公開日:2018年3月2日
明治時代に、日本で初となる火力発電所が誕生して以来、さまざまな種類の発電所が運転していますが、そもそも『発電』とはどのようなしくみで行われているのでしょうか?
今回は、発電のしくみについて、概要を紹介したいと思います。
発電の方法は、実験段階の細かいものを合わせると数百にも及ぶと言われています。
さすがにすべてはご紹介できないので、その中でも主要な6つの発電方法について説明していきます。
なお、変わり種の発電方法につきましては、以前の電気の豆知識で紹介しておりますので、興味のある方は是非そちらも読んでください!
火力発電の基本的な原理は、
①燃料を燃やす
②燃焼で得られた熱エネルギーからボイラーで水蒸気を発生させる
③水蒸気で(蒸気)タービンを回す
④タービンの回転から電気エネルギーを取り出す
というものです。
この方式を「汽力発電」と言いますが、火力発電ではこの「汽力発電」が主力となっています。
発電に使う主な燃料は、石炭/石油/天然ガス (LNG)といった「化石燃料」と呼ばれるものです。
ちなみに、日本の電気の8割以上は火力発電に頼っています。
では、火力発電にはどのような長所と短所があるのでしょうか?
【火力発電の長所】
火力発電の長所は、安定的に電力を供給でき、扱いやすい点にあります。
電力の需要量に応じて出力の上げ下げが調整しやすく、季節や時間帯によって変動する需要に対応することができます。
【火力発電の短所】
ものが燃えると煙が出ますよね。
煙の成分は燃えるものにもよるのですが、化石燃料が燃えると硫黄酸化物や窒素酸化物などを多く含んだ煙を発生します。
これが、地球温暖化につながると言われ、火力発電の大きな課題と言えます。
実用されているものはほとんど見かけなくなりましたが、「田舎の田園地帯にある水車」と言ったらイメージしやすいと思います。
水力発電の原理は、まさにあの「水車」です。
かんたんに言ってしまえば、水の力で水車を回転させて、その回転動力で発電機を動かすのです。
続いて水力発電の長所と短所について説明します。
【水力発電の長所】
水力発電には燃料費がかかりません。
正確に言うと、発電所の建設などには当然お金がかかりますが、自然の水の流れを用いて発電しているケースが多いので、火力発電のように燃料費がかかることはありません。
また、水力発電と言うと大きなダムで行っている様子をイメージする方も多いと思いますが、実際には川や用水路の流れを使った小規模なものを数多くあります。
水の流れさえあれば発電を行えるというお手軽さも長所の一つです。
【水力発電の短所】
水力発電にとって、もっとも重要なものは「落差」です。
高いところから低いところへ水が落ちる自然原理を利用して発電しているので、落差が少ないと発電力も落ちます。
つまり平地ではなく、山間部に発電所を建設する必要があるわけです。
山間部に発電所を造ると、ダムの建設やそこまでの送電線敷設の必要がありますので、その分の費用は余計にかかります。
また、発電所の建設にともなって、美しい景観や周辺の生態系などを壊してしまうリスクも短所と言えるでしょう。
東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故により、一時、すべての操業を停止した日本の原子力発電所。
では、原子力発電とはいったいどういったものなのでしょうか?
原子力発電の発電原理は、
①原子炉で核燃料の原子核を分裂させる
②分裂時に発生した熱を利用して水を温めて水蒸気を発生させる
③その水蒸気で(蒸気)タービンを回転させて、発電
となっています。
つまり「火力発電のしくみ」でご説明した「汽力発電」と同じですね。
しくみは火力発電と同じですが、火力発電では化石燃料を燃やすのに対し、原子力発電は核燃料を核分裂させています。
燃料にはウランやプルトニウムが用いられるのですが、この燃料が大きな問題です(後述します)。
【原子力発電の長所】
汽力発電でありながら、原子力発電の場合は大気中に硫黄酸化物や窒素酸化物などの物質を放出しません。
つまり、地球温暖化への影響がないということです。
また、発電効率も高く、一般的な汽力発電と比較すると半分程度のコストで発電可能と言われています。
【原子力発電の短所】
みなさんは、「トイレのないマンション」という言葉を聞いたことがありますか?
