公開日:2023年11月21日
「低温調理器」と聞くと、みなさんはどのような印象を持たれますか?
「冷たいものを調理するもの?」「いやいや、肉や魚は低温じゃ調理できないでしょ!」など、それぞれ異なった印象を持たれているのではないでしょうか。
そこで今回は「低温調理器ってなに?」「どうやって使うの?」という疑問にお答えする形で、低温調理器の機能や暮らしに取り入れた場合のメリットなどについてご紹介します。
低温調理器とは、そのままズバリ「食材を低温で調理するための調理器具」です。
低い温度(50~70℃前後)をキープしながら調理をするため、タンパク質の凝固や肉汁の流出を抑え、食材の旨味を損なうことなく、口当たりの柔らかな料理を作ることができます。
使い方も簡単で、水を入れた鍋に加熱温度と時間を設定した低温調理器をセットし、その中に食材を密閉した耐熱バッグを入れ、あとはできあがるまでほったらかしておくだけ。
低温調理は「焼く」「煮る」「蒸す」に次ぐ「第4の調理法」と呼ばれ、ここ1~2年で一般家庭にも浸透しつつあります。
簡単に使えて高級レストラン並みの料理が自宅で堪能できる、というだけで大きなメリットですが、低温調理器のメリットはそれだけではありません。
ここでは、低温調理器を使うメリットを6点に絞り込んでご紹介します。
低温調理器での調理には火を使いません。
水を入れた鍋に低温調理器を取り付け、その中に食材と調味料を入れ真空にした袋を入れておけば、低温調理器が設定した温度まで水をあたため、そのまま湯煎してくれます。
火を使わないため沸騰することもありませんから、鍋の様子を見ている必要もなく、調理中は他のことに時間を使えます。
低温調理器は、火を使わずに安心して時間と手間の節約ができる優れた調理器具といえるでしょう。
低温調理器を使えば、「料理が苦手な方」も「料理初心者さん」も、手軽に美味しい料理を作れます。
難しい火加減の調節をはじめ、炒め具合や焼き加減を自分で確認する必要もなく、レシピどおりに材料と調味料を耐熱バッグに入れるだけで、食材の旨味と柔らかさを兼ね備えた料理ができあがります。
肉や魚に含まれるタンパク質は、それぞれ凝固する温度が異なります。
魚介類は40℃前後でタンパク質が流れ出し、それ以上の温度になると固まりはじめます。肉は65℃前後から固まりはじめ、68℃程度で水分が抜け出します。
低温調理器は時間を掛けてゆっくりと加熱し、設定温度以上にならないよう制御しているため、タンパク質の変性とビタミンやミネラルの流失を抑えます。
食材を低温でゆっくり加熱することで栄養価が保たれ、旨味がじっくりと引き出され味わい深くなります。
低温調理器で使うのは「水」なので、調理が終われば鍋に残ったお湯を捨てるだけで後片付けは完了です。油を使用したフライパンのように、洗剤を使いゴシゴシと洗う必要はありません。
洗剤を使わずに済む、というだけでちょっとした節約にもなりますし、何より後片付けに掛かる時間を短縮できるため、手軽に使用することができます。
低温調理器を使えば、同時に複数の料理が作れます。
作りたい料理の食材と調味料を用意し、別々の耐熱バッグに入れて低温調理器をセットした鍋に入れるだけで、簡単に二品、三品と料理が楽しめます。
設定温度や時間に工夫は必要ですが、基本的には「ほったらかし」で出来上がります。
低温調理器での調理には時間が掛かるため、直接的な電気料などの節約にはつながりにくいと思われるかもしれませんが、少し視点を変えてみましょう。
毎日自宅で料理をしていると、たまに「美味しいと評判のレストランに行きたい!」とか、仕事で目標を達成したご褒美として「高級レストランで食事を楽しみたい!」と思う方は多いでしょう。実際にレストランで食事をするとなると、光熱費など問題にならないくらいの金額が掛かりますよね?
そこで、低温調理器を使うことにより、自宅で簡単に「レストランの美味しい料理」を堪能することができる、と考えるとどうでしょうか。外食で払う金額と比較すると、断然お得だと思いませんか?
