人手不足の解消方法を労務士さんに聞いてみた

人手不足や残業問題を抱える企業では今どのような改善や対応をすればよいのか、労務管理のエキスパートである社会保険労務士の碓井暁子さんにお話を伺いました。

社会保険労務士法人AKJパートナーズ

うすい あきこ
碓井 暁子
(社会保険労務士法人AKJパートナーズ)

《保有資格》
特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、第一種衛生管理者

《提供業務》
労働・社会保険手続全般
給与計算および給与計算フロー構築、システム化サポート
人事労務相談、人事制度構築、人事労務デューデリジェンス

会社の安定的な発展を目指した人事制度設計・運用設計を行っているほか、バックオフィス業務の効率化支援にも力を入れており、その一環としてHRtechの導入も積極的に実施しています。課題が明確な会社、トラブルが発生している会社だけでなく、「何が課題かわからない」「改善の必要性を感じていない」という企業にも、潜在リスク・将来的なリスクへの対応を含めた提案を行っており、“人に関することは、まず聞いてみよう”とおもっていただけるように心がけています。

採用したくても人がいない

少子化による働き手の減少、働き手のニーズの多様化により、これまでと同じ基準での採用が厳しくなってきた・・・そのような変化を感じている採用担当者さまもいらっしゃると思います。

(碓井)「採用したくても人がいない、というご相談をいただきます。」

そこで、人材採用が思うようにいかない場合の打開策を碓井さんに3つ挙げてもらいました。

  1. 採用人材の間口を広げる
  2. 採用媒体を増やす
  3. AIやRPAなどを活用して業務改善を行う(人事分野の場合、システム化の加速)

この中で「1.採用人材の間口を広げる」について碓井さんは、今なら新型コロナウイルス感染拡大により職を失った方の採用や求める人物像の見直しをするのが良いのではといいます。

それは、理があると筆者も思います。

一般的な見方として新たな働き手としては高齢者や女性が注目されていますが、今からからすぐに「働く」というモチベーションを持ち合わせているのは、派遣社員ややむなく解雇された人材に多いのかもしれません。仮に業界が違っていたとしても業務を経験して備わった能力があるので、育成期間や労力も少なく済むはずです。

(碓井)「即戦力とはいかないまでも、一定の期間を経て戦力になることも可能でしょう。会社にとっても「育成制度を設ける」、または「ブラッシュアップする」よい機会ではないでしょうか。」

教育や適材適所という考え方

人材不足へのの対応としてタレントマネジメントシステムが有効

(碓井)「人材不足への対応として、採用が難しい場合、今いる人材の育成・活用の見直しを行う企業もあります。今どのような人材がいるのか把握するために、タレントマネジメントシステムを導入する企業も増えています。」

タレントマネジメントシステムは、従業員の能力やスキル、経験値の情報を一元管理しておき、組織をまたいで戦略的に人材配置し教育を行っていくことです。労働力や不足している部署、あるいは戦略的に人手をかけたい部署に、他部署から人を集めて教育すれば、外部から人材補充ができないときも労働力の補強が可能です。

(碓井)「取得資格や配属・異動歴などの情報も勿論ですが、何ができるのか、どのような経験をしてきたのかを一元管理することで、埋もれている才能(タレント)を掘り起こすことができるのです。」

社内人材を効率よく活用できる仕組みなので、企業が採用活動に苦戦する中でタレントマネジメントシステムを導入するメリットは大きいわけです。

打ち手を柔軟に実行する

人材の採用が追い付かず、タレントマネジメントシステムで補強しても業務量の多さに人手不足が慢性化してしまう、そのような場合はどうしたらよいでしょうか。

(碓井)「人手不足の解決は、1人がこなせる量を増やす(人材の能力向上、業務の効率化、HRtechなどのシステムの活用)か、外から労働力をもってくる(AI・RPA、外国生産、外国人や高齢者の雇用)かのいずれかだと思います。」

碓井さんからこのようなヒントをいただき、労働力を集める方法や人手不足の解消に効く方法は数多にあることを筆者は感じます。

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大による影響が雇用や生産活動を直撃し、職場に行けなくなったり会食を控えたりと、行動が一変しました。
これまであたりまえだったことが急にそうでなくなってしまうことがある、それを強く感じた一年でした。
人手不足の戦略もどの方法が有効で、実行できるのかは情勢によって変わります。だからこそ臨機応変な対応が必要だと感じるのです。
時代に合わせて新しい手法を柔軟に取り込み変化できる、そんな企業体が理想的なのかもしれません。

(2021年1月 記事作成:村上)

取材協力 社会保険労務士法人AKJパートナーズ 税理士法人AKJパートナーズ
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