公開日:2022年3月30日
新年度を迎える4月。新しい環境がスタートするのはいいけれど、これを機に製品やサービスの値上がりが多くなるのは頭の痛いところ。最近は新型コロナ感染症や世界情勢の影響などもあって、さまざまな物価の上昇が相次いでいます。
特に電気代は連続して値上げが続いており、電気の節約や省エネを心がけているという人も多いのではないでしょうか。実際に、電気代の平均単価は、2016年からずっと上昇傾向にあります。
電気は生活に不可欠なライフラインだけに、毎月の電気代は少しでも抑えたいもの。そこで、おすすめしたいのが電気を契約している電力会社や料金プランの見直しです。
現在では電力の自由化によって多くの小売電気事業者から選べるようになっていますし、各事業者はそれぞれに特徴を生かしたオリジナルのプランやサービスを打ち出しています。
さまざまなプランを比較することによって、自分のライフスタイルに合った電力会社を選び、もっとおトクに電気代を抑えてみませんか。
電気代を比較するにあたって、まずは現在の契約内容を把握しておきましょう。 詳細については、毎月のメーターをチェックした際に発行される「検針票」や、現在利用している小売電気事業者のウェブサイトで確認することができます。
比較のための基本材料となる自分の契約内容を整理しておくことで、どんなメリットが生まれるか、あるいはデメリットがあるのか、などが分かります。
ブレーカー契約の電力会社の場合、契約内容で基本となる情報の一つは、電気の契約アンペア数(A)です。契約アンペアの大きさというのは、同時に使える電気の量のこと。同時にどのくらいの電気を使用するかで、適正な契約アンペア数を考えてみましょう。
一般的な家庭用としては10A(アンペア)から60Aまでの設定が多いのですが、1人暮らしの場合は10~20A、2人世帯では30A、ファミリーだと40A、人数の多い世帯は50Aなど、電気を使用する人数などによって違います。
目安としては1,000W=10A程度なので、例えば30Aの場合は3,000W以上の同時使用でブレーカーが落ちるということです。手持ちの家電の消費電力をみて、同時にどのくらい使うかで検討してみてはいかがでしょうか。
なかには1人暮らしでも電化製品が多いので20Aでは足りないという人や、2人世帯だけど自宅に居る時間が短いので30Aも必要ないという場合もあると思いますが、自分の契約アンペア数が適正かどうかの目安にはなるはずです。
もう一つの基本情報は、電気の使用量(kWh:キロワットアワー)です。契約アンペア数は基本料金を計算するための材料となることが多く、電気の使用量に関しては、使った分だけ支払うタイプの従量制料金の目安となります。
検針票にはその月に使った電気の使用量が記載されていますが、電気の使用量は冷暖房が必要な時期とそうでない時期などで変動があるため、単月で判断するのではなく、直近1年の使用量で判断するようにしましょう。
ちなみに、環境省が行った最近1年間(2020年4月~2021年3月)の統計では、世帯当たりの年間電気使用量(エネルギー消費量)の平均値は4,258kWhとなっています。また、総務省の2021年の家計調査では、単身者世帯の電気代の平均が65,616円、2人以上の世帯では123.804円となっています。こちらも比較の目安にしてみてください。
現在の契約内容を把握したところで、電気代の仕組みについて、電力自由化の前後での違いを知っておきましょう。
2016年に電力が自由化される以前は、全国各地の大手電力会社10社(東京電力や関西電力など)が一般家庭向けの電気事業を独占していました。
このときの電気代は、契約アンペア数によって決まる「基本料金」と、電気の使用量によって決まる「従量料金」の合計です。これは、国によって決められた「規制料金」の形でした。
電力自由化以降は、新規参入した各事業者が自由に料金プランを打ち出し、「自由料金」での価格競争も活発になっています。従来からの大手電力会社も、規制料金のプランに加えて自由料金プランを追加しているので、新しい選択肢がさらに広がりました。
現在、新電力とされる新規事業者の登録数は749社(2022年3月4日現在)もあり、その内容もさまざまです。すべてを網羅することはできませんが、そのなかから料金プランを比較するための目安となる、主な料金プランの内容についてご紹介します。
多くの電力会社が採用している一般的なプランは、「基本料金+使った分の電気使用量に応じた従量課金」という組み合わせの「従量電灯プラン」です。
基本料金に関しては、契約アンペア数によって変わる「アンペア制」のものと、一定額の最低料金を決めている「最低料金制」のものがあります。
基本料金を設けることで、使った量に応じて支払う「電力量料金」の単価を低く抑えている場合が多いので、電気をたくさん使うときにメリットの出るプランが主流です。
基本料金や最低料金が無料で、使った分の電力量料金だけを支払うというシンプルなプランもあります。従量料金の単価も一律という場合が多く、最初の120kWhまではいくら、300kWhを超えるといくら、といった段階的な金額設定がないので、分かりやすいというメリットがあります。
