示されていました。

サキミル×らくしふの展示ブース

ブースでは各サービスのデモと、サキミルのデータのインプットから、らくしふ独自のアルゴリズムを用いたシフト自動作成のアウトプットまでの連携のデモを見ることができました。

客数予測の課題を解決する「サキミル」

「サキミル」はお客さまの店舗情報に基づいた客数予測を行うサービスです。天候や人流データを利用した予測を行えることが特長で、お客さまの店舗の情報を基に平均90%の精度の予測が可能です。

サキミルのデモ画面

シフト管理の課題を解決する「らくしふ」

「らくしふ」は、店舗のシフト管理サービスで、連携しているLINEやLINE WORKSからシフトを提出することが可能です。
また、店舗管理を行う方のニーズに合わせた機能を豊富に取り揃えており、柔軟なシフト管理が可能です。

らくしふのデモ画面

客数予測を基にシフトを自動作成し、管理者の負担を軽減する「サキミル」×「らくしふ」

「サキミル」の客数予測データを基に、「らくしふ」の特長であるシフト自動作成を行うことで店舗管理者の負担を軽減し、最適なシフト作成ができます。一例ではシフト作成工数を7割、人件費を6%(当社予測値)削減することが可能だと言います。

属人的な知識を基にシフト作成を行ってしまっているシフト管理者の方の負担を軽減できるだけでなく、初めてシフト作成をする方でも、地域の特色や、シフトワーカーの方々のスキルを反映したシフトの作成が可能になります。

今後は、ほかのサービスとの連携も進めることで、一元化された店舗管理ソリューションとしてお客さまにご提案できるように拡大していく予定です。

>「サキミル」の詳細はこちら
>「らくしふ」の詳細はこちら

データ利活用のためのミニセミナー

ソフトバンクブースではこうした展示のほかにも、マイクロソフト社とソフトバンクの共同登壇や、実演販売士のボス水野氏による「データ利活用講座」など、合計7つのミニセミナーが開催されていました。

マイクロソフト社とソフトバンクによる共同登壇のミニセミナーの様子
実演販売士のボス水野氏によるEX向上セミナーの様子

生成AI活用によるEX向上のミニセミナーでは、日々の業務データで手軽に生成AIを活用できる「dailyAI」や、​生成AIを業務利用するための環境構築からUI提供・カスタマイズ・サポートまでの総合支援​を行う​「生成AIパッケージ​」​、質問をしたいときに忙しくて聞ける人がいないという際に、インカムでAIと対話して問題の解決ができる「生成AIパッケージ」と「Buddycom」の組み合わせなどが紹介され、小売業界での具体的な利用方法がイメージしやすいと注目を集めていました。

>「dailyAI」の詳細はこちら
>「生成AIパッケージ」の詳細はこちら
>「Buddycom」の詳細はこちら

まとめ:データとAIが切り拓く小売業界の新たな可能性

小売業界が直面する多岐にわたる課題に対し、データとAIの力で新たな解決策が生み出されています。
今後もソフトバンクでは、お客さまと共にデータ・AI利活用の可能性を追求し、小売業界の発展に貢献していきます。リテールテックJAPAN 2025 でのソフトバンクの展示が、小売業界のお客さまの課題解決の一助となれば幸いです。

ソフトバンク リテールテック2025特設ページ

本ブログで紹介しきれなかった展示ブースや、小売・流通業界向けに役立つソリューションをご紹介しております。

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角田 麻貴
ソフトバンクビジネスブログ編集チーム
角田 麻貴
ソフトバンクにて新規事業開発などを経験後、2021年よりB2Bマーケティングに従事。
イベントやウェビナーの企画運営を担当したのち、2024年よりコンテンツ制作に携わる。

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