公開日:2022年6月8日
更新日:2023年8月4日
6月に入って、大手電力会社のうち半数の5社が電気代を値上げすることになりました。その背景には、ロシアのウクライナ侵攻の影響で原油や液化天然ガス(LNG)といった火力発電の動力源となる燃料の輸入価格上昇などがありますが、何より気になるのは6月からの自宅の電気代です。
特に冷蔵庫は家庭内での電気使用量が全体の14.2%と一番多く、点けたり消したりできる照明に比べて、24時間365日ずっとつけっぱなしで稼働させなければいけないのも気になるところ。
そこで、値上げにも負けず、冷蔵庫の電気使用量や電気代を抑える方法について情報を集めてみました。本格的な夏に向けて、ますます活躍が期待される冷蔵庫の、電気代をもっとおトクに安くするヒントを見つけてください。
省エネ効果の高い最新の冷蔵庫は、10年前の機種と比較すると消費電力が低く抑えられているため、ほとんどの場合、古い型の冷蔵庫より電気代が安くなっています。
さらに、使い勝手のよさも格段に進化してきました。
それでは、この10年ほどの間に開発された最新冷蔵庫の先進機能について、ご紹介しましょう。
最新の冷蔵庫は、棚スペースやドアポケット、卵ケースなどさまざまな部分で収納の工夫が進んでいるため、見た目以上に収納力があります。おうち時間が長くなって自宅で料理を作る機会が増えたという人も、収納力たっぷりの冷蔵庫があればまとめ買いをしても安心です。
庫内が広々使えるので、残った料理を鍋ごとしまうことができたり、広い冷凍庫には安いときにまとめ買いした冷凍食品をストックしておけるなどの利点があります。
さらに最新機種の場合は、容量が大きくても省エネ仕様になっているため、経済的。キッチンのスペースを無駄なく使えるように、ドアの幅を狭くするなど省スペース設計の冷蔵庫が多くなっているのも特徴です。
野菜室はもちろん、0℃付近まで温度を下げてヨーグルトなどを保存する「チルドルーム」や、-3℃付近まで温度を下げて肉や魚などを半凍結・微凍結状態にする「パーシャルルーム」が充実。
最適な湿度を保持したり、細かな温度制御を行ったり、中には除菌機能などを備えたものもあり、多くの工夫で食品の鮮度を長期間キープできる機能が揃っています。
急速冷凍機能も格段に向上して、熱いものを冷ますことなく冷蔵庫にしまえるものが増えています。炊き立ての熱々ご飯や作りたての料理をそのまま冷凍できるので、冷ましている間に水分が蒸発したり、風味が損なわれることもなく、おいしいうちに冷凍できて便利です。
このほかに、手早く材料の粗(あら)熱を取ることや、冷凍したものを取り出してすぐに包丁で切れる保存機能などもあるので、調理もスピーディに進められます。
最新の冷蔵庫はデザイン性も大幅にアップしています。以前は「白物家電」と呼ばれて白一色だったのが、カラーも豊富に揃うようになりました。
ドアの表面はガラス、銅板、ステンレス調、木目調などいろいろなタイプがあり、そのスタイルも片開きや両開き、さらに観音開きなど、デザインや設置する場所によって使いやすいレイアウトを選べます。
また、スリムタイプなど設置するスペースに合わせた冷蔵庫や、スタイリッシュなものからレトロ感のあるものまで、キッチンの雰囲気に合う冷蔵庫を選ぶこともできるようになりました。
最新型の冷蔵庫の機能についてご紹介しましたが、現在は先にも書いたとおり、現在は省エネ機能の進化によって冷蔵庫の消費電力が容量に比例して増えるという時代ではなくなってきています。
それでは、古い冷蔵庫と最新型の冷蔵庫では、どのくらいの違いがあるのでしょうか。
調査によると冷蔵庫の平均使用年数は約12.9年というデータがありますが、最近の冷蔵庫は10年前の製品と比較すると、全体に消費電力や電気代が少なくなっています。
例えば、内容量が401~450L(リットル)の冷蔵庫の場合。 年間消費電力量が2010年には470~520kWh(キロワットアワー)/年だったのが、2020年には294kWh/年となり、約37%~43%も減って省エネになるというデータもあります。これを年間の電気代として考えると、約4,740円~6,090円もおトク!
