公開日:2022年1月31日
更新日:2025年4月4日
2025年1月から3ヵ月間にわたって実施された「電気・ガス料金負担軽減支援事業」は、3月使用分で終了しました。政府による補助がなくなるため、今後は各家庭で電気代を抑えるための工夫が求められます。
電気代が決まる要因は、資源価格や国際情勢などさまざまです。今後の状況次第では、電気代が値上げされる可能性もあり得ます。家計への負担を抑えるためにも、日頃から電気代を節約する工夫を行うとよいでしょう。
この記事では、ここ数年の電気代や家庭でできる節電対策などを解説します。電気代を抑えたい方に役立つ内容となっているので、参考にしてみてください。
「電気・ガス料金負担軽減支援事業」とは、政府による補助金事業です。2025年は家庭の冬の暖房代などがかさむ1月から3月にかけて、電気・ガス代の支援が行われていました。
「電気・ガス料金負担軽減支援事業」で行われた、電気代・ガス代の値引き単価については下記の通りです。
電気代の値引き単価 | 都市ガス代の値引き単価 | |
---|---|---|
2025年1月・2月使用分 | 低圧:2.5円/kWh 高圧:1.3円/kWh |
10.0円/㎥ ※ |
2025年3月使用分 | 低圧:1.3円/kWh 高圧:0.7円/kWh |
5.0円/㎥ ※ |
内閣府の資料によると、電気の使用量を月400kWh・ガスの使用量を月30㎥とした場合、以下のような負担軽減効果がありました。
電気料金の値引き※ | ガス料金の値引き | 値引き額の合計 (1ヵ月あたり) |
|
---|---|---|---|
2025年1月・2月使用分 | 2.5円/kWh×400kWh=1,000円 | 10.0円/㎥×30㎥=300円 | 1,300円 |
2025年3月使用分 | 1.3円/kWh×400kWh=520円 | 5.0円/㎥×30㎥=150円 | 670円 |
2025年3月使用分で補助は終了したため、4月使用分(5月請求分)以降は電気代が値上げされたように見え、想定よりも高くなる可能性があります。
今後、電気代の負担を軽減するためには、各家庭で電気の使い方を工夫することが重要です。暖かい時期は寒い時期よりも電気代が安くなりやすいものの、家計を守るためにも各家庭で対策を行いましょう。
昨今は、さまざまな要因で電気代が値上がりしています。電気代の値上げが行われる主な理由を解説します。
電気代は、主に以下の要素で構成されています。
電気代 | 基本料金または最低料金 |
---|---|
電力量料金 | |
燃料費調整額 | |
再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金) |
電力量料金、燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金は、1ヵ月の電気の使用量に応じて算定されます。節電を実践すれば節約できるため、普段の生活で節電できる場面がないかチェックしましょう。
なお、電気代の内訳に関しては以下の記事で詳しく解説しているため、あわせて参考にしてみてください。
基本料金(または最低料金)・電力量料金が値上がりしている主な理由は以下のとおりです。
・託送料金の値上げ
託送料金とは、小売電気事業者が送配電事業者に支払う送配電網の使用料です。送配電設備の老朽化への対応などに伴って託送料金が値上げされた場合、小売電気事業者の送配電設備使用料が増加するため、一般家庭に請求される電気料金のうち基本料金(または最低料金)・電力量料金などに転嫁されます。
このように、小売電気事業者や電力会社を取り巻く環境が、基本料金(または最低料金)・電力量料金へ影響を与えているのです。
燃料費調整額が値上がりしている主な理由は以下のとおりです。
・液化天然ガス(LNG)や石炭価格の上昇
・円安の進行
日本では、電源構成の70%以上が液化天然ガスや石炭、石油などの天然資源を燃料とする火力発電です。天然資源が乏しい日本は、液化天然ガスや石炭などを海外から輸入しなくてはいけません。
しかし、世界のエネルギー情勢に影響を与える事象は、さまざまな要因・場所において発生しています。
不透明な部分があるとはいえ、今後の世界情勢次第では、エネルギー価格が高い水準で推移する可能性が考えられるでしょう。それに伴って燃料費調整額も高くなり、家計の負担増につながる事態が起こり得ます。
さらに、円安によるエネルギーを調達するコストの上昇も、電気代へ影響しています。
