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公開日:2018年4月18日

電気を貯める方法とその仕組み
家庭用蓄電池のメリット・デメリット

「電気は貯められない」という言葉、皆さんは聞いたことありませんか?
「電気は貯められないから、発電したらそのときに使わなければならない。」と耳にしたことはないでしょうか?

しかし、ここである疑問が・・・

蓄電池って、電気を貯めて、その電気を後で使っているんじゃないの?
あれ?電気って貯められないんじゃなかったの?
結局、電気って貯められるの?どうなの?

その疑問に答えるために、まずは電気を貯めるとはどういうことなのか説明します。

電気を貯めるとは?

先ほどの「結局、電気って貯められるのか?」という質問ですが、答えは半分YESで半分NOです。

電気は電気エネルギーとしては貯めることはできません。
しかし、エネルギーの形を変えて貯めておくことはできます!

電気エネルギーとは、電子などが「移動」することによるエネルギーです。
移動しているので、そのまま閉じ込めることはできません。
しかし、エネルギーの形をほかのエネルギーに変えておけば、必要なときに再び電気エネルギーとして取り出す、ということが可能になるのです。

電気を貯める方法とその仕組み

電気を貯める方法は何種類かあります。
電気エネルギーの変換の仕方が異なるためです。
ここでは、代表的なものを紹介したいと思います!

揚水発電

余った電気を使って下のダムから上のダムに水を汲み上げ、必要なときに上から下に流すことで水車を回して発電するのが揚水発電です。
つまり、電気エネルギーを位置エネルギーに変えて貯めているのです。

揚水発電
揚水発電
ダムの水を用いて発電する揚水発電

フライホイール

フライホイールとは回転を安定させる円盤のことで、日本語では弾み車(はずみぐるま)とも言います。
このフライホイールを利用して電気を貯める方法があります。
電気エネルギーを使って真空に保たれた容器の中でホイールを回転させ、そして必要なときに回転を利用して発電機を回して発電をする、という方法です。
この場合、電気エネルギーを運動エネルギーに変えて貯めています。

フライホイール
フライホイール
フライホイール

Power to Gas

電気エネルギーを使って水を電気分解し、水素などの気体燃料に変換して蓄えることをPower to Gas(P2G)と言います。
必要なときには、蓄えた水素を使って燃料電池などで発電をします。

燃料電池は、水素などの燃料と空気中の酸素などを反応させることによって発電する装置です。
通常の電池は容量に限界がありますが、燃料電池は燃料を補充し続けることで永続的に電気を取り出すことができます。

蓄電池

蓄電池は充電を行うことにより電気を蓄えられる電池のことです。
充電と聞くと電気エネルギーを貯めているように思うかもしれませんが、実は化学反応を使って電子をやりとりしています。 電気エネルギーを化学エネルギーに変えて貯めているのです。

蓄電池は二次電池やバッテリーとも呼ばれ、さまざまな種類の蓄電池が皆さんの身近なところで活用されています。
一番身近な電気の貯め方、と言ってもよいでしょう。

ここからは、蓄電池について詳しく紹介していきます。

電気を貯める方法とその仕組み
電気を貯める方法とその仕組み
蓄電池があれば、昼間に発電された電気を夜間に使うことができます。

蓄電池の種類

電気を貯める方法として皆さんの周りで使われている蓄電池(バッテリー)。
一言で蓄電池と言っても、使われている素材によっていろいろな種類があるのです。

鉛蓄電池

比較的高い電圧を取り出すことができます。
材料の鉛も安価なため、自動車のバッテリーとして広く使われています。

ニッケルカドミウム電池(ニッカド電池)

100年以上前に発明されました。
歴史が長いので取り扱いのノウハウは豊富ですが、材料に使われているカドミウムは「イタイイタイ病」の原因となった有害物質です。
廃棄時に環境へ悪影響を与える問題があることや継ぎ足し充電に向かないこと(メモリー効果)から、最近ではニッケル水素電池などに置き換わっています。

