公開日:2022年3月11日
春になって暖かくなると、エアコンやヒーターといった暖房のための電気代が不要になるのはうれしいけれど、花粉症の人にとってスギやヒノキ科の花粉が飛散のピークを迎える春はつらい季節でもあります。
特に今は新型コロナウイルスの感染予防にも通じるため、マスクの着用や手洗い・うがいなどのウイルス対策は花粉症でなくても気を付けたいところ。
そこで今回は、花粉やウイルス対策にも役立つ加湿器について、どんな効果や種類があるのか、電気代を節約するにはどうすればいいのかなど、知っておきたい豆知識やおトクな情報をご紹介します。
これから加湿器を購入しようと考えている人も、買い替えを考えている人も、ぜひ検討の参考にしてみてください。
加湿器といえば、空気が乾燥する冬場の乾燥対策として使うイメージがありますが、暖かくなったからといってすぐにしまい込む必要はありません。
過去の気象データを見ると、3月・4月は冬と同じくらいの平均湿度で最小湿度が20%を下回ることも多いのです。それだけ乾燥する日が多いということですから、春も加湿器には活躍の場があるということになります。
また、加湿器は鼻や喉の乾燥を防いで粘膜のバリア機能を低下させないことなどから、春に多い花粉症やウイルス対策にも有効です。春も加湿器を上手に活用して、健康で快適な毎日を過ごしましょう。
加湿器の使用が花粉症やウイルス対策に有効であるというのには、いくつか理由があります。
まず花粉症は、花粉に対するアレルギー反応としてくしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状が起こるもの。その原因となる花粉の飛散が盛んな3月から4月にかけての春は、最も注意の必要な時期です。
対策としては花粉を吸い込んだり体に付着させないことが一番ですが、窓やドアを開閉したり外出着を脱ぐタイミングなどで、花粉を完全にシャットアウトするのはなかなか困難だと思います。さらに今は、新型コロナウイルスの感染予防策としても室内の換気が必要なので、花粉の侵入は避けられません。
そこで、侵入してきた花粉を飛散させないためにも、室内を適度な湿度に保っておく加湿器が役に立ちます。湿度が上がると花粉は水分を含んで重くなり、飛散しにくくなるのです。このことで、吸い込むリスクはかなり軽減されます。
屋外でも、雨の日は花粉症の症状が落ち着くという話を聞いたことがありませんか?
これも、雨にあたって重くなった花粉が地面に落ち、飛散しなくなるために症状が和らぐのです。室内で加湿器を使って花粉の飛散を抑えることが、効果的な対策であることの理由がお分かりいただけたでしょうか。
室内で加湿器を使うと、花粉の飛散を抑えるだけでなく、のどや鼻の粘膜の機能を高める効果にもつながります。
のどや鼻などの呼吸器の粘膜には、花粉やウイルスといった異物の侵入を防ぐためのバリア機能があり、異物を感知すると繊毛(せんもう:細胞の表面にある短い毛)が粘液とともに異物を排除する働きがあります。ここでキャッチされた異物は、痰となって体外へ排出されたり、胃の中に流れ込むことで排除されます。
ところが、空気が乾燥すると防御機能が低下して、有害な異物も体内に残ってしまうためにアレルギー症状が起きたり、風邪やインフルエンザにかかりやすくなったりするのです。
加湿器などを使って室内の湿度を快適に保ち、乾燥を防いで粘膜のバリア機能がしっかり働ける環境を整えてください。
花粉の飛散防止や呼吸器のバリア機能を低下させないためには、室内の湿度は高い方がいいと思いがちですが、加湿が過ぎると別の問題が起こる可能性もあるので気を付けたいところです。
室内での適切な湿度の目安は、40~60%といわれています。加湿器で、それ以上の湿度になるような運転を続けていると、ダニやカビが発生したり窓が結露したりする可能性もあります。繁殖したカビ胞子などを吸い込むことで別の健康被害が起きたり、結露によって住宅が傷むことも考えられるのです。
湿度計を併用して確認したり、一定の湿度以上にならないような設定を行ったりして、快適な環境を維持できるように心がけましょう。
ひと口に加湿器といっても、加湿する方法によってさまざまな種類があります。主なものは、気化式、加熱式(スチーム式)、超音波式、ハイブリッド式の4種類です。
ここでは、それぞれの加湿の仕組みや特徴などについてご紹介しましょう。
「気化式加湿器」は、水を含ませたフィルターにファンで風を当て、水蒸気を発生させることで加湿するものです。
ヒーターで加熱しないために吹出口が熱くならず、小さなお子さんがいる家庭でも安心して使えます。蒸気は見えません。加湿するまでに多少時間がかかりますが、ヒーターがないために消費電力が低く抑えられるのも特徴のひとつです。