円安により発生したコスト増は最終的に消費者へ転嫁される可能性もあるため、為替も電気代へ影響を与える点を押さえておきましょう。
電力会社には、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの買い取りが義務付けられています(FIT制度)。買い取りにかかる費用を家庭や企業が負担するのが、再生可能エネルギー発電促進賦課金です。
2025年度(2025年5月分~2026年4月分)の再生可能エネルギー発電促進賦課金は3.98円/kWhであり、2024年度(2024年5月分~2025年4月分)の3.49円/kWhと比較すると0.49円/kWhの上昇となりました。
再生可能エネルギー発電促進賦課金が上昇している理由として、再生可能エネルギーの導入が進み、 電力会社が買い取るコストが重くなっている点が挙げられます。
増加したコストは、最終的に消費者の電気料金に転嫁されるため、再生可能エネルギーの発電量も電気代に影響を与えているのです。
1ヵ月の電力使用量が400kWhだった場合の再生可能エネルギー発電促進賦課金負担額は、月額で1,592円、年額19,104円となります。今後も再生可能エネルギー発電促進賦課金の値上げが続けば、家庭の電気代負担が重くなると見込まれるでしょう。
電気代が変動する理由はさまざまですが、今後も電気代が劇的に安くなる状況にはならないと考えられます。
経済産業省によると、石炭や天然ガスの市場価格は2022年に急騰したときの水準からは下落したものの、2010年代後半に比べて2~3倍の水準です。また、為替レートも円安の状況が続くと、家庭への負担が重くなると考えられるでしょう。
今後円高にシフトすれば、電気代が安くなる可能性はあり得ます。ただし、先行きは不透明である以上、過度な期待は禁物です。
日本は発電燃料の大半を海外からの輸入に頼っているため、原材料価格の高騰や円安による影響は避けられません。今後も電気代の値上げが行われる可能性を想定して、電気代を節約する工夫が求められます。
電気代の値上げに対処するためには、日頃から節電を意識することが大切です。各家庭で行うことができる、電気代を節約するための対策を解説します。
春先は気温が上がるものの、気温の変動が激しい時期です。また、お住まいの地域によっては冷え込みが続き、エアコンが必要になるケースが考えられるでしょう。
エアコンを使用するときは、以下のような工夫をすれば電気代を節約できます。
・必要なときだけ使用する
・設定温度を高くする
・こまめにフィルター掃除をする
経済産業省によると、フィルターを清掃したエアコン(2.2kW)は、フィルターが目詰りしているエアコンよりも年間で約990円電気代が安くなります。
こまめにフィルターを清掃するだけでなく、必要以上の使用を避ける意識を持ちながら、電気代を節約しましょう。
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記事を読む春先になると日照時間が長くなるため、明るい時間帯はカーテンを開け、自然光を十分に取り入れれば照明の使用時間を減らせます。あわせて、家の照明をLEDに替えることも、電気代を節約するために効果的です。
経済産業省によると、54Wの白熱電球から7.5Wの電球形LEDランプに交換した場合、年間で約2,883円を節約できます。また、12Wの蛍光ランプから7.5Wの電球形LEDランプに交換した場合、年間の節約効果は約279円です(いずれも年間2,000時間使用した場合)。
さらに、7.5Wの電球形LEDランプの点灯時間を1日1時間短縮した場合、年間で約85円を節約できます。「消費電力が小さいLEDを取り入れる」「照明の使用時間を減らす」という2つのアプローチを通じて、照明にかかる電気代を節約しましょう。
古い家電を使い続けている場合、新しく買い替えれば電気代を節約できます。家電を買うための初期費用は必要になりますが、年間で得られる節約効果を考えると、長期的に見れば得をする可能性が高いでしょう。
例えば、2013年製造と2023年製造の冷蔵庫を比較すると、年間で約28〜35%の省エネが期待できます。エアコンの場合は約15%の省エネ、温水洗浄便座は約8%の省エネ効果があります。
ご家庭に長年使い続けている家電があれば、買い替えを検討してみてはいかがでしょうか。
電力会社ごとに料金体制や用意しているプランが異なるため、契約する電力会社や電力プランを見直せば電気代を節約できる可能性があります。
