プロジェクトストーリー Perplexity

AI初心者でも使える、
高い精度を持つAI回答エンジン

2023年度の総務省の調査によると、日本の生成AIの利用率は9.1%に留まり、
40%を超えるアメリカや中国に大きく水をあけられている。
AIと共存する社会の実現に向けた取り組みの一つとして、
2024年6月ソフトバンクはPerplexity社との戦略提携を開始したことを発表し、
“ソフトバンク”“ワイモバイル”“LINEMO(ラインモ)”のお客さまを対象に
AI回答エンジン「Perplexity Pro」の1年間無料トライアルの申し込み受け付けを開始した。

米国のPerplexity社との交渉開始後、翌月には契約を結び、
タイトなスケジュールの中で万全な準備を行い、
6月にはサービスリリースにこぎ着けた。

さらに、ソフトバンクでは珍しい、
一つのサービスに特化したテレビCMを放映し、
矢継ぎ早に家電量販店でのプロモーション強化も実施。

プロジェクトの中心を担ったのは、
いずれも他領域からジョブポスティング制度(社内異動制度の1つ)や
社内副業制度(※)によってジョインした4人の社員だった。

「この国にAI活用を根付かせる」

その強い思いで一心不乱に駆け抜けた日々を追った。

  • 佐藤 潤平 JUNPEI SATO

    コンシューマ事業統括 プロダクト本部
    事業デザイン統括部 事業企画推進部
    事業企画1課 課長
    2016年度新卒入社

  • 平田 結莉YURI HIRATA

    コンシューマ事業統括 プロダクト本部
    事業デザイン統括部 事業企画推進部
    事業推進課 課長
    2012年度新卒入社

  • 鈴木 聖哉SEIYA SUZUKI

    コンシューマ事業統括 プロダクト本部
    事業デザイン統括部 事業企画推進部
    事業推進課
    2023年度中途入社

  • 納崎 真衣MAI NOZAKI

    (本務)
    コンシューマ事業統括 モバイル事業推進本部
    サービス企画統括部
    サービスプランニング部 1課
    (兼務)
    コンシューマ事業統括 プロダクト本部
    事業デザイン統括部 事業企画推進部
    事業企画1課
    2019年度新卒入社

Episode.1 契約締結からリリースまでたった2カ月で走り抜く

2024年6月、高い回答精度を持つAI回答エンジン「Perplexity Pro」を、米国のPerplexity社とソフトバンクが連携し、“ソフトバンク”“ワイモバイル”“LINEMO”のお客さま向けに、1年間の無料トライアルの申し込み受け付けを実施した。まるで友人と会話しているかのように簡単に相談でき、分かりやすく要約された信頼性の高い回答が得られる、AI初心者にも使いやすいサービスだ。日本の携帯キャリアでこうした取り組みをしたのはソフトバンクが初めてだ。

「さあ、パプろう!今日は何を相談する?」携帯電話に話しかけることで、回答が返ってくるCMで一気に認知度が向上。2025年6月からは、“ソフトバンク”“ワイモバイル”“LINEMO”のオプションサービスとして提供を開始し、全国の店頭でも携帯電話の加入時のオプションとしてもご案内している。

このプロジェクトの立ち上げを担った課長の佐藤は語る。

「プロジェクトを始めたころに見た2023年度の総務省のデータによると、日本人の生成AI利用率は9.1%と、他の先進国に遅れを取っていました。そこで、できるだけ多くの人たちにAIに触れてもらい、合わせて『ソフトバンク=先進的なAI企業』というイメージを醸成するために、『Perplexity Pro』の日本での導入をリードしました」

「当時他のAIエンジンは、AIへの指示をうまく出せないと使いこなすのが難しかった。Perplexityは、生成AIを使ったことがない人でも直感的に操作できる。人に優しいAIなので、日本人へのAI普及に一役買えるはず、と確信したのです」

しかし、導入までの道のりは決して平坦ではなかった。最大の課題は、リリースまでに残された時間が非常に限られていたことだった。佐藤をはじめとするプロジェクトチームは、社内外のスタッフの協力を得ながら、ぎりぎりのスケジュールの中で調整と対応を重ね、何とかサービスのリリースにこぎつけることができた。

「まるで戦場のような毎日でしたね(笑)。毎日新規開発部の部長との会議を設定して、そこで意思決定ができるのは助かりました。また、社内の多くの方に多大な協力をいただけました。日本の老若男女にAIを広められるのは、僕たちしかいない。その強い思いがあったからこそ、怒濤のスケジュールを乗り越えることができました」

