公開日:2022年1月31日
更新日:2024年12月18日
2024年8月から3ヵ月間にわたって実施された「酷暑乗り切り緊急支援」は、10月使用分で終了しました。政府による補助がなくなるため、今後は各家庭で電気代を抑えるための工夫をする必要があります。
今後の資源価格や国際情勢次第では、電気代が高騰する可能性があります。家計への負担を抑えるためにも、電気代を節約する工夫を行いましょう。
この記事では、ここ数年の電気代や家庭でできる節電対策などを解説します。電気代を抑えたい方に役立つ内容となっているので、参考にしてみてください。
暑い夏を乗り切るための支援として、2024年8月使用分・9月使用分・10月使用分の電気・ガス料金を補助する「酷暑乗り切り緊急支援」が行われていました。
「酷暑乗り切り緊急支援」で行われた、電気代・ガス代の値引き単価については下記の通りです。
電気代の値引き単価 | 都市ガス代の値引き単価 | |
---|---|---|
8月・9月使用分 | 低圧の電気代:4.0円/kWh 高圧の電気代:2.0円/kWh |
17.5円/㎥ |
10月使用分 | 低圧の電気代:2.5円/kWh 高圧の電気代:1.3円/kWh |
10.0円/㎥ |
2024年10月使用分で補助は終了しましたので、11月使用分(12月請求分)以降は電気代が値上がりしたように見え、想定よりも高くなる可能性があります。
環境省の調査によると、令和3年度の世帯あたりの年間電気消費量は4,175kWhでした。1ヵ月あたりの平均は約348kWhとなるため、8月・9月使用分は約1,392円、10月使用分であれば約870円が値引きされていた計算になります。
政府の支援がなくなる以上、電気代の負担を軽減するために各家庭で電気の使い方を工夫することが重要です。
また、今後再開する可能性もあります(※)ので、政府の動向にも注目しておくとよいでしょう。
特に、気温が下がり暖房の使用頻度が増える季節は、電気代が高くなりがちです。総務省統計局「家計調査」によると、2023年6月~2024年3月の月別・電気代平均額は1月12,376円、2月13,639円、3月13,780円と、2023年6~8月の月別・電気代平均額9,306円よりも高く、夏場より冬場の方が電気代が高くなる傾向があることが示されています。寒い時期を迎えると、より節電を意識して暮らすことが電気代を節約するポイントだといえるでしょう。
令和6年11月22日に「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」が閣議決定された旨が、経済産業省資源エネルギー庁サイトにて発表されました。
この施策の一つである「電気・ガス料金支援」によって、2025年1月~3月使用分の電気・ガス料金が値引きされることになります。値引き単価はそれぞれ以下のように発表されています。
電気代の値引き単価 | 都市ガス代の値引き単価 | |
---|---|---|
2025年1月・2月使用分 | 低圧の電気代:2.5円/kWh 高圧の電気代:1.3円/kWh |
10.0円/㎥ ※ |
3月使用分 | 低圧の電気代:1.3円/kWh 高圧の電気代:0.7円/kWh |
5.0円/㎥ ※ |
昨今は、さまざまな要因で電気代が高騰しています。電気代が高騰している主な理由を解説します。
電気代は、主に以下の要素で構成されています。
電気代 | 基本料金または最低料金 |
---|---|
電力量料金 | |
燃料費調整額 | |
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金) |
電力量料金、燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金は、1ヵ月の電気の使用量に応じて算定されるので節電により節約が可能です。
なお、電気代の内訳に関しては以下の記事で詳しく解説しているため、あわせて参考にしてみてください。
基本料金(または最低料金)・電力量料金が値上がりしている主な理由は以下のとおりです。
・託送料金の値上げ
託送料金とは、小売電気事業者が送配電事業者に支払う送配電網の使用料です。値上げに伴って小売電気事業者の負担が増加するため、利用者である一般家庭の電気料金に転嫁されます。
このように、小売電気事業者や電力会社を取り巻く環境が、基本料金(または最低料金)・電力量料金へ影響を与えているのです。
燃料費調整額が値上がりしている主な理由は以下のとおりです。
・液化天然ガス(LNG)や石炭価格の上昇