例えば、同時に電気使用量の多い家電を使わないならば、低いアンペア数の契約に切り替えると基本料金を抑えられます(この対処法はブレーカーの容量によって基本料金が決まるエリアに限ったものになります)。
また、電力会社・料金プランの見直しの際には、販促キャンペーンの有無もあわせて確認するとよいでしょう。
例えば、ソフトバンクの「おうちでんき」は、現在「初月のでんき代が全額0円(※)」になるキャンペーンを実施しています。
初月の電気代が1万円の場合、1万円がまるっと無料になるおトクなキャンペーンですので、ぜひチェックしてみてください。
電力会社を切り替える際は、キャンペーンを実施している会社がないか、確認するのも節約につながる可能性があります。
※個人・新規のみ。加入中のプランによりお申し込みできない場合あり。1年間の契約が必要。
※1年未満で解約する場合、違約金3,000円が必要。おうち割 でんきセットの適用および6ヵ月以内の開通が必要。
※北海道電力・東京電力・中部電力・中国電力・四国電力・沖縄電力エリアが対象。
電力会社や契約プランの見直しによって、電気代の節約は可能です。電力会社の切り替えを検討している方に向けて、確認すべきポイントを紹介します。
新電力を選ぶ際には、まずは自分の生活スタイルを把握して、適したプランを探すことが大切です。具体的には、以下の要素を確認するとよいでしょう。
・同居人数
・家電製品を使うタイミング
・家電製品を使う頻度
電気を多く使う世帯は、電気を使うごとに加算される電力量料金に影響する、電力量単価に注目しましょう。
電力量単価がおトクになるプランは、電気を使う量が多い世帯に向いているプランです。電気の使用量が少ない世帯は、基本料金のないプランのほうがおトクになる可能性があるため、チェックしてみてください。
また、時間帯によって電気料金が変わる料金プランを出している電力会社もあります。夜間に電気料金が安くなるものや、土曜日と日曜日の電気料金が安くなるものなどがあります。
このプランは、日中は誰も家におらず電気の使用が夜間に集中する世帯、土日に電気消費が集中する世帯には適している可能性が高いでしょう。しかし、夜間土日の電気料金が安くなる分、日中の電気料金が高めに設定されているケースが多い点には注意が必要です。
電力会社ごとに、値引きやポイント還元など独自のサービスを用意しています。
すぐに支出を減らしたい方は値引きサービスに注目し、ネットショッピングやコンビニでの買い物などでポイント利用に慣れている方は、ポイント還元のサービスを重視するのがおすすめです。
「値引きのみのプラン」や「値引きとポイント還元の両方が受けられるプラン」など、会社によりサービス内容は異なるため、比較検討してみてください。
電気料金は全体的に上昇傾向にありますが、特に電気代値上げの影響を受けているのが市場連動型プランです。市場連動型プランとは、電気の市場価格に連動して電力量料金単価が変わる料金体系です。
市場連動型プランは、下記のメリットとデメリットを理解したうえで検討するとよいでしょう。
市場連動型プランのメリット | 市場連動型プランのデメリット |
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解約時に発生するコスト(解約金や違約金)も、電力会社を選ぶときの重要な判断材料です。
長期契約することで割引料金が適用されるプランは、契約期間より短い期間で解約すると違約金がかかることがあります。違約金が1万円を超える場合もあるため、注意が必要です。
電力会社を見直す際には、契約期間はどのくらいか、違約金がいくらかかるのか必ず確認しましょう。
違約金の高い電力会社だと、切り替えの際に出費がかさみます。そのため、将来を見越して解約時のコストが安い(あるいは違約金が無料の)電力会社のプランを選ぶとよいでしょう。
政府による「電気・ガス料金負担軽減支援事業」が終了し、今後は各家庭で節電の取り組みをより意識的に行う必要があります。電気の使用量が多くなる寒い時期(1月~3月期)は過ぎたものの、油断していると家計の負担が重くなることもあるでしょう。
今後の燃料価格・国際情勢・為替次第では、電気代が高い状況が続くこともあり得ます。燃料価格や国際情勢などは自分でコントロールできない以上、受け入れざるを得ません。
家計が苦しくなる状況を防ぐためにも、各家庭で電気代を節約する工夫が必要です。家電の使い方を見直したり、電力会社・契約プランを見直したりして、電気代の節約に取り組んでみてください。