毎回、固定で支払う基本料がゼロというのはおトクですが、単価そのものが「従量電灯プラン」よりも少し高めに設定されているというケースも少なくありません。例えば一人暮らしなどで使用量が少ない人だと、電気代があまり安くならない場合もあるので注意しましょう。
電気を使う時間帯によって電力量料金が変わる「時間帯別料金プラン」は、自分が電気を多く使う時間帯に安くなるようなプランを選べます。
料金単価の設定は、昼間や夜間など1日のうちの時間帯によって分けられていたり、平日や休日だったり、季節に応じて変化するものもあります。
電力自由化によって新規参入した電力会社には、ガス会社や通信会社など多くの業種があるため、ほかのサービスとのセット販売によって割引されるというプランも多いもの。
電気代は基本料金+従量料金という従来の規制料金で計算し、その金額から一定の割合で割引するなどの形が多くみられます。 また、割引の部分をポイントなどで還元する方法もあります。普段利用しているポイントを貯められる電力会社なら、ショッピングなどと併用できておトクです。
ほかのサービスと一緒に電気代の支払いができる場合は、支払いがまとめられるというメリットもあります。
条件付きで割引が受けられるプランもあります。例えば、1年割引、2年割引など長期契約による割引料金プランの場合、ずっと割引が適用されるのはおトクですが、途中解約すると違約金が発生することもあるので、注意が必要です。
このほかには、あらかじめ指定された日時に節電すると割引が受けられる節電プランなどもあります。
いずれにしても、新電力のプランだからといって、すべてが安くなるわけではありません。プランの選択を間違えると、今までよりも電気代が高くなってしまうというリスクもあります。 それぞれのプランの特徴を知り、自分の電気の使い方と照らし合わせて、最適なプランを選びましょう。
各電力会社のウェブサイトでは、料金シミュレーションのできる所も多いので、上手に活用して比較してみてください。
ソフトバンク おうちでんき【電気料金のかんたんシミュレーション!】
それでは、実際にプランを比較する際にチェックすべきポイントは何でしょうか。
おトクなプランを選びたいなら、何より自分のライフスタイルに合っているかどうかを、しっかり見極めることです。家族構成や家に居ることの多い時間帯、よく使う家電製品などを考慮して、チェックしてみてください。
以下に、プラン比較の目安となるチェックポイントをいくつかご紹介します。
全国展開している電力会社もありますが、なかには関東地方限定など対応している供給エリアが限定される場合もあります。地域ごとに契約できる電力会社は異なるので、自分の居住エリアで契約できるかどうかのチェックは基本です。
なかには地方に特化したプランで、全国展開している電力会社のものよりおトクになる場合もあるので、エリア限定で探してみるのもいいかもしれません。
事前に確認した契約アンペア数をもとに比較してみましょう。電気代はアンペア数が少ないほど安くなるプランが多いので、契約アンペア数が高いプランに入っている場合は、契約アンペア数そのものを見直すことで安くなる可能性があります。
しかし、契約アンペア数を低くした場合、使い方によってはブレーカーが落ちるというリスクもあります。
1,000W=10A程度なので、30Aで契約しているなら3,000W以上の同時使用でブレーカーが落ちる、というのは前述の通りです。
例えば、比較的消費電力の高い電化製品である、エアコン(750~1100w)とドライヤー(1,000w)と浴室乾燥機(1290w)を一度に作動させると、一度に3,000W以上が必要となって、30Aの契約では不足してしまうのです。
ブレーカーがよく落ちるという人は、電気の使用量に比べて契約アンペア数の設定が低いということも考えられるので、この機会に契約アンペア数だけでなく家電製品の使い方を見直して節電してみては。
最近は在宅勤務などでずっと家に居るという人も多くなりましたが、昼間は家に居ないという人や夜に電気を多く使うという人は、時間帯別料金で夜間の単価が安いプランがおすすめです。
また、土日や祝日の料金が安く抑えられているプランもあるので、休みの日に集中して電気を使う人は検討してみてはいかがでしょう。
ただし、設定されていない時間帯の料金が割高になったり、基本料金が高くなることもあるので、その点は注意が必要です。
戸建てや集合住宅など、住宅の種類によっても見るべきポイントは変わります。オール電化の場合は、そうでない一般の家庭よりも電気の使用量が多くなるので、夜間や休日など電気代の安くなる時間帯があるかどうかがポイントです。安くなる時間帯に給湯器の湯を沸かしたり蓄熱できるプランなら、全体の電気代を抑えることができます。
なお、賃貸の集合住宅で管理会社や大家さんに電気代の支払いをしている場合などは、委託契約や一括徴収契約となっているために個人での見直しは難しいことがあります。見直しの前には、自分の支払い状況についても確認しておきましょう。