・円安の進行
日本では、電源構成の70%以上が液化天然ガスや石炭、石油などの天然資源を燃料とする火力発電です。天然資源が乏しい日本は、液化天然ガスや石炭などを海外から輸入しなくてはいけません。
しかし、世界のエネルギー情勢に影響を与える事象は、さまざまな要因・場所において発生しています。不透明な部分があるとはいえ、今後の世界情勢次第ではエネルギー価格が高い水準で推移する可能性が考えられるでしょう。それに伴って燃料費調整額も高くなり、家計の負担増につながる事態が起こり得ます。
さらに、円安によるエネルギーを調達するコストの上昇も、電気代へ影響しています。
円安により発生したコスト増は最終的に消費者へ転嫁される可能性もあるため、為替も電気代へ影響を与える点を押さえておきましょう。
電力会社には、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの買い取りが義務付けられています。買い取りにかかる費用を家庭や企業が負担するのが、再生可能エネルギー発電促進賦課金です。
2024年度(2024年5月分~2025年4月分)の再生可能エネルギー発電促進賦課金は3.49円/kWhであり、2023年度(2023年5月分~2024年4月分)の1.40円/kWhと比較すると2.09円/kWhの上昇となりました。
再生可能エネルギー発電促進賦課金が上昇している理由として、再生可能エネルギーの導入が進み、 電力会社が買い取るコストが重くなっている点が挙げられます。
増加したコストは、最終的に消費者の電気料金に転嫁されるため、再生可能エネルギーの発電量も電気代に影響を与えているのです。
1ヵ月の電力使用量が400kWhだった場合の再生可能エネルギー発電促進賦課金負担額は、月額で1,396円、年額16,752円となります。今後も再生可能エネルギー発電促進賦課金の値上げが続けば、家庭の電気代負担が重くなると見込まれるでしょう。
電気代が変動する理由はさまざまですが、今後も電気代が劇的に安くなる状況にはならないと考えられます。
経済産業省によると、石炭や天然ガスの市場価格は2022年に急騰したときの水準からは下落したものの、2010年代後半に比べて2~3倍の水準です。また、為替レートも円安の状況が続くと、家庭への負担が重くなると考えられるでしょう。
日本はエネルギーの大半を海外からの輸入に頼っている以上、原材料価格の高騰や円安による影響は避けられません。不透明な部分はあるとはいえ、電気代の高騰がある可能性を想定して、電気代を節約する工夫が求められます。
電気代の高騰に対処するためには、日頃から節電を意識することが大切です。各家庭で行える電気代を節約するための対策を解説します。
寒い時期は、夜が長くなるため暖房や照明をつけている時間が長くなりがちです。
冬場におけるエアコンを含む暖房の電力使用量は、家庭の電力使用量の約3割を占めます。厚手で丈の長いカーテンを使用したり、断熱シート・フィルムを貼ったりして、暖めた熱を逃がさないような工夫をしましょう。
さまざまな暖房器具の電気代節約につながる使い方をご紹介している記事がありますので、ぜひ参考にしてください。
エアコンを暖房運転するときの電気代と節約する方法
記事を読むオイルヒーターの魅力と電気代を節約する方法を紹介!
記事を読むセラミックファンヒーターの電気代を最小限に!今すぐできる節約術
記事を読むホットカーペットの電気代はいくら?節電方法も解説
記事を読むこたつの電気代を抑える賢い使い方を解説
記事を読む家電製品のスイッチをこまめに切れば、電気代の節約効果を得られるでしょう。
使っていない時間はスイッチを切るだけでなく、コンセントからプラグを抜いて待機電力を抑えることも効果的です。
環境省によると、年間を通じて家庭で消費される待機時消費電力は、全体の約6%を占めます。待機電力をいかにして減らしていくかを意識することも、電気代を節約するうえで重要です。
長時間使わない家電製品は意識的にコンセントからプラグを抜いたり、スイッチつきの電源タップを活用したりして、電源をこまめに切るとよいでしょう。古い家電を使い続けている場合、新しく買い替えれば電気代を節約できます。家電を買うための初期費用は必要になりますが、年間で得られる節約効果を考えると、長期的に見れば得をする可能性が高いでしょう。
例えば、2012年と2022年の冷蔵庫を比較すると、年間で約35〜42%の省エネが期待できます。
ご家庭に長年使い続けている家電があれば、買い替えを検討してみてはいかがでしょうか。
