プレスリリース 2025年
ソフトバンクとレッドハット、
AI-RANのデータセンターにおける消費電力を
最適化するソリューションを開発
~AIアプリケーションのリソース配置を最適化する機能をAITRASオーケストレーターに追加~
2025年3月3日
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、オープンソースソリューションの世界的なプロバイダーであるRed Hat, Inc.(以下「レッドハット」)と共同で、AI-RANのデータセンター上で動作するvRAN(virtualized Radio Access Network、仮想無線アクセスネットワーク)やAI(人工知能)アプリケーションの電力の使用状況を把握し、消費電力を最適化するソリューションを開発しました。これにより、ソフトバンクが開発中のAI-RANの統合ソリューション「AITRAS(アイトラス)」※1のオーケストレーター※2(以下「AITRASオーケストレーター」)上で、電力の使用状況などを基にAIアプリケーションが利用するリソースを動的に割り当てて、電力消費の最適化を実現することが可能になります。
開発の背景
ソフトバンクは、AI-RANのコンセプトに準拠した、AIとRAN(無線アクセスネットワーク)を同一のプラットフォーム上で動作可能にする統合ソリューション「AITRAS」の開発を進めています。将来的には、GPU(Graphics Processing Unit)サーバーを搭載した「AITRAS」のデータセンターを日本の全国各地に展開し、AIを用いたRANの高度化や品質の向上、さまざまなAIアプリケーションの提供に活用することを目指しています。
このような「AITRAS」のデータセンターで、vRANやAIアプリケーションを安定的かつ最適化して提供するためには、大量の電力が必要です。こうした中、化石燃料による温室効果ガスの排出を削減するために再生可能エネルギーの導入を推進する動きや、カーボンインテンシティー(発電によって発生するCO2排出量の割合)によって環境を評価する動きが活発化しています。一方で、現在は国内のデータセンターの多くが大都市圏に集中していることから、レジリエンスの強化や電力負荷の分散などが求められています。
こうした電力の課題に対して、ソフトバンクとレッドハットは、2024年11月から取り組んでいるAI-RANの発展に向けた共同研究開発※3の一環で、両社の知見と技術を生かして消費電力を最適化するソリューションを開発しました。
消費電力最適化ソリューションの概要
レッドハットは、Kepler※4プロジェクトの電力監視機能をカスタマイズし、Red Hat OpenShiftの機能として提供しています。Keplerは、Kubernetes※5環境で動作し、データセンター内の各クラスターのサーバーの電力情報や、各アプリケーションの電力情報を収集してデータ(メトリクス)を蓄積することで、電力に関する情報をAITRASオーケストレーターなどのソフトウエアに提供することができます。また、Keplerは、GPUチップやMIG(Multi Instances GPU)などによって仮想的に分割されたGPUの使用率に基づいて試算した電力情報も提供します。
ソフトバンクは、Red Hat OpenShiftをベースとする「AITRAS」の仮想化基盤にKeplerのソフトウエアを導入することで、AITRASオーケストレーターが電力関連のメトリクスを活用して、消費電力を最適化できる機能を追加しました。これにより、AITRASオーケストレーター上で、割り当て先のデータセンターや、アプリケーションの優先度、アプリケーションのGPU割り当てサイズなどの従来の条件に加え、電力の使用状況も考慮して、AIアプリケーションを最適なリソースに動的に配置することが可能になります。
例えば、AITRASオーケストレーターでは下記のようなリソース配置の最適化が可能です。
- マルチクラスター環境において、各クラスターの電力の使用状況を把握し、電力の使用が少ないクラスターにアプリケーションを配置
- クラスターごとに消費電力の上限値を設定し、上限値を超えないようにアプリケーションを配置
- クラスターごとに「再生エネルギーで提供可能な電力量」といった値や、カーボンインテンシティーの値を設定し、これを条件に含めてアプリケーションを配置
なお、このソリューションは、「MWC Barcelona 2025」のレッドハットのブースで展示します。

ソフトバンクは、レッドハットとの共同研究開発を通して、GPUリソースの分散配置や消費電力の最適化機能を拡充することで、増加するAIアプリケーションの運用における課題を解決していきます。
ソフトバンクの執行役員 兼 先端技術研究所 所長の湧川隆次は、次のように述べています。
「電力や通信サービスは社会を支えるクリティカルインフラストラクチャー(重要インフラ)として成長しています。『AITRAS』が電力使用量を監視、予測することで、電力の観点から設備の最適化を図り、また、拠点分散によりリスク低減を実現しました。通信と電力が連携することで、未来のAIを支えるインフラストラクチャーを実現していきます」
レッドハットのグローバルエンジニアリング担当 シニアバイスプレジデント 兼 最高技術責任者のクリス・ライト氏は、次のように述べています。
「レッドハットとソフトバンクは、AIとRANの力を結集してネットワークのオーケストレーションと最適化を実現することで、5Gと6Gのユースケースの未来をサポートしています。共通のプラットフォームとしてRed Hat OpenShiftを使用することで、AI-RANは、サービスプロバイダーがAIを活用し、リソース効率の向上と持続可能な電力消費を推進するとともに、ネットワーク全体でAIワークロードをサポートする際のネットワーク運用について、先駆的なアプローチを提供します。
- [注]
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- ※1「AITRAS」の詳細は、2024年11月13日付のプレスリリース「AI-RAN統合ソリューション『AITRAS』を開発」をご覧ください。
- ※2詳細は2024年11月13日付のプレスリリース「AIとvRANを同じ仮想化基盤で動作させるオーケストレーターを開発」をご覧ください。
- ※3詳細は2024年11月13日付のプレスリリース「ソフトバンクとレッドハット、AI-RANの発展に向けて共同研究開発を開始」をご覧ください。
- ※4Kepler(ケプラー)とは、Kubernetes(クバネティス)ベースの、アプリケーションごとの電力消費量を算出するOSS(オープンソースソフトウエア)です。詳細はこちらをご覧ください。
- ※5Kubernetes(クバネティス)とは、アプリケーションのデプロイやスケーリングを自動化したり、コンテナ化されたアプリケーションを管理したりするためのオープンソースのシステムです。
- ※1
- SoftBankおよびソフトバンクの名称、ロゴは、日本国およびその他の国におけるソフトバンクグループ株式会社の登録商標または商標です。
- その他、このプレスリリースに記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。