水道水を使うため、フィルターに「スケール」と呼ばれる蒸発残留物(マグネシウムやカルシウムなど)の白い粉が残るので、定期的なフィルターの交換や清掃などのお手入れが必要となります。
「加熱式加湿器」は、水をヒーターで加熱し沸騰させて水蒸気を出す機種。ファンで蒸気を送り出すため「蒸気式(スチーム式)」ともいわれます。
ヒーターを内蔵しているので消費電力が高く、ほかの方法より電気代はかかりますが、パワーがあり、加湿量は1番です。ただ、蒸気が高温となるので、吹出口付近には近づかないように注意が必要です。
短時間で広い範囲にわたって加湿できるパワフルさがあり、いったん沸騰させるため蒸気に雑菌の残る心配がなく衛生的です。
超音波で水を振動させ、細かな霧状のミスト(微粒子)にして空気中に噴出するのが「超音波式加湿器」です。 ヒーターで加熱するわけではないので消費電力は少なく、噴出されるミストは熱くならないため火傷の心配などはありません。
ただ、一度加熱した水を微粒子にするのではなく、水道水がそのまま使われることから、水の中の雑菌や不純物などが室内に出ていく可能性も。ときには、床や家具などに白い粉が付くこともあるので、タンク内の水を清潔に保つことが重要です。
上記のほかに、複数の加湿器の特徴をうまく取り入れた「ハイブリッド式加湿器」もあります。
気化式と加熱(スチーム式)を組み合わせた「加熱気化式」は、水を含んだフィルターに温風を当てて水蒸気を発生させるのですが、気化式に比べて加湿の量は多くなります。 加熱式のようにヒーターを使用するものの、こちらは吹出口が高温になることはありません。湿度がある程度高くなったら、気化式の加湿器として送風だけで加湿を続けるため、加熱式だけよりは消費電力を抑えられます。
スチーム式と超音波式の特徴を備えた「加熱超音波式」もあります。ヒーターで加熱したお湯を霧状のミストにするので、超音波式の課題である水の衛生面の問題は緩和されることが多いようです。
加湿の方法によってさまざまなタイプがある加湿器は、それぞれにかかる電気代も違います。
加湿方式 | 適用床面積 | テスト結果 | ||
木造和室 | 加湿量 [mL/h] |
消費電力 [W] |
電気代 [円/h] |
|
プレハブ洋室 | ||||
気化式 | 5畳 | 198.1 | 10.6 | 0.3 |
8畳 | ||||
加熱式 | 6畳 | 314.8 | 234.9 | 7.6 |
10畳 | ||||
超音波式 | 4~6畳 | 293.6 | 22.5 | 0.7 |
6~8畳 | ||||
ハイブリッド式 (気化+加熱) |
5畳 | 263.7 | 162.6 | 4.9 |
8畳 | ||||
ハイブリッド式 (超音波+加熱) |
5畳 | 220.6 | 60.2 | 1.7 |
8畳 |
こちらは、主要メーカーが市販している一般的な各タイプの加湿器を使って、1時間当たりの加湿量(mL/h:ミリリットル毎時)と消費電力(W:ワット)、電気代について、国民生活センターが特性をテストした結果です。この結果から、各タイプの特性が見えてきました。
「気化式加湿器」は自然気化による加湿なので、安定した湿度を保てることがメリットとして挙げられます。急速な加湿はできませんが、連続運転することで室内の湿度は安定します。
ヒーターがないため消費電力が低く、電気代が一番少なくて済むのもメリットの一つ。その反面、ほかのタイプに比べて加湿量がやや低く、広い部屋の加湿などには向いていません。
また、加熱しないので吹出口が高温になる心配はありませんが、水を使うことでひんやりとした冷気を感じることも。春など気温の変化が激しい時期は、加湿量が室温の影響を受けることもあるので注意が必要です。
本体のサイズが大きく、価格が比較的高価なこともデメリットとして挙げられますが、節電意識の高まりから、このタイプの加湿器を選ぶ人も増えています。
ヒーターで沸騰させるため消費電力が高くなり、ほかの方式と比較すると電気代もかかりますが、加湿量は1番多くなります。
ただし、加湿量が多い分、過加湿になりやすいリスクもあることを知っておきましょう。
パワーが高く、吹出口から白い蒸気が上がる様子が目に見えるので、加湿しているという実感は一番得られるタイプです。
加湿器の吹出口付近は熱い蒸気が出て高温になるため注意が必要ですが、場合によっては加湿器本体も熱くなることがあるので、気を付けましょう。
超音波式は気化式よりも加湿量が多いのでしっかり加湿ができるうえ、消費電力も低いので電気代も安く抑えられます。加湿装置がコンパクトなためにデザイン性の高いものが多く、モダンでおしゃれな商品が比較的安価で買えるのもポイントです。
運転音も静かで、噴出されるミストが見えるので、加湿の様子が視覚効果として確認できます。アロマでミストに香りを加えられるタイプならば、リラックス効果なども得られます。