Episode.2 テレビCMを放映。利用者も増加

2024年4月、契約の締結にまい進している佐藤のチームの隣では、並行で日本でのサービスローンチの準備が進められていた。その指揮を執ったのが鈴木だった。

「部長に突然会議に呼ばれて、『日本でのAI普及を手伝ってもらえないか』と言われたのを覚えています。ワクワクしたのと同時に、スケジュールを聞いて、これは一筋縄ではいかないな、、、と感じて、腹をくくりました」

鈴木は、IT商材の流通を担当するグループ会社であるSB C&Sから「ジョブポスティング制度」を活用して異動してきたこともあり、SB C&Sで培った業界知識と社内ネットワークの構築経験を生かし、マーケティング・プロモーションや顧客管理の部門との接点を新たに築くことができた。その人脈と経験をフルに活用して、プロモーションのプランを企画。オウンドメディア(サービス紹介のためのWebサイト)やWebでの広告配信など、さまざまな施策を短期間で形にすることができた。鈴木自身もその効果測定のために、Webやデータベースに関する技術を習得。「Perplexity Pro」を日本に導入するためにできることは全てやり切った。

そして、2024年9月。Webでのプロモーションが一段落して、新たな幅広いユーザー獲得の施策が求められた。より多くのお客さまに「Perplexity Pro」を知ってもらうためには、どうすればいいのか。そんなときに潮目が変わったのがテレビCMの放映だった。当時の状況を平田に聞いた。

「当時は、徐々にスマホにAIが搭載されてきた時期でした。『Perplexity Pro』が『ソフトバンクなら、無料でAIをお試しいただけます』というトークで加入者が伸びている、という話がテレビCMの放映のきっかけになりました」

日常でのAI活用に馴染みのない日本の人たちに、どのような表現でそのメリットや楽しさを伝えるのか。広告代理店も交えて、何度も議論を重ねる中で導き出された結論が、「AI活用の日常シーン」を伝えること。放映されたテレビCMでは、「明日から二泊三日で、家族で温泉に行きたいんだけど、電車で行けるご飯が美味しい旅館はありますか?」「洋書の写真を添付して、この英文を和訳して要約して」など、いくつかのシーンが取り上げられた。その制作のプロセスを鈴木が語った。

「ネットで検索したり、複数の友人に聞いてみたりと、徹底的に情報収集を行い、頭をフル回転しながら、利用シーンのアイデアを300以上出しました。放映されたのは、多くの方に身近に感じてもらえる旅行や食事や勉強のシーンでしたが、その裏にはさまざまなアイデアがありました」

そして、制作は進められ、2025年1月にテレビCMが放映開始に。付随するWebのプロモーションも実施することで、「Perplexity Pro」の認知が一気に広まり、サービス利用者の増加率は従来の数倍にまで伸びた。

Episode.3 家電量販店でのプロモーション強化と、販売スタッフ向けのAI勉強会を開催

時は少しさかのぼる。2024年の年末、テレビCMの放映を間近に控える中、平田は店頭でのプロモーションを強化するべく、社内で働きかけていた。テレビCMで「Perplexity Pro」の認知を一気に向上させた後に、店頭でさらに丁寧に説明を重ねることで、AI活用のメリットを感じていただく。そこで、平田が着目したのは、ソフトバンクが誇る家電量販店向けの営業部隊だった。

「家電量販店向けの部門との大規模なミーティングが2024年の年末にありました。『Perplexity Pro』について1分だけ話す機会をいただいた際に、その素晴らしさを伝えるために何かしなくてはと思い、『私はもうこのAI無しでは生きていけません!皆さんもぜひ使い倒してください!』とアピールしたのです。大勢の人の前で思いの丈を伝えるのは、度胸が必要でした(笑)」

平田の必死のアピールに、家電量販店向け営業部隊の本部長は心を動かされた。「どういう使い方がいいの?」と聞かれ、「ワインだったら好きなボトルの写真を撮って、似た味のものを教えて!と聞くと一気に出てきますよ」と平田が画面を見せながら操作すると、本部長は驚いた様子だった。年が明けて改めて本部長へ説明する機会をもらい、調整を重ねることで、家電量販店でのプロモーション強化に結びついたのだ。