「そんなに安くなるなら、すぐに買い替えを!」と言いたいところですが、やはり安価なものではないので購入となると慎重に検討する必要があります。
このあとは、どんな技術の進化によって新旧に違いが出てきたのか、そして、どんなことに気を付けて購入すべきなのかについて、ご紹介します。
省エネ技術が格段に進化した背景には、機能の向上にかかわる代表的な理由が2つあげられます。
従来の冷蔵庫は、モーターやコンプレッサーといった回転部品の回転数が一定だったため、状況が変化しても必要以上に回転がかかることがありました。これに対して最新の冷蔵庫は、回転数を適切にコントロールするインバーター技術を取り入れたことで、効率よく運転ができるようになったのです。
ドアの開閉による変化や冷蔵庫内と室内の温度差にも対応して、モーターの回転数を制御しながらきめ細かい運転ができるので、冷え具合に合わせた冷却力で省エネ効果を発揮できます。
冷蔵庫の外壁と内壁の間には、室内の熱気を冷蔵庫に伝えず、冷蔵庫の中の冷気が室内に漏れるのを防ぐために断熱材が使われています。最近ではノンフロンの真空断熱材を組み合わせるなどして高性能な断熱材を使うようになったので、断熱性が高まり省エネ効果も上昇しました。
それでは、実際に冷蔵庫を購入する際の選び方について、チェックポイントをご紹介しましょう。
冷蔵庫を選ぶときにまず考えなければいけないのは、やはりサイズ(容量)です。例えば3人家族なら430~480L(リットル)、4人家族なら500~550Lというように。
さらに、買い物の頻度、買い置き食材の量など、それぞれの暮らしに合わせたサイズの冷蔵庫が必要です。家族の人数やライフスタイルをもとに、選びましょう。
冷蔵庫にかかる電気代はサイズによって違いはあるものの、1年間で7,000~10,000円ほどかかるというのが目安です。
大型の冷蔵庫は販売価格もそれなりに高額となりますが、その分省エネ機能も充実していて年間の電気代は安くなる傾向にあります。省エネと10年間のランニングコストを考えれば、必要最低限のサイズにこだわるより、大き目サイズも視野に入れていいかもしれません。
冷蔵庫の容量やサイズに関して詳しく知りたい場合は、こちらをご覧ください。
最新の省エネ型冷蔵庫に買い替えることで、年間の消費電力量は抑えられ、電気代の大きな節約にもつながります。そろそろ10年という人も、買い替えを考えている人も、おトクで便利な最新の省エネ冷蔵庫で電気代を安くしてはいかがでしょうか。
参考までに、10年前の冷蔵庫と最新冷蔵庫の違いをまとめた表をご紹介しますので、ご自宅の冷蔵庫と比較してみては?
要素 | 10年前の冷蔵庫 (2012年) |
最新冷蔵庫 (2022年として) |
主流の容量 | 400Lクラス以上が主流に | 500L以上が主流で600Lクラス以上も |
---|---|---|---|
鮮度保持 | 冷蔵室 | 冷風で乾燥した庫内 | 湿度を保持する工夫をしたタイプもあり |
野菜室 | ラップ包装必要 | ラップ包装不要 高湿保存、栄養素アップのタイプも エチレンガスを減らせる工夫がある |
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冷凍室 | 急冷機能 | 急冷機能だけでなく、様々な冷凍保存機能 | |
特定低温室 | チルドが主流 | チルドや氷温、パーシャルなど 様々な温度帯で生鮮食品の鮮度長持ち |
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使い勝手 | 製氷 | 自動製氷機能がほぼ定着 | 自動製氷機能は標準装備 洗える部品が多くなりより清潔に ミネラルウォーター使用可能 独立製氷室も標準化 |
貯蔵室 | 引き出し式の冷凍室が定着 | 引き出し式冷凍室が標準も、様々な形態と レイアウト、温度が切り替えられる小部屋が ついているタイプも |
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収納性 | 大型化は進むけれど・・・ 収納する大きさや量は 限られていた |
食品の形態や使用状況に合せて、 棚やポケットの位置を変更可能 大量収納でも、ドアの開け閉めは軽々! |
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デザイン | 形態 | 6ドアも定着し、 観音開きが主流に |
6ドアの観音開きタイプが主流 ガラス棚が登場しお手入れもしやすく 多様なレイアウトや形態が選べる |
外装 | 鋼板タイプが主流 | ガラスタイプが多くなってきている 高光沢ドア・柄・ストライプなど高級家具並みの質感 |
