1. ホーム
  2. でんき
  3. でんきの節約・豆知識
  4. 全館空調の電気代は高い?導入するメリットやデメリット、向いている家庭の特徴を紹介
でんきの節約

公開日:2025年6月27日

全館空調の電気代は高い?導入するメリットやデメリット、向いている家庭の特徴を紹介

全館空調の電気代は高い?導入するメリットやデメリット、向いている家庭の特徴を紹介
全館空調の電気代は高い?導入するメリットやデメリット、向いている家庭の特徴を紹介

全館空調(ぜんかんくうちょう)とは、家全体を一つの空調システムで管理する設備です。家のどこにいても過ごしやすい室温を維持できるため、生活の満足度を高めるうえで役立ちます。

全館空調は基本的に常時運転(24時間運転)し続ける必要があります。エアコンと全館空調のどちらを導入するか悩んでいる場合は、それぞれの電気代や快適性、利便性などを総合的に加味して決めるのがおすすめです。

今回は、全館空調の仕組みや導入するメリット、デメリットなどを解説します。全館空調の導入が向いている家庭の特徴も紹介するため、導入を検討している方は参考にしてみてください。

全館空調の仕組みとタイプ

全館空調の仕組みとタイプ
全館空調の仕組みとタイプ

全館空調とは、家の中全体の空調を管理するシステムです。従来のようにエアコンを各部屋に設置するのではなく、全館空調では家全体を一つの空間として考え、家の温度を均一に管理します。

全館空調のタイプは主に以下の3つです。

タイプ 特徴
天井吹き出し方式
(ダクト式)
天井裏にダクトを配置し、天井の吹き出し口から冷暖気を送る方式
床下冷暖房方式 断熱された基礎部分に蓄熱して輻射熱で冷暖房し、ドアや窓・壁に取り付けられた換気口(ガラリ)から送風もできる方式
壁パネル方式 壁にパネルを設置して冷液や温液を循環させ、輻射熱で家全体を冷暖房する方式

全館空調の中には、温度・湿度を調整するだけでなく、換気や空気清浄を行う機能が付いた製品もあります。換気機能や空気清浄機能を活用すれば、窓を開けなくても清潔な空気を室内に循環させることができ、常に快適な空気環境を維持できます。

全館空調のメリット

全館空調のメリット
全館空調のメリット

全館空調を導入すると、家のどこにいても最適な温度で過ごせるため、生活の満足度が高まるでしょう。全館空調を導入する具体的なメリットを解説します。

家の中の温度を均一にできる

全館空調を導入すれば、暑い時期は家の中を常に涼しく、寒い時期は家の中を常に暖かくできます。家のどこにいても快適に過ごせるため、エアコンの電気代を節約しようと家族が一つの部屋に集まらざるを得ないといったケースがなくなるでしょう。

また、家の中の寒暖ムラがなくなることで、部屋を移動したときの急激な温度変化による不快感を解消できます。身体が温度変化にさらされることがなくなれば、免疫力の低下を防ぎ、体調を崩す可能性を軽減できます。

なお、環境省が推奨している「快適性を損なわない室温の目安」は、夏季は28℃・冬季は20℃です。全館空調を導入すれば、季節に関係なく家全体を適温に維持できます。

空気清浄機能を活用すれば快適な空気を維持できる

全館空調には、冷暖房機能だけでなく、除菌機能や空気清浄などの機能が搭載されている製品もあります。窓を開けずに換気できるため、家の冷気や暖気を外に逃しません。

また、通常の据え置き型空気清浄機が空気を浄化できる範囲は設置した部屋に限られる一方、全館空調では家中の空気が常にフィルターを通過するため、どの部屋にいてもきれいな空気環境を維持できます。

自動で家の中の空気を清浄し、清々しい空気を送り込んでくれるため、花粉除去やアレルギー除去などの効果が期待できるでしょう。特に、アレルギー体質の方や小さな子どもがいるご家庭では、良好な空気環境を維持できる点は魅力的です。

健康促進や生活の質が改善される

国立研究開発法人科学技術振興機構の「空調方式が住宅居住者の健康症状・生活の質に及ぼす影響に関する調査研究」によると、全館空調の導入が健康促進や生活の質改善につながることがわかっています。

