2020年3月から各社がサービス提供を開始した5Gは、基本的にNSA(Non-Stand Alone)方式で提供されている。NSA方式とは、これまでに活用されていた4G LTEのコアネットワークと5Gの基地局を組み合わせた構成であり、既存のネットワークや設備を生かすことで5Gサービスを比較的早期に提供できるメリットがある。しかし、5Gの特長である「超高信頼・低遅延」「多数同時接続」を実現するためには、5G専用のコアネットワークで構成されたSA(Stand Alone)方式のシステムが必要になる。現在、ソフトバンクを含む大手通信キャリア各社は、NSA方式で先行的に5Gサービスを提供しながらも、SA方式のネットワークを構築し、徐々にSA方式でのサービス提供に切り替えていく戦略を採っている。
通信全般を制御するコアネットワークの構築をリードする横山、無線基地局の機能開発に携わる京ヶ島、スマートフォンなどのデバイス開発を担当する後藤は、それぞれの分野から5Gプロジェクトに関わってきた。横山はSA方式のプロジェクトがスタートした当時の状況について振り返った。
「NSA方式の構築を先行させつつ、同時並行でSA方式のコアネットワークに関する検討を進めていました。SAに関しては本当にゼロからのスタートとなるので、まずは標準仕様に関する情報を集めることから始め、徐々に自分たちが作りたいコアネットワークのイメージを固めていきました。その後、多くのベンダーと協議しながら実現したい各種機能の検証を進めていたというのが当時の状況ですね」
「私は2016年に新卒入社でデバイス開発部門に配属されたのですが、その当時から『もうすぐ5Gの時代が来る』と言われていました」と語るのはデバイス開発を担当する後藤だ。「デバイス開発においては数年がかりでチップセットベンダーや端末ベンダーと協議を進めていく必要がありますし、自分としても5Gに興味があったので、配属当初から5Gの技術調査を進めていました。そのような私の姿を見ていた上司が、今回の5Gプロジェクトにアサインしてくれたのだと思います。プロジェクトに参画してからは、NSAに対応する端末を担当したほか、現在ではSAに対応する端末の検討も担当しています」
一方、コアネットワークやデバイスに比べると「一歩先に進んでいる」と言えるのが無線・基地局の領域だ。「無線に関してはNSAとSAで同じ技術・システムを活用するため、NSAのプロジェクトの頃からSAを含めて数年先を見据えた5G通信のための機能開発に取り組んでいます。また、現在の5Gで使われている周波数は3.7GHz/4.5GHz帯がメインですが、今後は28GHz帯の周波数に対応するデバイスも多くなります。5Gの高い周波数は4Gの周波数に比べて広範囲に飛ばしにくいと言われていますが、それをどのように活用していくかを考えることも私たちの部門のミッションとなります」と京ヶ島。5Gの無線部分は目に見えるものではないが、通信速度の向上や低遅延を実現するためには、コアネットワークやデバイスと歩調を合わせて新しい機能を追加していくことが必要不可欠となるという。