公開日:2018年4月18日
更新日:2026年9月28日
「電気はどうやって貯めているのだろう」「電気を貯めるのは難しいと聞くけれど、なぜだろう」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。
電気は電気エネルギーのままの形では貯められません。別のエネルギーに変換することで、はじめて蓄えることが可能になります。そして、この変換の過程で大きなロスが発生することが、「電気を貯めるのは難しい」といわれる理由です。
とはいえ、電気を貯める技術がなければ、発電した電気はその瞬間に使い切るしかありません。再生可能エネルギーを活用していくうえでも、蓄電技術は欠かせない存在です。今回は、電気を貯めるのが難しい理由を解説したうえで、社会で活用されている6つの蓄電の仕組みを紹介します。
電気は電気エネルギーとしては貯められませんが、エネルギーの形を変えれば貯めておくことができます。
電気エネルギーとは、電子などが「移動」することによって生じるエネルギーです。移動している状態そのものを、容器に入れるように閉じ込めておくことはできません。しかも電気の動きは非常に速く、発電した瞬間に電線を通って消費者のもとへ届いてしまいます。そのままの状態で大量に留めておけないのは、このためです。
そこで、電気を別のエネルギーに変換して蓄え、必要なときに再び電気エネルギーとして取り出すという方法がとられます。ただし、変換の際には必ず「エネルギーロス」が発生します。
そのため、大量の電気を安く効率的に貯めておくことは困難です。社会全体で使うような膨大な量の電気を貯蔵しようとすれば、莫大なコストと広大な敷地が必要になってしまいます。
「電気を貯めるのは難しい」といわれるのは、技術がまったく存在しないからではなく、効率とコストの壁があるからだといえるでしょう。
電気を貯める方法は一つではありません。電気エネルギーをどのエネルギーに変換するかによって、仕組みが異なるためです。ここでは、代表的な6つの方法を紹介します。
揚水発電は、電力需要が少ない夜間に下部の調整池から上部の調整池へ水を汲み上げ、需要がピークを迎える昼間などにその水を落として水車を回し、発電する仕組みです。電気を「水の位置エネルギー」として蓄えているといえます。
発電の際に取り出せる電気量は元の7割程度に減ってしまいます。それでも、余った電気を貯めて電力系統を安定的に保つ重要な役割を担っており、東日本大震災の際にも活躍しました。
100年ほど前から実用化されている古い技術ですが、天候によって供給が不安定になりやすい太陽光発電や風力発電を代替する蓄電技術として、近年あらためて価値が見直されています。現在では、下部の調整池の代わりに海水を利用する「海水揚水発電」の技術開発も進められています。
フライホイールとは回転を安定させる円盤のことで、日本語では弾み車(はずみぐるま)とも呼ばれます。電気エネルギーを使って真空に保たれた容器の中でホイールを回転させておき、必要なときにその回転で発電機を回して発電する方法です。この場合は、電気エネルギーを「運動エネルギー」に変えて貯めていることになります。
フライホイールは短時間のエネルギー貯蔵に向いているのが特徴です。日本原子力研究開発機構(旧日本原子力研究所)において、世界最大規模のフライホイール付き発電機の稼働実績などがあります。
電気エネルギーを使って水を電気分解し、水素などの気体燃料に変換して蓄えることを「Power to Gas(P2G)」といいます。
必要なときには、蓄えた水素を使って燃料電池などで発電します。燃料電池とは、水素などの燃料と空気中の酸素を反応させることによって発電する装置です。
通常の電池は容量に限界がありますが、燃料電池は燃料を補充し続けることで、継続的に電気を取り出せる点が特徴です。
蓄電池は、充電をおこなうことによって電気を蓄えられる電池のことです。二次電池やバッテリーとも呼ばれ、私たちの身近なところで幅広く活用されています。
充電と聞くと電気エネルギーをそのまま貯めているように思うかもしれませんが、実際には化学反応を使って電子をやりとりしています。つまり、電気エネルギーを「化学エネルギー」に変えて貯めているのです。
一言で蓄電池といっても、使われている素材によっていくつかの種類があります。代表的な蓄電池は以下のとおりです。
| 蓄電池の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 鉛蓄電池 | 比較的高い電圧を取り出せ、材料の鉛も安価。自動車のバッテリーとして広く使われている。 |
| ニッケルカドミウム電池 (ニッカド電池) |
100年以上前に発明され、取り扱いのノウハウが豊富。一方、材料のカドミウムは有害物質であること、充電が難しいことから、ニッケル水素電池などへの置き換えが進んでいる。 |
| ニッケル水素電池 | 有害なカドミウムを使わず環境への影響が少ない。充電型の乾電池に多く使われている。 |
| リチウムイオン電池 | 小型・軽量のバッテリーを作れる。パソコンやスマートフォン、家庭用蓄電池に広く利用されている。 |
| NAS電池 | メガワット級の大容量化が可能。容量の割にコストが安く、一般家庭数百世帯分の電気を貯められるものもある。 |
超電導電力貯蔵(SMES)は、超電導コイルに電流を流し、電気を「磁気エネルギー」として貯蔵する技術です。
超電導コイルは電気抵抗がゼロのため、貯蔵している間に電気が失われることがほとんどありません。そのぶんエネルギー効率が高く、大容量の電力を短時間で繰り返し充放電できる点も特徴です。
現在は実用化に向けて研究開発が進められている段階であり、普及が進めば、電力ネットワークを制御するための有望な機器になると期待されています。
圧縮空気電力貯蔵は、風力発電などで作られた電力を使って空気を圧縮して貯蔵し、電力が必要なときにその圧縮空気でガスタービンなどの発電機を回して発電する仕組みです。
燃料インフラや希少金属が不要で、排出されるのは空気と水のみです。空気を圧縮する際に発生する熱も再利用できるため、効率的かつ環境にやさしい技術といえます。
単なるピークカットや停電対策としてだけでなく、供給が不安定な再生可能エネルギー発電の出力を平滑化するための蓄電システムとしても、大きく期待されています。
ただし、日本では開発が始まったばかりの最先端技術です。普及に向けては、コストダウンや耐久性の向上、システムの小型化といった課題の克服が求められています。
電気は電気エネルギーのままでは貯められないため、社会全体では揚水発電や圧縮空気電力貯蔵など、別のエネルギーに変換して貯蔵する技術が活用されています。
ただし、電気を別のエネルギーに変換する際にはロスが大きく、効率的に貯めることはかんたんではありません。社会で使う量の電気を貯めようとすれば、膨大な土地とコストが必要になります。
だからこそ、超電導電力貯蔵のように変換ロスの少ない新しい技術の発展が期待されています。蓄電技術は再生可能エネルギーの普及を左右する要素でもあるため、今後の動向にも注目です。