低温調理器を取り入れ自宅でレストラン並みの美味しい料理が楽しめるのは、「家計全体の節約」という観点で見れば、充分な「節約術」になります。
低温調理器のメリットをご紹介したところで、次は「それでどんなものが作れるの?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
普段の加熱調理では作ることの難しい「ローストビーフ」や「ローストポーク」をはじめ、サラダチキンや鶏ハム、チャーシューなどの肉料理はしっとりジューシーな仕上がりになりますし、魚介を使ったコンフィやマリネ、ゆで卵やプリンなどのデザート、と多彩な料理が作れます。
低温調理器を使った料理をネットで検索すると、多くのレシピが紹介されていますので、興味のある方は一度調べてみてはいかがでしょう。
メリットの多い低温調理器ですが、やはり少なからずデメリットもあります。
低温調理器を安全に使用するためにも、押さえておきたい重要なポイントを確認しておきましょう。
まず、一番重要なことは「肉や魚には細菌やウイルスが潜んでいる」ということです。
鶏肉ではカンピロバクター、牛肉では腸管出血性大腸菌O157、魚介類ではアニサキスなどの加熱不足による食中毒の危険があります。
鶏肉の場合、加熱殺菌するためには肉の内部温度が75℃になってから1分間、70℃なら3分間、63℃なら30分間内部温度を維持する必要があります。
牛肉では、肉の内部温度が63℃であれば瞬時に加熱殺菌できますが、58℃の場合内部温度を上げるために100分間の時間が掛かり、その後28分間の維持が必要となります。
低温調理をするときは正しい知識のもと、必ずレシピの温度と時間を守るのが大切です。
低温調理器で調理する場合、食材を耐熱バッグで密閉するため食材の水分が抜けにくく、臭みが残ってしまうこともあります。
臭みを抑えるためには加熱する前にハーブやスパイスなどで風味をつけるなど、ちょっとした工夫をしてみると気にならなくなることもあるので、いろいろ試してみてはいかがでしょうか。
前述のとおり、低温調理器での調理には食中毒の観点からも長い時間が掛かります。
フライパンでさっと火を通せばすぐに食べられるものでも、低温調理器を使うと1時間や2時間掛かることも珍しくありません。
しかし、低温調理器は火を使わないため基本的にほったらかしておいて問題ありません。
低温調理器のメリットでも触れたように、食材をセットしたあとは調理が終わるまで自由な時間を有効に活用することもできますので、使い方次第でデメリットをメリットに変えることも可能です。
低温調理器のメリットとデメリットを確認したところで、いよいよ選び方について触れていきましょう。
低温調理器は、850Wのものから1,200Wのものまで幅広くあります。1,000W以上のハイパワータイプは対応水量(温められる水の量)も増えますので、一度に多くの量を調理したい場合はハイパワータイプを購入するとよいでしょう。
ただし、ハイパワータイプは本体サイズも大きく、長さが40cmを超えるものもありますので収納スペースが確保できるか事前に調べておきましょう。
消費電力量の多い他の家電との同時使用はブレーカーが落ちる場合もあるため、使用する際は注意が必要です。
低温調理器は鍋に取り付けて使う調理家電ですが、「ネジ式」と「クリップ式」の2種類がメインとなっています。鍋(耐熱容器)が金属であれば「マグネット式」のものも使えます。
「クリップ式」は鍋のふちをクリップで挟み込むだけなので簡単に取り付けられる一方、鍋に厚みがあると取り付けられないケースもあるため、事前に鍋の厚みとクリップの開閉幅を確認しましょう。
「ネジ式」は鍋のふちに取り付け、ネジでしっかりと固定するタイプ。取り付ける際の手間は掛かりますが安定性があり、また、鍋の形状が多少複雑でもセットできるという汎用性の高さがあります。
「マグネット式」は低温調理器本体の先端部分が磁石になっているもので、鍋の底に付けるタイプですが、付属品としてクリップやネジが付いている場合もあります。
低温調理器は、商品によって設定できる温度や時間が異なります。低価格のものだと温度設定が「強・弱」しかない場合もあるため、0.5~1℃単位で設定できるものをおすすめします。
また、設定時間も秒~分刻みと商品によって違いがあるので、細かく設定できるものを選んだほうが安心して使用できます。
低温調理器を使用する場合、本体の先端が7cmほど水に浸かっている必要があります。お手持ちの鍋が浅い場合、本体を鍋に固定できない場合もあるので購入前に確認しておきましょう。
ただし必ず鍋でなくてはいけない、というわけでもなく、使用条件を満たしている容器であれば問題なくお使いいただけます。
100℃までの耐熱性・耐水性・深さ15~20cm以上・容量5~10L以上であれば水槽や耐熱容器でも代用できます。低温調理器なのでお湯の熱さで変形することはほぼないでしょうが事前に確認しておいたほうが安心です。本体が水没すると故障の原因となりますので、しっかりと固定できるものを選んでください。
やはり頼りになるのは実際に使用している方のレビューです。ネットで検索すると値段や使い勝手、作った料理の写真なども見つけることができますし、ショップの人気商品ランキングなども参考になるでしょう
ある程度の目星を付けてから実店舗で商品を手に取り、選んでみるのも良いのではないでしょうか。
今回は低温調理器のメリットとデメリット、購入の際の選び方などについてご紹介させていただきました。自宅で簡単にローストビーフやサラダチキンが作れると、いつものダイニングテーブルが華やかになる回数も増えるかもしれません。
昨今、食品だけでなく調味料や飲料の値上げに関するニュースを見聞きする機会も増え、家計に及ぼす影響がいつまで続くのか、頭を抱えていらっしゃる方も多いと思います。しかし前述のとおり、低温調理器を導入することで、後片付けにかかる水道代や外食費を抑えることは、家計全体での立派な「節約術」であると言えるのではないでしょうか。
ただし、食中毒の危険性も充分に理解し、設定温度や時間を正しく守って使用しましょう。
電気圧力鍋と同じく、低温調理器も「ほったらかし」が可能なので、自由に使える時間で何をしようか、と考えるだけでも心に若干の余裕が生まれます。
忙しい現代人のために家電もどんどん進化していきますが、その傾向を考えるに私たちに必要なのは「時間」というものが生み出す「心の余裕」なのかもしれません。