ニッケル水素電池

材料に有害なカドミウムを使わず、環境への影響が少ないことから最近ではニッカド電池の替わりとして充電型の乾電池に多く使われています。

リチウムイオン電池

小型で軽量のバッテリーを作ることができます。
パソコンやスマートフォンのバッテリーなどに広く利用されています。
家庭用蓄電池に多く用いられるのも、このリチウムイオン電池になります。

NAS電池

メガワット級※1の大容量化が可能です。
容量の割にはコストが安く、一般家庭数百世帯分の電気を貯めることができる電池もあります。

  • ※1
    メガワットアワーは、一般家庭約2,800戸の1ヶ月分の消費電力

各種蓄電池の比較

電池の種類 ニッケル水素 リチウムイオン NAS
(ナトリウム硫黄)
コンパクト化
(エネルギー密度:Wh/kg)
×
35

60

200

130
コスト
(円/kwh)
5万円 10万円 20万円 4万円
大容量化
~Mw級

~Mw級

通常1Mw級まで

Mw級以上
充電状態の正確な
計測・監視
安全性
資源
運転時における
加温の必要性
なし なし なし 有り
(≧300℃)
寿命 17年
3,150回
5~7年
2,000回
6~10年
3,500回
15年
4,500回
出典:経済産業省ウェブサイト(蓄電池戦略)

家庭用蓄電池のメリット

蓄電池のメリットは、「かんたんに電気を貯められ、それを使いたいときに使えること」です。
そして、蓄電池は太陽光発電と組み合わせることで、そのメリットを最大限に発揮します。
家庭に蓄電池があればどんなメリットがあるか、3つあげてみました!

①昼間に発電した電気を夜間に使える!

電気の需要は人の生活や経済活動にあわせて上下するため、午前9時から午後5時をピークとして、夜中の午前3時から4時にはピーク時の40~50%と大きく変動します。

①昼間に発電した電気を夜間に使える!
①昼間に発電した電気を夜間に使える!

上記は送電ロス込みの値

出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(夏期最大電力使用日の需要構造推計(東京電力管内))

発電所は出力を抑えず一定に発電した方が稼働率があがるため、ピーク時を基準に発電します。
そのため、必然的に夜間に電気が余り、電力会社は余った電気を使ってもらうために、深夜電力として安価に提供していました。

しかし、太陽光発電などをはじめとする再生可能エネルギーが世界的に普及し始め、需要にかかわらず電気が供給されるようになりました。

そのため、真夏の昼間には電気が余ってしまったり、夜間や雨天には太陽光がほとんど発電できず電気が不足したりすることが起きてきました。
このような状態をコントロールするため、太陽光発電の導入が全米No.1となっているカリフォルニア州では、昼間割安で夜間割高の時間帯別料金も考えられています。

そうなると、太陽光発電を行っている家庭で、もし蓄電池を設置していなければ、昼間安く売った電気を夜間に高く買い戻すという事態が発生してしまいます。
しかし、蓄電池があれば、そのような事態を避けられ、おトクに電気をやりくりすることができるのです。

②「固定価格買取制度」の満期終了で損をしない!

日本でも家庭用蓄電池のニーズが増えてきています。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」の期間満了を迎える人が出始めるからです。

「固定価格買取制度」とは、再生可能エネルギー源(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)で発電した電気を、一定期間、国が定める固定価格で電力会社に高く買い取ってもらえる制度のことです。
再生可能エネルギー普及のために、2009年から始まり(当時は「住宅用余剰買取制度」という名称)、2019年に開始から10年を迎えます。

この2019年というのがポイントで、2009年にこの制度に登録した人は満期を迎えます。
2009年にこの制度を使って、自宅で太陽光発電を行って電気を売っていた人は、今までは実質48円/kWhという高値で電気を売っていました。
しかし、2019年になり満期を迎えると、今後は11円/kWh程度まで売値が下がると言われています。

地域により差はありますが、電力会社から電気を購入すると、1kWh当たりの単価はおよそ24円です。
今までは電気が余っていた場合、電気を貯めるよりも売った方がトクをしていましたが、この制度が適用できないとなると、電気を安く売って高く買い戻すことになってしまいます。

蓄電池があれば、電気を貯めておくことができ、昼間に余った電気を夜間の消費に回すことができるのです。

③災害時や非常時に電気を使える!

