【3月3日更新】AI-RAN開発に関するプレスリリース

#AI-RAN #AITRAS

Newsニュース

ソフトバンクは、AI社会を支える次世代のモバイルネットワークの基盤として、2023年に「AI-RAN」のコンセプトを発表しました。AI-RANはAIアプリケーションと無線アクセスネットワーク(RAN)を同一のコンピューター基盤上に統合する革新的なアーキテクチャーです。2024年11月には、このAI-RANの商用化に向けて、オーケストレーター、RAN基盤、AI基盤を主としたAI-RANの統合ソリューションである「AITRAS(アイトラス)」を発表しました。

【11/28 更新】AI-RAN開発に関するプレスリリース:https://www.softbank.jp/corp/technology/research/news/052/

2025年3月、ソフトバンクは、AI-RANの統合ソリューション「AITRAS」の商用化に向けて新たに得られた重要な成果に関する6件のプレスリリースを行いました。この発表は、「AITRAS」の大幅な機能強化およびAI-RANインフラの普及実現に向けた技術開発を含みます。この戦略的イニシアティブには、幅広い戦略の一環として、NVIDIA 、Nokia、Red Hat、Ericsson、富士通などの業界をリードする企業との協業を含む、多数の革新的なアプローチが含まれています。
このページでは、各プレスリリースの関連性について説明します。



「AI-RAN」 3つのコンセプト

「AI-RAN」 3つのコンセプト | 【3月3日更新】AI-RAN開発に関するプレスリリース


「AITRAS」の構成と各プレスリリースの位置づけ

「AITRAS」の構成と各プレスリリースの位置づけ | 【3月3日更新】AI-RAN開発に関するプレスリリース

1. AI技術によるRANの性能向上効果を実証

2024年11月、ソフトバンクは、AI-RANの主要な三つのコンセプトのうち、「AI on RAN」および「AI and RAN」に関する取り組みを発表しました。本件は、三つ目のコンセプトである「AI for RAN」の性能向上効果の実証に関する取り組みとなります。

ソフトバンクは三つのユースケースにおいてAI技術を用いたRAN性能向上の実証を行いました。NVIDIAおよび富士通株式会社と実施をした、基地局側で受信する信号に対してチャネル推定精度を高める「アップリンク(UL)チャネル補間」の取り組みにおいて、実際のスマートフォンでULユーザースループットが約20%向上したことを確認しました。また、端末から送信されるSRS信号のタイミングを予測する「サウンディング参照信号(SRS)の予測」において高速移動シナリオでダウンリンク(DL)スループットを約13%、ユーザー間の相関関係、無線品質、スケジューリングの優先順位などを考慮する「MACスケジューリング」で、ユーザー平均スループットを約8%向上させました。また、これらAI技術によるRANの高性能化の効率的な検証基盤としてシステムレベルシミュレーターを開発しました。これら「AI for RAN」の実現により、さらなる高品質な通信サービスの提供が可能となることが期待されます。



2. 「AITRAS」、ArmベースのNVIDIAプラットフォームを活用したC-RANとD-RANのAI-RANアーキテクチャー実装の完了について

「AITRAS」は顧客やユースケースに応じた柔軟なアーキテクチャーを持ちうるプロダクトです。本件は、「AITRAS」を実装する際のハードウェア構成パターンの多様化を実現するものです。

ソフトバンクは、「AITRAS」の商用化に向けて、富士通との協力の下、NVIDIA Grace CPU Superchipを搭載したプラットフォームにCU機能を実装しました。これにより、1台のCUに収容可能なRU数をおよそ2倍に向上させ、CUの処理に必要なサーバーの台数を減らすことが可能となります。

また、1台のNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipを搭載したサーバーにDUとCUの両方を実装するパターンも実現しました。これにより、「AITRAS」はC-RANアーキテクチャー(DU/CUをデータセンター-などに設置し、複数サイトのRUを接続する構成)に加え、D-RANアーキテクチャー(DU/CUをRUと同一サイトに設置する構成)でも実現が可能となり、エンタープライズの施設などのAI需要が局所的に高まるエリアへ「AITRAS」を最適なコストで導入可能となることが期待できます。ソフトバンクは、これらの構成のAITRASを2025年度から順次屋外の検証環境に導入し、性能検証を進めていきます。



3. ローカルブレイクアウト技術を活用し、「AITRAS」上のエッジAIサーバーへセキュアにアクセスする機能を開発

AI-RANの主要なコンセプトの一つである「AI on RAN」は、ネットワークのエッジ側でAIアプリケーションを展開する技術です。本件は、このエッジAIアプリケーションのセキュアな運用を実現するための技術に関するものです。