電力会社ごとに料金体制や用意しているプランが異なるため、契約する電力会社や電力プランを見直せば電気代を節約できる可能性があります。
例えば、同時に電気使用量の多い家電を使わないならば、低いアンペア数の契約に切り替えると基本料金を抑えられます(この対処法はブレーカーの容量によって基本料金が決まるエリアに限ったものになります)。
また、電力会社・料金プランの見直しの際には、販促キャンペーンの有無も併せて確認するとよいでしょう。
例えば、ソフトバンクの「おうちでんき」は、現在「初月のでんき代が全額0円(※)」になるキャンペーンを実施しています。
初月の電気代が1万円の場合、1万円がまるっと無料になるおトクなキャンペーンですので、ぜひチェックしてみてください。
電力会社を切り替える際は、キャンペーンを実施している会社がないか、確認するのも節約につながる可能性があります。
※個人・新規のみ。加入中のプランによりお申し込みできない場合あり。1年間の契約が必要。
※1年未満で解約する場合、違約金3,000円が必要。おうち割 でんきセットの適用および6ヵ月以内の開通が必要。
※北海道電力・東京電力・中部電力・中国電力・四国電力・沖縄電力エリアが対象。
電力会社や契約プランの見直しによって、電気代の節約が可能です。電力会社の切り替えを検討している方に向けて、確認すべきポイントを紹介します。
新電力を選ぶ際には、まずは自分の生活スタイルを把握して、適したプランを探すことが大切です。具体的には、以下の要素を確認するとよいでしょう。
・同居人数
・家電製品を使うタイミング
・家電製品を使う頻度
電気を多く使う世帯は、電気を使うごとに加算される従量料金に影響する電力量単価に注目しましょう。
電気使用量単価がおトクになるプランは、電気を使う量が多い世帯に向いているプランです。電気の使用量が少ない世帯は、基本料金のないプランのほうがおトクになる可能性があるのでチェックしてみてください。
また、時間帯によって電気料金が変わる料金プランを出している電力会社もあります。夜間に電気料金が安くなるものや、土曜日と日曜日の電気料金が安くなるものなどがあります。
このプランは日中は誰も家におらず、電気の使用が夜間に集中する世帯、土日に電気消費が集中する世帯には適している可能性が高いでしょう。しかし、夜間土日の電気料金が安くなる分、日中の電気料金が高めに設定されていることが多い点には注意が必要です。
電力会社ごとに、値引きやポイント還元など独自のサービスを用意しています。
すぐに支出を減らしたい方は値引きサービスに注目し、ネットショッピングやコンビニでの買い物などでポイント利用に慣れている方は、ポイント還元のサービスを重視するのがおすすめです。
「値引きのみのプラン」や「値引きとポイント還元の両方が受けられるプラン」など、会社によりサービス内容は異なるため、比較検討してみてください。
電気料金は全体的に上昇傾向にありますが、特に電気代高騰の影響を受けているのが市場連動型プランです。市場連動型プランとは、電気の市場価格に連動して電力量料金単価が変わる料金体系です。
市場連動型プランは、下記のメリットとデメリットを理解したうえで検討するとよいでしょう。
市場連動型プランのメリット | 市場連動型プランのデメリット |
---|---|
|
|
解約時に発生するコスト(解約金や違約金)も、電力会社を選ぶときの重要な判断材料です。
長期契約することで割引料金が適用されるプランは、契約期間より短い期間で解約すると違約金がかかることがあります。違約金が1万円を超える場合もあるため、注意が必要です。
電力会社を見直す際には、契約期間はどのくらいか、違約金がいくらかかるのか必ず確認しましょう。
違約金の高い電力会社だと、切り替えの際に出費がかさみます。そのため、将来を見越して解約時のコストが安い(あるいは違約金が無料の)電力会社のプランを選ぶとよいでしょう。
将来的に再開する可能性もあります(※)が、政府による「酷暑乗り切り緊急支援」が終了し、今後は各家庭で節電の取り組みをより意識的に行う必要があります。特に寒い時期(1月~3月期)は電気代が高くなりやすいため、家計の負担が重くなりがちです。
今後の国際情勢や為替次第では、電気代が高い状況が続くこともあり得ます。国際情勢や為替は自分ではコントロールできない以上、受け入れざるを得ません。
家計が苦しくなる状況を防ぐためにも、各家庭で電気代を節約する工夫が必要です。家電の使い方を見直したり、電力会社・契約プランを見直したりして、電気代の節約に取り組んでみてください。