大規模な災害による停電などの際にも太陽光発電と蓄電池があれば、電気のある生活を送ることができます。
蓄電池によっては、停電時に使いたい家電製品をあらかじめ設定しておくことができ、最大で24時間連続して使用可能な製品もあります。

③災害時や非常時に電気を使える!
③災害時や非常時に電気を使える!
自宅に設置した太陽光パネルで発電した電気が蓄電池に貯まるので災害時も安心です。

お年寄りや病人にとって、電気が使えないことは命に関わる事態につながります。
いつ地震や台風などで停電が起こるかは分かりません。
場合によっては長期間続くこともあるでしょう。
そんなもしものときに、しっかりと備えることができるのは安心ですよね。

家庭用蓄電池のデメリット

家庭に蓄電池を置くとこんなにも便利なのですが、ネックとなるものもあります。

①価格が高い

システム一式を導入するには100万円から300万円の費用がかかります。
これはなかなか気軽に買えるものではありません。

ただし、最近ではアメリカのテスラ・モーターズから100万円を切るモデルが発売されていたり、小容量でもAIで制御することで効率的に使えるタイプが登場したりするなど、導入費用も徐々に下がってきています。

②寿命がある

無制限に使えるような錯覚を覚えるかもしれませんが、蓄電池には寿命があります。
充電・放電を繰り返すたびに、少しずつ劣化が進んでしまうからです。

蓄電池の寿命は「サイクル」と表記されることが多いです。
充電と放電を1セットとして、何回繰り返し使うことができるかという回数のことです。
製品によってサイクルは異なりますが、一般的な家庭用蓄電池の場合、約4,000サイクルが目安となります。
1日1サイクルで毎日使うと、約10年の寿命ということになります。
多くの製品で10年間の製品保証はついていますが、保証期間終了後のことは考えておく必要があります。

家庭用蓄電池の補助金

蓄電池の導入費用を抑えてくれるありがたい存在、それが補助金です。
環境省は、平成30年度は蓄電池の補助金として84億円の予算を盛り込む、と発表しました。

気になる補助金額ですが、設備費と工事費の合計額が適用されます。
 設備費:3万円×蓄電池容量(上限:総額の3分の1)
 工事費:一律5万円
12kWhの蓄電池を購入すると、補助金の合計は36万円+5万円=41万円 となります。

ただし、今回の補助金については注意点があります。
それは、断熱材やLED照明、HEMSなどを導入した「省エネ住宅」が優先されるという点です。
省エネリフォームに点数が付けられ、その点数が高い人から補助金が割り当てられるというものです。
ですので、既築住宅にお住まいの方はリフォーム費用が発生してしまう可能性が高く、補助金を適用させるのはハードルが高いと言えます。

また、各都道府県や市区町村といった自治体でも独自の補助金を設定しているところがあります。
おトクに設置できる可能性もありますので、導入を検討されている方は、お住まいの自治体に問い合わせしてみてはいかがでしょうか?

まとめ

いかがでしたでしょうか?
電気を貯める方法や、蓄電池について興味を持っていただけたでしょうか?

電気を貯めることができる蓄電池の普及は、再生可能エネルギーの普及に欠かせません。
技術革新が進み太陽光発電がより効率的にできるようになっても、それを貯める蓄電池が普及していないと、電気を効率的に利用することはできないからです。

世界的にも電気自動車の普及などで蓄電池の生産がますます増え、大量生産による低価格化や研究・開発などによる高性能化も期待されています。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の発表では、定置型蓄電池のコストは2030年までに最大66%低下するとも言われています。

電気を自給自足する時代がもうすぐやってくるかもしれませんね。