原子力発電の課題は、すべてその材料(核燃料)に起因しています。
原子力発電所は、よく「トイレのないマンション」という例えで皮肉されます。
それは、使用した後の燃料が高濃度の放射性物質を含んでおり、その処理方法が(国内では)確立されていないためです。
また、使用前の核燃料も犯罪、事故、災害などにより何らかの形で損なわれることによって、自然環境や人体などに大きな被害をもたらす原因となります。
【原子力発電所の事故】
皆さんも2011年3月11日の東日本大震災とそれにともなって発生した福島第一原子力発電所の事故は記憶に新しいと思います。
原子力発電所は、さまざまな原因で事故が発生した際に周辺に対して計り知れない影響を及ぼします。
復旧には数十年〜数百年かかる可能性があり、その対策費用は膨大なものとなります。
ほかの発電方法に比べて、低コストで発電が可能だと言われている原子力発電ですが、発電自体にかかるコスト以外に、事故が発生しないようにするためのコストや発生した際の対策費用も考えると、果たして本当に低コストなのか、という議論があるのも事実です。
ここから先は、再生可能エネルギーについて紹介します。
紹介するのは、太陽光発電・風力発電・地熱発電です。
太陽光発電は、太陽光を電力に変換して発電しています。
機器の構成としては、太陽電池で光を電力に変えて、パワーコンディショナー(インバーター)で電圧や周波数を調整しています。
【太陽光発電の長所】
太陽光はほぼ無限に存在していますので、発電に際しての燃料費はかかりません。
また、発電機器の設置条件としては、「太陽光が当たる場所」くらいしかないので、屋根の上など利活用していないスペースを有効活用できることも、大きな長所と言えるでしょう。
【太陽光発電の短所】
太陽光発電は太陽光がなければ発電量はゼロになってしまうので、夜間や雨天時は発電できませんし、それ以外の理由でも太陽光パネルが何かで遮断されると発電効率は低下してしまいます。
雑草がのびてパネルを覆ってしまったり、雪がパネルの上に積もったりしてしまうと発電量が減ってしまいます。
つまり、極めて不安定な発電方法と言えます。
再生可能エネルギーの多くは、その材料の特性上、安定的に電気を生み出せません。
その問題を解決するためには、発電施設に大型の蓄電池を併設するなど何らかの対策が必要となります。
風力発電には、「洋上型」と「陸上型」の2種類があります。
両方とも発電の原理は同じで、風の力で風車を回転させて、発電機を稼働させることにより電力を生み出しています。
なお、世界で導入量が多いのは欧州(スペイン、ドイツ、デンマーク)で、最近では中国でも導入が進んでおります。
【風力発電の長所】
太陽光発電と同じく、風は無限に発生し続けるので、燃料費がかかりません。
しかも、太陽光と大きく違い、風が吹いていれば夜間でも発電が可能です。
【風力発電の短所】
夜間でも発電可能など、太陽光発電にはない長所がある一方で、風量(風力)によって発電量が影響を受けるという短所もあります。
また、台風などによる想定外の強風によって、機器が破損してしまう恐れもあります。
日本は世界でもまれにみる火山大国です。
地球上に約1,500あると言われている活火山のうち、気象庁のホームページによると日本には111の活火山があります(2018年1月末現在)。
火山は、地震などの自然災害の原因になる一方で、さまざまな恩恵を私たちにもたらしてくれますが、その一つが地熱です。
地熱発電は、マグマから発せられる地熱によって蒸気を発生させてタービンを回転させ発電しています。
地熱発電も汽力発電の一種です。
【地熱発電の長所】
日本には活火山が多いので地熱が発生しやすく、また地熱は天候や時間による制限を受けにくいので、操業を開始してしまえば地熱発電は安定的な発電方法です。
ちなみに日本の地熱資源量は、世界第3位(2,347万kw)と言われています。
【地熱発電の短所】
安定的な発電量を得るためには綿密な地質調査が必要で、開発にも膨大な費用がかかります。
2016年6月に資源エネルギー庁が発表した資料『地熱資源開発の現状と課題について』 には、「地熱発電を行うためには、地下1,500~3,000mに存在する高温蒸気を掘り当てる必要があるため、開発にかかるリスクやコストが非常に高い。」という記載があります。
また、候補地が国立公園や国定公園に指定されていることが多く、普及のハードルとなっています。
世界でも有数の火山国である日本ですが、豊富な地熱資源を十分に活かすにはまだまだ時間がかかりそうですね。
いかがでしたでしょうか?
今回は様々な発電(火力・水力・原子力・太陽光・風力・地熱)について、発電のしくみとその長所・短所を紹介いたしました。
説明はその概要だけにとどまっておりますが、日々暮らすうえでこれだけ知っていれば十分すぎます!
これからも、電気に関する豆知識を更新していく予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございました!