公開日:2023年10月31日
天高く馬肥ゆる秋。
快適な気温と湿度で食欲が増すこの季節、テレビを観ていても美味しそうな料理の紹介に目を奪われる方も多いのではないでしょうか。特に「簡単レシピ」と聞くと思わず画面を食い気味に確認してしまうこともしばしば。
しかし「電気圧力鍋を使った簡単レシピ」となると、そこで足踏みをして「電気圧力鍋って本当に便利なの?」「普通の圧力鍋とどう違うの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、電気圧力鍋とはどういうものなのかを深掘りし、そのメリットやデメリットについてもご紹介します。
まず「圧力鍋」とはどのようなものなのでしょうか。
圧力鍋とは、ふたを固定し鍋を密閉した状態で加熱することにより、蒸気の圧力を利用して調理をする鍋のことです。 普通の鍋の場合、中の水分が沸騰し蒸気に変わるとふたを押し上げ蒸気が逃げてしまいますが、圧力鍋はふたが動かないよう固定・密閉されているので蒸気を閉じ込めたままにしておけます。
水は100℃で沸騰し蒸気になりますが、圧力の高いところでは沸点(沸騰する温度)が上がります。ふたにより密閉された圧力鍋の中は蒸気によって圧力が高くなるため、沸点が120℃ほどになり普通の鍋より高い温度で調理ができるようになります。
短い加熱時間でも高圧・高温により調理することができる、それが「圧力鍋」です。
電気圧力鍋と圧力鍋(IHクッキングヒーターやガスコンロを使用するもの)では何が違うのでしょうか。
「ふたで鍋を密閉し、蒸気によって加圧調理をする」という点ではどちらも変わりはありません。大きな違いは「自動調理ができるかどうか」です。
コンロ型の圧力鍋を使用する場合、自分で加圧状態を確認し、火加減の調節が必要なので鍋から離れることはできませんが、電気圧力鍋は自動調理が可能なので食材を入れスイッチを押せば、あとは料理ができあがるまですべてお任せでほったらかしにしておけます。
また、電気圧力鍋は火を使わないので目を離していても安心ですし、キッチンが暑くなることもないため夏場でも料理を作るのが億劫になることがありません。
とても便利な電気圧力鍋ですが、まず「デメリットもある」ということを確認しておきましょう。
電気圧力鍋のデメリットに関してはどのメーカーの製品にもほぼ当てはまるため、この部分を覚えておけば購入後に「失敗した!」ということも減らせると思います。
電気圧力鍋で調理をしたあと大変なのがパーツのお手入れです。
普通の鍋とは違い、内ふたや密閉用のゴムパッキン、蒸気筒に圧力ピンなど洗わなくてはいけないパーツが多くあります。最近ではパーツの少ない商品も販売していますが、食器洗浄機が使えないものもありますのでやはり手間はかかります。
電気圧力鍋を使うと短い時間で料理が完成するイメージがありますが、鍋に材料を入れ食べられるようになるまで1時間以上かかることも珍しくありません。
実際に調理している時間は圧力により短縮されていますが、そこに「加熱時間(蒸気をためるため)」と「減圧時間(蒸気を抜くため)」が20分~60分ほど(作る料理により異なります)かかるため、総調理時間は普通の鍋を使うより長くなる場合もあります。
電気圧力鍋はかなり消費電力が大きいものが多く、製品によっては加圧時1200W以上の消費電力がかかります。 特にキッチンは電子レンジ、炊飯器、電気ケトルなど同一の配線内に消費電力が大きな家電が多く、同時に使用すると許容電流を超え、安全ブレーカーが落ちる可能性があります。
電気圧力鍋には「入れてはいけない食材や調味料」があります。
豆類・餅・練り物・カレーなどのルウ・皮膜のある肉類・大量の酒類や油・麺類・炭酸飲料・重曹などは思わぬ故障の原因となります。
皮がはがれて蒸気口をふさいでしまうものや加圧により膨張するもの、加圧中にお湯があふれてしまうものは分量を確認し、調節しなければ事故につながることもあるため注意が必要です。
こうしたデメリットを読み、電気圧力鍋を購入するのは見合わせよう、と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし電気圧力鍋には、そのデメリットに目をつむれるほどのメリットがあり、一度取り入れたら手放せない!という方も多くいらっしゃいます。
では、その電気圧力鍋のメリットについて触れていきましょう。
普通の鍋やコンロ使用の圧力鍋の場合、ふきこぼれや焦げ付きの心配があるためキッチンを離れることができません。
しかし電気圧力鍋なら、手順どおりに材料をセットしてスイッチを押せば、あとはほったらかしで大丈夫。途中で火加減を調節する必要もありませんから、調理中の時間を「自由時間」に充てることができます。
その間に部屋の掃除をしたり、洗濯物を畳んだりはもちろん、読書をする、こどもと遊ぶ、勉強をする、仕事で疲れているなら仮眠を取るなど、自由な時間を過ごすことができます。
忙しい現代人にとって、調理時間にできるちょっとした自由時間は非常にありがたいものではないでしょうか。
たとえば魚料理を作る場合、大きな骨は簡単に取ることができますが、小骨まで取るとなると結構時間がかかります。
しかし電気圧力鍋で調理すれば、高圧・高温により小骨まで柔らかくなり、口当たりを気にする必要がなくなります。
また、短い加熱時間でも火の通りが良いため、食材を大きく切っても柔らかく仕上げることができます。下ごしらえの時間を短縮できる点も、電気圧力鍋のメリットです。
IHクッキングヒーターやガスコンロで圧力鍋を使用した経験のある方は、鍋の中の圧力が高まった時に聞こえる「シュッシュ」という音に不安を感じたことはありませんか?
圧力鍋の中の蒸気圧を一定に保つため、水蒸気を逃がす際に音が鳴るのは正常な状態ですが、想像以上の大きな音に「爆発するのでは?」と心配になった方も多いのではないでしょうか。
その点、電気圧力鍋は蒸気をゆっくりと逃がす構造のため調理中に音が鳴ることもなく、安心してお使いいただけます。
煮込み料理や蒸し料理はとにかく時間がかかりますし、火加減の調節などにも気を遣うため食卓にのぼる機会はあまり多くない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、電気圧力鍋なら材料を入れて自動調理のメニューを選びスイッチを押すだけで、煮込み料理や蒸し料理が完成します。手間をかけずに手の込んだ料理が作れるため、自然と料理のレパートリーが増えていくでしょう。
また、商品に付属しているレシピブックどおりに材料を入れるだけで料理が完成するので、料理が苦手な方や料理初心者さんでも手軽に美味しい料理が作れる点も、電気圧力鍋の魅力のひとつです。
IHクッキングヒーターやガスコンロで煮込み料理をした場合、長時間加熱する必要がありますが、電気圧力鍋を使えば加熱時間はぐっと短縮することができます。
「加熱時間+調理時間+減圧時間」がかかるので、総調理時間が驚くほど短くなることはありませんが、蒸気をためるための加熱時間(約10~15分)と調理時間(蒸気の圧力を使い実際に調理する時間)以外は消費電力が抑えられるため、1回の調理にかかる電気代とガス代を比べると、電気圧力鍋を使うほうが節約につながります。
電気圧力鍋の魅力やメリットを感じてはいても、はじめて購入する場合、何を基準に選べばいいのかわからないことも多く、迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
電気圧力鍋には選ぶコツがありますので、購入の際の参考としていくつか見ていきましょう。
まずは「何人分の料理を作るのか」を考えてみましょう。
電気圧力鍋は一般的に「人数+1L(リットル)」が目安とされているので、ひとり暮らしの場合は2L程度、4人家族なら5L程度のものがおすすめです。
ただし、容量が大きくなれば電気圧力鍋本体のサイズも大きくなるため、調理する場所や収納する場所が確保できるかを、事前に調べておく必要があります。
なお、鍋の容量は一般的に「満水容量(鍋に入る水の最大量)」で表されますが、電気圧力鍋には「調理容量」というものがあり、1回で調理できる量は満水容量の約3分の2程度になります。メーカーによっては調理容量で表記されている場合もあるので、間違えないよう注意が必要です。
電気圧力鍋にはメーカーにより、さまざまな機能があります。
使用する頻度や作りたいものに合わせ、必要な機能が搭載されているか確認することも、電気圧力鍋を選ぶ際の重要なポイントです。
電気圧力鍋には「マイコン式」と「IH式」という二通りの加熱方式があります。
マイコン式は鍋の下にあるヒーターで加熱するタイプで、毎日使う方には消費電力が低く本体価格の安いマイコン式がおすすめです。ただし、下から温めるため食材への加熱にムラが出やすいというデメリットがあります。
IH式は電磁誘導により鍋全体を温めるため、食材を均等に加熱できます。しかし、マイコン式に比べ消費電力が高いので電気代がかかることと、本体価格が高いことは憶えておきましょう。
電気圧力鍋はダイヤルを回して操作するタイプと、ボタンを押して操作するタイプがあります。
希望のメニューを探しやすいのはダイヤル操作タイプですが、パッと見て押す場所がわかりやすいのはボタン操作タイプでしょう。
しかし、ボタン操作の場合は希望のメニューにたどり着くまで何度もボタンを押したり、場合によってはボタンを長押しする必要があるため少々複雑に感じるかもしれません。
慣れればどちらのタイプでも操作は簡単なので、使いやすいほうを選んでください。
電気圧力鍋には、付属のレシピブックに掲載されているとおりの材料を入れスイッチを押すだけで料理が完成する「自動調理モード」と、調理時間を好みに合わせ設定できる「手動調理モード」があります。
火加減の調節を必要としない自動調理モードで作れる料理の数は、メーカーやモデルにより数種類のものから100種類近く作れるものまで幅広く展開しています。作りたい料理がスイッチひとつで作れるか、まずは確認しておきましょう。
また、電気圧力鍋には圧力調理のほかに「無水調理」「低温調理」「発酵」「炊飯」など多くの機能を搭載したモデルもありますので、料理を作ることが好きな方にはこちらもおすすめです。
予約機能が搭載されている電気圧力鍋があれば、忙しい日でも設定した時間にできたての料理が食べられます。
しかし予約機能が「炊飯」にしか対応していないものや、予約による自動調理が2~3種類しかないもの、50種類ほどの自動調理ができるものなど、これもメーカーやモデルによってさまざまです。
予約調理では、調理開始までの時間で傷む可能性のある生の食材が使えないこともあるので、必ず事前に取扱説明書などで確認してください。最近は食材が傷まないよう温度を調節し調理するものや、先に調理を済ませ保温状態にしたあと、予約した時間に再加熱してくれる商品もあります。
電気圧力鍋のふたには「スライド式」と「プッシュ式」があります。
スライド式はふたを回転させ開閉するタイプで、お手入れがしやすい反面、作業スペースが狭い場合ふたの置き場所に困ることもあります。
プッシュ式は炊飯器のように片手で簡単に開閉できますが、ふたが取り外せないためお手入れの手間がかかります。メーカーによってはふたが取り外せるモデルも販売していますので、カタログなどで確認しておくことをおすすめします。
電気圧力鍋は調理家電なので、普通の鍋やコンロを使う圧力鍋のように本体を丸ごと洗うことができません。
商品によってはパーツが多く、中でも小さなパーツは洗おうとして外す際、力を入れ過ぎてどこかへ飛ばしてしまい、失くしてしまうこともあります。
しかし最近はプッシュ式でもふたの外れるものや内ふたのないもの、パーツの数が少ないものなどお手入れのしやすい商品も多くなっていますし、食器洗浄機で洗えるパーツを搭載した商品もあります。
後片付けに手間のかからない商品を選ぶことで、活用する機会も増えるでしょう。
キッチンには炊飯器や電子レンジ、トースターや電気ポットなど多くの調理家電が並んでいます。その場所に電気圧力鍋を加えるなら、色味を揃えたり同じメーカーで統一したりとこだわりたい部分でもあります。
素敵なデザインの商品は、目に入るだけで気分が上がり、同時にやる気も満ちてきます。
機能面で迷った場合はデザインを重視することも、モチベーションを保つために役立つでしょう。
今回は電気圧力鍋のメリットとデメリット、購入の際のコツなどについてご紹介させていただきました。関連リンク先の「電気圧力鍋で作った料理」も、秋ならではの食材を使った節約レシピですので、ぜひご覧ください。
電気圧力鍋を使えば、普段は時間がなくなかなか手が出せない煮込み料理も簡単に作れますし、料理が苦手な方でもレシピブックを片手に、美味しい料理をスイッチひとつで完成させることができますが、お手入れに手間がかかることや、使い方を誤ると思わぬ故障や事故につながるという点も、しっかりと理解することが大切です。
ほったらかしておくだけで、私たちの代わりに電気圧力鍋が美味しい料理を作ってくれるのですから、そこでできた自由な時間を使い、いままでの暮らし方を少し変えてみませんか?
電気圧力鍋と上手に付き合って行くことで暮らしに変化が生まれ、質が上がることは間違いないでしょう。