水道水をミストにして噴霧するため、スケールが白い粉となって室内に拡散されることがあります。タンク内に雑菌が繁殖した場合は部屋中に広がることになるので、タンクを清潔に保つことが重要です。また、ミストは水蒸気より水の粒子が大きく、加湿器の周辺が濡れる場合もあるので設置場所には注意しましょう。
ヒーターで温めた風を当てる加熱気化式の加湿器は、気化式に比べると室温の影響も受けにくく、加湿量はアップします。その分消費電力が上がり、加熱式ほどではありませんが、電気代も高くなります。
加熱超音波式の加湿器では水を加熱してから霧状にするので、温かいミストが噴出されます。超音波式と同じくミストが見えるために、加湿の視覚効果が感じられます。加熱のために消費電力が上がる分、超音波式と比較すると電気代は高くなりますが、加熱気化式よりは抑えられる結果となりました。
テスト結果などから、加湿器の気になる電気代は「加熱式」タイプが一番高く、次いでハイブリッド「加熱気化式」、ハイブリッド「加熱超音波式」ときて、「超音波式」、「気化式」の順に低くなっていることが分かります。
加湿器については、電気代を低く抑えたければ気化式、広い範囲をしっかり加湿したければ加熱式、インテリアに合わせたければ超音波式など、目的によって、それぞれに適した加湿方式のものを選ぶことをおすすめします。
加湿器は、冬場の乾燥対策だけでなく、春の花粉対策やインフルエンザなどのウイルス対策にも有効であることをお伝えしてきました。
そのほかにも、夏場のエアコン冷房で乾燥した室内を快適な湿度に保つなど活躍の場は1年中ありますが、だからといってずっと稼働させていたのでは、電気代もばかになりません。そこで、電気代や消費電力を節約しながら、上手に加湿する方法をご紹介します。
加湿器の電気代や消費電力を節約するために一番確実な方法は、当然ですが、加湿器をつかわずに加湿することです。
例えば「洗濯物の部屋干し」は、誰もが経験ある室内の加湿方法だと思います。生乾きの際に繁殖する雑菌のにおいが気になる場合は、乾きやすい薄手のものだけを干すか、洗濯物と洗濯物の間に風(空気)が通り抜けられる間隔を開けて干すなどしてください。
室内に観葉植物を置くのも、加湿には有効です。植物には、吸い上げた水分を水蒸気にして発散させる「蒸散」という働きがあります。この働きによって、植物の周辺の湿度は高くなるのです。
植物の種類によって加湿の作用は違いますが、たっぷり水をあげて、みずみずしいグリーンを楽しみながらの加湿には、心を癒す効果も期待できるかもしれませんね。
加湿器の購入にあたって、製品には「適用床面積」が表示されているので、使用する部屋のサイズは必ず確認しておきましょう。
表示されている面積より広い部屋に加湿量の少ない加湿器を置いても効果は感じにくいですし、面積の狭い部屋に加湿量の多いものを置いては湿度が上がりすぎて、ダニやカビの繁殖が広がる危険性もあります。
適切なサイズの加湿器で効果的な加湿をしながら、節約しましょう。
また、電気代などは加湿器の種類によって違います。本体は安くても電気代がかかる、電気代は安くてもこまめにフィルターを交換することでランニングコストがかかる、といった特徴を把握しておきましょう。フィルターの価格や交換時期の目安なども知っておくと、計画的な購入で無駄なコストを軽減することもできます。
自動で室温や湿度を調整できる自動運転などの省エネモードがある加湿器も、購入のポイントです。無駄のない加湿で消費電力も抑えられ、最適な環境が持続できます。
どんなタイプのものをどこでどう使いたいのか、目的を明確にして、自分のライフスタイルに合った最適な加湿器を購入してください。
電気代の節約を考えるうえで、現在では電力会社の見直しも有効な方法の一つです。2016年の電力自由化以降、家庭で契約する電力会社は複数の事業者の中から選べるようになりました。 各社の打ち出している新しいサービスや料金プランを利用することで、基本料金が低く抑えられたり、電気使用量に応じた従量料金に割引が適用されたり、さまざまな特典を受けられるようになったのです。
加湿器を購入するタイミングで、新しい電気代の節約術として電力会社の見直しを行うのもおすすめです。
花粉やウイルス対策に有効な加湿器には、加湿方式によってさまざまなタイプがあり、消費電力や電気代にも違いがあります。それぞれの特徴を知り、メリット・デメリットも分かったうえで、自分に合った加湿器を選んでみてください。
さらに現在では、花粉だけでなく細かいほこりやハウスダストなども除去できる「空気清浄機能」付きの加湿器や、タバコやペット臭などに対する「消臭機能」、空気中のウイルスを減らす「除菌機能」など、高機能を備えた機種も続々と開発されています。
乾燥を防ぐだけではなく、美容や健康にも役立つ加湿器を十分に活用して、湿度と上手に付き合ってください。