2020年7月にローンチされたHELPOは、ソフトバンクのグループ会社であるヘルスケアテクノロジーズが提供するヘルスケアサービスだ。主な機能の一つであるオンライン健康医療相談サービスは、24時間365日、スマートフォンなどを通じてチャット形式で健康維持や病気予防などの相談を受けることができ、ヘルスケアテクノロジーズに所属する医師・看護師・薬剤師の専任チームが対応する。会社として応対の品質が管理されているという特徴があり、サービスの強みとなっている。
さらには相談サービスだけでなく、現在地や診療科などさまざまな条件から日本全国の病院を検索できる機能、ヘルスケア商品を短時間で配送できるECサイト「ヘルスモール」といった付帯するサービスもある。2021年6月中にはアプリユーザー向けにオンライン診療サービス機能の提供も開始予定とのことだ。今後はアプリユーザー向けの機能拡張はもちろんのこと、日本の医療を支える病院やクリニックの現場業務を幅広く支援するサービスの提供も目指し、将来的には関係する全てのステークホルダーを支えるヘルスケアプラットフォームの提供を見据えている。
そもそも、なぜソフトバンクがヘルスケア分野に挑むのか。その背景について、ヘルスケア事業推進部 部長の鴻池はこう説明する。「DX本部として重要視していた課題の一つに日本の労働人口の減少があります。その観点から重点的に取り組むべき事業領域を検討した結果、医療従事者の労働人口の減少という課題に行き当たりました。日本の医療費は年々増大し、医療現場は疲弊しています。このままでは今の日本の素晴らしい医療技術や制度を、子どもやその孫たちなどの次世代に引き継ぐことは難しいと考えています」
だがソフトバンクにとってヘルスケアビジネスは難問でもあった。参入ハードルの一つは、日本の国民皆保険制度にあった。諸外国と比べて保険制度が充実しており、質の高い医療が安価で身近に存在する日本では、ヘルスケアへの意識が薄れがちだ。それゆえに日本でヘルスケア事業を展開し、ビジネスとして成り立たせることは難しい。
事業化の障壁は高いが、日本の医療現場が疲弊している事実が揺らぐことはない。そんな中、社会課題の解決を命題に掲げて設立されたソフトバンクのDX本部。困難な領域であることは承知の上で、ソフトバンクはDXという文脈からヘルスケア分野に挑むことを決意した。