ソフトバンクは、5G SAの機能の一つであるローカルブレイクアウト技術を活用し、「AITRAS」上のエッジAIサーバーへセキュアなアクセスができる機能を開発しました。これは、ローカルブレイクアウト技術であるURSP (User equipment Route Selection Policy)と LADN(Local Area Data Network)を用いたエッジルーティングで実現するものです。 URSPを活用して通常のインターネット向けのネットワークと、「AITRAS」上のエッジAIサーバーのそれぞれに対してPDU( Protocol Data Unit )セッションを割り当てることで、パブリックLLMとプライベートLLMの両方にアクセスし、適切に使い分けができるアプリケーションを開発しました。また、LADNを活用して、特定のエリア(例えば工場)内でのみプライベートLLMへのアクセスを可能にするアプリケーションを開発しました。これにより、RAGなど企業の機密データを含むAIの利活用の促進が期待されます。



4. ソフトバンクとレッドハット、AI-RANのデータセンターにおける消費電力を最適化するソリューションを開発

「AITRAS」は、RANやAI用のリソースを動的に最適化するオーケストレーションの機能を備えています。本件は、レッドハットと共同で、AITRASオーケストレーターに消費電力の最適化機能を追加したものです。

ソフトバンクとレッドハットは、 「AITRAS」の仮想化基盤へレッドハットのOSSであるKeplerを導入することで、「AITRAS」で動作するAIアプリケーションなどの電力の使用状況の把握を可能にしました。これにより、AITARSオーケストレーターは、AIアプリケーションの優先度やサーバーの空き状況に加え、消費電力も考慮して動的に最適なリソースを割り当てることができます。今後、日本全国に配置される予定のAITRASデータセンター間の連携を、この進化したAITRASオーケストレーターが行うことで、地域ごとの電力の負荷分散や再生可能エネルギーの利用率向上などに貢献していきます。



5. ソフトバンクとノキア、1台のサーバー上でAIとvRANの共存と最適なリソース割り当ての自動化を実現

この発表は、AI-RANの主要な三つのコンセプトのうち、同一サーバー上にAIアプリケーションとvRANを共存させる「AI and RAN」について、その新たな実装例を示すものです。

ソフトバンクとノキアは、AIアプリケーションとノキアのvRANソフトウェアを1台のGPUサーバー上に実装するソリューションを開発しました。今回、ノキアはvDU(virtualized Distributed Unit)の一部の処理を行うSmartNIC (Smart Network Interface Card)がGPUサーバーで動作するように機能を拡張することで、vRANとAIアプリケーションで共有することが可能になりました。さらに、AITRASオーケストレーターにノキアのEMS(Element Management System)であるMantaRay NMを連携させ、vRANの接続ユーザー数などのリアルタイムデータに基づいた需要を予測し、サーバーリソースの最適な割り当てを自動で行うことを可能としました。これにより、通信事業者は設備利用効率の最適化が可能になります。



6. ソフトバンクとエリクソン、AI-RANの発展に向けた共同研究開発に関する覚書を締結

ソフトバンクとエリクソンは、AI-RANの応用領域における共同研究開発に関する覚書を締結しました。具体的には、エリクソンのクラウドRANソフトウェアをGPUを活用した形で実装・検証を進めることを目指します。また、ソフトバンクが開発中のAI-RAN統合ソリューション「AITRAS」のオーケストレーターと、エリクソンのオープンネットワーク管理・自動化プラットフォームとの連携を図り、AIとvRANアプリケーションの最適な共存手法を実現します。さらに、エリクソンのコンピュートオフローディングフレームワークを用いたロボットAIアプリケーションの制御機能の最適配置にも挑戦します。

この共同研究開発により、ソフトバンクの「AITRAS」とエリクソンのクラウドRANの融合が進み、RAN技術とモバイルネットワークの進化に加え、ロボット産業の発展にも大きく貢献することが期待されています。

ソフトバンクは、これら6つのプレスリリースを通じて、オーケストレーター、RAN基盤、AI基盤を中心としたAI-RAN技術基盤の確立と商用化に向けた重要な成果を発表しました。 さらに、AI-RANの進化を加速させるべく、2025年3月17日〜21日に米国サンノゼで開催されるNVIDIA GTCにおいて、新たな発表を予定しています。 今後もAI-RANの技術革新をリードし、通信技術とAIの融合による新たな価値創造に取り組んでいきます。

関連プレスリリース
・【11/28 更新】AI-RAN開発に関するプレスリリース
https://www.softbank.jp/corp/technology/research/news/052/

関連サイト
・AI-RAN概要
https://www.softbank.jp/corp/technology/research/story-event/057/

・AI-RAN解説動画

Our Research Scope研究領域