実際に、すぐ買い替えとはいかなくても、現在の冷蔵庫も使い方次第でもっと省エネ効果を高めて電気代を安くする方法があります。生活の中でちょっと意識して続けていけば、年間の消費電力量も減って電気代も節約できるので、ぜひ試してみてください。
最新の冷蔵庫では熱いままでも急速冷凍できるものが増えていますが、庫内の温度を上げないためにも基本的に熱いものはいったん冷ましてから冷蔵庫に入れましょう。夏は、煮出した麦茶などを早く冷やしたくてつい熱い状態で入れてしまいがちですが、庫内だけでなく、周囲にある食品にも熱が伝わって影響をおよぼす可能性もあります。さらに、熱いものを冷やすために余分なエネルギーが消費されるデメリットもあるので、冷ましてから保存するクセをつけた方が節約にもつながります。
まとめ買いなどで冷蔵室に食品を詰め込み過ぎると、冷気の流れが妨げられて均一に冷えなくなります。そうなると電気のムダにもなるので、冷蔵室の奥の壁が見える程度の隙間を空けて食品を入れるのが省エネのコツです。
庫内に食品を詰め込んだ場合と半分量にした場合の比較で、半分にすると年間43.84kWh分の省エネ効果があり、約1,180円の節約になるというデータもあります。週に1回程度は、詰め込み過ぎていないかチェックするのも有効です。余裕を持ったレイアウトで、効率的に省エネと節約を実現しましょう。
冷蔵庫とは逆に、引出し式の冷凍庫の場合は食品をしっかり詰め込んだ方がよく冷えます。隙間なく食品を入れることで、食品同士がお互いに保冷し合うため、ドアの開閉による温度上昇の影響を抑えることができるのです。
冷蔵室はできるだけ手前の中心部分にスペースを空けるようにして、「コの字」を作るような形で食品を収納すると、奥まで見やすくなって探しやすくなります。冷蔵室は下の方に冷気が貯まりやすいので、より冷やしたい食品は下段に置くようにしてください。また、水分の多い食品は冷気の吹き出し口付近に置くと凍結の恐れがあるので、注意が必要です。
冷蔵庫に入れていることで安心して、消費期限が過ぎた食品をいつまでもしまっていたという経験はありませんか。このほか、缶詰やびん詰、調味料など、未開封であれば冷蔵庫に入れる必要のないものが入っているのもスペースのムダです。不要なものを出せば、空間ができて冷気の流れもよくなるので、庫内は定期的に整理を行いましょう。
冷蔵庫内の温度設定が「強」になっていたら、「中」や「弱」など控えめにした方が消費電力は小さくなります。周囲の温度が22℃の場合、設定温度を「強」から「中」にしただけで、年間61.72kWhの省エネ効果があり約1,670円の節約になったというデータもあります。夏場などで外の温度が高いと冷えにくいようにも感じますが、「中」設定でも十分に機能するので、食品の傷みに注意しながら調整してください。
冷蔵庫のドアを何度も開閉すると、その都度冷気を逃がすことになるので電気もムダになります。食品はなるべく必要なものをまとめて取り出すようにして、すばやく開閉しましょう。よく出し入れするような食品や調味料は、取り出しやすい手前に置くと便利です。開閉の回数を半分に減らすと約12%、時間を半分に減らすと約5%、それぞれ消費電力量が減ったというデータもあり、ムダのないすばやい開閉を心がけることが省エネになります。
冷蔵庫のドアパッキンは外れたり破れたりしない限り交換は不要ですが、汚れやキズなどで開閉に問題がおきないよう、こまめに掃除をしましょう。
また、冷蔵庫の背面や底面にある放熱部分のホコリを取る掃除も、半年~1年に1回くらいのペースで行うのがおすすめです。ホコリがたまっていると、冷却力が落ちたり、消費電力が余計に掛かる場合があります。冷蔵庫にはキャスターが付いているので、前にずらしてから背面のホコリを掃除機できれいに取りのぞいてください。
冷蔵庫を置く場所によっても、省エネ効果には差が出ます。直射日光の当たる場所や、ガスコンロなど熱源が近くにある場所は避けましょう。冷蔵庫の周辺の温度が30℃から35℃に上昇したことで、約47%も消費電力量がアップしたという例もあります。
周囲に隙間がないと食品から奪った熱を放熱しにくくなって、冷えにくくなるので、十分なスペースを取って設置するのもポイントです。冷蔵庫の上部と両側面が壁に接している場合と片側だけ接している場合を比較すると、年間で45.08kWhの省エネになり、約1,220円の節約になるというデータも。
環境省では5センチ以上壁から離して設置することを推奨しているので、目安にしてみてはいかがでしょう。
今回は、夏を前にした電気代の値上げに際し、「冷蔵庫」についてのさまざまな情報をご紹介してきました。
その中で、節電効果の高い最新の省エネタイプ冷蔵庫に買い替えたり、使い方を工夫しながら従来タイプの冷蔵庫を使い続けたり、それぞれに対策のヒントを見つけてもらえたら、と思います。
自分に合った対策で電気代を抑えて、冷蔵庫とさらに賢くおトクに付き合ってください。