この研究では、全館空調・床暖房・個別空調の空調方式が、健康症状と生活の質にどのような変化をもたらしたかを調査しています。

全館空調群では、他の空調設備と比較して「活動意欲」「手足の冷え」「寝つき・眠りの質・寝起き」「アレルギー性鼻炎」「風邪」について、高い改善率が見られました。

  全館空調群 床暖房群 個別空調群
活動意欲(大人)62.5%48.3%36.6%
活動意欲(子ども)61.6%38.4%27.9%
手足の冷え(大人)41.4%25.7%18.6%
寝つき(大人)46.6%37.7%28.4%
寝つき(子ども)37.7%34.6%24.9%
眠りの質(大人)44.7%34.2%29.9%
眠りの質(子ども)36.4%27.7%21.8%
寝起き(大人)43.8%38.5%29.7%
寝起き(子ども)33.0%21.8%22.1%
花粉症(大人)36.3%25.7%22.6%
アレルギー性鼻炎(大人)29.5%22.1%22.4%
アレルギー性鼻炎(子ども)18.6%18.7%17.1%
風邪(大人)37.0%50.3%34.1%
風邪(子ども)32.2%16.3%18.7%

全館空調が持つ優れた空調・換気機能が、健康症状や生活の質によい影響を及ぼすことがわかります。

壁掛けエアコンがなくなり室内がすっきりする

全館空調のタイプによっては通常のエアコンとは異なり、本体(室内機)が部屋内に露出しません。専用の機械室や天井裏、床下空間などに室内機が設置されるため、部屋の中がすっきりとした印象になります。

室内の開放感を高めたいときは、通常のエアコンよりも全館空調がマッチする可能性が高いでしょう。

戸建てだけでなくマンションでも導入できる可能性がある

メーカーによっては、一戸建て向けだけでなくマンションでも導入できるタイプもあります。

ただし、マンションは一戸建てよりも、全館空調を導入するための制約が多い点は否めません。全館空調は室内機と各部屋をダクトで通し、室外機を設置する必要があります。新築時であれば全館空調を設置する前提で間取りを決められますが、リフォームで後付けしようとすると構造的に不可能なケースもあるため注意しましょう。

マンションで生活しており、全館空調に興味がある方は、ご自宅に導入できるかメーカーや設置業者などに相談してみてください。

全館空調のデメリット

全館空調のデメリット
全館空調のデメリット

導入すると快適な環境で生活できる全館空調ですが、デメリットや注意点もあります。導入時・導入後におけるデメリットを確認しましょう。

初期費用がかかる

全館空調を導入する際には、本体機器と工事費用をあわせて100〜400万円程度の導入費用が発生します。予算との折り合いをつけつつ、どのタイプを導入すべきか、慎重に判断する必要があります。

トータルの費用は「新築かリフォームか」「家の広さはどの程度か」「どのタイプを導入するのか」などによって異なるため、複数の見積もりを取得し、比較するとよいでしょう。

また、リフォームの場合は構造的に全館空調を設置できるかどうかの確認が必要です。見積もりと同時に設置の可否も確認してもらうことが必要です。

住まいの気密性・断熱性が低いと電気代が高くなる可能性がある

気密性や断熱性が低いと、外気温の影響を受けやすく、冷暖房効率が悪くなってしまいます。その結果、家の中を快適な温度にするための消費電力が増え、電気代が高くなるでしょう。

たとえば、築年数が経過している住宅は、住まいの気密性・断熱性が低いと考えられます。気密性や断熱性が低い場合、リフォームをしなければ全館空調を導入するメリットが薄れてしまいます。

導入後に「思ったよりも電気代が高い」と後悔する事態を防ぐためにも、現在の住宅に導入するメリットがあるかを慎重に判断しましょう。

家の空気が乾燥する可能性がある

冬場になると、家の中の空気が乾燥してしまう可能性があります。全館空調で温度管理をしていると、石油ファンヒーターやガスファンヒーターのような水蒸気が発生する燃焼系の暖房を使わなくなるためです。

空気が乾燥すると、手荒れが起きたり風邪やインフルエンザなどにかかりやすくなる可能性もあります。

厚生労働省は、インフルエンザ対策として、50%~60%の湿度を保つことを推奨しています。乾燥対策として、全館空調の加湿機能を活用したり、別で加湿器を設置したりするとよいでしょう。