太陽光・風力・水力などの発電方法で作られるエコな再生可能エネルギー(再エネ)を使って、自然に優しい活動に賛同したいなら、環境に配慮した料金プランがおすすめです。
現在では、多くの電力会社で再エネのプランを扱っており、キャンペーンなどで割引のプランを打ち出している所もあります。
なかには、収益の一部を森林保全活動などの支援にあてるプランもあるので、エコなエネルギーでCO2排出量を抑えるとともに地球環境保全活動にも役立ちます。
ガスやスマートフォンなどとのセット契約で電気代に割引が適用される「セット割引」も、電気代を安くするポイントの一つです。
新電力の小売電気事業者には多様な分野から参入した会社があるので、電気代と一緒にまとめて支払うと割引になるものをチェックしてみてください。
電気代の金額に応じて、ポイントやマイルなどで還元される電力会社もあります。いつも使っているクレジットカードで、ショッピングやサービスの利用に加えてポイントが加算されるものもあるので、支払い方法についてもチェックしてみましょう。電気代は毎月固定費となるため、一定額のポイントが必ず加算されておトクです。
電力会社によっては、1年や2年といった長期契約でプレゼントがもらえるなど、会員限定の特典が受けられる所もあります。 さらに、電気のトラブルはもちろん、水回りなど家の困りごとの際に駆けつけてくれるサービスも提供している場合があります。受けたい特典やサービスで比較するのも、一つのポイントです。
以上のチェックポイントを参考にしながら料金プランを比較して、自分のライフスタイルや生活の優先度に合わせた見直しを行っていただければと思います。
また、引越しを機に電力会社の見直しを考えているという人は、こちらの記事も合わせて参考にしてみてください。
チェックポイントを参考に電気代の比較を行って、自分に合ったおトクなプランを選んだとしても、契約の段階でさまざまなトラブルが起こらないとも限りません。
契約する前に、これだけは注意しておきたいという点についてまとめてみました。気になる部分や不安な点があれば、再度確認するか、電力会社に質問するなどして、トラブルを未然に防ぎましょう。
解約金や違約金はかかりませんか?
電力会社によっては、解約の際に解約金や違約金がかかる場合があります。いざ使ってみると家族のニーズに合わなかった、という場合もあるので、いつでも気軽に切り替えることができる違約金のないプランかどうか、確認しておきましょう。
勧誘されて勢いで決めていませんか?
店舗で勧誘され、その場の雰囲気にのまれて最終判断をしていませんか?
どんなに魅力的に思えるプランでも、デメリットまでしっかり把握しておかないと、説明されないことで見落としてしまう場合もあります。
一旦資料をもらって持ち帰り、ウェブサイトで比較してみたらそこまでおトクではなかったということもあるので、しっかり納得してから決めたいものです。
知名度だけで選んでいませんか?
新電力は、大手電力会社に比べて知名度の低い会社が多いものです。停電や倒産した場合などのことを考えると不安だという人もいるかと思いますが、電力自由化の際に国が電気の供給を保証しているので、登録事業者であれば問題はありません。
もし新電力でトラブルが起きたとしても、供給エリアにある既存の電力会社の送電網を使って電気が供給されるので、電気がストップすることはないのです。知名度にこだわらず、自分に合ったおトクなプランを選んでください。
顧客対応に関する情報もチェックしていますか?
基本的にどこの電力会社も電気は安定して供給されるので、その質に関して差はありません。しかし、知名度や会社の規模にかかわらず、顧客対応についてはそれぞれに質の高さが違うものです。
メールで質問をしたときに返信がない、あるいは返信までに数日以上の時間がかかる、電話がつながらないなど、対応に問題のある電力会社が存在するのも事実です。
現在ではSNSなどでも顧客対応についての情報を得ることができるので、口コミを利用するのも方法の一つ。ただし、トラブルが解消できないストレスなどから過剰にマイナスの書き込みをしている場合もあるので、その点は考慮しながら参考にしてください。
以下は、経済産業省の資源エネルギー庁が、契約前に確認すべきことをまとめた表です。顧客対応はもちろん、契約内容を確認するときにも活用できますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
ここまで、電気代を安く抑えるために、電力会社や料金プランを比較するためのポイントについてご紹介してきました。
さまざまな電力会社が打ち出す多様な料金プランから、自分に合ったプランを見つけ出すのは大変な作業のように見えます。しかし、必要なポイントを押さえていけば、絞り込むべき内容が分かってくるので、きっと納得できるプランに出会えるはずです。
自分の生活スタイルや価値観に合った料金プランを選んで、電気代を抑えながら春をおトクにスタートさせましょう。