公開日:2024年1月31日
暖房器具は寒い時期には欠かせないものですが、暖房が原因となって起こる事故や火災も少なくありません。特に小さなお子さまや高齢のご家族、ペットがいる場合などは、暖房器具の安全性が気になるという方も多いのではないでしょうか。
その点、電気であたためるヒーターは、灯油やガスなどの燃料を燃やすストーブや、温風を吹き出すエアコンに比べると、安全性が高く健康面でのリスクも低い暖房器具です。
今回は、オイルヒーターとパネルヒーターを比較しながら、その仕組みや特性、電気代の目安と節電方法などについてご紹介します。その違いや上手な利用法を知り、ホットで安全な冬を過ごしてください。
オイルヒーターとパネルヒーターは、主に輻射熱(放射熱)を利用しています。輻射熱は壁や床、そして人などの対象物に直接熱を伝えます。身近なところでは日差しのあたたかさも輻射熱によるものです。そのため、まるで日なたぼっこをしているような、心地よいあたたかさを感じられる暖房器具です。
どちらのヒーターも輻射熱を利用している点は同じですが、それぞれに仕組みなどが違います。まずは、その違いについて確認しましょう。
オイルヒーターは、「フィン」と呼ばれる放熱用のパネルが並んだ構造になっています。サイズは大型がほとんどです。内部にはオイルが密閉されており、電気で加熱したオイルを循環させ、フィンから熱を放出する仕組みです。このオイルは燃料ではないため補充などは必要ありません。
オイルヒーターは部屋があたたまるまでに30分以上かかるものが多いので、タイマー機能を使って早めに作動させたり、速暖性が高いストーブなどと併用したりする使い方がおすすめです。
また、オイルヒーターについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
パネルヒーターは大部分が1枚のパネルで覆われた形になっており、全体に薄型で軽量なので、オイルヒーターより持ち運びが容易です。内蔵された電気ヒーターがパネルを加熱して、パネルから放出される遠赤外線の輻射熱で部屋をあたためます。
放出される熱の量はパネルの大きさに比例するので、面積が大きいほどすぐにあたたかくなります。小型タイプが主流ですが、大型タイプもあり、目的によって使い分けができるのも利点です。
小型タイプはトイレや脱衣所など狭いスペースでの使用に適しています。重さも2~3kgくらいの軽量なものが多く、取っ手やキャスター付きのタイプもあるので、移動も便利です。
小型タイプの中には、足元をあたためることに特化した「足元タイプ」もあります。デスクやテーブルの下に設置しやすい形状になっており、オフィスや在宅ワークなどで足元の冷えが気になるときにぴったりです。
左右と前面にパネルのある「コ」の字型の3面タイプや、上下の面も付いた5面タイプのほか、マグネットでデスクに貼り付けられる便利な製品もあります。いずれもパネルを折りたためるので、場所を取らずに収納できます。
リビングや寝室など広い空間で使用したい場合は、パネルの面積が広い大型タイプがおすすめです。小型タイプではほとんどが片面のみ熱を放出しますが、大型では両面から熱を放出するタイプも多いため、面積が増える分、輻射熱の範囲も広がります。
本体サイズが大きくなると設置スペースも必要になりますが、薄型でスリムなパネルヒーターはスタイリッシュなデザインのものも多く、インテリア性も高いのが魅力です。
一方で、両面パネルタイプは壁側や窓際に置けないなどの難点もあるため、設置場所を考慮しながら選びましょう。
ここでは、オイルヒーターとパネルヒーターが持つ、共通のメリットをご紹介します。
灯油やガスなどの燃料を燃やす暖房器具とは異なり、火を使わないため火災になりにくい点は大きなメリットのひとつです。
とはいえ、リスクはゼロではありません。誤った使い方によって火災を引き起こすケースもあります。例えば、洗濯物を乾かそうとしてヒーターの上に被せて使用していたら、熱がこもってプラスチック部分が溶け、火災につながった例も。
また、電源コードを繰り返しひっぱったりねじったりしたために断線して発火する、といった事故も報告されています。安全性を過信せず、取り扱いには十分ご注意ください。
放熱用のフィンやパネルは表面が高温になりにくいため、やけどのリスクも低いと言えます。表面温度はオイルヒーターが約60~80℃、パネルヒーターが約30~70℃と、どちらも1~2秒触れた程度ではやけどをしないように設計されているため、特に幼児やペットがいるご家庭では重宝するでしょう。
ただし、絶対にやけどをしないわけではありません。長い時間接触していれば低温やけどの危険性もありますので、油断は禁物です。
燃料を燃やさないので二酸化炭素も出ず、空気をクリーンに保てるのも大きな魅力です。
ファンヒーターの場合は温風で床のホコリが舞い上がることもありますが、そういった心配はありません。小さなお子さまや高齢者はもちろん、アレルギーが気になる方にも適しています。
また、温風の出る暖房器具と比べて空気が乾燥しにくいのもメリットです。鼻やのど、肌に優しく、乾燥によるトラブルを引き起こしにくいと言えるでしょう。
優れた静音性も、特筆すべきメリットです。どちらも作動音がほとんど発生しないので、赤ちゃんのいる部屋や寝室、書斎など、静かな環境が求められる空間で活躍します。
気を付けたいのは、あまりに静かなせいで運転中であることを忘れてしまいがちな点です。
消し忘れを防止し、電気代を節約するためにも、タイマー機能などを上手に活用して、使わないときはコンセントからプラグを抜いて電源を落とすようにしましょう。