故障するとすべての部屋で空調が使えない

基本的に、全館空調は1台の室内機と1〜2台の室外機で運転しています。全館空調が故障すると家全体の空調が機能しなくなるため、注意が必要です。

もし故障すると、夏場は「家のどこにいても暑い」、冬場は「家のどこにいても寒い」という事態になりかねません。修理業者の手配や修理が完了するまでに時間がかかる事態も想定されるため、故障すると生活に悪影響が出てしまいます。

カビ対策やフィルター清掃が必要

全館空調をすべてオフにすると、内部結露によりダクトの中でカビが発生する可能性があります。その結果、家の中にカビ臭い空気を循環させてしまうため、カビ対策が必要です。

カビ対策として効果的なのは、全館空調を常時送風運転にすることです。また、年に1回程度は専門業者にダクト内部の点検や清掃を依頼するとよいでしょう。

また、故障や運転機能の低下を防ぐためにも、フィルター清掃をこまめに行う必要があります。メンテナンスの方法は製品によって異なるため、導入時に確認しておきましょう。

通常のエアコンと全館空調の電気代を比較

通常のエアコンと全館空調の電気代を比較
通常のエアコンと全館空調の電気代を比較

「エアコンと全館空調は、どちらのほうが電気代を抑えられるのか」という疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。通常のエアコンと全館空調との電気代を比較すると、以下のとおりです。

  年間の電気代
エアコン 約26,784円
エアコン2台 約53,568円
エアコン3台 約80,346円
エアコン4台 約107,136円
全館空調 約55,000~77,000円
  • エアコンの電気代は、経済産業省資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ2024年版」のエアコンの期間消費電力量における冷房254kWh・暖房610kWh(冷暖房兼用・壁掛け形・冷房能力2.8kW代表機種)より算出。

エアコン1台や2台で考えると、全館空調のほうが電気代が高くなる計算となります。しかし、エアコンを3台以上稼働させた場合は、全館空調のほうが電気代が安くなるケースも考えられます。

たとえ在宅勤務で家にいる時間が長いとしても、エアコンの稼働台数が2台以下の場合はエアコンのほうが電気代を抑えられるでしょう。一方で、部屋の数が多い場合や2世帯住宅などでエアコンの稼働台数が多いご家庭は、全館空調を設置したほうが電気代を抑えられるかもしれません。

全館空調とエアコンでは使用状況によってどちらの電気代が安くなるかは変わりますが、単純に電気代だけで比較するのではなく、全館空調を導入することによる快適性や利便性、生活の質の改善も考慮して導入を決めるとよいでしょう。

全館空調の導入が向いているご家庭

全館空調の導入が向いているご家庭
全館空調の導入が向いているご家庭

全館空調の特徴やメリットを踏まえると、導入が向いているご家庭は以下のとおりです。

  • 高齢者がいるご家庭
  • 小さい子どもがいるご家庭
  • ペットを飼っているご家庭
  • 室内干しをする機会が多いご家庭
  • インテリアをすっきりさせたいご家庭

寒い季節になると、高齢者はヒートショックを起こしてしまうリスクが高まります。従来のエアコンだと家の中で温度差が発生してしまいますが、全館空調で家の温度を均一にすれば、ヒートショックのリスクを軽減できます。メリットとしても示したとおり、大人の「手足の冷え」も他の空調設備に比べて大きく改善される結果も出ているため、より快適に生活できるでしょう。

また、小さい子どもやペットは自分で体温調節するのが難しく、夏場は熱中症に注意が必要です。常に快適な温度を維持し、熱中症のリスクを軽減できれば、安心につながるでしょう。それだけでなく、こちらもメリットとして示したように、全館空調を使用すると子どもの「活動意欲」が大きく改善される結果も出ています。

さらに、全館空調には除湿機能があることが多いため、洗濯物を室内干しする機会が多いご家庭にも向いています。

まとめ

全館空調を導入すれば、季節に関係なく、家のどこにいても快適な温度で生活できます。快適性・利便性を高めるうえで、効果的な家電です。

また、エアコンの設置台数や使用状況によって、全館空調とどちらの電気代が高くなるのかは変わります。単純に電気代だけで考えるのではなく、全館空調の快適性や利便性も総合的に考慮して選択するのがおすすめです。

全館空調の導入に興味がある方は、そもそも今の住宅に導入できるか、気密性・断熱性に問題がないかをメーカーや専門業者に調査してもらいましょう。