そのムーブメントを現場に定着させるために、平田、鈴木、納崎の3人は、全国各地で販売スタッフ向けの勉強会を開催。店頭のお客さまに「Perplexity Pro」の有用性や楽しさを理解してもらうためには、利用シーンをイメージできるように伝える必要がある。3人それぞれが、お客さまの利用シーンを想定して、販売スタッフに伝えていった。例えば、平田が取り上げたのは、以下のようなシーンだった。

「同じ洗剤でもさまざまな容量と価格で売られていると、どれを買えば良いのか迷いますよね。そんなときは、写真を撮って『結局どれが一番安いの?』と聞くと教えてくれますよ!」

Webマーケティングが専門の鈴木は、当時を振り返って語った。

「『Perplexity Pro』が現場でどのように薦められているのか。一人一人のお客さまが何を期待しているのか。販売スタッフと直接意見交換をすることで、視野が一気に広がりました。そこで得られた知見は、マーケティングやプロモーションの企画にも、大いに活きましたね」

テレビCM放映と家電量販店でのプロモーション強化は、初期の認知向上と加入者の増加につながった。そして、プロジェクトは次のフェーズを迎える。

Episode.4 今後はグループ内のサービスとも連携しながら、この国にAI活用を根付かせる

2025年6月、「Perplexity Pro」の1年間無料体験の受け付け開始から1年が経過した。開始当初に加入したお客さまの1年間の無料利用期間が終わり、継続してお客さまにサービスを提供するために、半年間無料で利用できるオプションサービスとして「Perplexity Pro for SoftBank」を導入した。

「Perplexity Pro for SoftBank」をオプションサービスとして提供し、お客さまにご利用いただくための申し込み導線や契約管理のシステム開発をリードしたのが納崎だ。納崎は「社内副業制度」で、このプロジェクトにジョイン。“本業”ではスマホの料金プランを設計、運用する業務に従事している。その現場での経験を生かしながら、新規事業の拡大においても大きな役割を果たした。

実際にシステム開発はどのように進められたのか、納崎に聞いた。

「自社の顧客管理のシステム開発と、Perplexity社との情報連携のためのAPI開発をメインで担当しました。定期的なミーティングで細部をすり合わせるのですが、通訳の方に入っていただいても、どうしても解釈の違いが生じてしまうため、Excelで数十通りのケーススタディを網羅して、全て指差し確認で進めていました」

「Perplexity Pro」は、ソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOの三つのブランドのお客さま向けにオプションサービスを提供しているが、このブランドの間でのりかえを行った場合もサービスを継続してご利用いただける新たな仕組みを短期間で開発し、お客さまの利便性に貢献した。

今後の「Perplexity Pro」の事業展開について、佐藤はこのように語った。

「契約の交渉段階から、脇目も振らずにとにかく走り切りました。何とかスケジュール通りに開始にこぎつけ、テレビCMで認知を拡大。店頭での販売促進体制も整いつつあり、ここからは利用者数と売上を拡大するフェーズに入ります。今後はグループ内のサービスとも連携しながら、『Perplexity Pro』の利用者を増やしていきたい。さらにこの流れを加速させることで、日本のAI活用率を高めることにつなげていきたいですね」

そして、開始後のユーザー獲得をリードしてきた平田は、現場でのAI活用の変化を実感している。

「販売スタッフのAI習熟度が、かなり向上しています。『Perplexity Pro』を相手に、お客さまへ薦める際のトークスクリプトを訓練してもらっている人もいるほど。時代が動いている渦中にいることを、日々実感しています。数年後には、情報収集のシーンにおいて、AI活用は必須になっているでしょう。AIは人生の限りある時間を有効に使えるツールです。これからは、多くのシニアの方にも『Perplexity Pro』を広めていきたいですね」

佐藤、平田、鈴木、納崎の4人が強い思いを持って、大勢の社内外の関係者を巻き込みながらプロジェクトは進行し、「Perplexity Pro」日本国内の利用者は急拡大している。「この国にAI活用を根付かせる」というビジョンの実現に対して、第一歩を確かに踏み出した。

(※)「成長機会や能力発揮機会を望む意欲ある社員」と「組織外の視点や経験、専門性を必要とする組織」のニーズをマッチングする制度として、2021年2月よりSB流社内副業制度を導入しています。社員の更なる成長と組織におけるイノベーション促進の実現を目的としています。

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