オイルヒーターとパネルヒーターは、共通のメリットを多く持っていることが分かりました。
ここで気になるのが電気代です。
実際に販売されている製品の消費電力をもとに、それぞれの電気代を比較しました。
ここでは、同程度の部屋の広さに対応する製品の電気代を見てみます。以下の表は、大型サイズ(8~10畳用)の人気モデルを参考にして比較したものです。
オイルヒーター(8~10畳用) | パネルヒーター(8~10畳用) | |||
---|---|---|---|---|
設定 | 消費電力 | 電気代(1時間) | 消費電力 | 電気代(1時間) |
弱 | 500W | 約15.5円 | 500W | 約15.5円 |
中 | 700W | 約21.7円 | 800W | 約24.8円 |
強 | 1,200W | 約37.2円 | 1,200W | 約37.2円 |
また、パネルヒーターは大型よりも小型が主流なので、足元をあたためる3面パネルヒーター(コの字型)の電気代も確認しておきましょう。
パネルヒーター(コの字型) | |
---|---|
消費電力 | 電気代(1時間) |
90W~1,000W | 約2.79円~約31.0円 |
前述の通り、パネルヒーターは小型が主流のため、大型が多いオイルヒーターはどうしても電気代が高い印象を持たれがちです。ところが表を見ると、同程度の暖房性能を持った製品であれば電気代はほとんど変わりません。
それでは、ほかの暖房器具と比較した場合はどうでしょうか。以下は、代表的な暖房器具について一般的な消費電力と電気代の目安です。
暖房器具 | 消費電力 | 電気代(1時間) |
---|---|---|
エアコン(10畳用) | 100W~1,100W (立ち上がり時2,000W) |
約3.1円~約62円 |
電気ストーブ(ハロゲンヒーター) | 180W~1,000W | 約5.6円~約31円 |
電気カーペット(3畳用) | 400W~800W | 約12.4円~約24.8円 |
こたつ | 300W~600W | 約9.3円~約18.6円 |
こうして比べるとオイルヒーターやパネルヒーターの電気代は高く感じますね。局所的ではなく部屋全体をあたためる暖房器具であることを踏まえても、同じ用途であるエアコンよりも運転中の電気代は高めです。
さらに、オイルヒーターやパネルヒーターは部屋全体があたたまるまでに時間を要するため、運転時間が長くなりがちな点も考慮する必要があります。
静音性が高いために作動していることをつい忘れ、スイッチの切り忘れが起こりやすいというのは前述の通りです。もし、気付かないまま1日中つけっぱなしになっていたら、電気代はどれくらいかかるのでしょうか。
大型タイプのオイルヒーターを使用したとして、部屋があたたまるまで強モードで1時間、その後は弱モードに切り替えて23時間付けっぱなしにしたと仮定します。すると、最初の1時間は強モード・1200Wとして37.2円、その後は弱モード・500Wとして23時間で356.5円となり、1日にかかる電気代はなんと約393.7円。
あまり現実的な話ではありませんが、もし1か月(30日)つけっぱなしにすると、11,811円もの電気代がかかってしまいます。つけっぱなしにはくれぐれも注意したいですね。
高くなりがちな電気代も、使い方を工夫すれば節約が可能です。
ここからは、消費電力を抑えて電気代を安くするコツについて、いくつかご紹介します。
スイッチの切り忘れを防ぐためにも、タイマー機能の活用はおすすめです。
例えば寝室で使う際は、就寝して2時間後には電源が切れるようにしておくといいでしょう。輻射熱によりあたたまった部屋は冷めにくいため、夜間の電気代を抑えながら、朝まで快適に眠れます。
オイルヒーターやパネルヒーターは輻射熱によって天井や壁などもあたためるため、エアコンなどの温風より体感温度を高く感じられます。
あたたまったと感じたら、設定温度を低くしましょう。リビングで20℃、寝室で16℃ぐらいが設定温度の目安です。
窓ガラスやサッシが外気で冷たくなると、室内の空気が窓際で冷えます。冷気は暖気に押されて部屋の下方にたまるため、「暖房を使っているのに足元が冷える」といった現象が起きるのです。これをコールドドラフトといいます。
ヒーターを窓の下に設置すれば、窓際で冷えた空気が窓下であたためられて室内を循環するため、コールドドラフト現象を防止できます。効率よく暖をとれるので、電気代の節約につながります。
熱は窓から逃げやすく、さらにすき間から吹き込む風によっても空気は冷えてしまいます。部屋の断熱性や気密性を高めることであたたまりやすく冷えにくい環境になり、節電にもつながります。市販されている断熱シートやすき間テープなどを活用し、冷えに強い部屋づくりを意識しましょう。
また、ひんぱんにドアを開け閉めする部屋は暖気が逃げやすいため、あたたまるまでに時間がかかるオイルヒーターは、ドアの開閉が少ない寝室や書斎などに設置するのがおすすめです。
今回はオイルヒーターとパネルヒーターについて、構造の違いや暖房器具としてのメリット、電気代や節約のポイントなどを比較しながらご紹介しました。
どちらも、火災のリスクが低く、空気も汚さず乾燥しにくい、安全性の高い暖房器具です。
ただ、電気代が高くなりがちな面があるので、使い方には工夫が必要です。今回ご紹介した「電気代を節約するコツ」などを参考に、効率的に暖房して経済的な不安も緩和しながら、快適な冬を過ごしてください。